NHKから国民を守る党HP

立花孝志(NHKから国民を守る党)は、具体的なことを言う。たとえば消費税廃止を訴えても、できる可能性が低いならスローガンには掲げない。そこで、NHKの受信料徴収に反発する層に、まず具体的に訴える。

地方選挙で「NHKから国民を守る党」のチラシを見た方はわかると思うが、NHK撃退シールやNHK受信料徴収員の撃退法、NHKからの被害相談に乗るという、具体的なものなのだ。ここに参院選挙で議席を得た選挙手法がある。誰がやっても変わらない政治のなかで、変えてくれる可能性がある。

NHK受信料を強制されたくない、NHKの放送内容に不満がある。これを具体的にやってくれるのがN国党であり、立花孝志代表というわけだ。26人の地方議員(2019年統一地方選挙)を擁し、いままた立花代表が参議院議員となり、得票率2%をこえる政党となった。

◆数は力である

ところで、そのNHKをぶっ壊せというシングルイッシューを掲げたN国党が、北方諸島視察時の問題発言で国会の球団決議を受けたで丸山穂高議員を入党させ、さらには渡辺喜美議員と会派(みんなの党)を結成した。これで政党交付金および会派の議員にたいする手当の合計3000万円(年)が手に入ることになったのだ。同時に会派としての発言権を確保したのである。


◎[参考動画]【報ステ】N国党・立花代表『みんなの党』結成へ(ANNnewsCH 2019/07/30公開)

なんという鮮やかな政治手法であろうか。政治的な見解を異にする政治家との会派結成、国会から「もう二度と来るな」と糾弾決議された議員の勧誘(入党)と、世間から批判を浴びるのは承知の上で、見事な手腕で公党としての地歩を確保したのだ。

丸山議員と渡辺議員だけではない。秘書への暴言・暴行(数百発殴打?)と外国人女性に買春もちかけた石崎徹衆院議員(新潟県連が除名・離党勧告など、きびしい処分を自民党本部に申し入れている)にも入党を呼びかけているのだ。石崎議員の反応が注目されるところだが、消息筋ではN国党に入党する可能性が高いという。そのほかにも、10人前後の無所属議員、自民党議員が入党勧誘の対象だという。たとえば、民主党系から飛び出して希望の党に合流しようとして党の立ち上げに失敗し、自民党二階派に所属する細野豪志議員なども、対象にふくまれているという。

一見して、処分されたり行き場がなかったり、あるいはみずから立ち上げた党が崩壊して、尾っぽ打ち枯らした感のある政治家ばかりだ。そして会派の代表となる渡辺氏が「NHK改革は考えていない」(会派結成の記者会見での発言)とか、丸山議員が「NHK受信料未払は法律違反」(過去のSNS発信)と、N国党のいわば立党の精神に反する立場にもかかわらず、政党会派が結成されるという本末転倒の内容なのである。

ふつうなら「何じゃ、この会派は?」である。数は力、数合わせのためなら、政治理念や内容は問わないとする、有権者(N国党への投票者)置き去りの暴走なのである。しかし、である。このとんでもない会派づくりは、おそらく立花代表の計算通りなのであろう。


◎[参考動画]「N国」なぜ“ワケあり”議員を? 政治部記者が解説(ANNnewsCH 2019/7/29公開)

◆計算済みのメディア露出

このなりふり構わない多数派形成に、驚嘆してみせるメディアの取り上げ方。政治理念と有権者置き去りの批判もまた、織り込み済みであるかのように立花代表はテレビ画面に、笑み満面でその巨体を登場させ、あるいはYoutubeでアピールする。選挙中のYoutube閲覧回数は、自民党の広告閲覧回数を大きく上まわったという。

ようするに、目立つことを目的にしてきたやり方を、いままさに本格化しているのだ。もはや、観ているほうがあきれ果てて「喝采」を送るしかない。何よりも、傍若無人な人が多い政治家のなかで、立花氏は人当たりが良いという(元NHKアナで、TBS系キャスターの堀尾正明氏による評価)。たしかに、その言動や立ち居振る舞いは、観ていて好印象すら感じてしまう。とんでもないこと、つまり政治理念なき議会党(会派)づくりにもかかわらず、なんとなく興味をもってしまうのだ。


◎[参考動画]N国・立花代表ノリノリ「契約するけど払わない!」(ANNnewsCH 2019/7/31公開)

◆その戦略と理念

大都市圏のベッドタウンを中心に地方議員を立候補させた戦略は、奇しくも過去の「みんなの党」の戦略をなぞったものだと、立花代表みずから認めている。大都市圏の浮動票層、すなわち近所づきあいの少ないマンションや大規模団地の住民である。

たとえば自民党の基礎組織は、町会や自治会に地元議員が参加することで成立している。町会とかさなる神輿会、盆踊り、子供会、神社の崇敬会などである。民主党系が労働組合や市民運動、あるいは生協に依拠しているのに対して、過去のみんなの党や現在の維新の会などは、これら自民党や民主党系の組織に属さない、大都市の無党派層をつかむことで伸長してきた。この大都市型の選挙構造を、立花代表は過去の選挙事例から学んでいたことになる。都市個人主義者をつかんだ、といえるのかもしれない。

そのいっぽうで、N国党は今年の4月から5月にかけて、まさに統一地方選挙のさなかに5人の議員を除名処分にしている。参院選挙の運動資金として課せられた130万円を払わなかったのも理由だが、除名した議員たちが「NHKは朝鮮人や帰化人に支配されているので、偏向報道がなされている」などと主張していたからだという。

これをみるかぎり、ネトウヨ系議員の排除という、有権者の動向を考慮した党運営であることがわかる。じつはN国党からの出馬者には、あきらかに左派・リベラル派と思われる人たちもふくまれていた。寄せ集めとはいえ、数は力という政治の論理を知っている立花孝志代表のN国党から目が離せない。


◎[参考動画]正しいNHK受信料の不払い方法を国会議員が解説します。(立花孝志2019/7/30公開)

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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