大阪府と大阪市が大阪湾の人工島「夢洲」に誘致を計画しているカジノを含む統合型リゾ─ト施設(IR)の是非を問う住民投票を求める署名が6月6日、各市町村の選挙管理委員会に提出された。

6月6日府内の市区町村で一斉に署名が提出された。写真は午後1時30分、西成区役所選挙管理委員会で

地方自治法によれば、府内有権者の50分の1以上の署名数が集まれば、知事は住民投票条例の制定を府議会に求めなくてはならない。署名活動を行った市民団体によれば、3月25日から5月25日までに集まった署名は、必要法定数約14万6500筆を大きく上回る20万8552筆に達したという。

今後、選挙管理委員会の審査で署名が「有効」と認められれば、吉村知事は住民投票実施の条例案を府議会に提出しなければならない。

しかし、吉村知事は6日の会見で「大阪のIRについては、公募をして事業者が決定しているし、府議会でも議論を行い、誘致することを議決している。住民投票を行う必要はないと考えているが、反対派の意見も聞いて進めていくことが重要だ」などと発言した。

都構想では、税金100億円を投入した住民投票を、2度も実施してきたくせに、カジノの是非には住民の声は必要なしと、いとも簡単に切り捨てるようとする大阪維新の態度に、「20万人」は黙っていないだろう。


◎[参考動画]【集まった署名“20万”筆】大阪・IR事業“カジノ”是非の住民投票求め署名を提出 吉村知事「今の時点で住民投票は必要ない」「依存症対策を正面から対応していく」(ABCテレビニュース 2022年6月6日)

◆嘘とはったりの大阪カジノ構想

吉村知事がいうように、大阪府は議会で可決した「区域整備計画」を4月、国に申請し、受理されている。しかし、それまでの経緯には、不透明かつ不当な問題が山積していた。筆者も、地元・西成区の受任者となり、署名活動を行ったり、桜田照雄・阪南大教授、原口剛・神戸大准教授を招いて学習会を行ってきた。2人の講師から、カジノの様々な問題点を学び、その場で受任者になった人も多かった。私の住む西成区で進む「西成特区構想」と同様、カジノ構想も、一部の維新に繋がる人たちなどが利権を貪る構想だとの思いが一層強まった。

松井市長は「カジノには税金を一切使いません」(2016年12月)、「事業者がお金を払って建ててくれる。府は家賃を貰うだけ」(20年10月23日)、吉村知事は「IRは民接民営事業なので、公でお金をだすものではない」(2021年7月21日)などと、「税金は一切使わない」としていたが、昨年12月、夢洲の土壌改良対策に約800億円の税金を投入することが判明、しかも、今後、液状化、地盤沈下対策費用は青天井に膨らむと予測されるのだ。

署名を開始した当初は「カジノ?」と、その計画すら知らない人が多かった。それだけ、こっそり進められてきたからだ。折り返し地点の4月25日、西成区民センタ─で開催された「受任者パワ─アップの集い」で、議会で計画を否決させた和歌山で署名活動を行った人たちから、「和歌山ではすぐにメディアが動いてくれたことが大きな勝因のひとつ」とお聞きし、メディアが全く動かない大阪では無理かもと悲観した。

「庶民のお金でカジノを呼ぶな」

しかし、その後事態は大きく動き出した。「あんたら、パチンコ屋にも反対せえや」などと言われ「いや、パチンコ屋はパチンコ業者が出資してますが、何故私らの税金使って博打場作るんですか?」となり、「税金使うんか?」「ええ、一人当たりにしたら約10万ですわ」「10万円だったら給付金に回して欲しいわ」などの声も上がった。

「秋には決まると吉村がテレビで言うてたで?」「決めるのは吉村ではない、国ですよ」。「海外の金持ちが来て、どーんと使ってくれるがな?」「ターゲットは日本人。しかも、世界中のビップ客を連れてくる『ジャンケット業者』は日本のカジノに入れません」「まあ、でもいつかは儲かるんやろ?」「ええ、黒字になるのは54年後ですが…」等々、あちこちで議論が深まった。

桜田教授が仰る通り、カジノ構想が具体性を帯びるなか、次々と湧き上がる疑問を解くうちに、誰の目にも嘘とはったりの大阪カジノはアカンとわかってきた。そして「カジノで大阪がつぶれる」がオ─バ─な表現でもハッタリでないことも。

西成の三角公園での炊き出しのあと、次から次へと署名する労働者

◆詭弁、すり替えで必死の吉村・松井に、更なるパンチを!

20万人の署名が集まったことを受けて、吉村知事はこう語った。「誘致するかどうかの住民投票をする必要はないと思いますが、反対派の意見を聞いて進めていくことが重要だと思っています。反対派の方の意見の中心的なところは依存症対策のところだと思います。なのでこの依存症対策について正面から対応していく」。

吉村知事のいうように、依存症対策は重要だ。1人の依存症患者の周囲には約6名の犠牲者が生まれるという。この依存症対策費用及び依存症患者が生む社会的損失の大きさを考えても、カジノは辞めるべきだ。しかも、決めるのは吉村知事、アンタではない、認可するかどうかを決める国(国土交通省)だ。

その国土交通省に、6月2日、「カジノに反対する大阪連絡会」のメンバ─らが、「カジノ誘致計画を認可するな」と申し入れを行った。「大阪のカジノ申請には住民合意がない」「認定計画の経済効果は過大ではないか」「ギャンブル依存症の発症2%だというカジノ事業者の発言は重大」「夢洲は集客施設を建設できる場所ではない」などの問題点を指摘したという。

同じ6月2日、署名活動の拠点となったタ─ネンビルで、担当者会議が行われた。筆者は、参加できなかったが、参加した仲間によれば、約2時間、20万筆署名を獲得した人たちの多くの意見が途切れることなく語られたうえで、今後の取り組みについて説明がなされたという。

「カジノ住民投票条例制定直接請求権署名運動」は「第2段階」に突入した。多くのメディアは、維新が多数を占める「府議会では否決される」と予測するが、「否決される」ではない、制定させるためにどうするかだ。

そのために、今後は、
①20万筆の住民投票を求める大阪府民の声を無駄にせず、必ず大阪府議会で条例案を可決させる運動、カジノ誘致を撤回させる運動を作っていこう!
②大阪府内72市区町村を結び府民が主体的に参加する、これまでの大阪にない新しい運動、新しく作り出した大阪府民のつながりをより強く、大きく発展させ、大阪府政、各自治体を包囲する大きな世論形成を進めていく、更なる府民参加を作り出そうなどが確認された。

そして参議院選挙公示前の6月19日(日)、中間総括を明らかにし、今後の方針を打ち出す「スタ─トアップ集会」(仮称)が予定されている。

日時・場所 6月19日(日)大阪市立生野区民ホ─ル(650名)13:00~15:00 
お問い合わせ カジノの是非は府民が決める住民投票をもとめる会
〒540-0012 大阪市中央区谷町2-3-1 タ─ネンビルNo.2・2階
(事務所開館は特別な場合を除き13時~18時)
電話:06-6585-0258 FAX:06-6585-0259

最終日5月25日、あべのキューズモール前署名ステーションでの決戦

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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