キックボクシング、2025年を振り返る

堀田春樹

今年も選手各々にとって目標達成した者。届かなかった者。陥落した者。目立った活躍出来なかった者。引退した者。それぞれの明暗でもそれぞれの成長がありました。ごく一部の選抜ですが、活躍と苦戦の振り返りです。

◆各々の運命

大田拓真は2025年2月2日、金子貴幸にノックアウト勝利しNJKFフェザー級王座初防衛。6月8日、WBCムエタイ世界フェザー級タイトルマッチでチャンピオン、アントニオ・オルデンにKO勝利で世界王座奪取とNJKFのエース格を証明。

大田拓真はWBCムエタイ世界王座を奪取。今後もトップは安泰か(2025年6月8日)

吉田凜汰朗も2月2日に、健太に僅差2-0判定勝利でNJKFスーパーライト級王座初防衛。この後、健太とオープンフィンガーグローブで決着戦。無判定による引分けも流血の激闘を戦い、11月30日には切詰大貴に判定2-1勝利ながらIBFムエタイ日本スーパーライト級王座も獲得。IBF版の先陣を切り、より知名度が高まりました。
画像3健太vs吉田凜汰朗

小林亜維二は体格も成長し減量苦の苦戦も、2025年9月28日に宗方888に第1ラウンド完封TKO勝利し、王座防衛による“認定”から“正規”チャンピオンと言える存在感に成長。吉田凜汰朗と並ぶ若きエース格は健在。しかし11月30日にも計量ギリギリパスながらウェイトが苦しい事態を曝け出し、肩脱臼によるTKO負けは残念な結果となったが、次なる上位王座への期待感を見せました。

壱・センチャイジム(=与那覇壱世)は2025年10月12日にKNOCK OUTイベントにてWBCムエタイ日本スーパーバンタム級王座獲得。MuayThaiOpen興行がホームリングながら、他の団体、イベントでも参加し、トップクラスを維持し続ける実績を残しています。

睦雅の2025年は4勝2敗、その内ONE Championshipで2勝1敗。WMO世界王座奪取成らなかったが、ジャパンキックボクシング協会でのメインイベンター格は不動でした。

瀧澤博人は2024年に2-1惜敗で世界王座奪取成らなかったが、2025年11月30日には再挑戦でヒジ打ちによる完封勝利で念願のWMO世界王座感動の奪取。諦めず努力を続ければ夢は叶うことを実践。

瀧澤博人は念願のWMO世界王座奪取で号泣。夢は叶ったが更なる上を目指す(2025年11月23日)

令和の全日本キックボクシング協会では瀬川琉が健在。まだ大手ビッグイベント出場には至っていませんが、2026年はアジアエリアでの主導権を握る存在感が期待されます。

坂本嵐は2025年6月8日にWBCムエタイ日本バンタム級王座は獲得成らず、11月30日にはNJKFバンタム級王座も初防衛成らず陥落。いずれもボディーを攻められた敗戦。厳しい試練から復活成るか。そこに注目が集まる存在感があります。

健太(山田健太)がついに引退。全126戦は平成以降では最多の偉業でした。
各団体のチャンピオン、政斗(黒澤政斗/治政館)、匡志YAMATO(福田匡志/大和)、剱田昌弘(テツ)もリングを去りました。

木下竜輔が2025年3月2日にジョニー・オリベイラを倒し、日本スーパーフェザー級王座奪取。前年の王座決定戦で敗れた雪辱を果たしました。新日本キックボクシング協会の団体エース格となったが下半期の出場は無し。勿体無い隆盛期の時間であったが、2026年3月には復帰予定である。

新日本キックボクシング協会のトップ争い、ジョニー・オリベイラvs木下竜輔戦は再度戦うか(2025年3月2日)

◆団体の方向性

各団体にとっても諸々の動きがありましたが、計画性が明確な団体と、低迷から脱せないところもあります。タイトル乱立も増し、その曖昧さも存在します。

全日本キックボクシング協会は2024年の初陣興行から満2年となります。今後も続くのは韓国勢との対抗戦。中国との交渉は一時難航した様子でしたが現在進展中。香港とは栗芝貴代表の現役時代以来の交流も復活する予定です。

今後、アジアトーナメントを計画しているという中、10月25日にはタイ・バンコクに於いてWPMTA日本代表に栗芝氏が就任。突然現れたようなWorld Pro MuayThai Associationは以前から存在するものの、これまで大きな活動は無かった模様。今後の活動によってはかつてのタイ発祥の代表的世界機構WPMFなどや、現在の主流にあるWBCムエタイに迫るか、今後の活動に注目です。

全日本キックボクシング協会栗芝貴代表が語るプランは2026年どこまで進むか(2024年12月28日)

ジャパンキックボクシング協会では7月以降、WMO世界戦が3試合行われましたが、馬渡亮太のWMO世界スーパーフェザー級王座挑戦は勝ちか引分けか、王座はどうなのか。結果の保留状態が続きました。それがメディアから問題視されるほどの話題に取り上げられないのもキックボクシングのマイナー感。それでも問題点を見直し改善へ進み、11月23日には睦雅と瀧澤博人がWMO世界王座挑戦を実現。睦雅は獲得成らなかったが、二つのタイトルマッチは滞りなく終了しました。

疑惑の判定となったオーウェン・ギリスvs馬渡亮太。再戦はどこでやるか(2025年7月12日)

新日本キックボクシング協会から最初の分裂が起こったのが2019年春。2023年春にも離脱があり、この協会型三派という流れの三団体は、もう一度集まれば大きな団体となるのに惜しいことではあります。

ニュージャパンキックボクシング連盟は2023年11月より武田幸三氏が率いるようになって11度の興行を開催されました。2025年8月24日、WBCムエタイ日本タイトルの活性化が発表された後、IBFムエタイ日本タイトルも活動開始を発表。

「えっ、マジ?」といったNJKF含めて「タイトル多過ぎ!」という声は多い中、他団体でもタイトルマッチは行なわれるにしても全て活発にタイトルマッチ開催出来るのか疑問は残ります。

毎度過激な檄を飛ばす武田幸三プロモーター。NJKFを日本一の団体にするのは何時か(2025年11月30日)

◆NKB傘下の日本キックボクシング連盟

連盟エース格、NKBフェザー級チャンピオンの勇志の出番少な過ぎだった。他の階級のチャンピオンでも引退や脱退が相次ぐ。スターが居ない中、他団体を抜く勢いの浮上は難しい存在でも今後、新世代の運営が強化されれば虎視眈々と狙う飛躍も考えられます。

◆2026年はどんな変化が起こるか

ある大手企業の支配人がキックボクシング好きで、各団体を纏めようと考えている動きもあるという噂も聞くことがあります。そんな噂や信憑性高い情報もいつの間にか立ち消えるパターンは多いものです。個人の力より群衆の力とならないと改革は難しいでしょう。

地上波テレビなどの大手メディアに扱われなければ全国区への知名度は上がらないのは過去から変わりません。ここまで毎度取り上げる範疇の各団体や選手だけでしたが、これらの名前や活動がどこまで世間に浸透するかの各団体の挑戦は続きます。イベントの盛り上げより競技としての確立を目指して追って行きたいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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