このままでは利用者家族も「詰み」に! 安倍さんよりひどい岸田さんの介護こわし オンラインおしゃべり会で反撃探る さとうしゅういち

2022年10月14日、筆者の主催でオンラインおしゃべり会「岸田政権と介護 『岸田圧勝』の衆院選1周年に検証する!」を開催させていただきました(要領は宣伝チラシの通り)。

岸田総理は2021年10月14日、衆議院を解散し、事実上衆院選2021がスタート。介護職員給料アップなどの政策もウケたこと、野党が自滅したこともあり、自民党は議席数の上では圧勝しました。それから1周年を記念したイベントでもあります。

ご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。

◆衆院選圧勝で野党批判弱め、再分配投げ捨て?の岸田さん

まず、岸田総理(写真)の地元有権者で介護福祉士・元広島県庁職員のわたしから、以下の提起をさせていただきました。

・衆院選2021で圧勝した岸田さんに対して野党や労働組合も批判を弱めてしまった。その結果、参院選2021も圧勝し、当初の再分配強化路線を投げ捨てているのではないか。

・給料アップは2022年2月から実施もたった3%であり、10月からは国費ではなく介護報酬からすることになり、利用者負担に上乗せされる。これは労働者と利用者の分断につながる。IT導入による人員基準緩和を岸田政権は検討しているが、夜勤など削減の余地ないと思う。

・本来、負担軽減にのみITは活用すべきだ。それなくして人員削減はさらなる介護崩壊になる。

◆危険すぎる2024年介護保険改定案

そして、岸田政権・財務省は以下の2024年へ向けて以下のような介護保険の改悪をしようとしている、とおさらいしました。そして、法案として提出される前に、政府に圧力をかけていく必要がある、と強調しました。

・利用者負担原則2割

※安倍政権の2014年に消費税増税も2015年に2割負担導入→2018年に3割負担も一部導入。保険事故に対して8割しか給付しない。これは保険として意味がなくなる。庶民はサービスを受けるなという意味。

・ケアプラン有料化

・要介護1と2訪問サービス・通所サービスの総合事業への移管

そして、そもそも、総合事業=サービス提供者の多様化=という大義名分はあるが少数の先進事例を除き、ほとんど実現していない。高邁なボランティア精神をお持ちの方がおられるのは素晴らしいことだが、全体には当てはまらない。結局単なる切り捨てになり、これらは結局介護の社会化を崩壊させる、と指摘しました。

大昔、介護=女性、とくに嫁の任務というジェンダーバイアスがありました。1990年代、樋口恵子さんらフェミニストらが中心となって介護の社会化を求め、それを体制側がうまく利用してつくったのが介護保険だったと指摘。だが、女性を中心とする介護労働者の犠牲の上にあるという問題がある、と指摘。

さらに、今度の改悪案でサービスも受けられなくなり、ヤングケアラー爆増法案になりかねないと危機感をあらわにしました。そして、コロナのもとで、負担がかかっているなかで、さらに負担がかかり、ご家族も「詰み」になってしまう、と指摘しました。

総合事業とは2015年の介護保険改定で導入され、2017年4月から全自治体でスタートし、要支援のサービスを介護保険からまず切り離しました。

多様なサービスを受けられるようにするというのが大義名分です。たしかに、世田谷区など、確かに総合事業の先進事例もあるにはあります。実際は多くの自治体でそうなっていません。それだけの力量のある自治体もないのが実情です。財源も人も減らされる中で難しいのです。

2024年の介護保険改定へ向けて財政審議会は要介護1と2の訪問介護や通所サービスも総合事業へ切り離そうとしています。しかし、要介護1と2の人ならではの介護する側も気を遣う面があるのです。また、人工透析などで訪問介護をたくさん利用せざるを得ない人もいます。地方自治体の財源や人員の充実もないままの介護保険からの切り離しは大惨事を招きかねません。

◆「子どもの味方」のつもりのシルバー民主主義批判がヤングケアラーを爆増させる笑劇

財務省や事実上の財務省政治部隊の維新が追い風として利用しているのがシルバー民主主義への批判です。このシルバー民主主義批判についても筆者は取り上げました。

そもそも、現状の日本が本当の意味でのシルバー民主主義なのでしょうか? なぜ、先進国でもずば抜けて多くの割合の高齢者が仕事をしているのか? その多くが年金不足を背景に仕事をしているのか? 筆者の同僚の介護職員でも結構、高齢者、それも後期高齢者もおられる。また、「チューブでぐるぐる巻きの高齢者が財政を圧迫している」論もあり、今でも健在です。

しかし、実はそんな人など、ほとんど筆者の勤務先の介護施設でもいません。食事が困難になったら看取りへ向かっていくのが普通です。しかし、「高齢者がみんなチューブでぐるぐる巻き」という誤解を悪用して、高齢者たたきを維新などはしてきた。高齢者予算を削って子どもを応援するふりをしているが、介護社会化崩壊でヤングケアラー爆増という笑劇になりかねないと斬りました。

そもそも介護保険料を取って事実上増税をし、消費税は社会保障のためと称して増税なのになぜ、こんな状況なのか? そして、そもそも、昔はヘルパーも公務員(東京特別区)や公社(広島市)だったのになぜ、今はこんな惨状なのか? そもそも公費の使われ方がおかしいのではないか? 当面は積極財政をしつつ、超大金持ち・超大手企業への課税再強化が必要ではないか?となどと、提起しました。

◆介護破壊・分断への危機感 参加者からのご意見

東京都のデイサービスや居宅介護支援事業所を経営する男性からは、「介護保険の2割負担や要介護1.2の介護保険の切り離しが強行されれば訪問サービスや通所サービスが崩壊してしまう」、と危機感をあらわにされました。

広島県東部の男性からは、「所得制限で児童手当を切られた人からは、5万円給付の多くが高齢者向けというニュースを見て、高齢者を憎んでしまうかもしれない。実際には高齢者も負担を増やされているのにも関わらずだ。まさに、政府は人々を分断しようとしているがそういう政府の思惑に乗ってはいけないと思う。」と感想。

千葉県の女性は、「要介護3の母親を在宅で介護しています。認知症はないとのことですが、デイサービス(通所介護)やショートステイを利用しています。現在でも、働かずに母親を介護しており、家計は苦しい状況です。」「現状でも、デイサービスやショートステイの費用は高すぎると感じる。」と訴えます。「もし、この負担増が強行されたら?」との質問に対して、「考えたくない。」とおっしゃいました。

◆介護サービスの質に現状でも不安の声

また、ショートステイに母親を預けているが、母親から、「ショートステイの職員からきつい言葉をかけられた。」と電話をもらうとのこと。「給料が低くて、人も少なく大変なのだろうけど、これでは安心して預けられない。」と不安を述べられました。

これに対してわたしからは「正直、きつい声掛けをする職員も見ていて少なくない。肝を冷やすこともままある。」と現場職員として報告。

この女性は、「介護サービスを利用する人の家族同士のネットワークがほしい。そういう団体を紹介してほしいが、ケアマネに聞いても『ない』と言われる。どうなっているのだ?」とおっしゃいます。

◆金儲けの原理に介護を置くこと自体が無理

これに対して、わたしは、「ケアマネも精一杯の状況だ。全部が全部とは言わないが、グループ企業のサービスを受けさせることが精いっぱいで、利用者や家族にとって何がいいかということは忘れさせられている。わたしが目撃した同僚のケアマネの中でも利用者や家族のことを考えているケアマネは経営者に嫌がらせをされて、中にはお坊さんに転職した例も見ている。」と回想。

「そもそも、今の仕組みでは、経営者もそうせざるを得ないというのはある。経営者、ケアマネ、そして利用者・ご家族が国や経団連によってバラバラされているともいえる。」

「金儲けの原理に介護を置くことに無理がある。ケアマネを金儲けの原理の仕組みに置いたままにするのではなく、例えば公務員にすべきではないのか?」などと提起しました。

◆分断食い止めるため、再度原理原則の共有化を

広島県の病院職員の男性からは「介護の社会化と言われていたが、実際はサービス化にしかなっていない。また、介護利用者・家族、介護経営者、介護労働者でもあまり統一した方向性が共有されず分断されているのではないか?」との提起をいただきました。

わたしからは「今回の岸田政権・財務省による改悪案を止めさせることはもちろん大事。だが、間違った選択をずっと(日本は)してきた。その結果、分断が進んできた。その間違ったところへ戻って検証すべきではないのか? 介護保険そのものがどんどん改悪されてきたと同時に、そもそも、消費税増税を社会保障に全額使うという約束も守られていないし、さらに戻れば、介護保険料を取ってサービスを減らされるとはどういうことかということだ。昔は訪問介護を公務員や公社でやっていた。それが介護保険導入で民間になったが、本当にそれでよかったのか? そういうことも含めて介護の社会化の原理原則に立って検証すべきだ。また、介護の社会化がなぜ必要か、きちんと共有化していくことが大事ではないか。」と応じました。

また、大阪府の社民党員の男性からは、「分断されないように労働組合に入ろう、という呼びかけも街宣でしている。」と分断を防ぐための労働組合の役割についての提起もいただきました。

◆都道府県から国に声を!リアルでもネット署名の宣伝を

今後については、わたしから、「まず、緊急に都道府県議会や都道府県知事に、今回の岸田政権による介護壊し案をやめさせるよう、国に声を上げてもらう要望活動も大事ではないか? 切羽詰まった皆様の声を都道府県に上げよう。市町村だとなかなか国にモノ申すのは難しいが都道府県なら市町村よりは国にモノ申しやすい。」

「例えば、介護をする家族を応援する条例をつくっている県もある。そういう所に対しては今回の介護保険改悪の政府の目論見が貴県の政策を台無しにしてしまう、という説得の仕方もしていくべきだとおもう。県民の命を守る立場に立つよう求めていこう。」との提起させていただきました。

その上で、当面の取り組みとして、公益社団法人 認知症の人と家族の会様が取り組んでおられるネット署名に協力して、世論を高めていくことを呼びかけました。
そして、街宣などでも、この署名への協力を呼び掛けるチラシをつくって配ることなども提起させていただきました。今後、ご協力をよろしくお願いいたします。

キャンペーン・介護保険:負担が2倍で使えない!~原則自己負担2割化、ケアプラン作成の有料化、要介護1と2の保険外しなど負担増に反対します~ ・ Change.org https://chng.it/fCfk6kZFQj

〈要望項目〉

・介護保険の自己負担を原則2割負担にしないこと

・要介護1・2の訪問介護・通所介護を地域支援事業に移行しないこと

・ケアマネジメントの利用者負担導入(ケアプラン作成の有料化)をしないこと

・介護老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院の多床室(相部屋)室料負担を新設しないこと

また毎週金曜日の以下の時間は当面、この介護保険改悪をやめさせるとともに、社会化という本来のあるべき姿にしていくということを課題の中心としておしゃべり会をさせていただきます。

よろしくお願いいたします。
20時~
ミーティングID: 411 718 3285
パスコード: 5N6b38

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2022年11月号
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌 『季節』2022年秋号(NO NUKES voice改題 通巻33号)