安倍政権が瓦解しないのは、この国の間接民主主義が瓦解しているからである

◆琉球の民意が幾度も示されている事実こそが凝視されるべきだ

2月24日に行われた沖縄県名護市辺野古における米軍の基地建設に対する沖縄県による「住民投票」では、「建設反対」が40万票(得票率70%)以上を得て圧勝した。この県民投票を待つまでもなく、任期途中で逝去されてた翁長知事の後任である玉城知事も、選挙戦以前から「辺野古基地建設反対」と旗幟を鮮明にし、知事選では圧勝した。


◎[参考動画]【報ステ】沖縄県民投票 賛成・反対の若者は……(ANNnewsCH 2019/02/25)

琉球(沖縄県)での「米軍基地問題」への世論は、すでに何度も何度も、確認されている。「米軍基地不要論」は結果、県民を騙した仲井真元知事だって選挙戦では訴えていたのだから。これほど明らかに、民意は幾度も示されている。くだらない解説は要らないから、まずはこの事実こそが冷厳に凝視されるべきだ。

そうであっても(県民投票の結果が圧倒的に「辺野古基地建設反対」との結果が出ても)、安倍や菅はその結果に、一瞥も触れず、建設工事を強行するであろうことも多くの人は予想していただろう。「嫌だ! やめてくれ! もうこりごりだ!」との民意をどのような方法で、何度示めそうが日本政府は、琉球(沖縄県民)に思いをいたすことはない。絶対といってよいほどないことは返還以降の歴史が証明している。

◆トランプは確かに「ノーベル平和賞」に相応しい

佐藤栄作のノーベル平和賞を受賞は、画期的だった。「核抜き本土並みの返還」との「真っ赤な嘘」を外務省の秘密文章で暴露された佐藤。沖縄返還の政治的欺瞞と、佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞したことによって、聡明な方々は「ノーベル賞」の持つ政治性、恣意性に気が付かれたことであろう。そして、安倍はノーベル平和賞にトランプを推薦しているという。ご同慶の至りである。わたしはトランプが「ノーベル平和賞」を受賞することを、冗談ではなく本心から希望する。そうすればバラク・オバマが何の実績もなく「ノーベル平和賞」を受賞したのと同様に、「ノーベル平和賞」の欺瞞がより多くの人々に明らかになるであろうからだ。


◎[参考動画]トランプをノーベル平和賞推薦の件について(2019年2月18日衆院・予算委)

自己の総括を告白すれば、わたしも否定的な部分はあるものの、東ティモール独立や、ビルマ軍政打倒のために、あるいは中華帝国の少数民族問題への、関心を喚起するために「ノーベル平和賞」を「利用」したことがある。わたしのような市井の人間にとって、なにか事を起こすには、それなりの力や団体、あるいは権威が必要だと感じていた。

だから敢えて負の側面を知りながらも「ノーベル平和賞」受賞者を称揚し、(もっと直接的表現を用いれば「利用」となろう)国際問題を訴えかけた。その行為の一部は現在わたし自身に「どう責任を取るのか」と、極めて厳しい問いかけとなり返答から逃げられなくなっている。

最大の問題はビルマでアウンサンスーチー氏が、実質最高権力者に就任して以来の、少数民族問題への彼女の対応である。一言でいえば「酷い」。わたしはアウンサンスーチー氏が、自宅軟禁されていた1988年、元の職場の業務として、先輩職員とビルマでお会いした(あの年外国人で彼女に接触できた初対面の人間はわれわれだけだっただろう)。その時彼女が冒してくれた危険性、及びわれわれに語ってくれたメッセージと現在の彼女の執権による「横暴」に、わたしはどう考えても整合性や、つながりを見つけることはできない。

ビルマでは依然として憲法により、軍人が国会の一定議席を占め、アウンサンスーチー氏のように外国人の伴侶がいる(いた)人物は最高権力者にはなれない、との取り決めがある。しかしそんなものは実質「瓦解」しているじゃないか。アウンサンスーチー氏が軍政との和解後、初めて来日したのは「日本財団」の招きによってであった。わたしはその時点で「もうこの人と私には接点はない」と痛感した。もっと乱暴に言えば「あなたはその程度の人だったんですか?」と詰め寄りたい気分もなかったわけではない。

◆この国の間接民主主義は、すでに機能不全に陥り破綻した

冒頭の話題から大幅にそれてしまった。

間接民主主義は機能しうるのか? 小選挙区制という、ペテン装置によって民意は反映し得るのか? 立憲民主党や国民何とか党、かれらはどのように極右自民・維新との違いを持っているのだ? 枝野は正月早々伊勢神宮に参拝したという。弁護士資格を持っていても、神話の世界でフラフラしている枝野に、「反自公」の庶民は期待が持てるか? しかもわたしから見れば「考えられない」ような御仁を公認するという。

琉球の基地問題も、数えきれないほどの安倍のスキャンダル(森友学園・加計学園・厚労省調査偽造)は、まともな野党とマスコミがあれば、「何度でも政権が吹き飛んでいるはずの大事件」(わたし個人の感想ではない。全国紙記者や政治学者の見解だ)だ。それでも安倍は平然としている。

「この国の間接民主主義は、すでに機能不全に陥り破綻した。そして国民はそのことに対して深刻な問題意識を持たない」(持つ感覚を失わされている)。残念ながらこれが今日の惨状を直視した人の感想である。間接民主府議が機能しないのであれば、直接民主主義という代案がある。問題は、それを担える人物がいるかどうかだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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