筆者の元職場・広島県庁を「文春砲」が直撃した平川理恵・県教育長による官製談合疑惑。このたび、県教委が依頼した第三者の弁護士らの調査結果が出ました。教育長のご親友が運営されている京都府のNPO法人「パンゲア」との契約について、2件について地方自治法違反、官製談合防止法違反があった、という結果になりました。12月6日、平川教育長がこれを受け、「再発防止に努めたい」と県議会委員会で陳謝しました。


◎[参考動画]県の事業が官製談合の疑い 教育長の知り合いのNPO法人(広島ホームテレビ)

しかし、筆者は、教育長にこう申し上げたい。

「あなたが主導しての法律違反が明らかになった以上、腹を切る(辞任する)のが当然ではないでしょうか?さもなければ、教員も職員も、法令遵守も公務員倫理を守ることもばかばかしくなってしまいますよ。」

知事の湯崎英彦さんにもこう申し上げます。

「湯崎さん。こんな教育長をなんとかしないなら、あなたには、知事部局の職員を指導する資格もない。」

県議会の自民、公明、立憲、国民のいわゆるオール与党の議員にも申し上げたい。

「あなた方がずっと知事与党の姿勢をとってきたことで、教育長も図に乗ってこのようなことになったのではないのか? 行政監視という議会の機能を果たすつもりがないなら、そこをおどきなさい。」

◆これまでの経緯と調査結果の概要

2022年8月。まず、週刊文春が二度にわたって、平川教育長とパンゲアの理事長が一緒に会食をするなど親密だったこと、女子高生のホームページ作成指導を同法人に委託していたことなどを暴露。「官製談合」ではないか、と指摘しました。

当初、教育長は「問題はない」と開き直っておられましたが、世論の批判を受けてさすがに内部調査を行いました。その結果、パンゲアが2020~22年度に受注した6事業計2645万円のうち複数の事業で入札公告前に予算額や事業内容をパンゲア側と県教委職員がやりとりするメールが発見されています。そして、強調しなければいけないのは、県教委の職員に対して、平川教育長はご自身の意向を押し通すような方だったことです。もちろん、そうした個性の強さが、忖度しなければ大変なことになったということは容易に想像できます。

結局、教育長は外部の弁護士に調査を委託。二か月以上たった今、結果が明らかになったのです。

今回の調査結果では2021年9月に契約した高校の枠を超えた生徒の探究活動についての事業が官製談合防止法違反や地方自治法違反と認定されました。県教委は入札前に、パンゲアとの契約を前提に各県立高の校長に生徒募集を求めるなどしたのです。

また、2020年9月に契約したグローバル人材の育成を目指す事業も地方自治法違反とされました。県教委は委託先の比較検討をせずに随意契約していました。

◆仕事熱心でも公務員向きではない教育長

公務員はいうまでもなく、全体の奉仕者でなければなりません。そのことは、本当に大変なことなのです。

教育長が仕事熱心なのは認めます。広島に限らず、日本の教育の在り方がいろいろと、アップデートが必要なのも事実でしょう。特に広島の行政というのは古いというのは、筆者自身、県庁職員でしたから熟知しています。

しかし、だからといって、民間時代の感覚と同じことを公務員になってからもやってしまうと、それは公務員として相応しくないこと、場合によっては今回のような違法になることもあるのです。平川教育長に申し上げたい。以上のことがお分かりになれないなら、公務員をされないことです。民間で頑張ってください、としか申し上げようがありません。

◆公務員倫理規程・規範はなぜ必要か

筆者自身も、現役の県庁職員時代、男女共同参画を軸にボランティア活動をプライベートでさせていただいていました。

その時の上司は、「お前、相手は、お前の肩書に近づいているのではないのか?気を付けたまえ。」とご忠告くださっていました。

「俺は純粋な気持ちで正しいと思うことをやっている。何を硬いことを言っているのだ。この人は。」と筆者は反発したものです。

しかし、あることで、上司の忠告に納得しました。忠告からほどなく、当時筆者が男女共同参画のある分野で心酔していた県外のある方が、セカンドレイプになりかねないご発言という形で馬脚を現したのです。もし彼女に何か、あのまま、県関係のイベントの講師などお願いしていたら筆者は大恥をかいたでしょう。

平川教育長のケースと違い、事業を委託するわけではないが、あのまま人権教育系の講師を彼女にお願いしていたらヤバかった、と今でも冷や汗が出ます。

熱意は大事だが、一方で、慎重に行動する必要があるのです。そのために、公務員には倫理規程、要綱、あるいは大臣なら大臣規範などがあるのです(所属する組織により名称は多少異なるが趣旨は一緒)。 これらは熱意の暴走、あるいは、誤った方向での熱意を防ぐ効果もあるのです。

◆トップは倫理を守って当然だから規程がないだけ

こうした公務員倫理に伴う規程や要綱は広島県の場合、教育長など特別職にはない。国の場合、故・安倍晋三さんのような総理大臣には大臣規範は適用されません。

しかし、それは、トップが公務員倫理を先頭に立って守るのは、言わずもがなだからです。

逆に言えば、トップは倫理が守れないなら、退陣しか選択はありません。倫理どころか法律を破った今、教育長が取るべき道は、退陣しかありません。そして、検察や警察にきちんとしらべてもらうことです。刑事や民事の責任を取らないで逃げてはいけません。

◆脚光浴びた「新しさ」、本質は「新自由主義」

さて、平川教育長に期待された県民も多いのも事実です。筆者も、広島県で初の女性教育長ということもあり、全く期待しなかったと言えばうそになります。筆者でさえそうですからマスコミは言うに及びません。NHKも含めて教育長を持ち上げまくっていた時代がありました。

だが、就任から4年余り。彼女の本質は新自由主義であることは明らかではないでしょうか?例えば非正規の教員の問題です。広島県内には県教委管轄で1000人以上の臨時採用の教員がいます。しかし、1000人以上もいて臨時というのも異常です。ある保守系の県議も見かねて、正規で採用するよう求めたのですが、教育長側の答弁は「予算がない」でした。

ところが、グローバルエリートを育てるという中高一貫の広島叡智学園新設には、69億円も投入したのです。足元の問題は放置して、エリートに公教育の資源を振り向ける。これを新自由主義と言わずしてなんというのか?

また、2023年春から、県立高校のいわゆる推薦入試がなくなり、3月実施のものに一本化されます。これだと、滑り止めに私立高校を2月に受けざるをえなくなる人も増えます。その分、受験料などの負担も増えます。また、その入試ですが、プレゼンテーションを重視するという。この類のものは、学科の勉強よりも貧富の差に左右されやすいと言われています。結局、金をかけて対策をやる裕福な家庭の子が有利になるのです。これも新自由主義的と言えば新自由主義です。もちろん、日本人は、自己主張が下手というのは一般的には言われている。ただ、官民問わず、上に忖度させるような風通しの悪い職場風土は相変わらずです。などを放置して、昔に比べても労働組合なども弱くなっている。そういう社会で学校時代だけプレゼンテーションをやらせてもどれほどの効果があるのでしょうか?大変疑問です。権威主義的な大人社会の改革とセットでやらないと意味がないでしょう。

このように、平川教育長には、教育行政の中身にも問題は多いのです。

さらに言えば、先日は、平川教育長が、100km以上離れた福山市までタクシーで移動していたという信じられないニュースもありました。福山であれば広島から新幹線で30分弱ですし、低コストです。タクシー利用は意味不明です。

◆検察・警察は捜査、議会は百条委員会で徹底追及を

繰り返します。平川教育長は退陣あるのみです。そして、検察や警察にもきちんと調べてもらうことです。県議会は100条委員会等で徹底究明することです。さもなければ、大げさな話ではなく、県行政は崩壊してしまいます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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