注目のタイトルマッチは浅井春香が引分けで2度目の防衛。

◎GODDESS OF VICTORY / 3月26日(日)GENスポーツパレス 16:30~19:56
主催:エスジム、ミネルヴァ実行委員会 / 認定:NJKF

接近戦では浅井春香が首相撲からヒザ蹴りやパンチがヒット

岩上哲明記者試合レポート(一部編集含む)

◆第13試合 女子(ミネルヴァ)スーパーバンタム級タイトルマッチ3回戦

選手権者.浅井春香(Kick Box/ 55.2kg)
        vs
挑戦者5位.MARIA(PCK大崎/TeamRing/ 55.0kg) 
引分け 0-1
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:多賀谷28-30. 竹村29-29. 井川29-29

試合前、MARIAは「絶対に勝ちます。シンプルイズベスト!」と王座奪取への熱い気持ちをコメント。

試合は第1ラウンド中盤から挑戦者MARIAのストレートパンチがヒットをしたのを切っ掛けに動き出す。チャンピオン浅井春香も返しのパンチや首相撲に持ち込むと、MARIAは首を捻られ一瞬苦痛の表情が出たが難無く攻勢を仕掛ける。

第2ラウンドもMARIAは重いパンチに浅井は首相撲からのヒザ蹴りで勢いを止めに掛かる。浅井のセコンド陣から「打ち合いに行け!」と指示が出てもMARIAのパンチに警戒しているせいか、打ち合いに持ち込めない。

第3ラウンド、浅井はMARIAのパンチを打たせないように首相撲を仕掛けるが、MARIAは掻い潜ってストレートを炸裂。浅井はクリンチに逃げ、最後はお互い首相撲からのヒザ蹴りを仕掛け合って終了。浅井は2連続引分け防衛。

パンチで打ち合う圧力はMARIAが上回った

試合後、浅井春香は「こんなものです、すみません!」と反省の弁を述べながらも、再戦があるならば「次はスッキリ勝ちます!」と語り、セコンドに付いていた鴇稔之会長から、「浅井は肩を痛めていて本調子ではなく、よくドローに持ち込んだ。」と健闘を称えていた。

一方のMARIAは奪取できなかった悔しさを見せながらも再戦必至と考えており、「次は絶対勝ちます!」と互いが必勝を誓っていた。

引分け防衛の浅井春香と王座奪取成らずのMARIA、明暗分かれた瞬間

◆女子フェザー級3回戦(2分制)KAEDEの2.75kgオーバーで中止

ミネルヴァ・スーパーバンタム級1位.KAEDE(LEGEND/ 59.9kg)
        vs
同級9位.寺西美緒(GET OVER/ 56.9kg)

中島稔倫会長は「寺西が試合出来ないのは残念です。今日はメインイベント出場の両選手を研究すると思います。」とコメント、寺西選手は「どちらかの選手に早いうちに挑戦することになると思います。そして王者になります!」と前向きなコメントだった。

◆第12試合 女子54.5kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級2位.IMARI(LEGEND/ 53.4kg)
        vs
NAO・YK(YK/ 53.5kg)
勝者:IMARI / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:中山30-28. 竹村30-28. 井川29-28

当初の高橋アリスに代わり、引退するIMARIの対戦相手となったNAO・YK。初回、IMARIは左右のパンチを決め、NAOは首相撲で優位に立とうと圧力を掛ける。

第2ラウンドにはIMARIのパンチに対し、NAOもミドルキック、首相撲で自分の流れを掴もうとするが、IMARIが首相撲でも優位に立つ展開。

最終第3ラウンド、IMARIの左右のストレートからのミドルキックが決まるなど優勢が続く。NAOは首相撲や蹴りで対抗するも、IMARIの攻勢を崩せず終了。

IMARIの左ミドルキックがヒット、攻勢を維持してラストファイトを勝利で飾る

試合後はIMARIの引退セレモニーが行われ、マイクで感謝の言葉を述べた後、10カウントゴングが鳴り響いた。IMARIは涙ぐむ表情を見せながらも最後は笑顔でリングを下りた。「いい試合でしたよ。」と声をかけると、「ありがとうございます!」と笑顔で明るく返事をしていた。スッキリした表情だった。

引退セレモニーでの挨拶で次第に涙ぐみながら仲間へ感謝を述べたIMARI

◆第11試合 女子ピン級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ピン級4位.世莉JSK(治政館/ 44.85kg)vs 同級5位.斎藤千種(白山/ 45.25kg)
勝者:斎藤千種 / 判定0-2
主審:センチャイ・トーンクライセーン
副審:中山28-30. 多賀谷28-30. 井川29-29

昨年10月16日、斎藤千種の左ストレート貰った世莉がバランス崩してマットにヒザを着いたところへ斎藤のヒザ蹴りが顔面に入り、世莉JSKは試合続行不可能。当初の斎藤千種のTKO勝利は後日、反則打として失格負けと変更。世莉JSKの反則勝ちとなっていた。

再戦となった今回、初回から両者はパンチを繰り出していく。世莉JSKはやや動きが鈍く、斉藤千種が優勢な展開。第2ラウンドも斉藤の攻勢は続くが、世莉は打ち合いに応じるも、斉藤の左右の伸びがあるミドルキックに苦戦。

最終第3ラウンド、世莉はミドルキックで斉藤を追い込めそうな状況も流れを活かせず、斉藤はミドルキックとパンチで世莉の反撃を防ぎながら攻勢を仕掛けるも試合終了。

試合後、世莉は悔し涙を流していた。セコンドに就いた祥子JSKからは、「世莉は前に行くことが出来なかった。まだ十代ですし、今が底でこれから上がるだけ!」と気持ちを切り替えた様子。友人と会話をして落ち着いた世莉選手に労いの言葉をかけると「ありがとうございます!」と応えてくれた。

斎藤千種のハイキックがヒット、再戦は慎重に攻めて判定勝利を掴む

◆第10試合 女子ライトフライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・ライトフライ級6位.紗耶香(格闘技スタジオBLOOM/ 49.1→48.98kg)
        vs
YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/ 48.8kg)
引分け 1-0
主審:竹村光一
副審:センチャイ29-29. 多賀谷29-29. 井川30-29

初回、紗耶香は得意のパンチで主導権を握りにかかる。YORIKOは組んでヒザ蹴りで出ると、紗耶香も合わせていく展開。

第2ラウンドも紗耶香がパンチで仕掛け、YURIKOは首相撲からのヒザ蹴りで打開しようとするが、紗耶香のパンチの猛攻を防げず、ラウンド終了間際に紗耶香の右ストレートで尻餅をつくがゴングに救われた。

最終第3ラウンド、YORIKOはミドルキックと首相撲でのヒザ蹴りを主体に攻撃の数を増やしていく。紗耶香はパンチ主体で終始進めていくが、YURIKOの蹴りが的確に決まり、勢いが止まることがしばしば。最後は両者共に首相撲からのヒザ蹴りで終了。

紗耶香とYURIKOのパンチの交錯、パンチではやや紗耶香が優った

◆第9試合 女子46.0kg契約3回戦(2分制)

上真(ROAD MMA/ 45.8kg)vs AZU(DANGER/ 46.0kg)
勝者:上真 / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-28)

◆第8試合 女子44.0kg契約3回戦(2分制)

AIKO(AX/ 43.55kg)vs Honoka(健心塾/ 43.55kg)
勝者:AIKO / 判定2-1(28-29. 30-29. 30-29)

◆第7試合 女子46.5kg契約3回戦(2分制)

ねこ太(とらの子レスリングクラブ/ 46.3kg)vs aimi-(DANGER/ 45.7kg)
勝者:ねこ太 / 判定2-0(29-29. 30-29. 30-29)

◆第6試合 女子フェザー級3回戦(2分制)

小倉えりか(DAIKEN THREE TREE/ 57.0kg)vs 谷岡菜穂子(GRABS/ 56.9kg)
勝者:小倉えりか / TKO 1R 1:42

静かな展開でスタート。互いに牽制しあう攻防の中で、小倉えりかのローキックを谷岡菜穂子はブロックする際、左膝の内側で受け、バランスを崩しそのまま倒れレフェリーストップ。谷岡はそのまま担架で運ばれた。小倉のローキックをカットした際に、左膝内側付近が陥没した様子。

小倉は試合前からリラックスしていた。セコンドは「勝算はある。必ず勝つ。」と強いコメントがあった。

試合後に小倉からは「勝ちは勝ち。フェザー級でもぜひS-1トーナメントを開催して欲しいです!」と熱望。小倉えりかの言葉には、フェザー級、そして女子キックボクシングを盛り上げたいという熱い気持ちが伝わっていた。

アクシデント的ながら小倉えりかがTKO勝利、谷岡菜穂子は左膝負傷で立てず

◆第5試合 S-1女子48.0kg契約3回戦(2分制)

Marina(健心塾/ 47.5kg)vs Nao(AX/ 47.6kg)
勝者:Nao / 判定0-3(28-30. 27-30. 27-30)

◆第4試合 マチュア女子52.0kg契約2回戦(2分制)

堀田優月(闘神塾/ 50.0kg)vs 松田沙和奈(拳之会/ 50.9kg)
勝者:堀田優月 / KO 1R 0:33

堀田優月は、開始早々にパンチで猛攻、松田沙和奈も返していくが、堀田は左ストレートを決めノックダウンを奪う。松田は立ち上がり反撃するも、再び左ストレートでノックダウンを喫し2ノックダウン制による堀田のノックアウト勝利。
試合後、堀田選手は嬉しそうな顔で「ありがとうございます。爽快でした!」と語り、堀田選手のお父さんも「まだ中学生ですけど!」と話しながらも勝利に喜びの様子だった。

左ストレートで2度のノックダウンを奪って快勝した堀田優月

◆第3試合 女子フライ級3回戦(2分制)

MIKU(K-CRONY/ 50.7kg)vs HIMEKA(LEGEND/ 50.7kg)
勝者:HIMEKA / 判定0-3(28-30. 29-30. 28-30)

◆第2試合 女子スーパーフライ級3回戦(2分制)

響子JSK(治政館/ 52.1kg/6oz)vs 珠璃(闘神塾/ 54.1→53.45kg/8oz)
引分け 0-1(28-28. 28-28. 27-28/珠璃が1.29kgオーバーで減点2含む、グローブハンディー有)

終始、珠璃がパンチで押し気味な展開。響子JSKは蹴りや首相撲で流れを変えようとするが上手くいかず。ドローで終了。

響子は「相手の減点があったから引き分けだったけど、勝たなくてはいけない試合だった。」と反省のコメントを述べていた。

珠璃は押し気味の展開も減点があって引分け、響子は蹴りで出るも優れず

◆プロ第1試合 女子40.0kg契約3回戦(2分制)

沙緒里(ワイルドシーサー前橋関根/ 40.0kg)vs 江口紗季(笹羅/ 36.7kg)
勝者:江口紗季 / 判定0-3(27-30. 27-30. 28-30)

他、プロ試合前にオープニングファイト アマチュア女子4試合有

《岩上哲明取材観戦記》

今回の興行は、第1試合から最終メインイベントまで全選手、関係者全員が興行を成功させようという強い気持ちが感じられました。メインイベントのミネルヴァ・スーパーバンタム級タイトルマッチはドローになりましたが、再戦を観たいという気持ちになり、IMARU選手の引退試合は寂しさより、「第二の人生」を応援したくなるような感情になり、ピン級のランキング戦では再戦の上、先週のジャパンキックボクシング協会興行で新王者になった撫子選手の刺激を受けたのか、両者から勝利への意気込みが伝わってきました。

アマチュア試合の堀田選手はプロ本戦の興行でもなかなか観れない鮮やかなノックアウト決着で会場を沸かせました。

興行が盛り上がるための要因の一つである「ドラマ」が各々の試合に出ていたのは良かったと思います。この興行にはNJKFのランカーであるTAKUYA選手や名古屋のGETOVERのTAKERU選手など多くの男子選手が来場していて、セコンド業務などをこなしながら何かを得ていったことでしょう。

《堀田春樹取材戦記》

浅井春香は2回連続の引分け防衛。昨年5月の初防衛では、鴇稔之会長からの教訓「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」と語った浅井春香。名門・目黒ジムから引き継がれた教えは、勝利での完全防衛の仕切り直しへ再度持ち越された感じです。

しかし、タイトルマッチで3回戦は差が付き難く、女子でも5回戦が必要とも思えました。

しかしプロボクシングでも女子は2分制で、日本タイトル戦でも6回戦とかなり短めで、打撃格闘技においては安全面の考慮がまだ未知数で難しいようでもあります。

前回記事で、次回ジャパンキックボクシング協会(JKA)興行は5月14日(日)市原臨海体育館と書きましたが、正しくは一週遅れの5月21日(日)に市原臨海体育館で開催されます。大変失礼致しました。

当初、5月14日の開催予定だった武田幸三氏の「CHALLENGER」5月興行は中止となっています。

ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)本興行は当初の予定どおり4月16日(日)に後楽園ホールに於いて「NJKF 2023.2nd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2023年4月号

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