安倍政権がごり押しして通した特定秘密保護法がひどいということは、今さら言うまでもない。
だが、『朝日新聞』に代表されるような大メディアが、これに声を大にして反対するのを見て、違和感を覚えたのは私だけだろうか。

沖縄県の仲井真弘多知事が、普天間基地の移設先として、名護市辺野古の埋め立てを承認した。
普天間には昨年の10月から、オスプレイが配備されている。
そもそもの普天間移転の理由は、住宅街に接していて危険だからだ。そこに、事故が多く危険性が指摘されているオスプレイを配備する。移設問題が膠着しているのを見ての、国家的な嫌がらせである。
これに怒った沖縄の人々は、配備前の9月29日、普天間基地のすべてのゲート前に車を並べてふさぎ、座り込んで抗議した。非暴力の直接行動である。
翌30日、沖縄県警によって実力排除が始り、「ウチナンチュー同士で、なんでこんなことしてるんだよ!」という悲痛な叫びが上がる。
機動隊に囲まれながら、沖縄で歌い継がれている反骨の歌『安里屋ユンタ』を、涙ながらに歌う女性もいる。
琉球朝日放送の三上智恵さんが監督した映画『標的の村』にその様子は収められ、今も公開が続いている。

穏やかな人々が、直接行動に出た。沖縄の怒りが現れたできごと。
だが中央のメディアは、どこもこれを報じなかった。
国家の秘密でもなんでもない。白昼公然と起こった出来事である。

原発の問題も同じだ。原発そのものに危険があり、そこから出てくる使用済み核燃料は処理のしようがないということは、30年以上前から分かっていた。
原子力の専門家を初めとして多くの識者が指摘してきたことで、なんら国家の秘密ではない。
それでも福島第一原発の事故以前には、東電マネーによる支配を背景にして、安全神話を振りまいてきたのが大メディアだ。

こうした例は枚挙に暇がない。
そんな大メディアが特定秘密保護法反対などといって、いかにも今まで国家の秘密を暴いてきたかのように振る舞うのを見ると、どうも鼻白んでしまう。

(深笛義也)