◆丸山穂高議員の発言は「失言」でなく、「本音」である

 

丸山穂高議員のHPより

過日、「日本維新の会」所属の丸山穂高議員が、「北方領土を取り返すには戦争しかない」との趣旨を発信し、「日本維新の会」から除名された。あらまあとしか言いようがないが、丸山議員は「失言」を発したのではなく、本音を発信したとわたしは考える。

そもそも「失言」によっての党籍除名や議員辞職勧告はおかしいのではないか。丸山議員の発言は失言でも、勘違いでもなく、本心がポロリと出たのであり、あの高須クリニックの院長先生も応援しているではないか。

本当の問題はこのような議員を当選させてしまっている、いまの選挙制度、政党の体たらく、さらには有権者の見識のなさではないのか。候補者や議員の本音こそが問題にされるべきではないか。

◆安倍晋三の「本心」をわれわれはもっと検証・議論すべきである

政治家は「失言」により、失脚することが多いが、「失言」よりも「本心」のほうが大切ではないだろうか。安倍晋三を例に挙げれば「さらなる軍備増強を図り、核武装をしたうえでアジア諸国を威嚇し、かつての大東亜共栄圏に匹敵する覇権を日本は握りたい。

そのためには国民の権利を大幅に奪い、緊急事態条項を設け、戒厳令を敷ける法整備を行い、天皇を元首と明記し、政権が使いやすい道具としてその存在を再規定したい」といったところであろうか。

こういった本音に接したら(接しても)安倍自民党に投票する人が多数なのであれば、仕方ない。もう希望などはない。けれども「え! そんなことまで考えてるの?」と多少はいぶかる方々も出ては来るのではないだろうか(極めて根拠の薄い期待であるが)。本来メディアの仕事は政治家の本心を探り出し、報じることであるのではないかと思うが、いかにも機能不全の度が過ぎる。

◆関西ネオリベの起源と拡大──「松下政経塾」から「維新」へ

さて、丸山穂高議員は東京大学後、経産省に勤務し、原子力保安院などを歴任したのちに退官。かの「松下政経塾」の出身者でもある。政界における「松下政経塾」出身者とは、改憲を志向し、時代錯誤な「日本誇大妄想」をいまだに抱き続ける困った人たち(本当は別の表現を使いたいところではあるが……)の集団である。

そして「維新」勢力は、総論自民党の主張とかわりないものの「なにか新しい」と勘違いさせるのに長けた連中である。「維新」の政策と自民党の政策を横に並べてみるがいい。ほとんど変わりはしないことが一目瞭然だ。

かつて橋下徹氏が大阪府知事選挙に出馬した際になにを連呼していたか?「地番沈下した大阪経済を活性化させるために、ヒト・モノ・カネを大阪に集めて……」である。なんのことはない。すでにその機能が失われた、従来の集中都市型の成長神話(高度成長期に時代の発想)を周回遅れで、連呼しているに過ぎない。「ハコもの、イベント」戦略だ。

そこにカジノがプラスされることだけが新しい(たちが悪い)。21世紀になって「万博」を呼んでどうする。黒字の地下鉄を民営化するのはなぜだ。津波が来たら一番最初に被害にあい機能不全が確実な咲州庁舎は災害の時に混乱要因ではないのか……。大阪をめぐる問題は数多いが本質的な問題に迫る言論はまれである。本通信に釜ヶ崎の問題を連続して報告してくださっている尾崎さんの活躍が際立っている。

◆「世襲」自民と「ネオリベ・エリート」維新が「改憲」で繋がるファッショ

 

大阪維新の会の主要役員(大阪維新の会HPより

さて、自民党と「維新」勢力唯一の違いは、自民党に在籍すると世襲議員が優遇される傾向が強いが、「維新」は歴史が浅いので、世襲ではない議員が比較的多いことくらいである。それにしても戦慄すべきは、1984年生まれの丸山議員は東大から経産省とエリートコースを邁進してきたわけだが、霞が関には丸山議員と似たような考えの官僚が、かなり生息しているであろうと推測されることである。

これは根拠のない推測ではない。わたしはある若手の高級官僚が自身の実名Facebookで、被疑者の「殺処分」(死刑以前に殺してしまう)を提案している事実を知り、当該部署の責任者に取材し見解を求めたが、責任者はその重大さに気が付くのに30分近くかかった経験がある。

見ているがいい。わたしは、金輪際望まないが、もし「改憲」がさらに現実味を帯びてきたら、自民党と「維新」は仲良く手をつなぐに違いない。「新自由主義」と「軍国主義」を指向し、アジア蔑視を徹底する点で、自民党も「維新」も何の違いもない。であるのに、いまだに「維新」幻想から覚めない方々が少なくない。本コラムの筆者にもそのような方はいらっしゃる。わたしにはまったく理解のできない感性である。

あるいは東京にお住まいの方や関西以外の方々にはあまりリアリティーがないかもしれないが、大阪市議会の会派別構成を見れば、その尋常ではない様子がご理解いただけよう。大阪市議会の定数は88人。うち「大阪維新の会」が51人、自民党が16人、公明党が15人、共産党が2人、旧民主系が2人、諸派2人だ。国政では与党の自公プラス「維新」で9割以上の議席が占められているのだ。この構成比は大阪府議会も大きく変わりはしない。

府政与党と国政与党が9割の議席を超えれば、「少数意見」などまったく府政には反映されない「異常事態」と本来は大騒ぎにならねばおかしい。政界を引退したと自認する、橋下徹のコメントなどをマスコミは喜んで拾うべきではないのだ。中国や朝鮮は形ばかりの「選挙」を行い、その欺瞞ぶりは誰の目にも明らかであるが、この島国では、一応民主的な選挙を行っても、大阪では極右と国政与党勢力に9割の議席が与えられる。

久しぶりにタバコが吸いたくなった。

▼田所敏夫(たどころ としお)

兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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