岩浪悠弥が志賀将大を倒してフライ級、スーパーバンタム級に次ぐ三階級目を制覇。
IBFムエタイ世界王座奪還目指す波賀宙也は、不運なダメージで判定負け。
前田浩喜があっけなく倒される誤算。勝者・鎌田政興はNKBの存在感を示した。
東京町田金子ジムが閉鎖で金子修会長に功労顕彰の表彰。昭和から続いた名門がまた一つ消える。

◎NJKF 2023 2nd / 4月16日(日)後楽園ホール17:30~20:15
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / NJKF、WBCムエタイ日本協会

※試合レポートは岩上哲明記者

◆第8試合 第8代WBCムエタイ日本バンタム級王座決定戦 5回戦

志賀将大(エス/53.35kg/1993.2.20福島県出身)19戦14勝(4KO)4敗1分
         VS
岩浪悠弥(橋本/ 53.5kg/1998.1.6東京都出身)34戦22勝(4KO)10敗2分
勝者:岩浪悠弥(王座獲得) / KO 2R 2:59
主審:竹村光一 / チェアマン:中山宏美

(志賀将大はNJKFバンタム級とWKBA日本バンタム級チャンピオン)
(岩浪悠弥は元・WBCムエタイ日本フライ級とスーパーバンタム級二階級制覇)

前日計量で志賀将大選手から「2月のタイトルマッチ(WKBA日本)は相手がノラリクラリ躱(かわ)したこともあり不完全燃焼だった。今回は下馬評では橋本選手と言われているようですが団体の対抗戦ということもありスッキリ勝ちたい。」とコメント。

一方の岩浪悠弥選手は「三階級制覇が懸っており気合いが入っています。団体(JKイノベーション)の代表選手ということもあり、勝ちに拘ります。」とコメント。

初回は両者ともローキック中心の牽制で探り合いの展開。

第2ラウンド、志賀将大は前に出ながら蹴りから首相撲を仕掛ける。岩波悠弥も応戦し互角の展開で進んだところ、岩波悠弥の左ハイキックが志賀の顎にヒットし、志賀は動きが止まってしまう。そのダメージから回復させないように岩波はパンチ連打し、右フックでノックダウンを奪う。

勝負の運命を分けた岩浪悠弥の左ハイキックが志賀将大の顎にヒット

志賀は立ち上がるも、岩波のパンチ連打にロープ際に追い込まれ、腰が落ちたところに岩浪の右ミドルキックを顔面に貰い2度目のノックダウン。懸命に立ち上がろうとするも、カウント中にファイティングポーズがとれず、岩波悠弥のKO勝利となった。

ダメージ大きい志賀将大を追って攻める岩浪悠弥

試合後、岩浪悠弥選手は三階級制覇達成の興奮のせいか試合中の緊張感を残したまま、祝福の声に「有難うございます。」とコメント。敗れた志賀選手はセコンド陣と話をしながら、「纏まりが無く雑になった。ダウンを取られるとは思わなかった。」とコメントしながらも敗戦を分析し、「次回に繋げます。」と前向きなコメントだった。

三階級制覇した岩浪悠弥が挨拶、陣営が見守る

◆第7試合 57.0kg契約3回戦

波賀宙也(立川KBA/ 57.05→57.0kg/1989.11.20東京都出身)45戦27勝(4KO)14敗4分
      VS
コンコム・レンジャージム(タイ/ 56.9kg/1988.6.29イサーン地方出身)
勝者:コンコム・レンジャージム / 判定0-3
主審:少白竜
副審:椎名27-29. 竹村27-29. 多賀谷28-29

(波賀宙也は前・IBFムエタイ世界Jrフェザー級チャンピオン)

初回、波賀宙也はミドルキック主体でペースを掴もうとするが、コンコムは組むことで体格差を無くしながら躱(かわ)していく展開。

第2ラウンド、波賀はローキックを中心に切り替えていくが、コンコムは首相撲に持ち込み、上手く波賀の攻撃を躱していく。会場から「上手いなあ!」とコンコムの躱す技術を褒める声が上がった。波賀は逃れようと右ボディーにパンチを決めるが続かず、逆に転ばされてしまう。

第3ラウンド、コンコムの上手さに翻弄されている波賀はカウンターのヒジ打ちを決めるも単発で終わる。流れで組んでしまった際に、コンコムはブレイクしようと半ば投げ捨てるように離したが、波賀はマットで頭を打ち、立ち上がるも足が痙攣していた。コンコムは逃さず右ストレートを決めノックダウンを奪う。波賀は立ち上がり反撃をするも試合終了。コンコムが判定勝利を飾った。

試合後、波賀宙也選手は「サイズは関係ないですし、カードが決まる期間が短かったのは相手も一緒です。最後の第3ラウンドだけでしたね。そのラウンドだけは忘れてください。次回に繋げて頑張ります。」と前向きなコメントをしていた。

首相撲からの崩しで転ばされた波賀宙也は立ち上がるにも足がふらつく

ダメージ負った波賀宙也に攻勢に出るコンコム、惜しいラウンドとなった

◆第6試合 57.5kg契約3回戦

NJKFフェザー級チャンピオン.前田浩喜(CORE/57.45kg/1981.3.21東京都出身)
48戦29勝(17KO)16敗3分
        VS
NKBフェザー級5位.鎌田政興(ケーアクティブ/57.3kg/1990.5.6香川県出身)
18戦8勝(3KO)8敗2分
勝者:鎌田政興 / TKO 1R 2:04
主審:中山宏美

試合前、前田浩喜選手から「王者としてNJKFを盛り上げる為に熱い試合をした上で勝ちます。」とコメントがあった。それ以外にも、入場時や大会場での開催など、NJKFを試合以外で盛り上げたいと熱く語っていた。一方の鎌田政興選手は「団体(NKB)の代表選手として、そしてフェザー級を盛り上げるために勝ちにいきます。」と緊張気味にコメントをしていた。

試合当日もリラックスをして談笑していた前田浩喜だったが、開始早々、鎌田政興の左右のストレートを貰い動きが止まる。その後、自分のペースに持ち込もうと首相撲などで攻めていくが、鎌田はパンチを中心にコーナーに前田を追い込み、左右のストレートを決め、ノックダウンを奪う。前田はすぐに立ち上がれず、目の焦点が合わないことでレフェリーはストップをかけ鎌田政興がTKO勝利。

鎌田政興の連打で劣勢に追い込まれた前田浩喜、この後、連打で倒される

◆第5試合 64.0kg契約3回戦

健太(E.S.G/ 63.6kg/1987.6.26群馬県出身)109戦63勝(17KO)39敗7分 
        VS
NJKFスーパーライト級2位.吉田凛汰朗(VERTEX/63.9kg/2000.1.31栃木県出身)
21戦9勝8敗4分 
勝者:健太 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:少白竜30-28. 竹村30-28. 中山30-28

(健太は元・WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン)

10ヶ月ぶりのホームリングでの試合になる健太選手。「大会場で何度も試合をしていますが、久しぶりの後楽園ホールで勝利を得ます。」とコメント。

初回、健太はオーソドックスなローキックを中心に隙を突いてパンチを入れていく。吉田凛汰朗はミドルキックからパンチを決めていくが、健太の距離で戦ってしまい攻めきれない。第2ラウンド、健太の圧力が大きくなり、吉田は前に行けず手数が少なくなる。健太は的確にパンチやキックを決めていき優勢になった。
第3ラウンド、吉田は終盤にバックハンドブローを仕掛けるも健太のガードで決まらず。優勢を維持している健太はパンチを中心に自分の距離で戦い、吉田の勢いを潰しながらパンチを決めていった。吉田は力を出し切れなかったようで、健太が判定勝利となった。

109戦目の健太は試合運びの上手さで攻勢を維持して判定勝利

◆第4試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級2位.悠斗(東京町田金子/50.8kg/1993.2.24東京都出身)
37戦20勝(9KO)13敗4分
      VS
同級3位.TOMO(K-CRONY/50.7kg/1982.10.30茨城県出身)21戦7勝(5KO)12敗2分
勝者:悠斗 / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜30-29. 竹村30-29. 中山30-29

所属ジムの金子修会長がジム閉鎖の決意と創設51周年の功労顕彰賞を授与されたことを受け、負けられない状況になった悠斗。初回、ローキックから隙をついて重いパンチを決めていく。TOMOはミドルキックと左右のパンチで対抗。

第2ラウンド、悠斗の重いパンチは衰えることなく、的確にTOMOにヒットしていく。TOMOも反撃するが悠斗の圧力が強く、TOMOの勢いを削っていく。

第3ラウンド、悠斗のパンチ中心の攻撃にTOMOは耐えていき、起死回生のバックハンドブローを決めるが、ガードの上でダメージを与えることが出来ず、悠斗のジャブのヒットを許してしまう。最後は打ち合いになるがそのまま終了し、悠斗が判定勝利。

悠斗が重いパンチで主導権を奪った展開の中、ハイキックも繰り出していく

◆第3試合 スーパーライト級(当初)3回戦

NJKFスーパーライト級4位.宗方888(キング)欠場によりTAKUYA戦は中止。

ガン・エスジム(タイ)が代打出場
      VS
NJKF ライト級3位.TAKUYA(K-CRONY/63.3kg/1993.12.31茨城県出身)
13戦7勝5敗1分
勝者:ガン・エスジム
主審:椎名利一
副審:少白竜29-28. 竹村30-28. 中山29-28

出場予定だった宗方888が減量失敗で脱水状態になり、救急車で運ばれる事態だった様子で前日計量には現れず。電話では謝罪を述べていた様子。

TAKUYA選手は「今回はキレイに勝ちますよ。」と意気込みを語っていたが、代打出場となったガンエスジムとの対戦が決まった。

初回、TAKUYAがガン・エスジムに仕掛けるが、ガンのパンチや的確な右ヒジ打ちが入り、一瞬ぐらつく。ガンは右フックを初め的確で手数多いパンチを繰り出し、TAKUYAはローキックで反撃をする。

第2ラウンド、TAKUYAは右ストレートをヒットさせるも、ガンが前に出て来て組みながらのヒジ攻撃にペースが掴めず苦戦する。ガン選手は急遽試合が決まったとは言え、果敢に攻めていく姿勢は変わらず。

第3ラウンド、TAKUYAはセコンドからの「ヒジで行け!」との指示でヒジ打ちを決めていくが、ガンはポイントで優勢になっていることを意識し、付き合わずに躱したり組んだりして時間を稼いでいるようだった。TAKUYAは攻めきれず終了。ガン・エスジムの判定勝利。

試合後、TAKUYA選手は「すみませんでした」と悔しそうにコメント。「次に繋げましょう。」という声に「有難うございます。頑張ります。」と前向きな返事だった。

急遽決まったムエタイ実力者との対戦、TAKUYAは苦戦を強いられた

◆第2試合 スーパーフェザー級3回戦

NJKFスーパーフェザー級10位.コウキ・バーテックス(VERTEX/58.8kg/1997.9.20栃木県出身)9戦4勝4敗1分
      VS
颯也(新興ムエタイ/58.8kg/2002.5.4神奈川県出身)6戦2勝4敗
勝者:颯也 / TKO 3R 1:51 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

◆プロ第1試合 ヘビー級3回戦

レオ(K-CRONY/100kg超・秤の都合/1998.9.3ブラジル出身)1戦1勝(1KO)
      VS
長里清(サンライズ/93.7kg/1969.7.29埼玉県出身)1戦1敗
勝者:レオ / TKO 1R 2:04

◆アマチュア第2試合 (over40) 68.0kg契約2回戦(90秒制)

河野友信(A-sk/ 67.2kg)vsカズshooter(テツ/ 66.2kg)
勝者:河野友信 / 判定3-0 (19-18. 19-18. 19-18)

◆アマチュア第1試合 (over40) 60.0kg契約2回戦(90秒制)
シュンスケ・ムアンチャイ・ピラーノ(ゼウス西船橋/ 59.9kg)
      VS
まさる(Labore spes/ 59.55kg)
引分け 1-0 (19-19. 20-19. 19-19)

《取材観戦記》(岩上哲明)

キックボクシングで観客が満足できる興行は、やはり“KO決着が多い興行”でしょう。今回のNJKFの興行ではKO決着が半分あり、それぞれ内容が違うもので、観衆にとって満足したものと思います。判定決着になった試合も勝者のテクニックの巧さに満足出来たことでしょう。そして、最初のアマチュア2試合が会場を盛り上げる為にいい仕事をしてくれたと思います。

メインイベントは「三階級制覇」と「三団体制覇」や「WBCムエタイとWKBA」といった隠れたテーマがあり、それを事前に知ることでより試合の楽しみ方のレベルが上がると思います。NJKFの今後の課題としては、キックボクシングに無縁、無関心な人を振り向かせること。これはキックボクシングに関わる人達共通の課題にもなるでしょう。

《取材戦記》(堀田春樹)

東京町田金子ジム閉鎖と創設51周年セレモニーが第2試合後に行われ、NJKFより金子修会長には長年の功労を顕彰する表彰をされました。金子修氏の御挨拶の中では観衆に対し、「今後もNJKFに足を運んでくださいますように、そして赤コーナーや青コーナーへ声援合戦をお願いします!」と観衆にメッセージを残されました。これもキックボクシングを大いに盛り上げたい表れの、ファンへのお願いだったでしょう。

東京町田金子ジムの前身は昭和のキックボクシング隆盛期に創設された萩原ジム。ここからデビューした現・レフェリーの少白竜氏も花束贈呈に並びました。金子修氏も早々にジムを引き継いだ元・所属選手で数戦しているようです。細かくはジムの歴史を改めて聞いてみたいものです。

次回興行は5月7日(日)にGENスポーツパレスにて「DUEL.28」が開催予定。6月4日(日)には後楽園ホールで本興行「NJKF 2023.3rd」が開催予定です。

東京町田金子ジム閉鎖する金子修会長がファンにキックへの想いを熱く語る

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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