9月3日、安倍晋三首相は内閣改造に踏み切った。話題となっているのは、女性の起用が目立つこと。女性閣僚の数は、過去最多の5人。党三役の政調会長を加えれば、6名が女性だ。

内閣改造後、支持率も上昇し、国民からの期待も高まっているが、思わぬ横やりが入った。

総務相に就任した高市早苗氏と自民党政務調査会長となった稲田朋美氏が、ネオナチを標榜する極右団体代表とともにツーショットで収まった写真がネット上で公開されていることが発覚し、国際問題となっているのだ。

写真が公開されていたのは、「国家社会主義日本労働者党」を名乗る右翼団体のウェブサイトで、高市総務相、稲田政調会長とともに写っているのは、同団体代表の山田一成氏。

この問題は、英紙ガーディアンなど海外の主要メディアが日本の右傾化と絡めて報じ、さらに世界的に有名なユダヤ系団体の「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・米ロサンゼルス)が「議員らは(同団体が掲げる)ネオナチの思想を明確に非難すべきだ」と声名をだすなど、世界中に波紋を呼んでいる。

なぜ、このような写真が撮影されたのか。

事情を知る関係者は、「写真が掲載されたのは、2年前のこと。これまでずっと掲載されていたのに、なぜ今ごろ問題になったのか」と首をかしげる。関係者が続ける。

「高市氏も稲田氏も山田氏の素性を知らないで写真を撮影したのでしょう。もともとこの写真は、オークラ出版が刊行していた『撃論』という保守系の雑誌の企画で山田氏がインタビュアーとして面談した際に撮影されたものです」

では、なぜ山田氏は写真を公開したのか。

「もともと山田氏は『撃論』の仕事をフリー編集者のI氏から受けていましたが、2011年に版元のオークラ出版が『撃論』を休刊にするという方針を出しました。仕事がなくなることを恐れたI氏は、山田氏に『オークラ出版の社長を脅して、休刊の決定を覆して下さい』と依頼。それを受けて、山田氏はオークラ出版の社長と交渉し、休刊を思いとどまるよう説得しました」

それが功を奏したのか、『撃論』の休刊は撤回されたという。

「ところが、I氏は義理のある山田氏を『撃論』から排除してしまったのです。山田氏は自分が切られたのは、『撃論』にの編集方針に影響力を持っていた筑波大学名誉教授の中川八洋氏がI氏を操っているためだと考えていたようです。ともかく、右翼としてのメンツを潰された格好の山田氏は、ただちにI氏を追い込もうと行動を開始し、I氏や『撃論』を中傷するネット記事を公開したり、新聞を作ったり、I氏が過去に関わった事件を問題にしてI氏の取引先に質問状を提出して、警察沙汰になったりしました」

その活動の一環として、山田氏は取材の際に撮影した高市議員、稲田議員の写真をネットに公開したのだという。

「極右活動家の自分とのツーショット写真が公開されたら、『撃論』を出版しているオークラ出版も困るだろう」というのが山田氏の考えのようだったが、写真は世間からは注目されず、山田氏の思惑は不発に終わった。

高市、稲田両議員がたまたま今回の内閣改造人事で出世したのを機に写真の存在が注目されるに至ったが、問題の写真には政治的な背景などないというのが結論だ。

2年前に話題にならなかった写真が今になって注目された理由には、これまでになかった本格的な保守政権である第2次安倍政権の誕生と在特会のようなネオナチを彷彿とさせる市民団体の跋扈していることも。バカバカしい話が発端の今回の騒動が国際ニュースとして大々的に採り上げられたのは、「日本の右傾化」が現実的なものとして語られるようになったことを示している。

(星野陽平)

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