感染拡大が止まらない新型コロナウイルス。安倍晋三首相は4月7日、特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令したが、「首相の決断の遅れが感染を拡大させた」と批判する意見は少なくない。緊急事態宣言の発令に伴う「補償」も不明確なままだ。

そのため、新型コロナに関する安倍首相の責任を問う声があちこちから噴出しているが……よくよく考えれば、新型コロナをめぐる現在のパニックはむしろ安倍政権にとって「神風」になっているのではないか。新型コロナに国民の関心が集中して以降、安倍政権のそれ以外の問題が目立たなくなっているからだ。


◎[参考動画]安倍総理会見「1カ月でこの緊急事態宣言を脱出することが可能となる」(ANNnewsCH)

◆赤木氏の手記と妻の提訴は凄まじい反響だったが……

まず、安倍首相の妻・昭恵夫人との関係が取り沙汰されてきた森友問題の公文書改ざん事件をめぐり、自殺した財務省の元職員・赤木俊夫氏(享年54)の妻が国と同省の元理財局長・佐川宣寿氏を提訴した一件。週刊文春の報道により、赤木氏が手記などで「文書の改ざんは佐川氏の指示だった」と告発していたことが判明、凄まじい反響を呼んだのは3月中旬だから、つい最近だ。
(※『週刊文春』2020年3月26日号 ※文春オンラインで全文公開中)


◎[参考動画]森友「再調査せず」に遺族抗議(テレ東NEWS)

だが、その後に新型コロナの感染が爆発的に広がった中、この件はあまり話題にならなくなった。昭恵夫人が新型コロナの感染拡大リスクがある花見をしていたことが明るみに出て、そちらのほうに国民の関心が集まった感すらあるほどだ。

また、赤木氏の件が報道される少し前には、東京高検の黒川弘務検事長の前代未聞の定年延長が閣議決定され、「政権寄りの人物を検事総長にするための違法の措置だ」との批判が渦巻いていた。だが、新型コロナの感染が拡大する中、この件もほとんど話題にならなくなっている。

緊急事態宣言発令の前日である6日、日本弁護士連合会の荒中(あらただし)会長が「定年延長の撤回」を求める声明を出したが、このことに気づかなかった人も多いのではないか。


◎[参考動画]【暫定字幕表示】山添拓(日本共産党)VS森まさこ法務大臣 (Makabe Takashi)

◆河井議員夫婦の事件もとんでもない事態になっているが……

そして、もう1つは、自民党の河井案里参議院議員の陣営による選挙違反事件だ。この件では、すでに案里議員の秘書が公職選挙法違反の罪で起訴されたほか、同議員の夫である河井克行前法務大臣の秘書も同罪で起訴されている。

さらに最近になり、安芸太田町の小坂真治町長が案里氏が自民党候補として公認された後、克行氏から現金20万円を受け取っていたことが判明し、辞職。ほかにも複数の広島県議が克行氏から各30万円の現金を受け取っていたことや、三原市や大竹市、廿日市市の市長が地検の任意聴取を受けていたことが報じられている。


◎[参考動画]河井案里参院議員の秘書ら2人を起訴 公選法違反(ANNnewsCH)

だが、かくもとんでもない事態になっている河井議員夫婦の問題も地元メディア以外ではさほど大きく報道されていない印象だ。法務大臣まで務めた有力現職議員とその妻の現職議員の大問題であるうえ、2人の疑惑は自民党本部が出した1億5千万円の選挙資金にも及んでいるにも関わらず……。

仮に新型コロナの問題が存在せず、以上のようなことが連日、大きく報道されていたら、さすがに今度こそ「政権交代」の機運が高まっていただろう。そう考えてみると、新型コロナに関する安倍首相の対応への批判が高まるほど、実は安倍首相としては、その他の問題が国民の記憶から薄れ、むしろ助かるのかもしれない。


◎[参考動画]「緊急事態宣言」を発令 安倍総理が会見【ノーカット】(テレ東NEWS)

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

絶賛発売中!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

〝復興五輪〟と銘打たれた東京五輪の「延期」が正式に決まった。新型コロナウイルスの世界的感染拡大が理由だが、そもそも五輪と「原発事故からの復興」を結び付け、「原発事故から立ち直った福島の姿」を国内外に発信する場として利用する事には批判の声が多かった。

しかも、2013年9月の招致プレゼンで安倍晋三首相が「フクシマについて、お案じの向きには私から保証をいたします。状況は統御(アンダーコントロール)されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも及ぼすことはありません」と言い放って、原発事故被害者の怒りを買った。五輪延期を機に改めて3年前の講演を振り返り、「アンダーコントロール発言」の意味するところを考えたい。

「アンダーコントロール発言」を解説したのは、アメリカ生まれの詩人アーサー・ビナードさん(52)。2017年7月30日に福島市内で行われた「全国作文教育研究大会 福島大会」の中で講演した。講演の終盤、アーサーさんはこう切り出した。

2017年7月、福島市内で行われた講演会で「アンダーコントールなのは国民だ」と語ったアーサーさん

2017年7月、福島での講演会の様子

「時局はいつでもあるんです。今、僕らも時局の中にいる。安倍政権が崩壊するのか続くのか。稲田朋美防衛大臣(当時)がどういうところに再就職するのか。時局は動いているんです。この『時局』は、僕らが最近、体験した事の中にも出てきます。実は今、日本の政治家は本当に大きなごまかしをやりたいときには英語でしゃべります。覚えていますか? ブエノスアイレスで大事な会議(IOC総会)が開かれて、滝川クリステルさんが『おもてなし』って言ったんだよね。あの時に一番輝いていたのが安倍総理大臣で、たぶん2週間くらい英語の特訓をしたんだと思いますよ」

「その時に安倍総理は、大量に漏れている放射性物質を含んだ水の事に微妙に触れるふりをして、それで Let me assure you. the situation is under control と言った。私は皆さんに保証します。約束します。間違いないんですよ、皆さん大丈夫なんですよと」

首相官邸のホームページによると、安倍首相の発言はこうだった。

Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you,the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo.


◎[参考動画]安倍晋三総理大臣のプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013/09/08)

この時のメディアも含めた反応をアーサーさんは「違う」という。

「これを日本のマスコミとかはunder controlに注目して『under controlじゃ無いだろう』と批判的に取り上げた。だって汚染水は漏れてるじゃないかと。コントロール下に置かれているっておかしいじゃないかって皆言ったんだよね。それは僕も理解は出来るけれど、読解力の全く無い、文脈を理解していない奴の批判だと思う。『アベコベ語』をちゃんと学んでからでないと、あの発言は理解出来ない。これ『アベコベ語』だからね」

アーサー・ビナードさん

そして、話は太平洋戦争の敗戦を告げた玉音放送にさかのぼった。

「あの発言は、ちゃんと8月15日の玉音放送の流れを汲んでるんだ。これは『時局ヲ収拾セムト欲シ』という玉音放送からの直接の引用なんだよ。『時局』って何?玉音放送の時の『時局』って何かというと、東京都千代田区0番地の人たちが処分される事無く再就職出来るための『国体護持』ですよ。革命とか暴動が起きないように収拾するための放送だったんです。世界の情勢とかでは無くて、日本の特権階級の再就職が保証される事。安倍晋三がおじいちゃんの後を継ぐ事が保証される事。吉田茂の孫も総理になれるのが保証される事が『時局ヲ収拾セム』という事だったんだ」

アーサーさんの言いたい事は「コントロール下に置かれている国民」だった。

「じゃあ、安倍総理は何を言ってるかというと『汚染水』じゃ無いんです。福島の問題じゃ無いんです。福島はもう放置。彼の知ったこっちゃありません。the situation つまり『時局』なんです。分かりやすく翻訳すると、日本国民が福島第一原発の1号機、2号機、3号機がメルトダウンしてメルトスルーして手がつけられない人類最悪の袋小路に入ったとしても立ち上がりませんから。どんなに被曝させられても、どんなに馬鹿にされても、どんなに共謀罪で脅かされても日本国民は抵抗しませんから。つまり、日本国民はコントロール下に置かれてますから大丈夫です。だからオリンピックちょうだいって。で、オリンピックを使えば日本国民はより操作しやすいから、ぜひお願いしますって。まあ、僕の翻訳が100%正しいかどうか分かりませんけど。時局ってそれくらいの物を含むんですよ」

騙されてはいけないよ、とアーサーさんは警告する。

「the situationはいろんな場面でまやかしの言葉として見事に使われます。オリンピックが日本にやって来るのは福島第一原発でメルトダウンが起きた時に既に決まっていたんです。なぜかというと、原発事故は100年、1000年の問題。決して明るい話題じゃ無い。そこで明るい話題を用意して、皆をだまくらかさなきゃならないから。広島の中国新聞には先週、『夢の祭典まで3年』って載ってたよ。良かったね、夢の祭典。夢の祭典が新聞の1面だよ。広島の新聞だよ。いやーこれは深刻です。時局があまりにも収拾されちゃって、コントロール下に置かれているのです」

浪江町を視察し、小女子を食べる安倍晋三首相。こうやって被災地の食べ物を口にするのも、民をコントロール下に置く手段の1つなのだろうか

そして、まるで今回の延期を〝予言〟するかのように、こうも語っていた。

「皆、東京オリンピックを語る時に1964年の事を言いますね。あの時はいろいろなまやかしがまかり通って成立しました。でも今回のオリンピックは、僕は1964年じゃなくて1940年のオリンピック(日中戦争などの影響で日本が開催権を返上)に似ていると思います。ヒトラーの鶴の一声もあったという話ですけど、東京でやるやると言って、とうとうキャンセルになった。やるやる詐欺。1938年の夏にやめた。その代わりに何をやったかというと、奈良県の橿原神宮で1万人の集団体操をやった。ラジオ体操の前身です。直前まで英語でも世界中にやるやるとメッセージを発していて、それで最終的にやらなかった。運動会すら開催できない組織が、その3年後にパールハーバーを攻撃したんです。僕らは先人たちの体験から矛盾を見抜く力を身に付けなければいけません。その視点を大事にしていけば見抜けます。でも、夢の祭典にいつまでも注目しているとコントロール下に置かれます。大事な視点は僕らの周りにたくさんあるんですよ」

今回も、日本政府は五輪を「やるやる」と強気の姿勢を見せ続けていたが、すでに「延期」は決定された。私たちは一度、頭を冷やして〝復興五輪〟について再考するべき時に来ているのだろう。為政者のコントロール下に置かれないためにも。


◎[参考動画]「オリンピックのつくりかた」アーサー・ビナード Radio Bhim!:02 前編(歌島舎 2019/11/28)

▼鈴木博喜(すずき ひろき)

神奈川県横須賀市生まれ、48歳。地方紙記者を経て、2011年より「民の声新聞」発行人。高速バスで福島県中通りに通いながら、原発事故に伴う被曝問題を中心に避難者訴訟や避難者支援問題、〝復興五輪〟、台風19号水害などの取材を続けている。記事は http://taminokoeshimbun.blog.fc2.com/ で無料で読めます。氏名などの登録は不要。取材費の応援(カンパ)は大歓迎です。

最新刊!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

私たちは唯一の脱原発雑誌『NO NUKES voice』を応援しています!

『紙の爆弾』5月号は、久々の「特集」となった。総合雑誌ならワンテーマの特集が編集になじみやすい。とはいえ、本誌のように政治・芸能・経済・社会全体をカバーする「暴露雑誌」「批評雑誌」の場合は、時事的なテーマの煮詰まりが特集内容を決める。それほど「新型コロナ危機」が日本社会にとって喫緊のもの、いや全世界的・人類的な危機をもたらしている、ということになるのだろう。

とりわけ大言壮語のいっぽうで、危機管理にからっきし弱い安倍政権のもとでは、その対応を批判するのみならず、防疫の道筋を提案することが、われわれ国民の「生き延びる権利」となる。どの記事も誌面に惹き込む力をもっているが、例によって筆者の好みで紹介していきたい。

◆安倍晋三の元ブレーン・藤井聡が主張する
「新型コロナウイルスによる経済被害は安倍首相が原因の人災である」(構成・林克明)

 

緊急事態宣言の本日7日発売!タブーなき月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号

まずはリフレ論者で、MMTの推進派として安倍政権の元ブレーンでもある藤井聡氏(京大教授・「表現者クライテリオン」編集長)のインタビュー。林克明さんがやってくれた。

最初に藤井は、安倍政権が1月末にいたるまで「多くの中国人の皆さまが訪日されることを楽しみにしています」(在中国日本大使館)と、中国人感染者を招き入れていたことを指摘する。インバウンドを期待した、安倍政権の浮かれた経済重視がウイルスを招き入れたのだ。ちなみに、武漢が閉鎖されたのは1月23日である。じっさいに、春節期の中国人来日者数は、前年比で22.6%増の92万4800人だった。水際で止めていれば、日本にコロナウイルスが上陸することはなかったのだ。

その後、専門家の意見を無視したパフォーマンス的な休校要請、中途半端なイベントの延期や中止要請で、自粛劇を蔓延させてしまった。藤井は計量経済学も守備範囲なので、消費税のよる経済変動についても、数値を挙げて解説してくれる。結論から言えば、やはり消費税は上げるべきではなかったのだ。

いま、経済対策として必要なのは消費税ゼロ、所得をうしなった人々への補償、そして思いきったリフレである。藤井はさすがに書いていないが、財務省を中心としたプライマリーバランス論者の「宗教」(藤井)を打破することこそ、日本経済救出のカギであろう。

◆フランスからの視点
「フランスから見た安倍政権の異常性」(広岡裕児)

フランス在住のジャーナリスト、広岡裕児さんがコロナ対策の日仏比較で警告を発する。フランス政府の徹底した情報開示、大統領と首相が国民に語りかける危機管理能力にたいして、安倍政権はいかにも鈍重である。とくにフェイクニュース「人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません」(1月段階)と語っていたのだ。事態はまさに、安倍総理の言明とは正反対になった。これが戦争であると明言したフランス政府の機敏な対応に対して、わが安倍政権はようやく本日(4月7日)、緊急事態宣言を発する。

これら安倍政権の対応の遅れ、危機管理の甘さは法整備にも顕著である。民主党時代に成立していた「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の発動の遅れ、改正法「新型コロナ特措法」の遅れに結果した。

しかも安倍政権は「緊急事態条項」を盛り込むことで、改憲へとみちびく意図が入っていると、足立昌勝さんは指摘する(「新型コロナ特措法と自民党改憲『緊急事態条項』」)。この期におよんでも、安倍総理はウイルスとの戦いを政局寄りに展開してしまうのだ。フェイクによる政治的パフォーマンスと政権維持のための国会対応、法整備、そしてマスク2枚という漫画的な防疫対策。これではウイルスに勝てないだろう。

「『ダイヤモンド・プリンセス』号 乗客に聞く『14日間』」は、編集部による乗客インタビューをもとにしたドキュメントだ。監禁された人々の切羽詰まった状況が、苛酷な船内風景とともに、いま明らかになる。乗員や救命スタッフの献身、人身御供にされた乗客の声を聴け。

コロナ特集はほかに「感染拡大で露見した日本社会が抱える弱点」(森山高至)、「内閣記者会は『安倍独裁』の共犯者」(浅野健一)、「野党第一党の弱腰で“大政翼賛会”の危険性」(横田一)、「安倍政権の『責任逃れ』でアジアで進む『日本離れ』」(片岡亮)など。

次号で、ウイルス封じ込めに成功した台湾の事例を、誰かレポートして欲しいと、編集部にリクエストしておこう。民主化運動で誕生した政権は、人材登用にしても政策運用においても、じつに手際が良い。

◆連載「NEWSレスQ」から

警察と住吉会の蜜月から、とんだ下半身スキャンダルが露見した。警視庁組織犯罪対策本部の警部補(51歳・第3課)が、住吉会の幹部と会食後に、幹部が紹介した女性とラブホテルに出入りするところを「フライデー」に撮られたのだ。

記事中でジャーナリストの中東常行さんが語っている通り、この叩き上げの警部補は、対立組織にハメられたのかもしれない。

警察官が暴力団関係者と密接交際するのは、親密に付き合わなければ情報が取れない、という表向きの理由だけではもちろんない。カネとオンナが付いてくる交際に、何のためらいがあろうか。警察官にかぎらず、官僚・役人というのは昇進・昇格によって生涯賃金がほぼ完全に計り出せる。そうであるがゆえに、出張費や諸手当、相手の心づけに弱いのである。暴対法・排除条例は警察官僚(警察庁)のものであって、そもそも警視庁の末端には及ばない法規なのである。

もうひとつ、「NEWSレスQ」から。「このハゲー! ボケー!」の豊田真由子元議員がタレント(ワイド番組)に転身とのこと。真由子サマのイメチェンが好評らしい。藤村太蔵元議員のタレント的な成功は周知のとおり、政界専門家としても、イジリやすいキャラとしても元議員は受ける。

夫の宮崎謙介元議員の浮気発覚の余波で、自らも落選した元衆院議員の金子恵美も芸能事務所に所属し、本格的にタレント活動を始めた。ほかに上西小百合(元維新)なども期待されるところだ。政治をお茶の間の話題にという意味では、民主的な政治におおいに貢献するのではないか。

◆東陽片岡の「シアワセのイイ気持ち道講座」

店(経営するスナック)の現状と引きこもり生活を活写。これはいよいよ、絵の吹き出しにあるベーシックインカムへの道か。本気でAIとベーシックインカムを議論する時代が来そうだ。

◆市民が阻止した天皇“奉迎”児童再動員(永野厚男)

2019年4月、昭和天皇陵における平成上皇の「退位報告」のさい、八王子市教育委員会が児童を「奉迎」に動員した。12月3日には令和天皇の「即位の報告」が予定されていたところ、八王子市民の粘り強い取り組みで、児童の動員を阻止したレポートである。

このような具体的な活動によって、われわれは天皇制イデオロギーの支配に抗することができると証明された。地域の粘り強い活動こそ、万言を擁する論評よりも強い、天皇制廃絶への道である。

◆巻末には松岡利康本人による圧巻の「創刊15周年記念」追想レポート

昨日の本欄で、松岡利康みずから触れた「本誌創刊15周年記念」の記事「『紙の爆弾』が創刊された二〇〇五年に何が起きたのか?」圧巻の追想レポートである。読みごたえがある。

とくに個々の局面で、誤ってしまった判断、同業雑誌関係者をふくむメディアの反応。絶望的な状況にもかかわらず、獄中(拘置中)での思いが伝わって興味ぶかい。

逮捕から三か月も接見禁止(ふつうは、23日間の取り調べが終われば接見禁止は解かれる)には、あらためて驚かされた。黄色の上質紙に印刷された本稿は、永久保存版である。

『紙の爆弾』創刊15周年記念号の表紙画像と、別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

『紙の爆弾』創刊15周年記念号別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

本日発売!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

※松岡代表の逮捕と鹿砦社弾圧事件をめぐっては、板坂剛氏による「松岡逮捕の衝撃と教訓 鹿砦社への出版弾圧十五年によせて」が4月15日発売の『情況』4月号に掲載されます。

15年前の4月7日、『紙の爆弾』は創刊いたしました。2005年のことです。新卒で入社した中川志大(創刊以来の編集長)は、『噂の眞相』休刊(事実上の廃刊)後、約1年間、取次会社に足繁く通い、取得が困難とされる「雑誌コード」を取得し、『紙の爆弾』は創刊いたしました。

『紙の爆弾』創刊15周年記念号の表紙画像と、別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

『紙の爆弾』創刊15周年記念号別冊付録「2005年に何が起きたのか?」の一部

出版弾圧10周年の集い(於・西宮)で。大学の後輩で書家の龍一郎から贈られた書

創刊号巻頭には、悪名高い「〈ペンのテロリスト〉宣言」が掲載され、独立独歩、まさに死滅したジャーナリズムとは違った道を歩み始めました。創刊部数は2万部でした。

確かに(今でもそうですが)、『噂の眞相』の足元にも及ばず、拙いながら気持ちは意気揚々としていました。

いわく、

「われわれの“出番”がやって来た!」「たかが『暴露本出版社』と思うなよ!」
 と叫び、文中では、

「私たちの出版活動に対して、ある社会的犯罪企業から『ペンの暴力』などと非難されたことがありますが、タブーや巨悪に対して、私たちは力一杯『ペンの暴力』を行使します」

「逆説的に言えば、巨悪に対しては、時に“極悪”でもって立ち向かわなければなりませんし、“過激派”であり“武闘派”であらねばなりません」

「ペンという武器を取り、返り血を恐れず闘わん!」

「『表現の自由』も『言論の自由』も、黙っていて守れるものではなく、タブーや巨悪に立ち向かい、闘うことによってしか守ることはできません」

……などと、まさにアジテートしています。今から想起すると赤面物ですが、当時の私たちの想い、決意だけはご理解ください。

そうして創刊から3ヵ月後の7月12日早朝、忘れもしない出来事が起きます。これを知ったのが当日配達されたばかりの朝日新聞朝刊でした。1面トップに大きく出ていたので気づかないわけがありません。一斉に、まずは松岡の自宅が家宅捜索され松岡を連行、その後、神戸地検に連行され逮捕されました。同時に鹿砦社本社、東京支社にも家宅捜索が入りました。

平賀拓哉記者がスクープした2005年7月12日朝日新聞朝刊(大阪本社版)

これは、当時の神戸地検特別刑事部による朝日へのリークでなされた、いわば“官製スクープ”です。この記事を署名記事として書いたのは朝日大阪社会部の平賀拓哉記者でした。あたかも、私たちの出版活動を理解しているかのように近づき、手持ちがない書籍を持ち帰ったりし、私も「朝日が私たちの出版活動を理解してくれた」と感じ積極的に協力しました。私が提供した書籍の画像や発言が掲載されています。当日の朝刊、夕刊共に大きな扱いでした。他紙も続きました。

地検の一行が自宅のドアを開けても、「シャワーぐらいさせてほしい」と言い、その時間を待たせるほど落ち着いていました。

それから延々192日もの予想以上の長期勾留が続くわけですが、このことによって、会社は壊滅的打撃を受けました。こうした経緯は4月7日発売の『紙の爆弾』5月号の巻末別冊綴じ込み付録「本誌が創刊された2015年に何が起きたのか?」をご一読いただきたく願います。16ページにわたり画像30枚余りを駆使し、15年後の現在、私なりに総括しています。この事件について、これだけ長い文章を書くのは、これが最後だという想いで根性を入れて執筆しました。

この事件に関与したキーマンらには続々と“不幸”が訪れています。当時の主任弁護人の中道武美弁護士は先日、「まさに『鹿砦社の祟り、松岡の呪い』やな」と仰いましたが、まさにそうです。当時の神戸地検特別刑事部長・大坪弘道検事、同主任検事・宮本健志検事、岡田和生創業者社長らの行く末を見ると、この事件は決して潔癖健全な人たちが起こした事件ではなかったことがわかるでしょう。

ところで、去る4月1日朝日朝刊1面トップに湖東会記念病院の西山美香さん再審無罪の記事が出ています。それを見て驚いたことがあります。15年前の朝日記事を書いた平賀拓哉記者が「大阪社会部司法担当キャップ」の肩書きで記事を書いています。いわく、──

「捜査関係者は『今回は特異なケース』と片付けたいかもしれない。だが、ほんとうにそうだろうか。(中略)
 無辜の市民が不条理な刑に処せられた歴史を直視すれば、今回の事件が特異でないことは明らかだ。」

15年後、平賀記者による朝日新聞記事(2020年4月1日朝刊)

 よく言うわい(苦笑)。朝日大阪社会部や司法記者クラブ所属記者らは、「カウンター大学院生リンチ事件」について、私たちの取材に真摯に対応せず、ことごとく逃げを打ちました。メディアの記者として恥ずべき態度と言えるでしょう。早速、15年前に聞いた携帯に電話してみましたが、今は使われていませんでした。

しかし、私は執念深い男です。生来鈍愚で、頭脳もさほど良くない私の武器は、この悪魔のような執念深さです。

15年の年月を越えて、あらためて平賀記者へ取材を試みるつもりですが、果たしてどういう対応をするのでしょうか? 興味津々です。“落とし前”はまだついていない!

7日発売!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

※松岡代表の逮捕と鹿砦社弾圧事件をめぐっては、板坂剛氏による「松岡逮捕の衝撃と教訓 鹿砦社への出版弾圧十五年によせて」が4月15日発売の『情況』4月号にも掲載されます。

かつて日本人は、仏壇と神棚を同じ部屋に飾っていた。生活にもっとも近い場所に仏壇があり、その上に神棚が飾られ、さらに天井近くに御真影。すなわち天皇皇后の写真という祭壇の構成が、明治以降の一般的な家庭の風景であった。それ以前、江戸時代の日本人は神社を訪ねては、そこにある絢爛たる寺院の本堂にある阿弥陀如来像に、あるいは弥勒菩薩像、不動明王像や毘沙門天像に手を合わせていたのだ。その寺院を「神宮寺」という。古代いらい連綿と続いてきた、神仏習合の風景である。

われわれ日本人は、結婚式や七五三を神社および神道形式で祝う。お正月には三社参りをして、一年の平安と健康を祈願する。まるで宗旨は神道のようだ。しかるに、末期のことは菩提寺である寺院にまかせる。死んで仏になる日本人は、まちがいなく仏教徒であろう。仏式で結婚式を挙げる人は、お寺さんはともかく、あまり一般的ではない。ぎゃくにお葬式を神式で行なう家は、代々が神道信仰の家しかないはずだ。これらはすべて、明治以前の生活習慣のなごりなのである。

祭の神輿は、神社ゆかりの氏子会や崇敬会が中核で、町内会(自治会)と重なっている。盆踊りはお寺と町内会のコミュニティをもって成立する。この町内会こそ自民党の支持母体の基礎なのだが、今回はふれない。クリスマスはいかにも盛大に街を飾るが、そもそも信仰の範囲ではないはずだ。にもかかわらず、われわれ現代の日本人は神道と仏教、キリスト教の三つの宗教に等距離をたもち、何ら矛盾を感じていない。これはしかし、あまりにも信仰に深みのない、不信心であるがゆえの宗教生活の空白とは言えまいか。われわれ日本人にはキリスト教における安息日、あるいはイスラム教における日々の礼拝やラマダンなどの習慣がない。じつは明治維新による廃仏毀釈および国家神道化こそ、日本人から宗教心を抜き去ったと言っても過言ではないのだ。

◆そもそも、神仏習合とは何なのだろうか?

六世紀なかばに伝来した仏教は、大陸の先進文化として受け容れられた。単に経典だけではなく、渡来人による建築様式や美術をはじめ、仏教はさまざまな技術とともに受容された。

いっぽう、わが国には自然崇拝としての古神道があり、仏教の受容に反対する勢力も少なくなかった。物部守屋・中臣勝海(かつみ)らがその急先鋒で、仏教を庇護する蘇我馬子と激しく対立した。とくに守屋は、わが国最初の僧侶である善信尼ら三人の尼僧の袈裟を剥ぎとって全裸にし、公衆の面前で鞭打ちの刑に処したという。やがて仏教支持派と廃仏派は朝廷を巻き込んだ政争にいたり、その争いは軍事衝突に発展した。丁未(ていび)の乱である。この戦いで物部氏が滅びると、仏教は蘇我氏と推古天皇および聖徳太子のもとで隆盛をきわめた。

仏教が急速に受け容れられたのは、神道の弱点である死や病気(穢れ)への対処があることだった。古来の神道においては、神といえども死ねば黄泉の国に行かねばならない。現世の穢れをいくら祓い清めても、仏教のように高度な悟りには到達できない。ましてや極楽浄土には行けない。このことに気づいたのかどうか、道に迷った神々が仏教に帰依するようになるのだ。桑名の多度神宮寺には、つぎのような縁起が残されている。奈良朝の天平宝字7年(763年)のことである。

「われは多度の神である。長いあいだに重い罪業をなしてしまい、神道の報いを受けている。願わくば長く神の身を離れんがために、三宝(仏教)に帰依せんと欲す」

聖武天皇による大仏建立が行なわれ、国分寺・国分尼寺が全国に建てられていた時期だから、本朝が仏教国家に生まれ変るのに合わせて、多度の神も仏道に入ったのであろう。

これら神道から仏教への宗旨変えは、つぎのように解釈されている(『神仏習合』美江彰夫)。大規模な土地や荘園を持つことで、神を祀る立場だった「富豪の輩(ともがら)」に罪の意識が芽生えたが、その罪悪感は神道では癒せない。なぜならば、彼らは神を祀ることで私腹を肥やしてきたからだ。そこで彼らは神々を仏門に入れることで、救済をもとめたのである。やがて平安時代になると、仏が仮に神の姿で現れるという、本地垂迹説で神仏習合が理論づけられる。神社のなかに寺が建てられていたのは、およそこのような事情である。

具体例をふたつほど紹介しておこう。大分の宇佐八幡神宮は、渡来系の辛島氏が女性シャーマンを中心に支配してきたが、六世紀の末に大神氏が応神天皇の神霊として「誉田別命(ほんだわけのみこと)」を降臨させる。これが僧形の八幡神(のちに八幡大菩薩)である。

やがて大神氏は宇佐神宮内に弥勒寺を営み、宇佐神職団の筆頭に躍り出る。奈良の大仏建立に協力し、朝廷の庇護を受けたからだ。そして宇佐神宮が豊前一帯を配下に置いたのは、弥勒寺が周囲の寺院を通じて民衆を支配したからにほかならない。しかしながらその弥勒寺の伽藍は、明治維新によって破壊された。破壊された跡地には、料亭や土産物屋が甍を並べたという。宇佐神宮弥勒寺の信徒たちは、寄る辺をうしなったのである。明治四年の太政官布告によって、宇佐神宮は官幣大社となり、内務省の統制下に入る。八幡神社の総本山宇佐神社は、戦時中は神都と呼ばれた。

いっぽう藤原氏の氏寺である興福寺は、伽藍こそ壊されなかったものの、僧侶たちは同じく藤原氏の氏神である春日大社の神職団に編入させられている。しかし宇佐神宮では失われたものが、いまも春日大社と興福寺には残っているのだ。神職と僧侶が相互に祝詞を唱え、読経するシーン。すなわち神仏習合の原風景である。

◆かくして国家神道は、宗教であることを否定した

明治新政府出発のマニフェストは、木戸孝允の主導で定められた「五箇条の御誓文」だといえよう。天皇みずからが公家諸侯の前で「天地神祇」を祀り、公家を代表して三条実美が御誓文を読み上げたのが慶応4年3月15日。その13日後に「神仏判然令」が布告されたのである。のちに大日本帝国憲法に「万世一系ノ天皇ノ統治ス」とされるのものが「御誓文」には「大いに皇基を振起すべし」とある。天皇が治める国の基礎を奮い起こすべきだ、という意味だ。

その「五箇条の御誓文」の発布の翌日、一般庶民にむけて「五傍の高札」が掲げられた。高札の第三札には「切支丹邪宗門の厳禁」とある。じっさい岩倉使節団が訪米する直前(明治四年)に、伊万里(佐賀)県のキリスト教徒67人が捕縛されている。すぐに諸外国の抗議で撤廃されたものの、豊臣秀吉いらいのバテレン追放令をそのまま継承せざるをえなかった、明治政府の異教への恐怖と国際感覚のなさが露呈したかたちだ。これ以前(明治二年)にも、長崎の大浦天主堂に出入りするキリスト教徒3400人が逮捕されている。

かように、明治政府の宗教政策は、太政官府および内務省による強引な統制であった。法的には憲法第二八条の「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」つまり、安寧と秩序を妨げるようであれば、いつでも弾圧される「信教の自由」なのである。その宗教統制のなかで、神道のみが行政化されたのだった。

行政上は、神祇官(のちに神祇省)の復活が行なわれた。この神祇官は職階こそ太政官よりも上位だが、位階は従五位の下と低い。とても天皇を頂点にいただく新政府の中枢として、耐えられるものではなかった。やがて神祇省は廃止されて教部省となり、のちに内務省社寺局に統合される。そして宮中において、天皇をいわば最高神祇官とする体制がつくられたのだ。天皇祭祀の業務はしたがって、宮内省式部寮が執り行なうことになる。祭祀が役所から禁裏に移され、ここに神代天皇制への復帰が行なわれたのである。

明治33年になると、内務省の社寺局が神社局と宗教局とに分離された。これは官幣社および国幣社などの神社が、行政的には宗教ではないという意味である。

いっぽうでは小さな神社や民間信仰の祠などが統廃合され、神道は国家の行政機関に組み込まれたのである。国家の行政組織になることを拒否する民間神道(教派神道)はすくなからず弾圧の憂き目をみている。

祭祀は伝統的な行事であり、神道教育は道徳を教育するものであって、宗教ではないというのが政府の立場である。そして天皇の地位は政治から相対的に分離され、大元帥となり、「政権」からは分離された「統帥権(兵権)」が憲法に明記される。これが軍部ファシズムへの法的な根拠となったのは周知のとおり。その意味では本来、議会政治から分離された「神国」の政体こそ、天皇を中心にした「国体」と呼ぶべきものであろう。

こうした皇室神道(儀式)は戦後も国家(国事行為)と分離されることなく、その一方では政治権力とは分離(政治的権能の排除)されることで、統合の象徴(アイドル化路線)をひた走ることになったのである。だがアイドル(人間)であることと、国体(象徴)という形式のあいだには、かならず亀裂が生じる。この欄でも何度か明らかにしてきたが、皇族の叛乱(三笠宮家・秋篠宮家)は、その崩壊のきざしなのである。

◎《連載特集》横山茂彦-天皇制はどこからやって来たのか
〈01〉天皇の誕生
〈02〉記紀の天皇たちは実在したか
〈03〉院政という二重権力
〈04〉武士と戦った天皇たち
〈05〉公武合体とその悲劇
〈06〉日本人はなぜ武士道が好きなのか?

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、最近の編集の仕事に『政治の現象学 あるいはアジテーターの遍歴史』(長崎浩著、世界書院)など。近著に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『男組の時代』(明月堂書店)など。

7日発売!月刊『紙の爆弾』創刊15周年記念号【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

感染が拡大する一方の新型コロナウイルスにより、世の中はだんだん殺伐とした雰囲気になってきた。そんな中、この騒動とのリンクのすごさに驚かされる映画がある。2016年に公開された韓国映画で、世界的に大ヒットした『新感染 ファイナル・エクスプレス』だ。

「新感染」公式HPより

◆コロナ騒動同様、感染が疑われる者を非感染者が拒絶

同作は、時速300キロ超で走る釜山行きの高速電車内でゾンビが大量に発生するパニック映画。ゾンビに襲われた客たちが次々にゾンビ化する中、幼い娘と一緒に電車に乗ったファンドマネージャーの男(コン・ユ)らが生き残るために奮闘する姿を描く。

この作品の原題は『釜山行』で、『新感染』は邦題だ。この邦題をつけた人は「新幹線」から着想したのは明らかだが、このダジャレのようなタイトルが「新感染症」とぴたりと重なっている。そこに、まず驚かされてしまう。

そんな映画は作中でもゾンビに襲われ、ゾンビ化することを「感染する」と表現しているのだが、感染が疑われる人間に対する非感染者の接し方も実によく現在のコロナ騒動とリンクしている。それは、主人公たちがゾンビ化した人たちが群れる車両を必死の思いで突破し、非感染者たちが避難している安全な車両に逃げ込もうとした時のことだ。

「こいつらも感染しているかもしれない!」

安全な車両に避難している非感染者がそう言い、主人公たちが入ってこないように車両のドアをロックしてしまうのだ。これは現在、感染の危険がある国や地域からの帰還者や訪問者を拒絶する世間のムードと酷似している。


◎[参考動画]『新感染 ファイナル・エクスプレス』予告編(2017/06/30)

◆夏には、続編が公開されるというが……

思うに、新型コロナウイルスは、人々の身体に与えるダメージの深刻さもさることながら、人々の心を蝕む力こそが驚異的だ。まだ発症していない感染者からの感染例も多く報告されているため、街中で誰を見ても、感染者に見えてしまう。そのため、人間同士で疑心暗鬼が広がっている。

新型コロナウイルスの感染を広めないための行動が求められるのは当然としても、感染した人が病状を心配されることなく感染したことを批判されるとか、感染した著名人やその関係者が謝罪しなければならないとか、この現在の空気は異常である。

とまあ、現在のコロナ騒動と実によくリンクする映画『新感染』だが、なんとこの夏、続編となる作品『半島』が韓国と世界各国で公開されるという。『半島』は、前作の4年後の廃墟となった地で生き残った人々が死闘を繰り広げる物語だそうだが……。

このタイミングで続編が出るというのも凄いが、夏ごろまでに映画館で普通に映画が鑑賞できるほどコロナ騒動が沈静化しているとは思い難い。一体、どうなるのだろうか。


◎[参考動画]『新感染 ファイナル・エクスプレス』続編 映画『Peninsula (原題)』米予告編(2020/04/02)

▼片岡健(かたおか けん)
全国各地で新旧様々な事件を取材している。近著に『平成監獄面会記』(笠倉出版社)。同書のコミカライズ版『マンガ「獄中面会物語」』(同)も発売中。

7日発売!月刊『紙の爆弾』2020年5月号 【特集】「新型コロナ危機」安倍失政から日本を守る 新型コロナによる経済被害は安倍首相が原因の人災である(藤井聡・京都大学大学院教授)他

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

◆あとを絶たない野宿者襲撃事件

3月25日深夜、岐阜市内の伊自良川の河川敷で野宿する81歳の男性が、何者かに石をぶつけられたり、暴行されたりして亡くなった。「知人が数人の男に蹴られた」と110番通報した女性は、男性と20年前から野宿生活を共にしていた。このような痛ましい襲撃事件があとを絶たないのは、なぜだろうか。

1983年、横浜市の公園などで次々と起こった襲撃事件で逮捕された少年らは、取り調べで「町を綺麗にするため、ゴミ掃除しただけ」などと供述した。

大阪では、2012年年10月1日、JR大阪駅近くの高架下で、野宿していた男性(当時67歳)が襲撃され、死亡する事件が起きたが、2014年大阪地裁で始まった裁判で、少年の1人は、「家を出てバイトに明け暮れていたため、たまに会う遊び仲間と憂さ晴らししようと襲撃を計画した」などと証言した。

◆釜ヶ崎の「安全・安心なまちづくり」は、誰を守るのか?

釜ヶ崎では、元大阪市長の橋下徹氏がぶち上げた「西成特区構想」のもと、「安心・安全なまちづくり」が進められている。2014年から始まった「まちづくり検討会議」の座長を務めた学習院大学教授・鈴木亘氏は、当時の釜ヶ崎についてインタビューで「どん底でしたね。ホームレスが溢れ、不法投棄ゴミが散乱し、昼から酒飲んで立ち小便している。町全体が臭気のドームでした。すべての社会問題を放り込んで、フタしてグツグツ煮えたまま放置されてる、まさに闇鍋状態。衰退しきったスラムでした」と憎悪と非難を露わにしていた

その後、「覚せい剤撲滅」「不法投棄の防止と啓発」「迷惑駐輪の防止と啓発」などを目的とした「5ケ年計画」で、警察官の増員や監視カメラの増設が実施され、西成警察主導の「あいりんクリーンロードキャンペーン」が始まった。驚くのは、パレードで訴える「町をきれいにしよう」「ゴミをなくそう」のスローガンが、野宿者を襲撃した少年らが口にした言葉と同じことだ。

パレードのあと参加者に飲み物や下着が配られる。後ろに手を組む作業服姿の警察官が、労働者を怒鳴る場面も

3月28日「センター開けろ!」と訴える集会とデモには約80名が参加した

◆2度目の不当逮捕

「安心・安全なまちづくり」を進める「まちづくり会議」では、一方で「あいりん総合センター」(以下センター)を解体した広大な跡地をどう使うかの話が進められている。昨年12月末、センターに入っていた「西成労働福祉センター」と「あいりん職安」(現在は、隣接する南海電鉄高架下に仮移転中)などの労働施設を、跡地の南側に作ることが決まった。便利で使い勝手の良い北側には、屋台村構想や、タクシー、観光バスの駐車場を作るなどの意見が上がっているという。

問題なのは、南側に建てられる労働施設の青写真に、もとのセンター内にあったシャワー室、娯楽室、足洗い場、洗濯場、昼間ごろりと横になって休息できる場所など、生活困窮者や野宿者のセーフティーネットとなる機能が一切備えられてないことだ。つまり野宿者、生活困窮者はいっそう過酷な状況に追い込まれることになる。

そうしたセンターの解体に反対し、「センター閉めるな!」「シャッター開けろ!」と訴えている仲間4名が、3月4日逮捕された。昨年11月、5月30日に監視カメラに手袋を被せ、撮影不能にしたという「威力業務妨害罪」での逮捕と同様だ。今回は昨年11月、逮捕された4名のうちの2名と、6月4日の件で逮捕された2名を加えての4名逮捕である。昨年は、逮捕後すぐに釈放されたが、その後検察の任意聴取や出頭要請に応じなかったことが、今回の逮捕の理由だ。4人はそのため大阪地検に直接逮捕され、地検で取り調べられたのち、大阪拘置所に移送され、翌日起訴されたのち、前回同様、検察の勾留請求、準抗告がいずれも棄却され、釈放された。

大阪地検は、なぜ2度も同じ失態を繰り返すのか?そもそも監視カメラにレジ袋や手袋を被せたことが「威力業務妨害罪」にあたるのか?昨年の逮捕後、勾留請求、準抗告を繰り返す検察に「こんな微罪で起訴なんて」と呆れた裁判官もいたと聞いたが、同じ容疑で、なぜ今回起訴できたのか?

監視カメラの増設に使われた費用は約1億2700万円

◆監視カメラと不当逮捕の狙いは?

逮捕された1人、釜ヶ崎地域合同労組の稲垣浩氏は、2015年、組合が入る解放会館前に設置された監視カメラを違法と訴えた裁判で勝利し、撤去させている。裁判を担当した大川一夫弁護士は「監視カメラの監視はプライバシー権を侵害するので一定の要件を満たしたときしか許されない。しかしある監視カメラはこの要件を満たしていないから違法であるとして撤去を命じたのである」と解説する。

また2016年7月の参院選前後に大分県別府警察署が、野党の支援団体が入る私有地に無断に監視カメラを設置した捜査方法を違法だとして抗議する、日弁連の会長声明の中でも、こう説明されている。「殊に、宗教施設や政治団体の施設等、個人の思想・信条の自由を推知し得る施設に向けた無差別撮影・録画は、原則的に違法である。このことは、労働運動等の拠点となっている建物に向けた撮影・録画を前提とせずに単なるモニタリング(目視による監視)の目的で設置されただけの大阪府警の監視カメラの撤去を命じた大阪地裁平成6年4月27日判決(その後、最高裁で確定)からも明らかである」。

朝、「特掃」の輪番を待つ人達でごった返す西成労働福祉センターの仮庁舎内。高齢者が多い

今回逮捕のきっかけとなった監視カメラは、もとは南海電鉄高架下のセンター仮庁舎の東側の道路と駐車場に向けて設置されていた。現場は、早朝から多くの労働者が仕事を求めて集まるが、「特掃」(高齢者特別清掃事業)の輪番紹介が始める8時過ぎには高齢者も含めてごったがえす場所だ。しかも、約200メートルの道路には信号機もなく、警備員が「車来るぞ!」と声をかけあうだけ。そうした危険な場所を監視し、事故など起きた場合に備えて設置された監視カメラが、ある日「センター開けろ」と訴える人たちの団結小屋に向きを変えられた。

それについて釜合労や釜ケ崎公民権運動が抗議し、説明を求めたが、大阪府は「センターを管理するため」というだけだった。しかし、センターのシャッター前で野宿する人たちが何者かに襲撃されたり、テントに火をつけられても、犯人は一向に逮捕されてはいない。あれだけ鮮明な画像を証拠に仲間を逮捕したくせに、ほかの犯人は分からないというのか。こうしたことからも、監視カメラが狙うのは「センター閉めるな」「シャッター開けろ」と訴える人たちを監視し、威圧するためのものであることは明らかだ。

しかも新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、気密性が高く換気が悪い上、狭い場所に大勢の人たちを詰め込むシェルターなどではなく、広々として通気性の良いセンターなどを、早急に開放することが必要だ。

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための自粛要請の影響で、今後仕事をなくし路頭に迷う人たちが、リーマンショック後より遥かに多いと予測されるが、そうした生活困窮者が最後の拠り所として集まってくるのが、釜ヶ崎だ。そのような釜ヶ崎で、「町をきれいにしよう」「ゴミをなくそう」と訴える「安心・安全のまちづくり」キャンペーンにより、野宿する人たちが、ふたたび少年らに襲撃されてしまうようなことが起こってはならない。

JR大阪駅の高架下で野宿者を襲撃した少年の1人は、 野宿者を「俺たちと全く違う世界の人間と思っていた」と証言したが、それは違う!「野宿者も私たちと同じ人間。差別や排除してはいけない」。そう教えていくのが、私たち大人の責任だ。

▼尾崎美代子(おざき みよこ)

新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 菅直人元首相が語る「東電福島第一原発事故から九年の今、伝えたいこと」他

世界レベルでは、あまりにショボい経済対策

コロナウイルス経済恐慌に対して、アメリカ政府は最大で220兆円(2兆億ドル)の経済対策を行なうという。トランプ大統領は「リセッションに陥れば、自殺者は数千人になるだろう」とのべ、1人あたり最大約13万円の給付するほか、売上げ落ち込みがいちじるしい飲食業や宿泊業界への支援も検討している。カナダはコロナウイルスの影響を受けた人に15万円、ドイツは従業員5人以下の小規模事業者に3カ月で最大108万円(総額6兆円)、とくにアーチスト(イベント)への支援を手厚くするという。

かたや、わが安倍政権が準備している経済支援策は60兆円だという。ただし赤字国債発行は15~20兆円と渋く、通常の追加予算をコロナウイルス名目で付け替えるだけだという。財務省がいうプライマリーバランスを口実に、お札を刷るのをためらっているのだ。よく比較値として出される2009年のリーマン・ショックで麻生内閣が行なった経済対策は約56兆8000億円、個人給付は1万2000円だった。今回の個人給付は、10万円が検討されているという。所得に関係なく10万円のバラマキに効果があるかどうか、とくに飲食店アルバイトやフリーランス(イベント関連)への影響が強い今回の感染不況の場合、そのバラマキ方が問題となる。

◆社会福祉協議会が窓口?

4月1日の国会答弁において、安倍総理は「フリーランスや個人事業主の方で、新型コロナウイルスの影響で生活費が逼迫している方は支援します」「全国の社会福祉協議会を相談窓口に」「無利子・無担保で最大毎月20万円(3カ月)を貸し付ける」「返済免除も可能」と明言した。この答弁が本当なら、60万円の融資が得られることになる。

が、社会福祉協議会は予算が行政ベースとはいえ、半官半民組織である。フリーランスの、とくにイベント関連の事業評価に裁量権があるとは、とても思えない。ためしに電話取材をしたところ「ケースバイケース」という回答しか得られなかった。イベントなら多数の人員・団体が参加する企画書でその計画性がわかると思われるが、われわれのようなライターや作家、個人のアーチストの個人的な企画では土台無理だろう。

それにしても、フリーランスにコロナウイルスとの関係で所得の低減を証明する方法は可能なのだろうか。じっさいはフリーランスの場合には、仕事が数万円単位、数百万円単位で動く場合もあれば、長期的な仕事が動かずに収入がゼロになる年もある。したがって、事業収入とコロナウイルスとの関連性を証明するのは、きわめて難しいといえよう。出版・著作物なら、多い年もあればない年もある。数年間の仕込みでイベントを準備し、そのイベントが自粛で中止となった場合、その架空の収益を補填することはほとんど不可能ではないか。現にイベント関連の支援策は、日本では何も講じられていないのだ。これでは骨抜きの経済支援策というほかない。

じっさいの現金給付は、一斉休校の影響で仕事を休んだ子供を持つ親のみが対象となり、1日4200円が支払われるだけなのだ。スポーツやライブイベントなど、政府の要請でイベントが中止になったとしても、経済的な補償はないのが実態だ。そもそもフリーランス(個人事業主)とフリーター(派遣社員・アルバイト)を混同しているところに、安倍政権の「働き方改革」の錯誤があると指摘しておこう。

たとえば不定期な働き方をしているアルバイトへの支援が、どうやって可能なのだろうか。中華料理屋を中心に、複数の店舗でアルバイトをしていた私の友人は、東京での生活をあきらめて実家(愛知県)に帰ると連絡があった。飲食店への支援も、安倍政権においては無策である。

フランスでは、ロックダウンしたパリで営業中止となった店舗のテナント料・水光熱費・従業員の給与を政府が補填している。イギリスでも一斉休業は公的な補填があったからだ。休業した飲食店の従業員に月額最大32万円、給与の8割が補填されているという。ドイツも上記のとおり、108万円の給付金が政府から補填されているほか、テナント料の支払い延期、家賃滞納を理由に追い出すことを禁止したという。とくにイギリスではフリーランスへの支援が、過去三年間の収入をもとに、コロナウイルスの影響を国税庁が算定するという具合に、きわめて具体的なのだ。

◆リーマン級の経済危機ではないのか?

いっぽう、与党内からは農産物や水産物の販売促進のための「お肉券」「お魚券」が提案されたが、国民の猛反発を受けた。また与党内から消費税の一時ゼロパーセント化が提言され、共産党の議員からも低減案が国会で質問されたが、安倍総理以下の政権幹部は一顧だにしなかった。消費税を上げるときに「リーマンショック級の経済危機があれば、消費増税は中止するかも」(安倍総理)は嘘だったようだ。

とりあえず、形になっているのは中小企業支援策として無利子の融資が、前倒しで実行されているという(筆者の周辺の企業)。この場合に融資審査に必要とされるのは、言うまでもなく決算書である。かろうじて3月決算の企業だけが、融資の恩恵を受けることになる。フリーランスには、きわめて厳しいコロナウイルス不況となりそうだ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、医科学系の著書・共著に『「買ってはいけない」は買ってはいけない』『ホントに効くのかアガリスク』『走って直すガン』『新ガン治療のウソと10年寿命を長くする本当の癌治療』『ガンになりにくい食生活』など多数。

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

《4月のことば》まいにち 元気よく きげんよく (鹿砦社カレンダー2020より/龍一郎・揮毫)

4月になりました。

新型コロナウィルス騒ぎで、1月から3月まで、あっというまに過ぎてしまいました。

まさに「1月は去(い)ぬ、2月は逃げる、3月は去る」でした。

この打撃は大きく、例えばここ甲子園では、例年なら全国から高校野球ファンが集い、これが済めばプロ野球ファンが集い賑わうのですが、今年は商店、飲食店、旅館:ホテルの経営者のみなさんは頭を抱えておられます。

今後、コロナの終息が遅れれば、経済的な打撃は計り知れません。

この期に及んで、オリンピックを延期するか中止するかの議論自体ナンセンスです。

元々世界に向かって大嘘をついて開催権を取得したわけですから、こんな呪われたオリンピックなど即刻中止すべきでしょう。日本が敗戦から再興する過程で開いた1964年の東京オリンピックとは意味が全然違います。

ここまで来たら、オリンピックに費やす資金を、福島や、大災害の被災地の復旧・復興に投入すべきでしょう。常識的に考えて、そうではないでしょうか。

本来なら、年度初めで、若いみなさんは進学、就職で、私たちも気分一新して出発する季節なのですが、「元気よく、きげんよく」過ごして行こうではありませんか!
 

タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

鹿砦社創業50周年記念出版『一九六九年 混沌と狂騒の時代』

NHKから国民を守る党の立花孝志党首が3月27日に静岡県庁で記者会見し、森友学園前理事長の籠池泰典氏(詐欺罪などで懲役5年の有罪判決、控訴中)に公認候補としての立候補を要請した。籠池被告は応じる方針だという。立花氏は籠池氏を候補者に選んだ理由を「票が取れる人だから」と言明した。

籠池氏が政界に出馬する以上、みずから引き受けさせられた補助金不正受給事件での有罪はともかくとして、そこに至らせた安倍総理と昭恵夫人および麻生太郎財務大臣の「不正指示」を明るみに出そうというものにほかならない。その手先となったパワハラ官僚こと佐川宣寿元国税長官(現いわき応援大使)の罪業も明らかにするものとなるはずだ。たとえ、その人物が教育勅語を幼児たちに暗唱させるという、とんでもない教育観の持ち主であっても、トカゲのシッポ切りのごとく、蜜月の関係を振り払って監獄送りにする薄情な総理への批判として、国民の多くは支持するのではないか。というのも、政界およびリベラルな論者、そして保守層の中から、安倍晋三を訴追すべきという機運が生じているからだ。

◆現実性をおびてきた安倍晋三逮捕

すでに昨年11月には桜を見る会問題で、斎藤貴男氏(ジャーナリスト)や神田香織(講談師)など47名による、公職選挙法違反・政治資金規正法違反での告発が行なわれている。そして赤木氏の遺書が明らかになり、その遺書に対して「新たな事実はない」「再調査を行うつもりはない」と開き直る安倍総理。遺族(赤木氏の妻)の「自殺の原因は、安倍総理の発言を佐川理財局長(=当時)が忖度した」という主張に対しては、赤木氏が遺書に書いたわけではない、と切り捨てる安倍総理。そして野党議員の追求をかわす総理のかたわらで、ニヤニヤしながら笑みを見せている麻生財務相。憤死した死者に鞭打つかのような冷酷さに、国民の怒りは頂点に達しているといえよう。

決裁文書の改ざんについて「局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました」と具体的に記され「すべて、佐川理財局長の指示です」(赤木氏の遺書)が、ほかならぬ安倍総理の「わたしと家内が(森友学園不正売却に)関わっていたら、すぐに総理大臣も議員も辞めますよ」なる感情的な発言に起因することを、ここに至っても頬かむりしようというのだ。

こうした安倍首相の態度に対して、赤木さんの妻は23日に2度目となるコメントを発表した。そのなかで「怒りに震える」と感情をあらわにしている。

「今日、安倍首相や麻生大臣の答弁を報道などで聞きました。すごく残念で、悲しく、また、怒りに震えています。夫の遺志が完全にないがしろにされていることが許せません。もし夫が生きていたら、悔しくて泣いていると思います」

「再調査をしないとのことですが、何を言われても何度も再調査の実施を訴えたいと思います。財務省の中の人が再調査をしても同じ結論になるので、是非、第三者委員会を立ち上げて欲しいと思います。このままうやむやにされるとすれば、夫の遺志が全く果たされないことになります」

赤木さんの妻は27日、第三者委員会による事実関係の再調査を求めて、インターネットサイトを使った署名活動を始めた。

財務省という国の最高行政機関が、ひとりの男の気ままな言動を忖度することで、完全にゆがめられてきたのである。いまや国民の多数の声を結集し、第三者委員会による全貌の解明を求めようではないか。いや、事件の全貌解明にとどまらず、安倍総理と麻生大臣の訴追まで国民的な運動を展開するのでなければならない。

本欄の3月25日付「検察VS官邸? 安倍政権肝いりの夫婦議員・河井克行と河井案里の両議員秘書の起訴は、三権分立を確証するか? 健全な司法のために期待される検察の『叛乱』」で明らかにしたとおり、安倍総理はみずからに迫る訴追の危機に対して、検察幹部人事に介入することでわが身を護ろうとしている。その思惑の一端はすでに、元法相河井克行・案里夫妻が取り調べを受けることで、破綻をきたしつつある。安倍総理の逃げ込みを許すな。

◆国民に禁じた花見宴会を、高級レストランで

そして国民の怒りは安倍総理の木で鼻をくくる態度のみならず、森友学園事件の当事者ともいえる昭恵夫人へのものにもなっている。

新型コロナウイルスが猛威をふるう中、政府および自治体がイベントや花見の自粛を国民に求めている状況下、昭恵夫人はレストランで多人数の花見に興じていたというのだ(「週刊ポスト」)。総理夫人が花見に興じているいっぽうで、国民には外出の自粛を強要し、花見ができる公園を封鎖する政府に、なぜ従わなければならないのだろうか。

そればかりではない。赤木氏が自殺した2018年3月7日の2日後の9日昼過ぎには、自殺の事実がマスコミで大きく報じられたにもかかわらず、その夜に昭恵夫人はなんと銀座でパーティに参加していたというのである。パーティーには神田うの、中田英寿(元サッカー日本代表)、別所哲也(俳優)らが参加し、神田うののインスタグラムには、にこやかにポーズをとっている昭恵夫人の姿が写っていたという。みずからの言動で自殺した報道がなされているときにパーティに興ずるとは、何という冷血漢であろうか。

閣議で「公人ではない」と議決された昭恵夫人を証人喚問に引きずり出し、安倍総理にかかる疑惑のいっさいとともに、奈落の底に突き落とすべき時が来た。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業。「アウトロージャパン」(太田出版)「情況」(情況出版)編集長、最近の編集の仕事に『政治の現象学 あるいはアジテーターの遍歴史』(長崎浩著、世界書院)など。近著に『山口組と戦国大名』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『男組の時代』(明月堂書店)など。

いまこそタブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』2020年4月号

『NO NUKES voice』Vol.23 総力特集〈3・11〉から9年 終わらない福島第一原発事故

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