瀬戸口勝也は大田拓真を迎え撃つも強打は不発、ムエタイ技に阻まれる。
木下竜輔は練習中の鼻骨骨折による欠場。
アマチュアを含め女子試合が5試合。沖縄の七美はAYAを伸び有る蹴りで主導権奪って存在感増す判定勝利。
重森陽太がフリーとなって御挨拶。今後の展望を語る。

◎MAGNUM.58 /7月9日(日)後楽園ホール17:30~20:20
主催:伊原プロモーション /認定:新日本キックボクシング協会

◆第11試合 58.0kg契約3回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/39歳/58.0kg)
       vs
大田拓真(前・WBCムエタイ日本フェザー級C/防衛1度/新興ムエタイ/1999.6.21神奈川県出身/57.8kg)
勝者:大田拓真 /判定0-3
主審:椎名利一
副審:中山28-30. 宮沢27-30. 桜井27-30

新日本キックボクシング協会の看板を背負った剛腕・瀬戸口勝也にKO勝利の期待が掛かったメインイベント。昨年10月23日に王座初防衛した試合以来となり、コンスタントに試合をこなしてきた大田拓真と比べれば、ややブランクの影響もあっただろうか。

ニュージャパンキックボクシング連盟のエース格、大田拓真は、2月26日に大翔(WSR・F荒川)に判定勝利。5月13日にはメキシコでIRON FIST イベントに出場し、2ラウンドTKO勝利(IRON FISTムエタイ世界スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦)。王座奪取はしたが、更なる上位への通過点である。

大田拓真のハイキックが瀬戸口勝也の顔面を掠める

大田拓真は開始から左ジャブを活かし、自分の距離を保って蹴りとパンチでリズムを作った。瀬戸口は様子見から徐々に接近しパンチ強打を狙うが、大田が組み付けば崩し転ばせ、ヒジ打ちで瀬戸口の右目尻をカットし、時折ハイキックも見せる多彩な戦略で主導権奪った大差判定勝利。瀬戸口勝也の圧力掛けて出る強打は脅威だったが、大田拓真の牙城を崩すことは出来なかった。この試合も5回戦として後半へ長引いていけば、両者にとってKOに繋がる展開が見られたかもしれないだろう。

打ち合いに持ち込みたかった瀬戸口勝也(左)

組み合えば崩し技が優った大田拓真(右)

◆第10試合 58.0kg契約3回戦 木下竜輔欠場

代打出場=バンソーン・サマット(タイ/57.55kg)
      vs
NJKFフェザー級6位.坂本直樹(道場373/57.35kg)
勝者:坂本直樹 /TKO 3R 0:46 /
主審:少白竜

坂本直樹がパンチと蹴りでの様子見から、バンソーンは特に怖いものは無いと見たか、徐々に圧力を増して飛び蹴りも見せて行く。気を付けるべきはヒジ打ちも、第3ラウンドには距離を詰め、右フックでバンソーンを倒すと、カウント中にレフェリーストップされて終了。

坂本直樹がバンソーンをロープ際に追い込んでボディーブローを打ち込む

坂本直樹が右フック一発でバンソーンを倒した直後

◆第9試合 女子バンタム級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級4位.AYA(BLA-FREY/52.65kg)
        vs
ミネルヴァ・スーパーバンタム級6位七美(真樹ジムオキナワ/53.3kg)
勝者:七美
/判定0-3
主審:中山宏美
副審:椎名27-30. 宮沢29-30. 少白竜29-30

長身を活かした七美のハイキック、ミドルキックが攻勢を維持し、AYAの踏み込んでのパンチを前蹴りで拒む。女子でもパワーある攻勢で、終盤のヒザ蹴りの攻防では七美の勢い優る底力を見せ付けて終了。

男並みにパワーある左ミドルキックを蹴り込む七美(左)

試合終了寸前でヒザ蹴りの猛攻を掛けた七美(右)

◆第8試合 56.0kg契約3回戦

赤平大治(VERTEX/55.75 kg)vs 川端駿太(SHINE沖縄/55.3kg)
引分け 三者三様
主審:桜井一秀
副審:椎名30-28. 中山29-30. 少白竜29-29

開始からパンチと蹴りの攻防激しい展開。決定打となるダメージを与えるに至らない一進一退の展開の中、幾度か赤平が飛び蹴りを見せるが主導権支配するに至らず終了。

◆第7試合 ウェルター級3回戦

亜維二(=小林亜維ニ/新興ムエタイ/66.5kg)vs 宮平将詞(SHINE沖縄/65.75kg)
勝者:亜維二 /KO 1R 1:59 /
主審:宮沢誠

開始後、左フックの相打ちに宮平がスリップダウンも効いたような尻もち。更に蹴りからパンチの打ち合いは亜維二の勢いが増し、右ストレートがヒットすると効いた様子で後退する宮平をニュートラルコーナーに詰め連打すると、レフェリーはスタンディングダウンを宣し、再開後も亜維二はダメージ深い宮平に青コーナーに詰めて怒涛の連打。

レフェリーが再度スタンディングダウンを宣したところで、陣営からタオル投入による棄権で終了。

亜維二と宮平将詞の相打ち、宮平にダメージがあったか

ニュートラルコーナーに追い詰めてスタンディングダウンを奪う寸前の亜維二

◆第6試合 50.8kg契約2回戦

渡邊匠成(伊原/50.4kg)vs 明夢(新興ムエタイ/50.55kg)
引分け 1-0 (20-19. 19-19. 19-19)

◆第5試合 64.0kg契約2回戦

勇生(富山ウルブズスクワッド/63.2kg)vs 梅沢遼太郎(白山道場/63.35kg)
勝者:勇生 /TKO 2R 0:23 /ヒジ打ちによる額カット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップ

◆第4試合プロ 女子51.5kg契約3回戦(2分制)

オンドラム(伊原/51.45kg)vs NAO.YK(YK/51.15kg)
勝者:NAO.YK /判定0-3 (29-30. 29-30. 29-30)

◆第3試合 女子アマチュア35.0kg契約2回戦(2分制)/12ozグローブ)

西田永愛(伊原/34.95kg)vs 菊池柚葉(笹羅/34.15kg)
勝者:菊池柚葉 /判定0-2 (19-20. 19-20. 19-19)

◆第2試合 女子47.0kg契約3回戦(2分制)

aimi-(DANGER/45.85kg)vs Marina(健心塾/46.4kg)
勝者:Marina /判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

◆第1試合 女子アマチュア50.0kg契約3回戦(2分制/12ozグローブ)

堀田優月(闘神塾/48.75kg)vs 野澤柚羽(Grabs) Kickboxing/48.9kg)
勝者:堀田優月 /TKO 2R 1:28 /パンチ連打でレフェリーストップ

フリーとなった重森陽太、古巣の新日本キックボクシング協会で御挨拶に立つ

《取材戦記》

重森陽太が新日本キックボクシング協会のリングに帰って来て御挨拶に立った。一旦去ったエースが帰って来たような雰囲気である。

来月9日に「KNOCK OUT」興行に出場の予定。幾らか王座獲得経験あるタイトップレベルとの対戦を控えているが、重森は「今後どのような道に行ったらいいのか迷っていた時に、伊原会長から『お前はキックボクシングを続けなさい。今迄頑張って来たのだから、お前の好きなようにやりなさい。』と激励の言葉を頂き、背中を押されました。」と感謝を述べた。

更に「今後もどんどん強い選手と戦うことで、世間でも認知されるキックボクサーになることが新日本キックと伊原代表へ出来る最大の恩返しだと思っています。」と語った。

新日本キックボクシング協会は2019年からの分裂とコロナ禍による影響、そして幾名かの選手の脱退が起こり、エース格に成長した重森陽太は今年2月19日にラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦も、チャンピオンのジョーム・パランチャイに判定負け。その後、協会から伊原稲城ジムの脱退があり、重森陽太は脱退した稲城ジムからの離脱で、個人でもフリーとなりました。

新日本キックのリング上での御挨拶となった流れでは、伊原信一代表との長年の絆が有って、フリーでやるなら新日本キックのリングも選択肢の一つでしょう。世間でも認知されるキックボクサーになるにはフリーでなく、練習環境が整ったジム所属が必要になると思いますが、今後の戦い方に注目です。

バンソン・サマット(BangThong Samat)はバントーン・サーマートか?正確な発音をタイ陣営に聞こうとしたところ、タイでのリングネームは全く違うようで、バンソン・サマットの正確な発音までは時間が無く聞き取ることが出来ませんでした。忘れなければ次回までに聞いておきたいものである。バンソンの次の試合があるかは分かりませんが。

次回、新日本キックボクシング協会興行は10月15日(日)にTITANS NEOS.33が後楽園ホールに於いて開催予定です。次代のメインイベンターを育てられるか、新日本キックボクシング協会の踏ん張りを注視したいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」