12日から発射予告されていた北朝鮮の「ミサイル」。13日午前7時39分に発射されたが、海に墜ち失敗だったとの見方を、米政府当局者は示した。
弾頭が装備されていないのだから、「ミサイル」ではなく北朝鮮の言う通り「人工衛星」と言うべきだ、という意見もある。
だが、アメリカから貢ぎ物を引き出したい北朝鮮としては、軍事的脅威も感じてもらわなければ困る。やはり、「ミサイル」的なものと言っていいだろう。

沖縄の石垣島には、5日から地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備されている。
沖縄というと「基地の島」というイメージがあるが、それは沖縄本島における米軍基地のことだ。石垣島を含む八重山地区には、米軍も自衛隊も基地を置いていない。
そもそも、ひとくちに「沖縄」と言っても、沖縄本島の那覇と石垣は、東京と大阪くらい離れている。
だから、言葉も違う。「いらっしゃいませ」は那覇では「めんそーれ」だが、石垣では「おーりたぼーり」と言う。

基地のない石垣で、PAC3が配備されたのは、石垣港。ふだんは工事車両や砂利置き場として使われている新港地区内に、北の方角を向いたPAC3発射機2基、化学防護車、野営用のテント、自衛隊車両が並んだ。

これまで、防災訓練などで自衛隊が石垣に来る際には、歓迎と抗議の声が交差した。
抗議のトーンは、本土とは異なっている。旧社会党が自衛隊合憲に転じてから、本土では自衛隊違憲論は影を潜めた。市民運動家なども「9条を守れ!」と叫ぶ時、自衛の範囲を踏み越えるな、という意味であって、自衛隊の廃止までは求めていない場合が多い。もっとも、深く意味を考えずに叫んでいる場合も多いようだが。

沖縄では自衛隊違憲論は活きている。「9条を守れ!」の声は、文字通り自衛隊は要らない、という意味だ。
それほど、自衛隊への拒否反応が強いからこそ、逆に歓迎行動が必要とされる。

だが今回のPAC3の配備には、めだった抗議行動はない。
市民の間には北朝鮮の「ミサイル」への不安感が大きく、PAC3配備で「安心した」という声のほうが多いからだという。
マスメディアが、まるで戦争前夜のように、恐怖を煽っているからだろう。

軍事専門家らによれば、沖縄上空まで飛来するなら、「ミサイル」は大気圏外を飛んでいて、大気圏に再突入するならば、大部分が摩擦熱で解けてしまい、落下してくるとしても小さな部品のみであるという。
実際には、PAC3の出番はないのだ。

沖縄では石垣島の他に、宮古島、本島の那覇基地、知念分屯基地に、PAC3が配備された。
与那国島や多良間島にも自衛隊員が配置されている。

沖縄最西端の与那国への自衛隊の沿岸監視部隊について、昨年、当時の北沢防衛相は2015年までには配置したいという考えを示した。
与那国では、賛成と反対の声が飛び交っている。
昨年11月には、与那国中学校の生徒が自主的に進めていた自衛隊反対の署名運動に対して、校長が署名用紙を無断で没収するという事件まで起きた。

PAC3の配備は、自衛隊常駐への地ならしに他ならない。
それは、見事に功を奏しているというべきだろう。
防衛省としては、北朝鮮の「ミサイル」様々、といったところか。

(FY)