西日本大水害2018からこの夏で4年が経過しました。(前回記事)

くどいようですが、7月8日に安倍晋三さんが凶弾に斃れられたことはお悔やみ申し上げます。

しかし、今年も各地でこれまでにないような記録的な大雨が降っています。また、コロナと記録的な暑さのダブルパンチで医療の逼迫もつたえられています。4年前の夏の安倍晋三内閣による危機管理を検証していくことは、人々の命を守っていく上でますます重要ではないでしょうか?

国葬はいわば天皇と同格の扱いをすることになります。そのことで冷静な検証ができなくなることを恐れます。

◆近所に建設会社があると復旧スムーズ、しかし安倍さんの政治は?

時は、2018年7月19日に戻ります。筆者は安佐北区口田の被災現場に4たび入りました。この時はマンション一階の駐車場の泥の搬出に従事しました。

ここでは近所の建設会社の重機が活躍しました。建設会社というのは、1990年代のいわゆるゼネコン疑獄以降、すっかり悪者にされてしまいました。

そして、小泉政権では大幅に公共事業費がカットされてしまったのです。さらに、残念ですが、民主党も新自由主義的な側面もあり、公共事業費を当初予算ベースでは減らし続けたのです。「コンクリートから人へ」というスローガンは今にして思えばまずかった。あそこは財政出動で防災、インフラの更新などもきちんとやり、経済を底上げしていれば、民主党はもうちょっと政権を防衛できたかもしれません。https://www.mlit.go.jp/page/content/001383015.pdf

やはり、一定程度、建設関連の人材がいるということは、大事なことです。

なお、安倍晋三さんは財政出動をしたといわれていますが、当初予算ベースでいえば、2013年度から2018年度までずっと横ばいです。2013年度に民主党政権からちょっと増やした後は、ほぼ横ばいなのです。

国土強靭化計画とはいったい、何だったのでしょうか?

せめて公約を守っていれば、助かった命もあったかもしれません。一方で、民主党の後身たる立憲民主党の皆様にも反省していただきたい。公共事業を減らしすぎた問題ではまず反省していただかないと、自民党を批判しても、説得力がありません。とはいえ、総理大臣はずっと安倍晋三さんだったわけで、やはり安倍さんの責任は重いと言わざるを得ません。このことをとっても、とてもではないが、安倍さんが国葬に値するとは思えないのです。筆者は、「財政出動で人もコンクリートも」をガツンと訴え続けます。

◆筆者、再び熱中症でぶっ倒れる 7/20

筆者は7月20日、再びぶっ倒れました。ここ3日が被災地ボランティア活動→出勤で入浴介助→ボランティア活動で、頭が重いなと思って、この日出勤したが、昼休みに気分が悪くなり、病院で点滴を受けました。土砂が残っていると焦って無理をしがちです。

一方、このころ、安倍総理は、国会やマスコミに対して「災害対応は万全だ」という答弁を繰り返しておられました。大量の土砂を見ていると、総理の発言があまりにも無神経に聞こえました。それがさらに神経を逆なでし、イライラさせられたのです。

◆7/21 仁比聡平、山本太郎らの活躍で民有地の土砂を公費で撤去へ

これまで、民有地の土砂は地主が自己責任で撤去するようになっていました。しかし、あまりにも土砂が多いために、撤去を公費で行うことになりました。これは、仁比聡平や山本太郎が参議院において声を上げたことが大きく作用しました。

それにしても、憲法に緊急事態条項がなくて本当に良かったです。緊急事態条項があれば、国会も閉じられ、下手をすれば仁比や山本のような議員は弾圧されていたかもしれない。緊急事態条項がむしろ、危機管理を後退させたかもしれなかったからです。

◆7/28 前代未聞の閣議を取りやめのニュース

筆者がぶっ倒れて一週間以上。台風が関東沖・東海地方経由で瀬戸内地方に近づいていました。

そんなとき、安倍内閣は総理の休息のためと称して閣議を取りやめたのです。なんということでしょうか?

この危機のときに閣議を取りやめるとは?やはり、緊急事態条項なんて導入しても、危機管理のアップには使われない。そのことの確信を強めた事件でした。

◆8/1 似島で災害ボランティアに

筆者は8月1日、猛暑の中、南区の沖合の似島に入りました。この似島は第二次世界大戦前、大日本帝国陸軍の検疫所がありました。第一次世界大戦ではドイツ軍の捕虜も収容されました。

被爆直後は多くの被爆者を収容。戦後は原爆孤児のための学園も置かれました。また、観光の島としても栄えました。この小さな島の上にも7月6日、強烈な雨雲が居座り、島内各所で土砂崩れを起こしたのです。

すでに、筆者が訪れた段階でも、港のわきには、写真のようにうずたかく土砂がおかれていました。島内の道路は非常に狭く、重機や自動車も入れない道が多いのです。従って、文字通り、人海戦術でやるしかないのです。遠くは神奈川県からボランティアに駆け付けられた女性がおられました。テレビで似島の惨状をご覧になり、車を飛ばして駆け付けてこられたそうです。

◆なかなか補正予算を組まぬ安倍晋三さん

さて、弱者に厳しい新自由主義の代名詞といえば小泉純一郎さんです。しかし、その小泉さんも、2005年1月、記録的な大雪で各地に被害が出ると、迅速に1.3兆円の補正予算案を提出しています。いっぽうで、安倍総理は通常国会が終わると、臨時国会も開きさえもしませんでした。一方で、安倍晋三さんは、自民党内の要人との会合は欠かさず、総裁選挙だけは万全の態勢をかためつつありました。

◆いらだち高まる被災地「総理を暗殺するやつがいたら面白いな」

こうした中、西日本大水害2018の被災地各地ではいらだちは高まるばかりでした。

筆者がボランティアにかけつけたある復旧作業の現場では、「(もうすぐやってくる8月6日に広島に必ず来る)総理を暗殺するやつがいたら面白いな」という声が上がり、一同、大爆笑になりました。なお、別に発言の主が左翼というわけではありません。むしろ「総理が来ても邪魔だけど、天皇陛下は別だ。ありがたい。」とおっしゃる方でした。この発言自体は、山上徹也被疑者による安倍晋三さん暗殺事件があった今となってはシャレにもなっていません。しかし、少なくとも、こういう発言がボランティアから出る状況を作ってしまった方を国葬というのは納得できません。

◆「ボランティアが足りない」という無責任報道のマスコミ 足りないのは公務員、復旧のプロ

マスコミもマスコミです。このころから、「ボランティアが不足している」、という報道が繰り返されました。日本人の多くがボランティア=ただ働きと誤解しておられるようですが、本来、英語のボランティアとは志願兵とかそういう意味です。自発的という意味です。従って、そもそも、「ボランティアが不足」というのは意味をなさない文章です。ボランティアをあてにしないといけないようなこの国の在り方が問題なのです。

そもそも、ボランティアに行く市民にも生活があります。ボランティアは「無尽蔵」ではないのです。1995年の阪神淡路大震災を契機に災害ボランティアはもてはやされた。それは確かに尊いことです。ただし、それに頼りすぎてはいけない。ところが、1990年代以降、日本はボランティアに頼りすぎる一方で、プロを弱くしすぎた。具体的には、公務員を減らしすぎたのではないでしょうか?

広島県内でいえば、86あった市町村を23に減らした。吸収合併された地域では、市役所・町村役場が出張所に格下げされて手薄になった。政治でも地域出身の議員がいなくなって、地域の声が届きにくくなったのは、筆者自身が参院選広島再選挙で県内全域を回らせていただき、実感しました。

これらについては安倍さんだけの問題ではありません。長年の自民党政治、あるいは自民党を右からあおった維新政治の問題です。しかし、結果としてマスコミの報道が、当時の権力者である安倍さんに対して、地方自治体の執行体制を改善させるように促さなかったのも事実ではないでしょうか?マスコミの皆様にも反省を促します。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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旧統一教会問題と安倍晋三暗殺 タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年9月号