小泉進次郎の環境相兼原子力防災担当相への就任。それを仕掛けたのは、菅義偉および田崎史郎だった。月刊「文藝春秋」9月号の「令和の日本政治を語ろう」というキャッチで、小泉進次郎と菅義偉の初対談が12頁にわたって掲載された。


◎[参考動画]環境相に小泉進次郎氏 第4次安倍再改造内閣が発足(共同通信2019/9/11公開)

◆進次郎を誘った菅官房長官の狙いは明らかだ

その中で菅氏は「進次郎という政治家をずっと見ていて感じるのが、何かをやろうという意思を常に持っているというところ」さらに「改憲は自民党の党是です」と迫ると、進次郎氏も「改憲にはもちろん賛成です」と応じる。田崎氏が「九月には内閣改造、自民党役員人事が控えています。進次郎さんはもう閣僚になっていい?」と振れば、菅氏は「私はいいと思います」と言明している。この記事は小泉進次郎を閣僚に登用する宣言だったのだ。

そして滝川クリステルとの結婚報告を、首相官邸で行なうという政治の私物化を堂々とマスコミに披露した。マスコミもそれを批判するどころか、まるで芸能人扱いだった。

ご存じのとおり小泉進次郎は無派閥で、どちらかといえば石破茂に近いとされてきた。というのも自民党農林部会で活動し、内閣府政務官として農業および地方創生で石破茂の活動を補佐してきた。のみならず、安倍総理と石破氏が総裁を争った党内選挙では、公然と石破氏への投票を明らかにしてきたからだ。ナショナリズムと個人的感情、そして独裁的な手法で政治を切りまわす安倍総理に、小泉進次郎も危険なものを感じていたからにほかならない。そして父純一郎の反原発政策を、基本的には引き継いでいるとされる。

進次郎を誘った菅官房長官の狙いは明らかだ。参院選挙で与党改憲勢力が3分の1を割り込み、自民党も議席を減らしている。消費税増税でさらに景気が冷え込み、アジア外交の行き詰まりから、安倍政権が死に体になるのは目に見えている。そこで話題づくりのために、国民的に人気のある小泉進次郎の閣僚起用ということになったわけだが、狙いはそれだけではない。あらゆる政治家は、ナンバーツーの存在を許さない。独裁的な政治家であればあるほど、政敵になりそうな政治家を潰しにかかるのだ。これまで一匹狼的に、いや孤高の立場から政治をコメントし、国民がその言動を注目している小泉進次郎人気を取り込み、しかし政治的な試練を与えることで「育成する」と称しながら、そのじつ潰しにかかっているのが菅官房長官および安倍総理の本当の思惑なのだ。

◆意地悪な人事だった

たとえばアメーバニュースの座談会で、ジャーナリストの堀潤氏は「(小泉氏の入閣が)意地悪な人事だった」と述べている「2020年にはオリンピックがあり、韓国もそうだが諸外国から日本の原発に関する注目度が高まっていく。政府は『アンダー・コントロール』と言っているが、その時に差配を振るうのが小泉さんだ。加えて、以前に比べて環境に対するブランド力は上がっている。その2点を踏まえて『やれるもんならやってみな』という思惑も見え隠れする」と言うのである。

いっぽうで、元日経新聞記者の鈴木涼美氏は「首相候補といわれている小泉さんを無傷で置いておくために環境大臣にしたのでは」と指摘した。「環境省は常駐の記者がいないくらいニュースに乏しいところだった。ニュースにならないということは安全ということだ」という。

ネットニュースのスマートフラッシュの記事によれば、進次郎氏を長年取材する政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、こう指摘する。

「安倍(晋三)首相が、進次郎氏に環境相を打診したのには、“嫁いびり” というか、試練を与え、政権批判を封じ込めるという意図がある。父・純一郎氏は原発に反対。その整合性は取れるのでしょうか」と。父の小泉純一郎氏は「(原発の廃止に)大いに期待していると」記者会見で語気をつよめた。


◎[参考動画]「自然エネで発展できる国に」息子・進次郎に要望(ANNnewsCH 2019/9/15公開)

◆嫁いびりという見方も

初出張は、前任者の“お詫び行脚”だった。小泉進次郎氏は、就任翌日(9月12日)に福島県を訪問している。前任の原田義昭衆院議員が、福島第一原発の汚染水について、「海洋放出しかない」と発言したことを謝罪したのだ。

「この発言によって、お怒りになった方、またたいへん苦しい思いをされた方にまず会って、自分なりの気持ちをお伝えしたいと思った」というものだ。

原田氏の発言については、科学的な所見をふまえたものという評価もある(高橋洋一嘉悦大学教授・現代ビジネス)。高橋教授によれば、被災者に寄り添うだけでは汚染水問題解決しないということになる。

「環境相は、いまや発信力だけではなく、調整力や結果も問われる難しいポストになってしまった。大臣になって “逃げ” の発言が多くなれば、失望が広がりかねません」(政治ジャーナリストの角谷浩一氏、スマートフラッシュ)という見方もある。そして厳しい意見もある。

「前任の原田氏が、あえて批判の的になることを覚悟して『海洋放出』というボールを投げた。ところが、進次郎氏はじっくり考えずに動いた。世界の事例から考えても、処理水は希釈し、海洋投棄しても何ら問題はない。進次郎氏はその可能性をつぶしたのではないか。進次郎氏は、自らの発信力を『風評被害払拭』に向けるべきだ。寄り添っているフリだけ巧みにしているようでは、今後が心許ない」(ジャーナリストの有本香氏、夕刊フジ「以読制毒」)。これで安倍政権が、単に小泉人気を取り込んだだけではなく、閣僚人事が熾烈な「政局」であることを見ておく必要があるだろう。

◆よく似ている安倍総理と進次郎氏

それにしても、安倍総理と小泉進次郎氏はよく似ている。国民への好感度は、明快なしゃべり方、演説の能力によるものだ。演説の能力とは、同時に質問をかわして自分勝手な演説でそれを答弁に代える詭弁的な能力でもある。言葉の軽さと言い換えてもいいだろう。

難しいとされた日朝交渉に、当時官房副長官として登場した安倍氏は、自民党のプリンスとして国民的な期待感のなかで総理まで登りつめた。ちょうど20年前の安倍氏と、現在の小泉氏の姿はかさなって見える。政治家になる前史からたどってみたい。

その人の学歴を云々するのが、やや下品な批評であることを承知で解説しておくべきであろう。ふたりとも出身校は一流とはいえない。

安倍晋三氏は小学校から大学まで三菱財閥系の成蹊学園で、東大や慶応をめざした様子はない。東大法学部からキャリア組で警視庁入りし、のちに警察庁の審議官までのぼりつめた超エリートの平沢勝栄が家庭教師についても、晋三氏はお坊ちゃんが行く一貫校卒だったのから、その学力は推して知るべし。しかし、キャリアを積むためにアメリカに語学留学し、語学学校をへて南カリフォルニア大学に留学。神戸製鋼に入社し、ニューヨーク事務所、東京本社でビジネスキャリアを積んだ。南カリフォルニア大学はスポーツで有名だが、アメリカの最難関校とされている名門だ。その後、外務大臣を務めていた父晋太郎氏の秘書官になる。

小泉進次郎氏も、小学校から関東学院である。関東学院大学といえば、一時ラグビー部(春口監督)が大学選手権を連覇するなどの有名校(のちに大麻栽培の生活事故で凋落)だが、学力的にはトホホである。かつては赤軍派の拠点校として有名だった。東大闘争の安田講堂死守戦では、社学同の籠城部隊の主力だったという。横須賀にちかい六浦キャンパスは環境がいいといえばいいが、横浜から遠すぎる。小泉氏も安倍氏と同様に、国内でのトホホな学歴を、アイビーリーグの名門コロンビア大学に留学することで克服した。その後、ロンドンタビストック人間関係研究所配下の戦略国際問題研究所非常勤研究員をへて、父純一郎氏の私設秘書を務める。

◆安倍・小泉両家に共通する選挙基盤をささえてきた「黒歴史」

だが、ふたりが似ているのは、学歴やその後のキャリアアップだけではない。安倍・小泉両家ともに、反社会勢力との密接な関係で選挙地盤を築いてきた、隠された歴史があるのだ。

小泉家においては、横須賀一家がその選挙基盤をささえてきた「黒歴史」がある。横須賀一家とは稲川会の中核組織であり、現在も八代目の金澤伸幸が会長補佐を務めている名門だ。小泉純一郎を支援していたのは五代目にあたる石井隆匡、すなわち二代目稲川会会長、その人である。石井会長は竹下登にたいする皇民党の「褒め殺し」を止めたことで知られる。北祥産業というフロント企業を経営し、政商として自民党を操った。

三里塚闘争の「話合い」も北小産業で行なわれた。その石井会長の子分に浜田幸一元衆院議員、事実上の兄弟分に金丸信元自民党副総裁がいる。石井会長は金丸信と竹下登に「裏総理」と呼ばれ、赤坂の東急ホテルで会合するときには、若き日の小沢一郎がボディガードよろしくラウンジの入り口に立っていたという。

いっぽう、安倍家も小泉家におとらずヤクザと親しい歴史を持っている。地元の合田一家とは長らく、選挙協力の関係にあったという(地元関係者)。そして安倍晋三自身が、やはり対立陣営への選挙妨害などで特別危険指定暴力団の工藤會と密接交際をかさねていたのは、昨年8月の本欄および「誰も書かなかったヤクザのタブー」(タケナカシゲル著、鹿砦社ライブラリー)にくわしい。

かような相似性を持っているがゆえに、安倍総理の側からは小泉進次郎を手玉に取るのはたやすいことであろう。進次郎氏のほうもまた、安倍総理の成功に自分をかさねて政治家としてのキャリアアップの図を描き、シンパであった石破氏を見限ったのであろう。今回の入閣がキャリアアップにつながるのか、それとも安倍総理に潰されるのか、最大の興味をもって見守りたいものだ。

▼横山茂彦(よこやま しげひこ)
著述業、雑誌編集者。近著に『ガンになりにくい食生活』(鹿砦社ライブラリー)『男組の時代――番長たちが元気だった季節』(明月堂書店)など。

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