ゆるぎない確信があるわけではない。情報源は、マスメディアと知人からの個人筋をもとに、わたしが感覚的に推測するだけだ。歴史の勉強も人並みにしていない知識からの予感が外れる可能性が大きいであろう。だが敢えてわたしの直感を書こうと思う。

不確かな未来予想は好きではない。わたしは、この国が2030年にはおそらくいまの形では残存しない、と考えていることを本通信で何度か明らかにしてきた。そちらの予想にはかなりの自信を持っている。ここでは述べないが数々の根拠があるからである。

◆一周遅れの「統一」へ

韓国とこの国の関係が険悪になっている。中途を飛ばしていきなり結論を述べよう。

《韓国と朝鮮(水面下では米国・中国にも通告。両国の内諾を得、日本は無視)は、具体的な時期は見通せないものの、「統一」に向けて合意をした》

冷戦時代には、国境を接して同じ民族が分断国家にされていた。世界的にその影響が顕著だったのは東・西ドイツだろう。「ベルリンの壁崩壊」により統一をみたドイツと、同様の悲劇がなぜ朝鮮半島では放置されてきたのであろうか。

ソビエト社会主義共和国連邦、最後の最高権力者、ミハエル・ゴルバチョフは、東ドイツの最高権力者、ホーネッカーから相談を受け、実質的な東西ドイツ「統一」を認める許可を出した、と何度も語っている。

冷戦の処理もやはり欧州が優先されたのか。ベルリンの壁崩壊から四半世紀以上が過ぎ、東西ドイツの統一と比較すれば、またしてもアジアの悲劇は後回しにされたのか。との斜めからの分析もこじつけには聞こえない。「歴史は相変わらず欧州優先なのかと」(東西冷戦終了後に欧州で発生したユーゴスラビアなどの内戦から目を離すわけにはいかないが)。アジアは世界の秩序整理のなかで、欧州の問題が片付いた後にしか、気を回してもらえないのか(欧州、アジア格差もさることながら、アフリカにおける実効的な植民地支配が終わらない現実は、さらに悲劇的である)。

◆民主派の系譜

軍政の時代が終わり、民政に移管しても韓国の保守勢力は日本の保守反動勢力と戦前以来の気脈を通じていた。李承晩、朴正熙、李明博、朴槿恵らはその系列の大統領だ。ときに、「反日的」カードを切ることがあっても、日本占領時代からの性癖が抜けず、財閥優先の経済政策と近親者優遇の悪癖が続いており、日韓の保守反動地下水脈の利益の軌道は、つねに表には出なくとも一致を見ていたのである。重要なことは「韓国の保守勢力は心の中では『日本が嫌い』だが、自分の利益のためには、日本の利権と手を繋ぐのに躊躇しない」点である。

他方、文在寅大統領は、金大中、廬武鉉と続く民主派の系譜にある人物だ。10親等までの親戚づきあいを拒否できない、儒教習慣が、いまだに残る韓国では、革新的な指導者であっても、賄賂や近親者優遇から無縁でいることは、日本とは比較にならぬくらいに難しい。廬武鉉氏の自死もそのような件に絡む自責が理由だった。

韓国の民主派勢力は幅が広い。左翼勢力も変動は激しいものの、必ず一定の力を保持している。ローソクデモで朴槿恵を大統領の座から引き摺り下ろした主役には、梨花女子大学の女子学生の力だった。彼女たちは日頃、学生運動の戦士ではない。ファッションには、かなり神経もお金も使う。ボーイフレンド選びにも、熱心である。だが、ここぞというときには反政府行動に身を投じることをいとわない。なぜか。韓国の民族史も理由になろうが、彼女たちは「親の背中」を見て育っているのだ。当然ながら、日本には残念ながら梨花女子大と学風が匹敵する大学はない。

◆世襲議員の「澱」

1965年に不平等条約である「日韓条約」が締結されると、この国の中では大韓民国だけが朝鮮半島における、合法的な主権国家であるとの態度が示される。しかし、それは国際社会の中にあって、圧倒的に異端な規定であった。日本は、国際法上正当と主張する「日韓併合条約」を大韓帝国に締結させているのだ。「日韓併合条約」の強制的締結前、数年の歴史を日本の受験生のほとんどは、知らない。否、受験生だけでなくわたしたちはおしなべて日本が朝鮮半島を侵略した歴史の詳細をほとんど知らない。そして「日韓併合条約」と「日韓条約」の決定的矛盾をこの国の学者、報道は問題にしようとはしない。しかし、「侵略」された側の韓国・朝鮮のひとびとは、苦難の歴史を義務教育から教えられる。

河野太郎が外相に指名されるとは思わなかった。彼の父河野洋平は「河野談話」を残した人物であるし、河野太郎も平議員のときは、福島第一原発事故後、毎日放送の「種蒔きジャーナル」に出演して「僕は確信的な反原発です。自民党の中にもそう思っている人は結構いると思います」と無責任な発言をしていた。

所詮世襲議員とは、「澱」が溜まっていくもので、くそ生意気に河野太郎は「外相専用機が欲しい」だの、今般の韓国との間での関係悪化では、あろうことか駐日韓国大使を呼びつけて「無礼だ!」とまで調子に乗った。

いいか。河野太郎。一度吐いた言葉は戻らないんだよ。

安倍を中心とする、歴史修正主義者と、与野党含め根源的な政権批判すらなくなった「大政翼賛会」状態で、「歴史を知らない」日本人の多くは、やはり「歴史を知らない」マスコミが作り上げる「反韓国」世論に、簡単に便乗させられる。朝日新聞も、読売新聞も、なんとか民主党も、だれもが「韓国批判」が正義であるかのように、羞恥心を失い馬鹿なことばかりを発信する。

わたしは、極めて不愉快だ。そしてひとつだけ「反韓国」の論調を先導する、
あるいはそれに領導される、無知なひとびとに問いたい。

「あなたはこれまでに、いったい、何人の韓国人と腹を割って話をしたことがありますか? そこまでの関係ではなくても、韓国人や朝鮮の人が歴史的に、日本をどう見ているかを知っていますか。そしてそれが事実であることを」

反日有理。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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