強制わいせつ罪に問われながら無罪を訴えた長男の裁判(2007年に実刑判決が確定)で虚偽のアリバイ証言をしたとして2006年8月に偽証容疑で逮捕された埼玉県の夫婦が、さいたま地検の検事たちによる違法な取り調べで精神的損害を受けたとして慰謝料など770万円を求める国家賠償請求訴訟をさいたま地裁に起こした結果、昨年6月に国が計130万円の慰謝料を支払うことで和解した事件をめぐり、当事者の検事たちが検察庁内部で何のお咎めも受けていない疑惑が浮上した。

訴訟記録によると、偽証容疑で逮捕された原告夫婦のうち、夫は容疑を認めて起訴猶予とされたが、否認を貫いて起訴された妻は一、二審共に無罪を勝ち取り、2008年に無罪判決が確定。国賠訴訟では、さいたま地検の取り調べで妻が久保裕司検事に「人間のくず」「子供を産んだことが間違いだ」「結婚したことが間違いだ」「お前らのことは絶対に許さない」「獄中死でもしろ」などの暴言を浴びせられるなどしたと主張し、夫も加藤俊治検事から「奥さんが獄中で倒れるんじゃないか」「死ぬんじゃないか」と虚偽の事実で脅かされるなどしたと訴えていた。これに対し、国側は「取り調べで不適切な点があった」と認め、妻に80万円、夫に50万円の慰謝料を支払うことで和解したという。

そこで筆者は先日、さいたま地検に対し、(1)国は、誰のどんな言動を不適切と認めたのか、(2)国は、不適切な点があった検察官に求償しているのか、あるいは、不適切な点があった検察官や管理責任者が自主的に国に130万円を弁償した事実は存在するか――という2点を問い合わせた。すると、同地検は「コメントできない」という。

そこで今度は最高検に対し、上記の2点に加え、(3)不適切な点があった検察官に対し、何らかの処分や指導をしているのか――という計3点を問い合わせた。しかし最高検も、(1)について、「原告の立場に対する配慮が不十分な発言などがあったということである」という曖昧な回答をしたのみで、(2)と(3)については、「当方は承知していない」と他人事のように言うのみだった。

しかし、仮にさいたま地検の検事たちが原告夫婦の主張したような発言を本当にしていたなら、本来は国が支払った130万円の慰謝料を弁償させた上、検察庁として何らかの処分などをすべきだろう。そういう大事なことについて、「当方は承知していない」などと他人事のように言って済ませる最高検もあまりにも無責任である。これでは、国に130万円を浪費させた「不適切検事」たちが検察庁内部で何のお咎めも受けていないのではないか、と疑われても仕方ないだろう

そこで、面倒ではあったが、最高検のホームページに設置された監察指導部への情報提供窓口のファームから、さいたま地検の検事たちが取り調べでどんな不適切なことを行ったかを調査した上、必要な指導などに当たるように要請した。何らかの結果が出たら、また報告したい。

(片岡健)

★写真は、取り調べで不適切な点があったと認められ、国に130万円を浪費させたさいたま地検