『週刊金曜日』6月16日号に掲載した小社広告(別掲①)について、広告を出広した鹿砦社に抗議するのではなく、『金曜日』に抗議が殺到し困ったと同誌発行人(社長)の植村隆氏(別掲②)から先週末の6月23日にお電話がありました。何を抗議したのか分かりませんが『金曜日』に抗議した人たちに抗議します。文句があるなら広告元の鹿砦社に言え!

①『週刊金曜日』6月16日号に掲載した小社広告

②『週刊金曜日』発行人兼社長の植村隆氏(2019年12月7日、鹿砦社創業50周年の集いにて)

さて植村社長、来週(つまり6月26日~30日の週)に小社を訪問したいということでした。どこの中小企業でもそうでしょうが(『金曜日』は違う?)、月末は支払いなどで慌ただしく月明け(7月第1週)にしていただきました。

なので、商取引の常識においても、あるいは道義上、信義上、植村社長と話し合うまでは、本件を伏せておき発言も控えておくつもりでした。

しかし、植村社長は小社を差し置いて先行的にColabo仁藤夢乃代表を訪問し一方的に謝罪し「おわび」文(別掲③)を同誌6月30日号に掲載されたということです。これを植村社長から聞いたわけではなく、仁藤代表のSNS(別掲④)で知りました。まずは、商習慣上、あるいは道義上、信義上、まずは長年の取引先で出広元の小社と協議すべきではなかったのではないでしょうか。

[左]③『週刊金曜日』6月30日号に掲載されたという植村隆発行人兼社長による「おわび」文。[右]④Colabo仁藤夢乃代表のSNS(2023年6月27日付)

『金曜日』には前発行人(社長)の北村肇さん(故人)の時代から10年以上にわたり広告を出広してきました。北村さんとは同期(1970年大学入学)で、世代が同じということもあり妙にウマが合い懇意にさせていただきました。亡くなる直前には上京した私のために無理を押して長い時間を割いていただきました。当地(兵庫県西宮市)での講演や市民向けのゼミなどにも複数回お越しいただきました。

今、『金曜日』には小社以外に有料広告は入っていません(見過ごしであればご指摘ください)。「広告に依存しない」と言っておられるようですが、「依存」するもなにも広告が入らないのですから、やせ我慢でそう言っているにすぎません。

当事者(広告主)である小社と話し合う前に一方的に、Colabo仁藤代表に勝手に謝罪し「おわび」文を掲載することは道義上、信義上、いかがなものでしょうか?

月が明けて植村社長と協議し、本件についてあらためてご報告いたしますが、とりあえず本日の報告は手短にとどめておきます。

広告の上部に記しているように私たちの出版活動のモットーは「タブーなき言論」です。これを基本に創業から50年余り出版活動に勤しんでまいりました。本年創刊18年を迎えた月刊『紙の爆弾』もその具体的な営為です。『金曜日』には及ばないかもしれませんが、長年多くの読者に支えられてきました。ですから、2005年の「名誉毀損」に名を借りた出版弾圧で壊滅的打撃を受けた際も、また近年新型コロナで苦境に落とされた際も、少なからずの方々にご支援いただき「命拾い」(ある方の言葉)することができました。

また、『金曜日』と重なる読者もおられます。なので一方的に「差別、プライバシーの侵害など基本的人権を侵害するおそれのあるもの」(「おわび」文より。内規にもあるそうです)と断じられると小社への信用を毀損することにもなりかねません。おわかりですか?

くだんの『人権と利権』は、これまでメディアタブーとされてきた「Colabo」「LGBT」に対してタブーなしに採り上げ思い切った誌面づくりをいたしました。しばき隊界隈で飛び交う誹謗中傷や汚い言葉は排し、真正面から問題に向き合い公正な論評に努めたつもりです。私たちなりに自信を持って世に送り、左右問わず多方面の方々にお読みいただき大きな反響があり多くの方々のご賛同も得ることができました。

かつて『金曜日』には、「大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)関係の出版物の広告を発行ごとに掲載させていただきました。そうした際に、『金曜日』編集部から咎められることも掲載拒否されることもありませんでした。さすがに『金曜日』、度量があることに感心した次第です。

ところが『金曜日』とあろうものが、今回は一体どうしたんですか!? あまりにも偏狭、北村肇さんも草葉の陰で泣いてますよ! メディアとしての自律性や主体性があれば、尚急に一方に謝罪するのではなく、意を尽くし公正に判断すべきではなかったでしょうか。

月末の慌ただしいさなか、こんなことに時間を割いている場合ではないのでしょうが、黙っているわけにはいかず一言呈させていただいた次第です。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

上記『人権と利権』は5月23日発売以来話題を呼び圧倒的な勢いで売れています。ちょうど、いわゆる「LGBT理解増進法案」が国会に上程され審議に入るということもあったかと思いますが永田町界隈でもよく読まれていたようです(このこともあってか編者の森奈津子さんは参議院に参考人として呼ばれています。この件では賛否ありますが、ここでは触れません)。発売直後にAmazonから700冊余りの注文が来、これが捌けると在庫がなくなりAmazonでは古書業者が高値で出品し定価の倍近くになっているほどです。

こうした情況に不快感を覚えたのか、発売から1カ月近くにもなって突然Colabo仁藤夢乃代表が、同書(特に表紙、グラビア)を非難し、そしていつものように彼女の周辺から、対談者の一人で、「女性に対する暴力を想起させる表紙」について「謝罪」した加賀奈々恵さんに誹謗中傷が集中しています。甚だ遺憾であり怒りを禁じえません。私たちは断固加賀さんを守り共に在り続けます。全国でも特にLGBT化が進む埼玉県で、覚悟を決め、女性・女児の人権、安心・安全のために、たった一人でLGBT化(具体的には公衆トイレから女性トイレをなくし「ジェンダーレストイレ」化)に異を唱えた加賀さんの志に連帯します! 加賀さんのツイッター(およびyoutube)にアップされた意を決した加賀さんの凛々しさを見よ!


◎[参考動画]加賀ななえ【政策の変遷について/埼玉県LGBT条例基本計画パブリックコメントについて】(2023年2月26日)

当然私たちとしては理不尽な攻撃に対して最後まで加賀さんを見放さず守ることは言うまでもありません。当社への抗議は今のところファックスが1枚来ているだけです。

ここで、表紙について少し説明させていただきます。

【1】仁藤代表が仰るような、Colaboのバスの画像を「切り刻まれ」たというのは全くの誤認です。バスは、取材班メンバーが4月末に駐車場を突き止めそこに赴いて撮影したものでネットから採ったものでもありません。その写真をグラビアと共に、表紙のバックに使っています。本文で記事に採り上げているからです。そのどこがいけないのでしょうか? バスに「肖像権」があるのでしょうか? 私たちが昨年そのバスに傷つけたというツイートもありましたが、昨年私たちの取材班は動いておらず悪質なデマです。

現地に赴くということは、基本的に当社がよくやっている手法で今に始まったことではありませんし、当社に限らず他社の週刊誌などでもよくやっている初歩的な取材方法です。鹿砦社として最近では東電の幹部、原発事故の関係者や「大学院生リンチ事件」(いわゆる「しばき隊リンチ事件」)関係者を直撃したりしています。

【2】バスの前のガラスが割れているのは、LGBTの象徴であるレインボーのガラスが割れている様子で、特段意味はないです。見る人によって受け取り方はいろいろあるとは思います。決して「女性に対する暴力を想起させる表紙」を目論んだわけではありませんが、加賀さんがそう感じられたのであれば残念です。男目線と女目線では感じ方が異なるのかもしれません。「派手目に」やればやったでアレコレ言われ、また綺麗に大人しくやれば目立ちませんし、むずかしいところではあります。

【3】本書は月刊『紙の爆弾』という雑誌の増刊号ですが、雑誌は決められた発売日を1日も遅らせることはできず、今回は特に「緊急出版」ということでかなりタイトなスケジュールでした。『紙の爆弾』など他の雑誌も同様にタイトですが、多人数が寄稿したりするので、表紙のチェックについて『紙の爆弾』は編集長1人の独断で、他の雑誌も2~3人がチェックするだけです。寄稿者全員に回していれば取次搬入日に間に合わなくなります。例えば『世界』という雑誌がありますが、寄稿者全員がチェックするわけでないことは当然です。その表紙にも好き嫌いはあるでしょうが。加賀さんバッシングに加担している太田啓子弁護士は、実は鹿砦社発行の反原発雑誌旧『NO NUKES voice』(誌名変更し現在『季節』)に座談会で登場されたことがありますが、太田弁護士に事前に表紙を見せたことはありません。

【4】今回は5月18日に取次搬入で、23日に発売でした。加賀さんら寄稿者・対談者らには18日発送、19日か20日に届きご覧になったと思います。逆に言えば、それまで加賀さんに表紙をご覧いただくことはありませんでした。また、他の方々の原稿の内容も、いたずらに別の方々に見せることはできませんから見本が届くまでは知る由もありません。

【5】表紙、グラビア、他の方々の対談や寄稿の内容については、5月19日 or 20日に見本をご覧になるまで加賀さんは一切ご存知なかったし、一切の責任は鹿砦社にありますので、誹謗中傷や文句があれば鹿砦社の私松岡にお願いいたします。お名前、ご連絡先などを明記の上、メールmatsuoka@rokusaisha.comかファックス0798-49-5309にてお送りください。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

もう少し言わせてください。加賀さんを誹謗中傷する人たちは仁藤代表はじめ果たして『人権と利権』の内容をよく読んだ上で批判しているのでしょうか? 「言論には言論で」というではありませんか。仁藤代表は著書も多く反論本を出版できる環境も能力もあるのですから、きちんと反論されたらいかがでしょうか。Colaboに繋がる人たちに「大学院生リンチ事件」(しばき隊リンチ事件)に直接・間接的に関わった人たちもいます。ここでも私たちは地を這うような取材/調査を元に6冊の本にまとめ出版しましたが、1冊も反論本はありませんでした。

最近鹿砦社に対し「ヘイト出版社」、本書編者・森奈津子さんに対し「差別者」と詰っている者がいます(杉並から差別をなくす会・谷口岳)。本書において私は、
「こうした風潮に異を唱える者に対しては『差別者』『レイシスト』『ヘイター』などと口汚い悪罵を浴びせ、謝罪と沈黙を強いる。本書出版後、当社や森奈津子、あるいは対談者らに対して、そうした悪罵が投げつけられるかもしれない」
と“予言”していますが、現実化しつつあるのは極めて遺憾です。

尚、本書についての私の問題意識、なぜ本書を出版するに至ったのかなどについては本書巻末の「解題」において申し述べていますのでぜひご一読いただきたく望みます。

株式会社 鹿砦社 代表
松岡利康

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

前回「トランス女性は女性ですか?〈2〉」では、男性器をお持ちだが心は女性であるというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏による衝撃のツイートをご紹介した。

「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

まだ、性自認問題が広く知られる前の2012年のツイートだったので、尾崎氏にも多少の油断があったのだろう。

これが発掘されて本格的に炎上したとおぼしき2017年には、尾崎氏は逆上ギレツイート。

「俺が女湯に入ったのは事実やけど、痴漢行為を一回もしたことはないわ」

だが、「なーんだ、痴漢行為はしてないんだ! よかった!」と納得する人がいるわけもなく、炎上は続いた。

その後、尾崎氏は「あのツイートはフィクション」と弁解したという。「俺が女湯に入ったのは事実」って断言してたのに、発言、変わりすぎでは?

こんな調子なので、炎上はおさまることはなく、いつの間にか尾崎氏はツイッターアカウントを削除していた。

ウェブ魚拓サイト「archive.today」で最後に尾崎氏のツイートが記録されたのは、2021年7月2日(https://archive.is/2oZll)。おそらく、この頃に、尾崎氏はツイッター上から姿を消したのだろう。

[左]チンコを股にはさめば女湯OKというご認識らしい[右]チンコを股にはさんで女湯に入るのは痴漢ではなく当然の権利というご認識らしい

さて。
我が国の最高学府・東京大学には、清水晶子教授というお偉い先生がいらっしゃる。この方が「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派の親玉と言っても、おそらく過言ではないだろう。

性自認至上主義を批判した東京大学の三浦俊彦教授、武蔵大学の千田有紀教授に対する集団バッシングでは、リーダー的な役割を果たしたのが、この清水教授だった。お偉い先生なので、清水教授の周囲には、子分のような学者・知識人がワラワラ存在し、「右向け右、左向け左」とばかりに、敵とみなした学者・知識人・文化人を寄ってたかって叩くのである。

なお、私が学者先生たちに集団ネットリンチされることなく、予防ブロックされる一方であるのは、私を学者・知識人・文化人ではないと認識したうえでの対処なのだろう。そんな「雑魚」に反撃されては赤っ恥であると恐怖し、頭のよろしい先生方が「予防ブロック」でコソコソしていらっしゃるのだとすれば、頭がいいのも大変だ。

ただし、これは、浅学の徒である私が学界の外からながめた所感であるので、事実と反する点があったら、LGBT活動家と共闘しておられる学者先生の皆様にご指摘いただければ幸いだ。

[左]私を予防ブロックしている学者の一人。歴史学者・呉座勇一氏の仕事をつぶしたことで知られる「オープンレター事件」の中心的人物・さえぼうこと北村紗衣教授(武蔵大学)。[中央]なにを恐れていらっしゃるのか、ノンバイナリー(身体男性)の高井ゆと里准教授(群馬大学)も私を予防ブロック。[右]「あんた、だれ?」レベルで存じあげなかった西田彩先生は、複数の大学で講師をなさるトランス女性だと聞く

 

清水教授は私の批判に対してブロックしてきたのであり、予防ブロックではないという点は、教授の名誉のために申し添えておきたい

清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏の味方である。味方であるがゆえに、歴史ある学術雑誌「思想」(岩波書店)2020年3月号に、「埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために」という尾崎氏擁護の論文を発表された。

重要な事実なので、もう一度、念を押しておきたい。

「東大の清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏を擁護するために、歴史ある学術雑誌『思想』(岩波書店)2020年3月号に、『埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために』と題した論文を発表した」

※岩波書店公式ページ「思想」2020年3月号 

私は実際に「埋没した棘」を読んでみた。17ページの論文を要約、だれにでもわかる表現に変換して内容を要約すると、こうである。

「レズビアンでも白人と黒人がいるように、女性の中にもまんこがある人とチンコがある人がいますよねっ」

「同じカテゴリーに属する女性でも、まんこ持ち女性がチンコ持ち女性を怖がるのって、まんこ持ちゆえの『傷つけられやすさ』を戦略として使っているってことね! でも、それ、よくないネ」

「チンコがある女性は、すでにまんこがある女性に埋没して、女子トイレや女湯に入ってるよ! 気づいてないのなら、最初からそんなことは気にするな!」

「尾崎日菜子氏がチンコを股にはさんで女湯に入ってもトラブルにならなかったっていうことは、周囲の女性たちに女性だと思われていたということ。だから、問題ないね!」

「つまり、埋没していれば(周囲に気づかれなければ)、棘は棘として他者を傷つけることはないってこと。女湯の尾崎日菜子氏は埋没した棘! 股にはさんだチンコも埋没した棘!」

「以上!」

え……? 私がアホすぎて、誤読してるの? これ、東大教授が綴り、岩波書店の「思想」に掲載された論文ですよね?

しかし、どう読んでも、「股にはさんだチンコは埋没した棘!」という結論なのである。もし、これが私の誤読ならば、清水教授から直接「あなた、間違っていますよ」とご指摘いただきたいと思うし、素直にそれを受け入れる気持ちもある。

ただ、それでも、チンコを股にはさんだ尾崎日菜子氏が女湯でトラブルにならなかったという点に関しては、絶対、女性たちは怖くて見て見ぬふりをしていただけだと、私は思う。

女子トイレで女装家に出くわした女性たちだって、よく言っているではないか。「怖くて見て見ぬふりをしてしまった」と。

実際に、女子トイレでは、これらのツイートで語られているような気持ち悪い事件だって起きている。

[左]男性だって、自分より体格がよく力もありそうな不気味な全身タイツ男とトイレで遭遇し、ツーショットを求められたら、自分の身を守るために要求に応じてしまう可能性もあるのでは? [右]「嫌がって逆上されると怖い」……まさにその通りである

全身タイツに女装した男が数年前からたびたび商業施設の女子トイレに出没し、そこで自撮り。時にはその場に居合わせた若い女性たちとツーショットを撮るが、後に女性たちが「怖くて従うしかなかった」と証言しているのだ。

こちらのブログ記事には、顔はぼかしたうえで、その全身タイツ女装男と女の子たちのツーショット写真が掲載されている。

全身タイツ女装また女子トイレへ行き炎上(2023.2)
(ウェブ魚拓 https://archive.md/Qirc5

[左]新宿区議をつとめた経験もあるトランス女性政治家・よだかれん氏のご認識も、このレベル。[右]尾崎日菜子氏のお写真。本当に女湯で埋没できましたか?

尾崎氏への援護射撃だったはずの清水教授の「埋没した棘」は、炎上を鎮めるどころか、いわばガソリンの役割を果たした。それは、炎上中だった尾崎氏にぶっかけたガソリンだったのだ。

以来、「尾崎日菜子さんは、女湯に入ったというツイートはフィクションだとすでに断言しているのに、いつまでもしつこく蒸し返すのは、どうなんですかっ?」という怒りの声に対しては、私はこうこたえている。

「あのツイートだけなら、尾崎氏がフィクションだと明言した後には、炎上も少しずつ鎮まっていった可能性はあります。しかし、最大の問題は、清水晶子東大教授がチンコを股にはさんで女湯に入るという犯罪を肯定し、『埋没した棘』という論文を書き、それをまた岩波書店が『思想』に掲載してしまったことでしょう」

私は、ふと思う瞬間がある。自分は「埋没した棘」を誤読しているのではないか、と。あるいは、「埋没した棘」自体が、私の見た悪夢の一部だったのではないか、と。そんなときには、こちらのレビューを読み、そして、おのれの正気を確信する。

清水晶子氏著『埋没した棘』の読書感想文  Moja Mojappa(@MojaMojappa)

清水晶子「埋没した棘」を読んで。 千石杏香(@Sengoku_Kyouka)

なお、Moja Mojappa氏は性自認女性の身体女性で異性愛者、千石杏香氏は両性自認の身体男性でバイセクシュアル。そして、私はXジェンダーの身体女性でバイセクシュアル。私を含め、異なる属性の三人が、同じようなツッコミを入れているという点は、読者諸氏にもご留意いただきたいと思う。

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46763
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46815
〈3〉チンコは股にはさめば女湯OK! http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46978

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

トランス女性を自称する身体男性が堂々と女子トイレを使い、時には女湯に入っている? 海外ではなく日本でも、そうなりつつある? そんな、まさか!

──と思った皆様には、次のツイートをご覧いただきたい。「私の性自認は女性」と主張する「身体男性」は「女性」として扱うべき、と主張する女性たちのツイートだ。

弁護士 上瀧浩子「トランス女性のペニスは、男根じゃなくて女根でしょ」

yoko_counter「ペニスだと思うから怖いのかな。基本的にトランス女性についてるのはペニスではなくクリトリスだと思ってるんだけど。ちょっと大きいかもしれないけど、なんの害もないよ」

[左]しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子氏による、ペニス=女根説。[右]しばき隊界隈活動家・yoko_counter氏による、ペニス=大きなクリトリス説

ここで、鹿砦社が何年にもわたり追及してきたしばき隊/カウンター/C.R.A.C./ANTIFA等と呼ばれる暴力的な反差別運動体の問題、特に「しばき隊リンチ事件(カウンター大学院生リンチ事件)」の情報に触れたことがある方なら、「ん?」と引っかかるはずだ。

なお、ここで「しばき隊? なにそれ?」という方々にひとことでそれをご説明するならば、「反差別チンピラです」とお返事したい。

2010年代、在日特権を許さない市民の会(在特会)等による悪質な排外主義デモに対抗し、反差別を叫ぶと同時に彼らと同レベルでオラつくことで一定の成果をあげたレイシストをしばき隊(現C.R.A.C.)だが、在特会が弱体化してもオラつき癖が治まらず、しばき隊の暴力性を批判しただけの無辜の市民にまで大いにオラつき、結局は嫌われまくってしまったという、残念な皆様。それが反差別チンピラである。

上瀧浩子弁護士(@sanngatuusagino)は、「しばき隊リンチ事件」の現場にいた反差別活動家で在日韓国人女性の李信恵氏と公私にわたって親しく交流しており、しばき隊リンチ事件裁判やその他の裁判で、しばしば李氏の代理人弁護士をつとめてきた方だ。

 

赤ペンyoko先生の親身な添削で、君もしばき隊現役合格!

今ではこの「女根ツイート」がネット上で有名になり、「女根弁護士」などと揶揄されたりもしている。

そして、yoko_counter氏(@yoko_counter)は、ご自身で名乗っておられる通り、カウンター/しばき隊系の女性活動家だ。バイセクシュアルでありフェミニストでもある。

2018年にはまんこアートの第一人者・ろくでなし子画伯のツイートを差別的であると無料で添削、以降は「赤ペンyoko先生」の愛称でも親しまれている。

しかし、そんなに女根だ、大きなクリトリスだと主張するのならば、ご自身が「私の心は女」と主張しているだけの見知らぬおっさんたちと一緒に、毎日風呂に入っていればよろしいかと思うが、しばき隊界隈の女性たちがそのような反トランス差別的チャレンジをされているという話はうかがっていない。

実行に移さないのであれば、そのようなツイートはきれい事であり、机上の空論であり、単なる言葉遊びにしかすぎないと考えるが、そんな私の心が狭すぎるのだろうか?

さて。ここで、超有名なトランス女性活動家による「女風呂に入っている」という証言をご覧いただこう。

尾崎日菜子「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

[左]このツイートから、チンコを股にはさんで女湯に入る行為を指す新しい表現「ちーっす」が爆誕![右]チンコを股にはさんでいれば女湯に入ってもセーフ! 痴漢行為ではない!

この男性器をお持ちの尾崎日菜子氏は、トランス女性活動家として学術誌にも寄稿されているような方だ。そんなトランス女性活動家(身体男性)が、「私の心は女」と主張すれば女湯に入るのも許され、それは犯罪ではないと考えている。

なので、私はスローガン「トランス女性は女性です」を次のように言い換え、たびたびツイートしている。

「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」

これならば、「トランス女性」が「性別適合手術を済ませて男性から女性になった人」という誤解を招くことも回避できる。「トランス女性は女性です」派が隠したい本音も、丸括弧内できちんと述べてあげるという、親切設計だ。

実は、すでに自分のパソコンで「とらんす」と入力したら「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」と変換するよう、辞書に単語登録もしてある。

[左]チンコを股にはさんで女湯に入るというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏は『コロナ禍をどう読むか』(亜紀書房)にご寄稿。[右]尾崎氏はご自身の写真を「女哲学者」とツイート。しかし、このような人物(チンコを股にはさんでいる)と女湯で出くわして「あっ。女哲学者だ!」と思う女性は一体何人いることだろう?

さらに申しあげると……しばき隊ウォッチャーを自認する方々なら、尾崎日菜子氏の名になにか引っかかりを感じないだろうか?

おそらく、すでにお気づきの方もいることだろう。尾崎日菜子という名は、しばき隊リンチ事件関連の流出資料「ITOKENの声かけリスト」の中にあった、と。

「声かけリスト」とは、しばき隊リンチ事件(2014年12月17日深夜発生)に関し口止めすべき関係者を、しばき隊系活動家ITOKENこと伊藤健一郎氏(当時立命館大学大学院生)がリスト化、配布した文書である。これを見れば、しばき隊につながる人物がひとめでわかるという、貴重な資料でもある。

ITOKENの声かけリストの中に尾崎日菜子氏の名。しばき隊界隈関係者としては古株か?

それにしても、声かけリストの中に、なんでまた尾崎日菜子氏の名が? 加えて、しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子がなぜ、女根発言を? さらには、しばき隊系活動家yoko_counter氏が「大きいかもしれないけどクリトリス」発言をしたのは一体……?

答えは単純だ。LGBTの運動にしばき隊界隈活動家が「寄生」し、暗躍……いや、堂々と活躍しているということだ。

今や、ネットでもリアルでも、しばき隊界隈活動家は「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派として、LGBT活動家と共に大いにオラついている。

だが、私はバイセクシュアル当事者であり反差別でもある立場から、しばき隊界隈の皆様に申しあげたい。「無能な味方は不要だ」と。

現在、しばき隊と一緒になってオラついているLGBT活動家は、市民から忌避されつつある。当然だろう。

そのうちLGBTはヘイトデモのターゲットになるのではないかと、私は危惧しているのだが、そうなったとしても因果応報でしかないと、なかばあきらめの境地だ。

残念だが、LGBT活動家はしばき隊系活動家の暴言・恫喝を大いに利用してきたのだから。そして、我々LGBT当事者はそれを止められなかったのだから。(おわり)

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 最寄りの書店でお買い求めください

LGBTがらみの人権問題に関心がある方なら、一度は「トランス女性は女性です」というフレーズをネットでご覧になったことがあるだろう。実際、ツイッターでは、現在確認できるかぎりでは2018年末から「#トランス女性は女性です」というハッシュタグが盛んに使われている。

 

2023年6月現在で確認できる、ハッシュタグ「#トランス女性は女性です」を使った最古のツイートは、2018年12月30日のもの

これは文字通り、「トランス女性は女性なので、女性として扱いましょう」という意味だ。ところで、今さらではあるが、「トランス女性(トランスジェンダー女性)」とは一体、どんな女性を指すのだろうか?

いまだに多くの人が、トランス女性を「男性として生まれたが、自分の身体の性別に耐えがたい違和感をいだきつづけ、性同一性障害と診断された後に性別適合手術を受け、体も戸籍上も女性になった人」と解釈しているように見受けられる。しかし、それは、LGBT活動家とその支持者が誘導する事実誤認に見事にはめられた結果だ。

事実は、以下の通り。

①性同一性障害の診断を受けていなくてもトランス女性
②性別適合手術どころか女性ホルモン投与すら受けていなくてもトランス女性
③戸籍上は男性でもトランス女性

そもそも、「トランスジェンダー」とはアンブレラターム(傘言葉)に分類される表現だ。聞き慣れない言葉だが、アンブレラタームとは、「ある共通点が存在するいくつもの言葉を傘のようにおおう表現」と説明される。

ゆえに、上記①②③の状態のような方々でも、「私の性自認は女性」と主張すれば、トランス女性になれる。なにしろ、「私の性自認は女性」と自己申告すること自体が、男性から女性へのトランスなのだから。

トランスジェンダー女性というアンブレラタームには、「私の性自認は女性」と自己申告しただけの身体男性から、性別適合手術を受けて戸籍も女性に変更した方までが含まれる。

ネットで「トランスジェンダー アンブレラターム」で画像検索すると、秀逸な傘の絵がいくつかヒットするが、ここでは、自作の図を「ご自由にお使いください」と公開してくださっている、千石杏香氏作のものをご紹介したい。

 

「トランスジェンダー」はアンブレラターム(図作成・千石杏香)

「トランスジェンダー」という傘の下には、「女装家」「男装家」や「女っぽい男」「男っぽい女」まで含まれている。そのような方々はホルモン投与や手術を受けてはいないどころか、性同一性障害との診断も出てはいないし、そのような自認もない。

「MtF(男から女)」「FtM(女から男)」は一般的に性同一性障害(トランスセクシュアル)を指すが、ぶっちゃけ、「私の心は女」と自称する身体男性、あるいは反対に「私の心は男」と自称する身体女性でも、そのカテゴリーに入る。自称なので、それが真実なのか偽りなのかは、第三者にはわからない。

「Xジェンダー」は女でもなく男でもないという性自認。実は、私は厳密にはこれに相当し、幼い頃から自分は女ではないという感覚が強かったが、とりわけ声高に宣言する必要は感じてはいない。

「性分化疾患(俗に言う『両性具有』)」に関しては、「トランスジェンダーの範囲に入れるな。私たちは男か女、どちらかである」と主張する当事者も多く、「両性具有」という表現も拒絶する人が多数だ。

「第三の性」は性分化疾患を表現する言葉ではあったが、今では身体の性だけではなく性自認(心の性)も含む。

以上のことから、筋肉ムキムキの大柄なヒゲ男であっても、「私の性自認は女」と主張するだけで、トランス女性になれるということが、おわかりいただけたかと思う。

実際、海外では、性別適合手術も女性ホルモン投与もせず、ヒゲ面に派手な化粧をした「トランス女性」が大勢いる。

主に欧米では、体は男性でも「私の性自認は女性」と主張すれば、法的に女性になれる(この制度を『セルフID制』という)国々がいくつもあるし、そんな彼らを「男」と呼ぶのは差別だ。下手すると、ヘイトスピーチで逮捕されたり、社会的に抹殺されたりもする。

ここで、実際のヒゲあり男性器ありのトランス女性の画像をご紹介しよう。

[左]イギリスのトランス女性活動家アレックス・ドラモンド。ヒゲあり。[右]こちらもヒゲのトランス女性。胸毛もペニスもある

[左]TikTokで自分語りをするヒゲのトランス女性。こんなビジュアルの方でも「おっさん」と呼ぶのはトランス女性差別とされる。[右]ブライダル雑誌のモデルにもなったインドのトランス女性活動家。体毛もヒゲもご立派

……ヒゲがない分、懐かしのドリフターズの女装のほうが女らしいと言えはしないか?

こんな人たちが堂々と女子トイレを使い、時には女湯に入り(米国の『Wi Spa事件』が有名)、出ていってくれと抗議の声をあげた女性たちを「トランス女性差別」認定して、オラついているのだから、大問題だ。

そして、日本でも、以前よりこの問題はちらほら浮上しているのである。

Wi Spa事件(No!セルフID  女性の人権と安全を求める会)

(つづく)

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

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本通信ですでにお伝えした通り「LGBT平等法」が国会で審議されている。国政政党の中に明確な「反対」は見当たらず、自民党から共産党までがこの法案に関しては「推進勢力」である。時あたかも「広島G7」。「G7の中でLGBT法がないのは日本だけ」との言説も聞かれるが、果たして「グローバルスタンダード」(?)はこの国のひとびとを幸せにするのだろうか。

ある筋から「中核派がLGBT法に反対しているよ」と教えてもらった。マスコミでは「過激派」と称される中核派であるが、中核派が「LGBT平等法」に反対する理由はどのようなものだろうか。中核派であることを隠すことなく杉並区会議員として2期目の再選を果たしたばかりの洞口朋子さんに電話でお話を伺った。後編の〈2〉を公開する。

 

洞口朋子=杉並区議会議員

洞口 たしかに性的マイノリティーをどう考えるかについては、私たち中核派の中でも、かなり討論し学習を重ねているのが正直なところです。その中で杉並区議会に「性の多様性条例」が出されましたので、私たち中核派の見解を2、3月の議会で出しました。

田所 わたしは共産党にもこの件で質問をしました。「バイセクシュアル」の人はいまのでデメリットを被っているでしょうか」と質問したところ、共産党のお答えは「バイセクシュアルについては考えたことがない」でした。LGBTとの言葉で括られていますが「多様性」とは文字どおり「多様」なのだからLGBTに収まらない人もいます。今の社会通念からすれば逸脱する人もいるが、仮に法律を作ればそのような指向の人をどう考えるのか、との議論が欠如していませんか。

洞口 表面的な「改善」や啓発活動をすれば差別がなくなるかのような、幻想を描いている。国政政党で言えば与党から野党まで皆さんが推進している。分裂がありながらも国として進めていく。広島でのG7を控えて「LGBTの制度がないのは日本だけだ」と言っていますが、私たちがまったく評価しないG7に向けて進んでゆこうとしている。しかも野党の人たちが進んで行っている疑問はもちろんあります。

女性や性的マイノリティーに対する絶えざる差別・抑圧を産み出す今の社会を表層的に変えれば良くなるとのものの見方は、甘いのではないかと思います。根本的な部分を変えないと。根本的な部分により絶えざる差別・抑圧が生み出される、と私は考えていますので政治的であれ経済的であれ社会的であれ、根本を問題にしないと、社会の構造として性的な差別・抑圧を産み出している根拠を経つことは出来ないのではないかと思います。

その立場から国が進めている、また杉並区や自治体が進めている「性の多様性」には反対です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

洞口氏からは「LGBT法案」の問題点だけでなく、杉並区政の現状についての見解や、社会全般についてのも意見を伺ったが、今回の議論からやや論旨が離れるのでその部分は割愛させていただだいていることをお伝えする。一見左派、リベラル層が賛成で保守層が反対しているかの様相を呈している「LGBT平等法」についての議論は、洞口氏(中核派)が見解を明示したように必ずしもそのような構図ではない。そもそも性自認と身体的性差、あるいは性指向と性趣向の区別すら冷静に考えず、若しくは知らずなんとなく「LGBT平等法」は論じられているのではないか。日本共産党と洞口氏へのインタビューを通じてそのことを感じた。

かたわらで原発推進法であるGX法が成立し、近く「少子化対策のために」社会保険料が増額されるらしい。国民総背番号制であるマイナンバーカードに健康保険と免許証の記録まで統合するという無茶を通すために、国民を2万円(マイナポイント)で釣って国民情報・資産の完全管理を進めているが、早くも住民票や健康保険で過誤が発生している。「武器ではないから」といいながら自衛隊の車両をウクライナに提供し、NATOの事務所を日本に設置する計画もあるという。これらどれをとってもわたしには「LGBT法案」より重大な課題に感じられる。けれどもことの軽重が完全に逆転しこの国の「総論」は迷走している。(了)

【付記】本通信5月20日掲載の《中核派現役区議会議員、洞口朋子氏に聞く「LGBT法案」の問題点〈1〉「性の多様性」の名の下に、これまで女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないか(聞き手=田所敏夫)》の洞口氏の発言で、

「『性自認』よりも身体的な性差を上位に置いてしまうと」、との記載は、

「身体的な性差よりも性自認を上位に置いてしまうと」が正しい見解であると洞口氏から掲載後に訂正要請を受けました。本原稿で洞口氏の真意を伝えるとともに、20日掲載原稿の当該部分を訂正いたします。

◎中核派現役区議会議員、洞口朋子氏に聞く「LGBT法案」の問題点
〈1〉「性の多様性」の名の下に、これまで女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないか
〈2〉絶えざる差別・抑圧を産み出す今の社会を表層的に変えれば良くなるとのものの見方は、甘いのではないか

◎洞口朋子(ほらぐち ともこ) 1988年宮城県生まれ。法政大学経済学部除籍。革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)幹部。都政を革新する会(旧:杉並革新連盟)メンバー。2019年より杉並区議会議員(2期目)。公式HP https://horaguchitomoko.jp/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

本日5月23日、森奈津子編『人権と利権』(定価990円[税込])が書店に並ぶ。LGBT、Colabo、しばき隊といった人権運動の影の部分を浮き彫りにする一冊だ。いやがらせ、特に出版差し止めを警戒しつつ、関係者一同、3月から秘密裏に進めてきた企画でもある。

ここではまえがきを公開し、皆様にその概要を把握していただきたいと思う。

*     *     *

まえがき  フェミニスト、しばき隊、LGBTの裏にあるもの

 

森 奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

2022年秋、いわゆる「Colabo問題」が浮上した。元ゲームクリエイターの暇空茜氏が、フェミニスト仁藤夢乃代表の若年被害女性支援団体・Colaboの会計に不明な点があると指摘、住民監査請求を東京都に提出するに至る。それに対し、Colabo側はすぐさま会計関連書類を公開するわけでもなく、暇空氏を名誉毀損で提訴したのだった。しかも、弁護団として七人もの弁護士(角田由紀子、神原元、太田啓子、端野真、堀新、中川卓、永田亮)をそろえ、提訴記者会見にのぞんだ。

ところが、その場で、神原元弁護士が大失言をしてしまう。暇空氏による住民監査請求を「リーガルハラスメント(法的いやがらせ)」と批判してしまったのだった。これは、大いに炎上した。住民監査請求をハラスメントとは何事ぞ、と。弁護士たちからも批判が続出した。

暴力的極左集団などとかっこよく表現されることもあるが、まともな左翼と差別化するための「パヨク」なる呼称のほうがポピュラーなC.R.A.C.(旧レイシストをしばき隊)を中心とする運動体のダークサイド、特に「しばき隊リンチ事件」を追ってきた本書版元・鹿砦社は、もちろん、Colabo問題にも注目していた。ミスター・リーガルハラスメントこと神原弁護士は、初期のしばき隊メンバーでもあり、これまで鹿砦社とは、しばき隊系活動家の代理人弁護士として法廷闘争を繰り広げてきた御仁だ。

しばき隊系の弁護士が、なぜ、Colaboの弁護を?──と、しばき隊ウォッチャーにたずねれば「そういうことだ」とこたえるだろう。すなわち「しばき隊とColaboには、なんらかのつながりがある」と。

バイセクシュアルである私は、以前から、しばき隊とLGBT活動家が共闘している事実を批判してきた。LGBTの運動に「寄生」したしばき隊系活動家は、なにかというと「差別だ! 差別だ!」の大合唱で、集団ネットリンチに及ぶ。その多くは異性愛者であり、知識も乏しく、まともに議論もできない。なのに、それを恥じることもなく、暴言、恫喝を繰り返す。

LGBTのイメージを悪化させている「無能な味方」である彼らを、なぜかLGBT活動家は諌めない。なので、一作家にすぎない私が、そのズブズブの関係を指摘し、大いに批判させていただいている。

ここに、ひとつの山がある。ふもとから続く道は、三本。それぞれ「フェミニスト」「しばき隊」「LGBT活動家」と名づけられた道だ。その三つの異なる「人権の道」をたどると、やがて共通の「利権の頂上」に行き着く。本書を手にとってくださった皆様には、そんな読書体験をお約束したいと思う。

*     *     *

なお、あとがきのタイトルは「本書を嚆矢とする類書の刊行を望む」だ。マスコミが人権運動に対しては萎縮し、負の部分を批判できないという不健全な状況を、なんとか打破したいという思いを、そのタイトルに込めた。

このテーマが読者に受け、本の売れ行きも好調となったら、今後、他社からも類書が刊行されることだろう。個人的には、パクリ本と言われるような本でも大歓迎だ。そうして、議論が活発になり、人権運動が浄化されることを、心から望む。

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

【お断り】本書は本日発売ですが、発売以前から好評で予約が殺到し、すでにAmazonなどのネット書店では品切れ状態(数日内に補充予定)ですので、
①書店店頭でお探しのうえお求めになるか、
②Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5GCZM7G/などネット書店に予約入れておいていただくか、
③直接鹿砦社販売部sales@rokusaisha.comにご注文ください。

一部にご不自由をおかけしますが、何卒ご容赦の上、ご購読のほどよろしくお願い申し上げます。

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5GCZM7G/

いわゆる「LGBT理解増進法案」が今国会に上程され審議に入ろうとしています。立場、党派によって求めるものが異なり3種類の法案が提出されました。これに合わせたわけではありませんが、森奈津子=編『人権と利権 「多様性」と排他性』が完成し23日に発売となります。

 

5月23日発売開始 森 奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

「LGBT理解増進法案」、これに賛成し推進するのが「左派」「リベラル」で、反対するのが「保守」という構図として、立憲、共産、社民、れいわなど「左派」「リベラル」といわれる政党はなべて賛成・推進派です。どちらかというと「左派」「リベラル」的な考えを持ち、社会運動に関わったりされている、この通信をご覧になっている方々の多くが賛成・推進派かもしれません。しかし、ちょっと待ってください!「性自認至上主義」(トランスジェンダリズム)の危険性など、本当に判った上で賛成し推進しようとしているのか? このかん私なりに調べていく中で疑問が湧いてきました。

◆「LGBT理解増進法案」に疑問

LGBT、これの「理解増進」を促すという法律とは何か? 「性の多様性」「性的マイノリティの人権」「ジェンダー平等」などと、耳触りの良い言葉で語られるものの実態とは何か? 私(たち)は全く理解していませんでした。おそらく国民全体がそうだろうと思います。

なのに、一部の行政(埼玉県、東京都渋谷区、新宿区など)では条例を策定したり先走り、女性専用トイレを廃止し、いわゆる「ジェンダーレストイレ」が導入され、世の女性・子どもの人権、安心・安全が蔑ろにされつつあります。実際に、ちらほらトラブルが報じられています。一例を挙げれば、東京新宿歌舞伎町に4月に鳴り物入りでオープンした「東急歌舞伎町タワー」2Fのトイレ、オープン初日から混乱し、これを避けるため急遽男女2つに分け、遂に改築になるとのことです。やれやれ、大金を使って何をやってんですか。

どの法案が通るかどうかわかりませんが、どれが通っても今後そのようなトラブルは必至です。

トイレについて付言すれば、世の中に女性トイレは元々なく、ずっと共同便所(ジェンダーレストイレとどう違うのか?)で、戦後、ある小学校で女児が強姦・殺人されたことを契機として生まれたという悲しい経緯がありますが、またまた元の共同便所に戻れということでしょうか。さらに女湯も廃止、男女混浴に。更衣室もジェンダーレスに、今後、介護施設、病院、部活などでトラブルが起きることが懸念されます。

「性の多様性」結構、「性的マイノリティの人権」結構、同性婚もいいでしょう。しかし、国民的な議論、周知、合意もなく、一気に共同便所、男女混浴はいかがなものでしょうか。

「それは誤解だ」と仰る方もおられますが、私たちが「誤解」するほど、まだまだまともに議論されていませんし、国民的な合意がなされているとも言えません。いずれにしろ拙速に事を進めるのだけはやめにしていただきたい。

◆Colabo問題に対し“酷税”に苦しむ中小企業経営者として怒り心頭

また、昨年末あたりから「一般社団法人Colabo(コラボ)」という団体の公金の使い道と利権に不正があるということで、これを暇空茜(ひまそらあかね)という元ゲームクリエーターが問題にし、住民監査請求をしました。住民監査請求とは、市民に与えられた権利で、行政に問題や疑問を覚えたらこれを行使することは当然のことで、公金(この原資は税金!)を特定の団体に「補助金」の名でぽんぽん1千万円単位で出す利権構造に問題はないのでしょうか?

これに対し、私たちと長年裁判闘争を繰り広げた神原元弁護士は、暇空氏の請求を不当とし記者会見まで開き「リーガル・ハラスメント」なる言葉で詰り提訴しましたが、なにをかいわんやです。

ところが、おそらくこれで怯むと思っていたのか、暇空氏はネットで支援を訴え7千万円とも8千万円ともいう予想外に巨額のカンパを集め対決姿勢を強め、いまだ一歩も引かず対峙しています。

◆「大学院生リンチ事件」加害者側人脈の者らが絡むことに胡散臭さを感じる

私たちがなぜ、そうしたことに注視していたかというと、これは他の人たちとはいささか異なるところですが、LGBT問題にしろColabo問題にしろ、私たちが2016年以来7年間も血のにじむ想いで被害者支援と真相究明に関わってきた「カウンター大学院性リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」)の加害者側人脈(しばき隊、日本共産党含む)が中心になっていることも大きな要因としてあります。リンチ事件で加害者側の弁護を中心になって担った神原元弁護士は、そうした問題でも中心になって動いていますし、リンチに連座し高裁判決で「道義的責任」を判示された李信恵や、彼女の後見人的存在の辛淑玉らも名を連ねています。リンチ事件の加害者側人脈の人たちの動きには、裁判がすべて終わったとはいえ、それなりに注視してきましたが、彼らの言動にはなにか魂胆があり胡散臭いと思っています。

詳しくは文中の「解題」で記述していますが、そうした由々しき問題が罷り通るなら、戦後この国が培ってきた社会規範や常識、倫理、価値観などが崩れかねないという危機感もあり、私たちなりに多少なりとも発言すべくと思い、『人権と利権』の出版企画を立案し、以前にリンチ事件追及第6弾『暴力・暴言型社会運動の終焉』に寄稿いただいた森奈津子さんに編纂していただきました。

ちなみに、森さんは、作家業の傍ら、結婚後すぐにお連れ合いが難病に罹り、この介護、またご本人も乳がんで片方の乳房を切除し再発の懸念の中、口にする人の人格、人間性を疑うような罵詈雑言にも屈せず頑張っておられます。

不思議なことに、「LGBT」「ジェンダー平等」「性の多様性」「性的マイノリティの人権」等々、目新しく耳触りの良い言葉に惑わされ、これを持ち上げる本は少なからずあれど、真っ向から異議を唱えた本はほとんどありませんでした。わずかに芥川賞作家で5年前からLGBT問題に異議を唱え文壇から追放された笙野頼子さんの著作『発禁小説集』(2022年、鳥影社)、『女肉男食――ジェンダーの怖い話』(2023年、同)があるぐらいです。笙野さんは、元々共産党の熱心な支持者でしたが、このことによって離れています。

本書『人権と利権』は、こうした情況に堂々と議論の材料を提供すべき一冊です。

私たちは自分の眼と頭で学び、疑問に感じたことを森さんはじめ5人の方に語っていただきました。反論があれば、まず読んでからにしていただきたい。読みもしないで「差別者」呼ばわりはやめていただきたい。大学院生リンチ事件についての本でも、ケチをつけたり口汚く罵るばかりで、6冊も出してもまともな反論はありませんでした。罵り合いはご法度です。賛否両論、異論反論、甲論乙駁、どんどん出し合い、将来的に益になる前向きな議論を望みたい。私の言っていることは間違っていますか?

『人権と利権』は、いよいよ5月23日発売です。自信を持ってお薦めする一冊です。どうか、今すぐご予約お願いいたします!

(松岡利康)

5月23日発売開始 森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5GCZM7G/

本通信ですでにお伝えした通り「LGBT平等法」が国会で審議されている。国政政党の中に明確な「反対」は見当たらず、自民党から共産党までがこの法案に関しては「推進勢力」である。時あたかも「広島G7」。「G7の中でLGBT法がないのは日本だけ」との言説も聞かれるが、果たして「グローバルスタンダード」(?)はこの国のひとびとを幸せにするのだろうか。

ある筋から「中核派がLGBT法に反対しているよ」と教えてもらった。マスコミでは「過激派」と称される中核派であるが、中核派が「LGBT平等法」に反対する理由はどのようなものだろうか。中核派であることを隠すことなく杉並区会議員として2期目の再選を果たしたばかりの洞口朋子さんに電話でお話を伺った。

 

洞口朋子=杉並区議会議員

◆なぜ「LGBT法案」に反対なのか?

田所 杉並区議会議員に2期目の当選をされた洞口さんにお伺いいたします。今の国会に「LGBT平等法」を成立させようとの動きが、野党、与党双方からあります。洞口さんは「LGBT法案」に反対の立場を明らかにされたと伺いました。その理由を教えて頂けますか。

洞口 杉並区議会においても今年の春の議会でひとつの焦点になりました。杉並区ではこの4月から「杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例」通称「性の多様性条例」が施行されました。それには私の所属する「都政を革新する会」、「中核派」も反対です。

この条例の問題点は様々ありますが、「多様性」との表現はいかようにも取れる、ということです。多くの女性が訴えていることでもありますが、女性が歴史的に勝ち取ってきた部分と衝突しうる。今の社会の中で厳然として存在している「女性差別」の問題を度外視している。性的少数者の方たちの権利を私たちはもちろん守らなければいけない、という立場ですが、それと「女性の権利」、「女性の安全」が衝突してしまうという問題が大きいと思います。歴史的に見ても「男女雇用機会均等法」や「労働者派遣法」とセットで「男女平等」をうたいながら女性労働者を安価な労働現場に送っている。

また「男女平等」や「多様性」は一貫していまの政府にとって都合の良いものとして使われてきたと思います。女性が勝ち取ってきた「保護規定」などが女性が家庭から引っ張り出されることにより、労働者全体の雇用が破壊され、結局女性に「賃金労働」と「家内労働」の両方が押し付けられる。この構造とまったく同じです。

「LGBT法」は女性差別を固定化してゆくものにしかならないし、性的マイノリティーのみなさんが生きやすい社会を作ることになるとは思えない。「女性差別を無視してはいけない」という立場です。

田所 性的マイノリティーの問題を無視するわけではないけれども、それ以前に「女性差別」が度外視される問題の立て方はおかしいのではないか、とお考えであるということでしょうか。

洞口 そうですね。一言で言えば資本主義社会において、「多様性」や「男女平等」は欺瞞である、と。

田所 ちょっと、洞口さんそのお話は次にお伺いしますので。ごめんなさい。

洞口 はい、ごめんなさい。

◆杉並区の「性の多様性条例」は女性差別や女性被害の歴史を踏まえていない

田所 先ほどお伺いした杉並区の通称「性の多様性条例」に「多様性」の名でこれまで女性が勝ち取ってきた様々な権利が無視されている、これが反対をなさる根拠の一つでしょうか。

洞口 はい、そうです。

田所 私は「LGBT」法案について日本共産党にお尋ねしましたが、お答えは曖昧でした。「LGBT」との言葉は耳にしますが、「性の多様性」というときに固定的な概念で括れる人たちばかりではないのではないか、と疑問を持ちます。日本においては性の問題と「家制度」、「家父長制」は不可分であると感じますが、いかがでしょうか。

洞口 私もまったく同じ問題意識があります。杉並区議会でも「パートナーシップ制度」の創設を求める陳情が出されました。「事実婚を認めるべきだ」、「同性婚を認めるべきだ」との内容です。これは私も大賛成、重要だと思います。

「性の多様性条例」と「パートナーシップ制度」がかなり混乱して語られていることに問題があると思います。「パートナーシップ制度」と「多様性条例」が同じであるかのように「洞口は反対した!」と結構、雑な言われ方をします。

「性の多様性」条例の核心的は問題は、私有財産制度や今の社会の政治、経済的な基盤である「家族制度」で、女性が産む性であるがゆえに「子産み道具」や「家内奴隷」という言い方もされますが抑圧されている、実際に社会の中で性暴力や差別を受けているのが99%以上女性だとの歴史と現実をまったく踏まえていない。「性の多様性条例」を作れば問題が解決するかのように、ある意味幻想を煽っている。女性差別や女性被害の歴史を踏まえていないことが問題だと考えています。

田所 実態と乖離しているといことでしょうか。

洞口 そうですね。それどころか差別が固定化されてしまう、と考えています。

◆LGBTすべての人たちが「性自認至上主義」を望んでいるかと言えば必ずしもそうではない

田所 「マイノリティー」という言葉は日本でも定着しているように感じます。少数者に対する懐の深い考え方である一方、「マイノリティー」を名乗れば「保護の対象とされてしかるべきだ」と議論を飛ばして結果に行き着く傾向がありはしないかと感じます。

洞口 性的マイノリティー当事者の声を聞くことがあります。身体的な性差よりも性自認を上位に置いてしまうと、結局犯罪に繋がる。それをしてしまうとLGBTと言われますが、様々あるわけです。LGBTすべての人たちが「性自認至上主義」を望んでいるかと言えば必ずしもそうではない。いまの社会の抑圧構造、この社会の現実について声を上げるべき相手を見誤るような動き、本来であれば性的マイノリティーの人たちも、女性も「家制度」や「家族イデオロギー」にそぐわないということで、ともに声を上げていく人たちが対立させられている状況があると思います。

「性の多様性条例」も誰が差別者、非差別者と認定するのか。条例全体で曖昧なので非常に危機感を持っています。実際女性スペースに身体男性が「心は女性なんだ」と、いまオールジェンダーレストイレとかありますが、女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないかとの危惧があります。(つづく)

◎中核派現役区議会議員、洞口朋子氏に聞く「LGBT法案」の問題点
〈1〉「性の多様性」の名の下に、これまで女性が勝ち取ってきたものが解体されようとしているのではないか
〈2〉絶えざる差別・抑圧を産み出す今の社会を表層的に変えれば良くなるとのものの見方は、甘いのではないか

◎洞口朋子(ほらぐち ともこ) 1988年宮城県生まれ。法政大学経済学部除籍。革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)幹部。都政を革新する会(旧:杉並革新連盟)メンバー。2019年より杉並区議会議員(2期目)。公式HP https://horaguchitomoko.jp/

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

近年、不思議な国際社会が牽引して日本でも「LGBT」なる言葉が流布している。それに関する立法も急速に進んでいるようだ。弱者の権利擁護はよいだろう。だが、それは戦争に向けた軍事費倍増や原発延命・新設のように明日にでも命にかかわる問題であろうか。あるいは文化や歴史に照らして無理はないものか。

この問題についての最先頭と思われる日本共産党に素直な質問を投げかけた。回答してくださった方は誠実ではあったが、こちらが腰を抜かすほど問題の本質に対して鈍感(あるいは無知)であった。以下、前編に引き続き、わたしと「日本共産党ジェンダー平等委員会」の方とのやり取りの後編である。

◆「B(バイセクシャル)のことは考えたことがない」!

田所 一番象徴的な疑問は、バイセクシャルの方がヘテロと比べてデメリットを被るということが私は論理的に理解できないのです。

共産党 バイセクシャルまでなんで認めなくてはいけないのか?

田所 いえ。認めなくてはいけないのではなく、いいんですよ。でもバイセクシャルの方々がヘテロの人と比べてどういうデメリットを受けていて法律で守られなければいけないのかがわからない。

共産党 法律で守るというより今当事者の皆さんが求めているのは、自分たちの性的指向もね、要は異性愛の人たちと存在としては対等なわけですよね。

田所 対等というより、対等以上に異性愛と同性両方できるわけでしょこれ彼ら彼女ならは。

共産党 そうですね。

田所 だから優越してるんじゃないかと思うんですけど。

共産党 まあ、その具体的ないろんな場面で、例えば学校の中でね非常に異性愛だけが恋愛のあり方なんだ、みたいなことを言われたときに、まあバイセクシャルということは同性を愛する時もあるわけですから……。

田所 ですからその人たちはそれで非常に自由なわけでしょ。同性愛の人が肩身の狭い思いをするのはよく理解できます。でもバイセクシャルの人は異性愛もできるし同性愛もできる。ならば異性愛が基本となって法律で認められる社会において異性愛者より何かデメリットを被るでしょうか。

共産党 まあね。純粋にね。ちょっと私も当事者の方にもっと話を聞いてみなければいけない、と思うんですけれども。

田所 私も若干は自分でお尋ねしたり調べているのですが、皆さんバイセクシャルの問題になると歯切れが悪いんです。私はレズビアン、ゲイとバイセクシャルの方を並列して「性的マイノリティ」という形でくくるのは間違ってるんじゃないかと思うんです。だから、教えていただいてるセクシャリティの専門の方でも、私がバイセクシャルのことをお尋ねするとちょっと歯切れが悪くなるのではないかと思うんです。

共産党 あんまりバイセクシャルだけを取り出して考えたことは、言われてみればなかったと気づきます。

田所 明らかに違うでしょ。だってバイセクシャルの方は今の性的概念とか法的概念の中で生きることもできるし、それプラスアルファ違う感覚も持っている。同性愛の人たちは今の法的概念の中からは、逸脱とまでは言わないけれども法律的には包含されないところにいる。立場が全然違う。

共産党 まあね、なぜLGBTというふうになってきたのかがね。もうちょっとよく調べなければいけないのかもしれませませんね。

田所 私はちょっと不自然だなと思います。

共産党 そういうご意見はすいません、初めて伺いました。

田所 ああ、そうですか。初めてですか。はあ。性の平等や自由を実現していただくのは私は大いに結構だと思うのですが、そこでちょっと問題の混在がないかなということは懸念しますね。

共産党 バイセクシャルの方がどういう悩みを持っているか……?

[画像左]東京レインボープライドでは、しばき隊界隈文化人・香山リカ氏と共産党・池内さおり氏がツーショット! [画像右]東京レインボープライドにTOKYO NO HATEのフロートで参加する池内さおり氏

◆多様性に例外があるのか?

田所 いや、バイセクシャルと同性愛者を並列に並べるのであれば、たとえば先ほど対象にならないよとおっしゃった一対多の関係というケース。男性であれ女性であれですよ。それが不承認によって行われている場合、不承認というのはその単一の人とその対象の多数の人の間での関係性、あるいはパートナーとの関係性が不承認、あるいは納得がいかない関係性であれば自由の範囲を逸脱する関係だということは言えると思うんです。けれども、仮にそれが関係者全員の承認のもとに行われているのであれば、それは多様性の中に入りませんか。

共産党 そういう議論もできますよね。

田所 議論ができるという話ではなく、今の社会観念からはたぶん褒められたことではありませんけれども、そういう人たちはもうずいぶん前からいるわけです。

共産党 そうですね。

田所 閉じられた世界でサークルを作ったりしている人たち。社会的に見ればちょっとへんてこな人ですけれども実際いるわけです。バイセクシャルの人たちは救済の対象と言うとおかしいですけれども、法的保護の範疇に入って、1対多数とういう指向を持っている人たちは「性的指向の自由」の範囲には入れてもらえないという線の明確な引き方が果たしてできるのかどうか。

共産党 バイセクシャルという場合、私のこれまでのイメージは、ずっとそれまで異性と付き合ったこともあるし結婚したこともあるし、だけどふと気づいたら女性を愛したいということで、女性と再婚する方っていらっしゃいますよね。

田所 結婚は社会制度の話であって、性についての指向、感覚は内面的な部分も多分あるのでやや異なるのではないでしょうか。例えば中学生とか高校生の時に恋愛感情とは違うけれども、同性の先輩に憧れると。恋愛というところまで行かないけれども憧憬の念を抱くことは別段珍しいことではない。中には性的な感覚に近い人もいるかも分からないですよね。男女の結婚生活を送ることに直結しないレベルで言ったら、多くの人は両性具有のメンタリティーを抱えてるかもわからないですよね。けどそれは一生懸命法律で何とかしなければいけないような問題なんでしょうか。

◆LGBTは分かりやすい略称なのか?

共産党 LGBTというのが性的マイノリティの分かりやすい略称としてね、使われているのでLGBT平等法とか……。

田所 私には分かりやすくないですね。私には混乱をきたす略称です。

共産党 えええ。まあ歴史的な経過でそうなってきたというのもあるんだけど。

田所 でも今私にお答えいただいている方もバイセクシャルについては、私がお尋ねすると「そこまで考えたことはなかった」とおっしゃっていただきましたでしょ。

共産党 それだけを取り出して、Lはこうだ、Bはこうだみたいに分けて考えたことはなかったです。大きくは性自認と性的指向ということで。LGBとT。LGBはひとまとまりっというか。そんな自覚でいましたので。

田所 そんなに明確なものかどうなのか、と思いますね。明確というかそんな簡単に既成の分け方があるからそれで分けられるというものなのか。どうしてこれを尋ねしたかというと最近共産党の街に掲げてあるポスターに頻繁にその文字が書かれてるんですね。

共産党 共産党は日本国憲法を全面的に実現する世の中を目指しているんですよね。その中にある両性の平等、個人の尊厳これを考えたときに、性的少数者の皆さんが声をあげて運動していらっしゃる、その声はきちっと受け止められる政治にしてゆく必要があると思って、10年くらい前ですかね、共産党はこの問題を掲げ始めているんですけど。運動によって私たちが気付かされて、私たちが取り組まなきゃいけないということで掲げているんです。

◆共産党がどうして「資本主義の矛盾」より「性の問題」を重視するのか?

 

ANTIFAのTシャツを着用する共産党・池内さおり氏と吉良よし子氏

田所 私は性の問題が課題ではないと言っているのではないです。共産党はもともと社会主義とか共産主義の社会作ろうというところから出発されたと思うんですけど、現在その問題はますます可視的に拡大してるんではないかと思うんですね。階級格差です。はっきり言えば、金持ちと貧乏人の差が私たちの毎日の生活の中では拡大してるのではないかと思います。それを資本主義の方法で果たして解決できるかということが1つは世界的な問題ではないかと思うのです。確かに性の問題も重要ですけれども、他の政党で資本主義の根本矛盾を問題視している政党は残念ながらないですね。

共産党 そ、そうですね。

田所 資本主義の根本的な矛盾、搾取の構造というようなことを考えてる政党が残念ながらないわけで、だから共産党こそがですね100年ぐらい歴史があるんでしたっけ。

共産党 ちょうど今年で100年です。 

田所 100年ですか、100年前に比べても今もっと資本主義の悪弊と末期症状は進行しているのではないかと私は思うのですけれども。

共産党 そういうのは共産党掲げ続けていますし、それとジェンダー平等を掲げることはね矛盾するどころか……。

田所 そうです。私は性的な問題を取り上げるなと言っているのではありません。丁寧に教えていただいたので考えていらっしゃることないは分かりました。けれどもせっかくお時間いただいてお相手いただきましたので性の問題に取り組まれるのも結構ですが、今こんな時代で他の野党も頼りないところばかりです。出発点に帰ってしっかり傾注していただくほうが応援しやすいですね。ご丁寧に対応いただきましてありがとうございます。

共産党 私もBのことはもう少し自分で勉強して、そういう疑問に答えられるように。

※        ※        ※        ※

日本共産党が革命を指向する政党だとは思わないけれども、政党名からはそれが良いか悪いかは別にしても、社会主義、共産主義をイメージさせられる。その日本共産党が、どうして格差、階級が拡大し転落の一途が明らかである今日の日本社会で、ここまで熱心に性の問題に力を入れるのか、共産党の方のお話をうかがっても、依然としてわたしには理解ができない。社会制度としての婚姻などに不合理・差別があれば制度を変更し、同性婚は認めればよいとわたしは考える。しかし、婚姻(社会制度)と性指向は似ているようであって、本質的には区別すべきテーマではないか。性指向は内面の問題であり、極めてでデリケートであるがゆえに、簡便な分類などは困難ではないか。

「人に迷惑」をかけなければどんな性指向だって、当事者が納得すればいいだろう。けれどもそのような内面にかかわることに、法律を持ち出すべきであろうか。

繰返すが、制度的差別に苦しむひとがいるのであれば、制度が救済すべきだ。しかし、内面に関する法律や規則は、可能な限り少ないに越したことはない、とわたしは考える。

その理由?不思議なことにLGBT平等法は共産党だけではなく、他の野党もこぞって賛成であり、さらには、与党自民党、公明党までもが意欲を見せている不可思議な様相に、不健全な意図を感じるからである。

この議論、わたしの視点に偏りはあるであろうか。

◎日本共産党ジェンダー平等委員会に直撃電話一問一答 LGBT平等法は大丈夫か?
〈前編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46514
〈後編〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46519

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。著書に『大暗黒時代の大学──消える大学自治と学問の自由』(鹿砦社)がある。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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