日本では、特に1994年の日経連が「新時代の日本的経営」という方針を出してから、非正規雇用が激増。労働者の実質賃金は、それ以降、四半世紀以上にわたって、ほとんど上がらないという異常事態になりました。これは、世界的に見ても日本以外ではいわゆる失敗国家(失礼ながら国名を挙げると内戦が続いているシリアやリビア、ソマリアなど)でしか見られない現象です。

しかし、このために、最近では外国人労働者の行先としても日本の人気は落ち、日本人でも若い女性の介護や保育労働者が流出するなどしています。また、介護の現場では、人手不足の反面、サービスの質の低下もみられます。製造業やITなどでは、技術者の海外への流出も深刻です。まさに日本はボロボロです。労働者の給料含む労働環境の改善は急務です。

一方で、労働条件が日本で良くならないことの背景には労働者がこの数十年間、おとなしすぎたということもあるのではないでしょうか?しかし、そんな状況にも変化が見られたのが2023年の夏です。

◆潮目を変えるか? そごう・西武 大手百貨店の61年ぶりスト

「そごう・西武」では、親会社のセブンアンドアイが外資系投資会社への売却を計画。これによる雇用維持への不安が労働者に広がり、そごう・西武ユニオンは7月にストライキ権を確立するための投票を実施。その結果、9割以上の組合員がストライキに賛成しました。組合は、経営者とストライキを背景に交渉しましたが、8月末、交渉は決裂。8月31日、大手百貨店では1962年以来、61年ぶりのストとなりました。

ストライキは日本国憲法第28条で保障された団体行動権です。

第二十八条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

今後の動向は予断を許しませんが、労働者が自分たちを守るためには、ストライキという手段もある、ということを示したことの歴史的な意義は大きいのではないでしょうか?

もともと、組合員が納める組合費はストライキをやった時に入らなくなる給料を保障するための資金だったのです。しかし、1960年代後半くらいから会社と組合が協調路線になり、ストライキをやらなくなってきたという歴史的な経過があります。そして、1990年代以降は、ついに日経連(今の経団連)側がやりたい放題しはじめたのです。

また、企業再編に便乗(?)して、どさくさ紛れに労働者の労働条件を(過剰に)切り下げることもまかり通ってきました。そうした状況への反撃に今回なったのではないでしょうか?

報道を拝見する限り、思ったより、一般市民の方が割とストライキに好意的なコメントをされていました。ストライキ実施以前は割とネガティブなコメントもあったが、実施後は、応援するようなコメントも多い印象があります。

なにより、多くの労働者にとり、よい教科書になったのではないでしょうか? 

今後、例えば介護や保育など、仕事の割に給料が低すぎる、そのことも背景に様々な問題が起きている職場でこういうストライキという憲法で保障された手段もあるということは、一定程度認識されたのではないかと思います。

◆環境省元女性官僚、過労退職で損害賠償求め国を提訴

環境省では、若手女性キャリア官僚が、月135時間の残業をさせられ、2019年2月に精神疾患を発症。同11月に公務災害認定を申し立て、2020年2月に退職しました。そして2021年6月、ようやく公務災害に認定されました。この女性元官僚は、2022年6月に国を相手取って損害賠償を求めて民事調停を申し立てましたが、国が応じなかったため、やむなく2023年7月27日、国を提訴したものです。

この元女性官僚は「今回の提訴によって議論が生まれることで、働く人を大切にして、一緒に働いていくという意識の醸成があってほしいと思います。今まで涙を呑んできた先輩、同期、後輩の少しでも希望になればと思っています」と記者会見で述べたそうです。

最近では東大生も含めて若者が官僚になることを敬遠する傾向にあります。この傾向が行き過ぎれば、日本国としての政策立案能力の低下にもつながりかねません。また、精神疾患は労災認定がされにくい実態があります。今回の裁判は、精神疾患について軽視しないようにしていく取り組みでもあります。

◆20年以上務めた司書をいきなりクビ!埼玉県狭山市の暴挙に抗議!

 

[署名]司書の復職で図書館のさらなる充実・発展を求めます(change.org)

埼玉県狭山市では、2023年3月末、市立中央図書館の司書を20年以上勤めた人も含めて全員解雇し、公募しました。臨時職員時代も含めて20年以上、毎年契約更新されてきたということはそれだけ優秀さが認められてきたということです。それを全員解雇する。その結果、例えば、子どもに対する読み聞かせなど、今まで地域の子どもたちにされてきたサービスも低下してしまいました。これに対して、図書館の充実と司書の雇用継承を求める会が司書の復職を求めて署名を呼び掛けています。QRコードからできます。趣旨をご理解の上、ご協力をお願いします。

地方公務員の29%、112万人が非正規で、特に身近な市区町村では40%と、民間平均の36%も上回っています。そして、高度の専門知識を持った人たちも多く、非正規公務員として働いています。そういう人たちをそもそも非正規で使い捨てにするということが間違いですが、現実には正規公務員を減らしすぎた結果そうなっています。

民間のように労働契約法による保護はない。さりとて、正規公務員のような手厚い保護もない。これが非正規公務員の実態です。

2020年度から「会計年度任用職員」制度が導入され、ボーナスの支給などもされるようになりました。しかし、今度は、「会計年度任用職員は3年たったら自動更新をやめ、ゼロから公募」という自治体が続出。狭山市も例外ではありませんでした。

そもそも、「3年でクビ」にしなければならない、という法的根拠はどこにもありません。これは、労働組合が総務省に確認させています。専門性の高い仕事の公務員を3年でクビにしていたら、福祉や教育、防災など住民サービスも低下します。

また、公務員に人材が集まらなくなってしまいます。本紙も、非正規教員含む非正規公務員の抜本的な待遇改善、希望する人への常勤化を求めます。

 

[署名]ホームヘルパーの待遇を上げて日本の介護を守ろう(change.org)

◆ホームヘルパーの待遇改善で日本の介護を守ろう

筆者も介護福祉士として仕事をしています。利用者ではなく、職員、それも新人職員が70代という状況があります。その介護業界の中でもホームヘルパーは、特に高齢化が進んでいます。これは、待機時間や移動時間、キャンセルになった場合も労働時間なのに、給料が出ないという労働基準法違反の状態が横行しているからです。そしてその根本には介護報酬が低すぎることがあります。

こうした中、ホームヘルパー3人が東京地裁に国を相手取って、介護保険制度の改善を求めて損害賠償訴訟を2020年11月、起こしました。(日本の法体系上、制度改善のみを求める裁判はできない)。

2022年11月、東京地裁では不当判決が出ましたが、原告労働者は東京高裁に控訴。この夏も7月24日の第三回口頭弁論など、裁判闘争を頑張っています。どうか、公正な判決を求める署名にご協力ください。

◆お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください

労働相談 秘密厳守 お一人で抱え込まず、ご遠慮なくご連絡ください。

広島自治労連 *電話 082-243-9240 *FAX 082-243-9241  
*Eメール hjrouren@urban.ne.jp
(さとうも役員をさせていただいており、さとうまでご連絡いただいても構いません)
広島県労連 労働相談センター 解雇・賃金残業代未払い・ハラスメント なんでも相談 082-262-2099

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号