2020年4月22日。新型コロナウイルス感染拡大防止・緊急事態宣言の自粛要請を受けて静まりかえった霞ヶ関・経産省前テント広場にて開催された呪殺祈祷僧団四十七士による月例祈祷会「鎮魂 死者が裁く」を取材した。3回に分けて報告する。

経産省前で呪殺祈祷を行うJKS47のメンバー

原発・戦争・貧困、そして伝染病。政権には魑魅魍魎のような守銭奴・売国奴が跳梁跋扈し、一握りの権力者の欲望のままに操作される情報と政治に翻弄され明日の暮らしの不安に戸惑い右往左往する幾億の民衆。

非常事態宣言下の静まりかえった霞ヶ関経産省前には、末法の世を憂う日蓮イズムを継承した呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉の僧侶たちによる「南無妙法蓮華経」の題目が鳴り響いた。

鎌倉時代に徹底的に論陣を張って政敵をかたっぱしから論破し、時に流罪の憂き目にあいながら徹底抗戦し続けてきた武闘派な日蓮イズムは、現代日本社会に覆いかぶさる、自粛・不謹慎・忖度といった正体不明の同調圧力を克服するための鍵になるのではないか!

サイケデリックな帽子にペストマスクという不気味な装いで現れた山崎春美氏。ガセネタ、TACOというロックバンドを率いた、日本のアングラ/サブカル音楽シーンの自由な精神文化の起源である

◆はじめに・私のスタンス

はじめに私のスタンスを明確に提示しておく。「アベやめろ」と叫んでも「原発をなくせ」と叫んでも、この国が、この惑星が抱える様々の困難な問題は永遠に解決しないと考える。対岸の敵に罵声を浴びせても問題は解決しないどころか不要な分断を生じて新たな軋轢を産むだけだ。殴りかかってくる人には抱擁を、嘲笑う人には接吻を。リアクション(反発)する時間をクリエイション(創造)する時間に変えて、一人一人の意識・ライフスタイルが更新されていくことで地球が美しくまわるのではないだろうか。そう考えるので、私個人としては政権批判のためだけの抗議運動を支援するつもりがない。

私が今回の取材依頼を受けた動機は、音楽家として「日蓮宗僧侶の潜在的なパンク精神」に興味があったからであって、この記事を通じて反原発派読者諸君との共感と親睦を深めるためではない。若輩にして僭越ながら私の認識において、日本における仏教諸派宗の分裂派生とは、権力を笠に着て俗物化した教団の腐敗にうんざりした反逆児達による革命独立運動にほかならない。これはジャズ、ロック、パンク、ハードコア、オルタナティブ、プログレッシブというような音楽ジャンルを定義する言葉の発生というのは、音楽的な技術論や形式ではなく現状維持に満足し得ない音楽家達の精神的な活動の発露であると認識している。四面楚歌を恐れずにバキバキに論戦をふっかけまくった日蓮聖人の弟子である僧侶達の、「異端をもって正統となす」ような心に少しでも近づけたらという思いで取材に挑んだ。

先に結論から申し上げると、今回の取材は演し物として非常に興味深いものであった。また、参加者個々人の経緯や思想的背景を知るにつれ、ヒップなオジサマ達の生き様が幾重にも交差して成立したJKS47が尊く貴重な活動であるという認識から執筆にあたった。

黒地に白く染め抜いた「鎮魂 死者が裁く」が禍々しい半グレ集団でもおっかながって逃げ出すだろう

◆JKS47とは?

JKS47 は僧侶・劇作家の上杉清文(日蓮宗本國寺住職/劇作家)を筆頭に、福島泰樹(法華宗本門流法昌寺住職/歌人)を中心として結成され、2015年8月27日を皮切り経産省前での抗議活動「呪殺祈祷会」を開始し、今回で51回目を数えるに至った。

Webサイトに活動の根拠を提示したステイトメント文が掲載されていたので以下に引用して紹介しよう。

JKS47
1970年、日本列島を公害列島と化し、多くの人々に障害と死をもたらした水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市大気汚染等々の重大な公害問題に立ち向かった仏教者を中心とする「公害企業主呪殺祈祷僧団」という集団があった。このすでに伝説化した「公害企業主呪殺祈祷僧団」をこのたび再結成する運びとなった。再結成にあたって「公害企業主呪殺祈祷僧団」を「呪殺祈祷僧団(JUSATU KITOU SOUDAN)」と改め、僧団員の数を忠臣蔵にちなみ四十七人とした。したがって、正式名称を「呪殺祈祷僧団四十七士」、略称を「JKS47」とする。

呪殺
「呪殺」とは、神仏のはからい、霊験によるものである。
「呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉」は、神仏による音霊・言霊に感応し、伝達することを使命とし、死者との「共存・共生・共闘」を理念とする。それは、神殺し、仏殺しであった神仏分離・廃仏毀釈にはじまる日本の近代の始めから現在に至るまでの夥しい負の遺産を継承し、敗者の視点に立ち、ひたすら死者の裁きを懇請し祈念することである。

活動
戦争法案廃案!安倍政権退陣!原発再稼働阻止!悪しき者らに死者の裁きを!
これが当面の緊急課題だが、安保関連法案の根本に存在する日米安保条約、日米地位協定を見直し廃棄することが最大の眼目である。

鎮魂と共闘〈JKS47〉

JKS47の基本理念はこれでお分かり頂けただろうか。次回は現場からのレポートをお届けする。(本文中敬称略)(つづく)

【JKS47 月例祈祷会】
日時:2020年6月19日(金)午後2時45分より
会場:経産省前テントひろば
JKS47事務局 
合 掌

◎原田卓馬 《NO NUKES voice》「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
【前編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35521
【中編】 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35541
【後編】http://www.rokusaisha.com/wp/?p=35549

▼原田卓馬(はらだ たくま)
1986年生まれ。幼少期は母の方針で玄米食で育つ。5歳で農村コミューンのヤマギシ会に単身放り込まれ自給自足の村で土に触れて過ごした体験と、実家に戻ってからの公立小学校での情報過密な生活のギャップに悩む思春期を過ごす。14歳で作曲という遊びの面白さに魅了されて、以来シンガーソングライター。路上で自作のフンドシを売ったり、張り込み突撃取材をしたり、たまに印刷物のデザインをしたり、楽器を製造したり、CDを作ったりしながらなんとか生活している男。早く音楽で生活したい。
ご意見ご感想、もしくはご質問などはtwitter@dabidebowie

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紙の爆弾2020年7月号増刊
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総力特集 原発・コロナ禍 日本の転機
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[表紙とグラビア]「鎮魂 死者が裁く」呪殺祈祷僧団四十七士〈JKS47〉
(写真=原田卓馬さん

[報告]菅 直人さん(元内閣総理大臣/衆議院議員)
原子力とコロナと人類の運命

[報告]孫崎 享さん(元外務省国際情報局長/東アジア共同体研究所所長)
この国の未来は当面ない

[報告]田中良紹さん(ジャーナリスト/元TBS記者)
コロナ禍が生み出す新しい世界

[報告]鵜飼 哲さん(一橋大学名誉教授)
汚染と感染と東京五輪   

[報告]米山隆一さん(前新潟県知事/弁護士/医師)
新型コロナ対策における政府・国民の対応を考える

[報告]おしどりマコさん(芸人/記者)
コロナ禍は「世界一斉民主主義テスト」

[報告]小野俊一さん(医師/小野出来田内科医院院長)
新型コロナ肺炎は現代版バベルの塔だ

[報告]布施幸彦さん(医師/ふくしま共同診療所院長)
コロナ禍が被災地福島に与えた影響

[報告]佐藤幸子さん(特定非営利活動法人「青いそら」代表)
食を通じた子どもたちの健康が第一

[報告]伊達信夫さん(原発事故広域避難者団体役員)
《徹底検証》「原発事故避難」これまでと現在〈8〉
新型コロナウイルス流行と原発事故発生後の相似について

[報告]鈴木博喜さん(ジャーナリスト/『民の声新聞』発行人)
コロナ禍で忘れ去られる福島

[報告]本間 龍さん(著述家)
原発プロパガンダとは何か〈19〉
翼賛プロパガンダの失墜と泥沼の東京五輪

[インタビュー]渡邊 孝さん(福井県高浜町議会議員)
(聞き手=尾崎美代子さん
関電原発マネー不正還流事件の真相究明のために
故・森山元助役が遺したメモを公にして欲しい

[報告]三上 治さん(「経産省前テントひろば」スタッフ)
僕らは、そして君たちはどうたち向かうか

[報告]平宮康広さん(元技術者)
僕が原発の解体と埋設に反対する理由

[報告]板坂 剛さん(作家・舞踊家)
《対談後記》四方田犬彦への(公開)書簡

[報告]佐藤雅彦さん(翻訳家)
令和「新型コロナ」戦疫下を生きる

[報告]山田悦子さん(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈8〉
東京オリンピックを失って考えること

[報告]再稼働阻止全国ネットワーク
コロナ禍で自粛しても萎縮しない反原発運動、原発やめよう
《全国》柳田 真さん(再稼働阻止全国ネットワーク・たんぽぽ舎)
《六ヶ所村》山田清彦さん(核燃サイクル阻止一万人訴訟原告団事務局長)
《東北電力・女川原発》日野正美さん(女川原発の避難計画を考える会)
《福島》黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)
《東海第二》大石光伸さん(東海第二原発運転差止訴訟原告団)
《東電》武笠紀子さん(反原発自治体議員・市民連盟 共同代表)
《規制委》木村雅英さん(再稼働阻止全国ネットワーク)
《関電包囲》木原壯林さん(若狭の原発を考える会)
《鹿児島》向原祥隆さん(反原発・かごしまネット代表)
《福島》けしば誠一さん(反原発自治体議員・市民連盟/杉並区議会議員)
《読書案内》天野恵一さん(再稼働阻止全国ネットワーク)

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