5月20日に発表された宮司の死について、ここでは「怪死」としておこう。殺人など事件性のある「怪死」という意味ではない。おもて向きの発表が「病死」でありながら「自殺」が疑われているからだ。そしてじつは、そこにこそ宮司の死の真の原因が顕われているからである。

というのも、このかん神社本庁の実態を報じてきた「ダイヤモンド」(6月12日付/編集部・宮原啓彰)によれば宮司の死を、
「神社本庁は『存じていない』とし、岩手県神社庁は『心筋梗塞による病死と聞いている』とダイヤモンド編集部の取材に答えた。」
「だが、複数の神社本庁や岩手県神社庁、盛岡八幡宮の各関係者によれば自殺だったという。直前には、盛岡八幡宮の宮司を休職、神社本庁や神政連にも辞表を提出しており、覚悟の上での自死だったのではないかと見られている。」
としているのだ。もしも「自死」だとしたら、その原因は何なのだろうか?

 

岩手県神社庁長・盛岡八幡宮宮司だった藤原隆麿氏の訃報(2020年5月20日付中外日報)

「怪死」したのは藤原隆麿氏(岩手県神社庁長・盛岡八幡宮宮司・66歳)である。肩書のとおり岩手県神社界のトップであるとともに、藤原氏は全国7万9000社の神社を統括する神社本庁の理事、そして憲法改正を推進する神道政治連盟の総務会長なのだ。まさに大物宮司の謎多き「怪死」である。

だが、これを詳報した「ダイヤモンド」によれば、前出の宮司職の休職も、神社本庁や神政連への辞表にも、有力な動機がある。藤原氏を刑事告訴する動きがあったというのだ。したがって自殺である可能性が高い。

神社本庁といえば、不動産売買(職員用宿舎の売却)をめぐって、執行部(田中恆清総長・小野崇之総務部長=当時)の背任疑惑があり、内部告発が行なわれている。その告発者への処分も行われている。

◆三角不倫疑惑

藤原氏を刑事告訴する動きとは、それでは何だったのだろうか。その動きが明らかになるのは、3月に暴露されたスキャンダルにさかのぼる。

そのスキャンダルとは、神社本庁の秘書部長兼渉外部長の小間澤肇氏(57歳)とその部下の女性職員(51歳)の不倫疑惑である。ふたりは新宿歌舞伎町のラブホテルから出てきたところを、張り込んでいた取材陣に活写されたのだ。ふたりは焼き肉屋で飲食ののち、ラブホテルに2時間滞在したという。計画的な取材であることから、内部からのリークによるものであるのは明白だ。(2020年3月16日付『週刊ポスト)

そしてじつは、「怪死」した藤原氏を刑事告訴しようとしていたのは、ほかならぬこの不倫疑惑のある女性職員なのだ。藤原氏から何らかの被害を受けた彼女は、小間澤氏にラブホテルで「相談していた」というのだ。なぜ焼き肉屋で「相談」は終わらなかったのだろうか。三角不倫を想像させるが、それはともかく、事件の概要を整理してみよう。

藤原氏→何らかの犯行?→女性職員→相談?(焼き肉屋・ラブホテル)→刑事告訴の準備?→藤原氏→怪死(病気か自殺) という構造なのだ。

藤原氏と女性職員のあいだに何があったのかは、もはやわからない。だがたとえば、元テレビ局の記者で自称ジャーナリストによる昏睡レイプ事件が、民事では有罪になっても刑事では立件もされない現実を考えると、相応の事実があったのだろう。事実無根として戦う余地がなかったのだと考えられる。その意味では、藤原氏は神職者らしく恥を生きることを拒否して、帰幽(逝去の神道用語)されたのかもしれない。

不倫がいけないとか、神職でありながらけしからんとかの道徳者視点で批判をするつもりはない。しかるに、神社本庁およびその政治団体である神道政治連盟は、夫婦別姓に対して「家族崩壊」につながる。あるいは「不倫の温床になる」と批判をくり広げてきたはずだ。その意味では、死に値する事態だったのかもしれない。

 

ラブホテルから出て来る小間澤肇氏と部下の女性職員(2020年3月2日付地球倫理:Global Ethics)

◆その利権と内部抗争

そして問題なのは、小間澤氏が神社本庁不動産不正取引疑惑を告発した元総合研究部長の稲貴夫氏を懲戒免職処分に、同じく財政部長の瀬尾芳也氏を降格処分にした責任者であることだ。このことからラブホテルの一件(リーク)は、おそらく反執行部側の人物によるものであろうと考えられるのだ。不倫疑惑事件の背後に、明らかな内部抗争がみてとれる。

じっさいに、稲氏と瀬尾氏が処分無効等を求めて東京地裁へ提訴したさいに、小間澤氏は「処分は妥当」とする神社本庁側に立って陳述書を提出しているのだ。そうすると、今回の事件(ラブホスキャンダル・藤原氏の怪死)は、三角不倫と思われる三人のうごきをつかんだ反執行部派がリークした上に、執行部の重鎮でもある藤原氏を刑事告発するうごきがあったと考えるべきであろう。

ここで、上述した神社本庁不動産不正取引疑惑を解説しておこう。疑惑が露見したのは、2015年のことである。全国の神社から選出される評議員会において、神社本庁所有の「百合丘職舎」の売却が承認された。売却先はディンプルインターナショナルという不動産会社で、その額は1億8400万円であった。ところが、ディンプルは百合丘職舎を転売し、最終的には3億円をこえる物件として大手ハウスメーカーの所有となったのだ。

転売した売却益はどこへ行ったのか? いや、それよりも問題となったのは、基本財産目録に記された百合丘職舎は、簿価ベースで土地建物合わせ7億5616万円だったのだ。この一件をめぐって、背任との内部告発が行なわれ、告発者が処分されたのは前述のとおりだ。

民間の財団である神社本庁が憲法改正を掲げ、日本会議など右翼団体に大きな位置を占めているのは、一般にも知られるところだ。あるいは日本遺族会の一部とともに、天皇の靖国参拝を求めている。きわめて政治性の強い組織であるいっぽう、じつに穢れた利権抗争をその内部にはらんでいることが鮮明になってきた。継続して、神社本庁および神道政治連盟の実態を明らかにしていきたい。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)

編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』(夏目書房)『ホントに効くのかアガリスク』(鹿砦社)『走って直すガン』(徳間書店)『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』(双葉社)『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)など。

月刊『紙の爆弾』2020年7月号【特集第3弾】「新型コロナ危機」と安倍失政

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B089M2DG99/