「04年ごろから、メディアに名誉を棄損されたケースでの慰謝料は、500万円が基準となりました。これは『グローバル化』によりそうなっていると聞いています。ただし今は600円前後が平均となりつつあるのです」(弁護士)
あなたのプライバシーがメディアに露出する。あなたはどうするか。
あなたはメディアを告訴する。退けられてしまう三条件とは何か。

真実性の抗弁とは、問題とされている表現行為が、たとえある人の社会的評価を低下させるものであるとしても、公共の利害に関する事実を摘示するものであって(公共性)、その目的が専ら公益を図ることにある場合に(公益性)、摘示した事実が真実に合致するならば(真実性)、名誉毀損の成立を認めない、とする考え方である。3つ揃わないと、プライバシーは暴けない。
1. 摘示した事実が公共の利害に関する事実であること(公共性)
2. その事実を摘示した目的が公益を図ることにあること(公益性)
3. 摘示した事実が真実に合致すること(真実性)

つまり、政治家や官僚など公の立場にある人の場合、記事に公益性が認められる場合、名誉棄損にはあたらないという考え方をする。これは、アメリカ連邦裁判所の考え方が大きく影響している。公人に言及する表現行為は、現実的悪意をもってなされた場合でなければ、名誉毀損にはならない、とする考え方である。

たとえば、「週刊新潮」の記事で名誉を傷付けられたとして、日本サッカー協会と川淵三郎名誉会長、犬飼基昭前会長が発行元の新潮社に計3300万円の損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁(相沢哲裁判長)は5月29日、同社に対し、計275万円を川淵氏と犬飼氏に支払うよう命じる判決を言い渡した。
週刊新潮編集部は「主張の一部が認められず、残念。判決文を精査して今後の対応を決めたい」と言っている。
名誉棄損の裁判では「記事に公益性があるかどうか」を争う。
確か『週刊文春』とジャニーズ事務所の裁判では、一部「ジャニーズの社長の私生活」は社会的影響や公益性がある、と判断されたはずである。いい判例だ。

さて名誉棄損裁判での慰謝料は、いま流行の「グローバル化」しているわけで、「来年は700万円がひとつの基準になりうるのではないか」と法曹界では言われている。直近では、 貴乃花夫妻対週刊現代の裁判で、東京地方裁判所 が出した判決では、(平成21年7月13日判決)認容額約840万円、謝罪広告の掲載、名誉棄損の防止体制の不備による野間社長の賠償責任も認容した。 貴乃花夫妻対フライデー事件、控訴審では東京高裁 が平成21年11月18日判決で賠償額を715万円に増額、謝罪広告は認めず。中田前横浜市長対週刊現代の争いでは東京地方裁判所での平成22年10月29日判決で、裏付け取材が殆どなく、情報源が前市長と対立する市議等として、550万円の支払と謝罪広告を命じた。

以上、見てきたように「慰謝料は、名誉棄損裁判については、今の段階では700万円くらいですが欧米では数千万円は当たり前。海外の圧力に弱い日本では、もうすぐ一千万円を超えるかもしれませんね」(弁護士)
今後、裏取り取材がメディアの基本線として、さらに強化されていくだろう。

(渋谷三七十)