関西電力は、運転開始から40年足った老朽原発3基について、来年1月美浜3号機、3月には高浜1号機の再稼働を目論み、準備を進めている。

福島県浪江町から兵庫に移住した菅野みずえさん(写真提供=EijiEtohさん)

3基については、すでに原子力規制委委員会の安全審査で最長で20年の延長運転が認められており、焦点は地元同意に移っている。

高浜町では、11月12日町議会の臨時本会議で、高浜原発1、2号機の再稼働を求める請願を賛成多数で採択したが、「立地地域の振興や原発の安全管理の徹底を求める」意見書を議決し、経産省などに提出、25日議会全員協議会で高浜原発1、2号機の再稼働について同意すると表明、野瀬豊町長に伝えられた。

一方、美浜町は、12月9日に原子力安全特別委員会を開き、11月30日開会の議会本会議の最終日(12月15日)に、美浜3号機の再稼動への同意を強行しようとしている。

この12月9日に向け、大阪市内から美浜町まで200キロのリレーデモを行い、沿道の住民たちに「危険な老朽原発動かすな」と訴えるとともに、ルート途中の自治体に申し入れを行っていく予定である。

11月23日、大阪市内の関西電力本社ビル前でリレーデモの出発式を兼ねた集会が開催され、約550人が参集、市民団体、労働組合、全国各地で闘う仲間、そして福島県浪江町から兵庫県に避難する菅野みずえさんからアピールがなされた。

その中から今回は、福井県地元からかけつけたお二人の発言をご紹介したい。

◆中嶌哲演さん(「原発に反対する福井県民会議」)

中嶌哲演さん(筆者撮影)

私は若狭と関西周辺の肩を結ぶ立場から、あまり皆さんが触れられていない2つの問題点に絞ってお話します。

1つは実質的に3基の老朽炉を止めていく上での問題です。昨年私は9月末から12日間断食抗議をしましたが、2つの目的をもっていました。1つは高浜1、2号機に2160億円、美浜3号機に1650円の巨費を投じて安全対策工事を強行していました。私はその工事の中止を求めました。当時工事の進捗率19%ないし20%に過ぎませんでした。一方、廃炉費用は高浜で450億円、美浜で490億円見込んでいますから、工事を中止して残った予算を廃炉の準備費用にまわすべきと訴えました。残念ながら工事は、コロナの影響のある今年のような様子を見せていませんでした。

コロナを通じて皆さんどうでしたか? 国民の命を守ること、そのために経済活動を控えなくてはいけなくなった、しかしそれによって生じる損失は、国の責任で補填するとなった。あれやこれやではなく、両方をむすびつけてやっていく、そういうことが国民の意識に浸透してきた。原発政策も同じではないですか? 原発を止めることによって、まず国民の命と安全を守る。しかしそれによって原子力ムラや地元の経済界が「経済が止めるのでは」と不安を抱える。しかしそうではないということを、昨年の断食の2つめの目的に掲げました。それは国会に上程されている「原発セロ法案」です。それを実質的に審議していけば、老朽炉を廃炉にすることなど実質的に審議していくなかで、様々な問題も十分解決できるという確信があったので、私は断食をやりました。当時すでに2000~3000人の人が高浜、美浜で働いていました。私が抗議の断食をやることが、彼らの生活の糧を奪うのではないかというジレンマを持ったわけですが、「ゼロ法案」の問題があるから私は確信をもって断食をしました。

2つめは、どんなに無茶なことでも横車を押して原子力ムラと行政はゴリ押しをしていました。地元高浜、美浜など立地自治体の議会の承認を得れば大丈夫ということでしゃにむになってやってきた。しかしその土俵の外におかれてきたのが私たち小浜市民や若狭町の自治体、嶺北の自治体です。知事には発言権はありますが。よもや関西の皆さんは全く土俵の外、単なる観客にすぎない。そういう土俵の外に除外された私たちが団結して迫っていく必要があると考えています。最後に私がずっと詠み続けてきた坂村真民の「あとから来る者のために」という詩を読み上げます。

あとからくる者のために
苦労をするのだ
我慢をするのだ
田を耕し
種を用意しておくのだ

あとからくる者のために
しんみんよ お前は詩を書いておくのだ
あとからくる者のために
山を川を海を きれいにしておくのだ

ああ あとからくる者のために
みなそれぞれの力を傾けるのだ
あとからあとから続いてくる
あの可愛い者たちのために
未来を受け継ぐ者たちのために
みな夫々自分で出来る何かをしてゆくのだ

山本雅彦さん(筆者撮影)

◆山本雅彦さん(「原発住民運動福井・嶺南センター/事務局長」)

報道されているように、美浜原発で関電の社員らがコロナに感染するという事態になっています。もし稼働している最中に運転員や機械などの保守にあたっている労働者の方がかかったら、原発は本当に安全に運転できるのか?もうこんな危険な綱渡りの運転はやめるべきではないか、そのことをまずお伝えしたいと思います

40年超えの老朽原発の危険性は皆さんが指摘するとおりです。しかし地元美浜・高浜町議会では、請願を採択するという形で同意しようとしています。まだ同意はしていません。これからもまだ止めることができます。

これまでの経過では、高浜町の商工会議所、自民党高浜支部が推進の請願をだし、これを採択するという形で再稼働を進めようとしています。高浜町議会に原子力政策委員会があり、ここで委員長を務めている元高浜町職員の松岡さんという方がいます。

山崎さんの話の途中「この関電です」のあとに。関電本社ビルに向かって「老朽原発うごかすな!」と訴える参加者(写真提供=EijiEtohさん)

彼は「私は再稼働の是非の議論はしたくない。高浜町に住む多くの人たちがどう思っているか、大方の人は賛成はしていない。また、私は継続審議をしたいといったが、関電の元社員である井上(井上順也)や小幡(小幡憲仁)議員らが『どうしても再稼働する。そしてその意見書をもって国にいき、経済的支援をしてもらうということで進められているのだから、絶対再稼働しないと困る』という圧力をかけてきたそうです。

松岡委員長は『それだったらあなたたちが意見書をつくればいい。私はやらない』と返事をしたそうです。その結果、高浜町の職員や関電の元社員の議員など少数の人たちによって意見書がまとめられ、再稼働の採択がなされたのです。こうしたことが、この間皆さんが抗議や要請行動をしてくださるなかでわかったことです。

皆さん、高浜町や美浜町の町民でさえ再稼働を認めていない、危険な原発は運転しないでと願っている。これに対して再稼働をしゃにむに進めようとしているのが、目の前の関西電力です!!

意見書を見ますと、高浜町の皆さんも本当に悩んでいるのがわかります。最後に再稼働をするにあたって、高浜町民が国民から非難されることがないようにということが書いてある。

再稼働に多くの国民が反対している。高浜町民の多くも止めて欲しいと願っている。賛成すれば国民に批判されるとわかっている。そういう再稼働は本当に止めにしなければいけません!皆さん、ともに頑張りましょう!

★リレーデモ最終日 12/9(水)の行動予定★
13:00 美浜駅前集合 → 美浜町内デモ行進
→ 美浜町役場まえでアピール行動および美浜町長議会へ申入れ → 美浜町内デモ行進
→ 関西電力 原子力事業本部 包囲 抗議行動 16:00 現地解散 
のぼり、旗、パネル、鳴り物など持ってご参加ください

★リレーデモへご支援のお願い★
郵便振替からのご入金
加入者名 : 老朽原発うごかすな!実行委員会
口座記号・番号:00990-4-334563
通信欄に「老朽原発うごかすな!行動へのカンパ」とお書きください

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

NO NUKES voice Vol.25

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