筆者は2000年から2011年までは広島県庁の職員として勤務し、現在は広島市と安芸郡の民間の介護施設計二か所で介護福祉士として働いています。

しかし、自治体の介護保険制度のもとで働く公務関係の労働者ということで、広島県内の自治体労働者の皆様と同じ地域産別組合加盟の労働組合に参加しています。

そして、先日の定期大会でその地域産別組合の執行委員を拝命いたしました。この産別組合(広島自治労連)は全労連系の組合です。世間一般では共産党系とも言われますが、筆者自身はこれまでも何度もご紹介している通り、れいわ新選組のオーナーズ会員であり、共産党支持者ではありません。ただ、県内でそれなりに労働者のためにたたかう組合でなおかつそれなりの勢力があるということでこの組合を選ばせていただいています。

筆者は県庁職員時代には連合加盟の「自治労」広島県職員連合労組で長きにわたり、支部役員をさせていただきました。連合と全労連、両方で役員というのは、おそらくほかにも例を見ない「珍記録」と思いますが、所属組織に関係なく、その場所で、自分の良心に従い、しっかり活動をさせていただきたいとおもいます。

◆筆者も思い切って発言

さて、先日、その広島自治労連の定期大会がありました。この大会でわたしも役員を拝命することになりました。

皆様もご経験と思いますが、世間にはいろいろな団体の総会や大会があります。通常、まず執行部から前年度の活動報告、決算報告・監査報告、質疑応答、そして今年度の活動方針案、予算案の提案、そして質疑応答というのが流れです。今回の大会ももちろん、その通りの流れです。ただ、連合系労組時代はほとんど討論らしい討論もなく、筆者が一人で発言などと言うこともよくありました。孤立を恐れる筆者ではありませんが、とはいえ、発言にはエネルギーもいります。

筆者も、最初は皆さんの発言・討論を伺って勉強のつもりでした。とくに、女性の非正規公務員、自治体関係公益法人の職員の皆様の痛切な現状報告や、いきいきと意見を述べられている様子に触発され、思い切って挙手して発言機会を求めました。
県庁時代と現在の介護現場時代の経験を踏まえ発言させていただきました。

まず、最初に「わたしは、広島県庁職員だった時代には連合系自治労の支部役員をさせていただいた。大会などでは、女性の参加者も少なく、発言もほとんどなかった。それとくらべるとこちら(自治労連)は女性の発言者の方が多く、生き生きと発言されているのに感激した。」とまず感想を述べさせていただきました。

その上で、「広島県の前知事(藤田雄山、故人)はわたしが県庁職員だった時代に86あった市町村を23に減らすという市町村合併を強行した。県は市町に権限を委譲したという理由で、市町は合併して効率化したという理由で職員の総数を合併前より減らしまくった。わたしの在職中はまだ大阪維新は存在しなかった。しかし、広島県は実は、維新でさえもここまではしないひどい新自由主義だった。」と回想。

「しかし多くの県民が気づいていない。きちんと労組が先頭に立って世論に訴えるべきだと感じた。」と指摘。

その上で、「岸田さんの介護労働者賃上げは全く不十分である、安倍さんはコロナで5万円くれたけど我が施設は岸田さんになってからクラスター二度発生もなんの手当もない。賃上げも他業界も一応給料アップの中焼け石に水だ。」と指摘しました。

そして、「なかなか、組合に入ってもらうのは難しいが、例えば『公務員は給料が高すぎる』という民間労働者の仲間がいれば、『いやいや。俺らの給料を公務員並みに引き上げていくのが大事じゃないかな』とやんわりいうなど、地味なところからでも取り組んでいる。一緒にがんばろう」と呼びかけました。

◆欠員相次ぎ、非正規で穴埋め常態化──女性が多い職場から危機感

さて、この筆者の発言と前後して、県内各職場からは「人が足りない」という報告のオンパレードでした。そして、欠員は非正規で埋めるということが常態化している状況が報告されました。

そして、非正規なのに重責を負わされる実態が全部の自治体や公益法人共通でありました。特にある自治体の給食調理員はなんと8割が非正規だそうです。コロナで休む人が多く出る中で、綱渡り状態で業務を回しているとのことです。

特に女性が多い職場が狙い撃ちにされてそうなっていることがよく浮かび上がりました。

◆市町村合併→公務員数削減による惨状の報告

また、筆者が県庁職員だった時代に目撃した市町村合併後、職員が減らされた上に仕事は県から押し付けられてから15年余りたっています。筆者が当時、懸念した通り、その悪影響が今出ており、市町は惨状を呈しています。

病気や死亡などで退職が相次ぐのに補充されない自治体。給料水準が十分でないため、県や他県の自治体に受験者が流れてしまっているそうです。

別の山間部の自治体では、職員の2割が精神疾患で仕事をしながら療養中という惨状です。その自治体では病気になって本庁で勤務が難しくなった人を支所に回しているそうです。その結果、支所が療養中の人であふれ、業務に支障をきたしています。

◆大阪維新真っ青の広島の新自由主義、十数年たってつけ噴出

まさに、広島県の前知事・藤田雄山(故人)が総務省いいなりで進めた大阪維新の会も真っ青な新自由主義。そのつけが十数年たって噴出していることを痛感しました。

そして、その状態を現知事の湯崎英彦さんも、その湯崎さんを推薦する自民、公明や立憲民主党、連合など国政野党や大手労組も是正しようとしていません。さもなければ、こんな惨状にはなっていないでしょう。

2004年の合併で1市3町3村が1市になった三次市。衰退は加速する一方、公務労働者への負担は過重に。筆者撮影

筆者も、参院選再選挙2021や参院選2022で特に合併が大きく進んだ(その結果公務員も大幅に減った)地域を遊説し、その衰退ぶりに改めて憤りをおぼえているところです。

もはや、「ガツン!」という勢いで公務員を正規で増やすくらいの覚悟がないと、医療、福祉、防災、教育などあらゆる分野で県民の安全、安心も守れないし、地域の衰退も加速するだけだ、と改めて痛感しました。

2021年秋に発足したデジタル庁の進める行政のデジタル化もどんどん県民のニーズが複雑化する中で、業務を効率化して負担を軽減するならいいのですが、そうではなく、「行政職員数の半減」に悪用されたら大変です。これはIT導入による職員削減を岸田政権がもくろんでいる介護現場においても共通の課題です。IT化で負担は軽減しつつ、すでに少なすぎる公務員は正規で補充し、行政ニーズの多様化に対応する。これが当面、あるべき方向ではないでしょうか?

筆者は、政治活動と労働運動、車の両輪で新自由主義に対抗していく決意を新たにしました。基本的に、どこに属しようが筆者自身の主張や姿勢に大きな変更はなく(もちろん、時代に合わせてアップデートはしますが)、与えられた場所で頑張るだけです。

公務員を引き下ろしてスカッとするのではなく、労働者全体を底上げし、せめて正規公務員並みに、ということです。

民間の立場からいわれのない公務員バッシングには反撃します。官民を超えた労働者同士での「集団的自衛権」の行使は積極的に行います。

逆に公務員の皆様におかれても、介護、保育、医療を含む民間の労働者の待遇改善にもご協力いただけるよう伏してお願い申し上げる次第です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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