9月に筆者が出演した番組を2本紹介しよう。いずれも須田慎一郎氏がキャスターを務める「別冊! ニューソク通信」の番組である。ここで取り上げた2件の事件に初めて接する人にも理解できるように編成されている。

 

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』

◆週刊金曜日と鹿砦社の決別をめぐる事件

7月初旬に週刊金曜日と鹿砦社が決別しておよそ3カ月になる。週刊金曜日に掲載された森奈津子編著『人権と利権』(鹿砦社)の書籍広告に対して、週刊金曜日が差別本のレッテルを張り、今後、鹿砦社の広告を拒否することを告知したことが決別の原因だった。

しかし、この決定の背景にある事情を調査したところ、週刊金曜日に対して、鹿砦社の書籍広告を掲載しないように求める声が、SNSなどで炎上していたことが明らかになった。SNS上の暴言・苦言が週刊金曜日の植村隆社長にプレッシャーを与え、一方的に鹿砦社に決別を宣言したのである。

これら一連の経過は、デジタル鹿砦社通信やメディア黒書が報じてきた。また『紙の爆弾』(10月号)は、筆者が執筆した「『週刊金曜日』書籍広告排除事件にみる『左派』言論の落日」と題する記事を掲載した。さらにインターネット放送局である「別冊! ニューソク通信」が取り上げた。

「別冊! ニューソク通信」の須田慎一郎氏はこの問題に着目した。と、いうのもコラボ問題についての須田氏と森奈津子氏の対談が『人権と利権』に収録されているからだ。その本が「差別本」と烙印されたのだから、ある意味では須田氏も当事者である。


◎[参考動画]左翼は結局、権力に屈した!?…その権力の持ち主とは!? 野党の崩壊につながる!?(2023/09/13)

◆横浜副流煙事件の反訴

「別冊! ニューソク通信」が制作したもうひとつの番組は、横浜副流煙事件の反訴の進捗を紹介したものである。須田氏の他にわたしと、当事者である藤井敦子氏が出演している。

この事件の最初の裁判は、2017年11月に提起された。煙草の煙で「受動喫煙症」などに罹患したとして、A家の3人(夫・妻・娘)がミュージシャンの藤井将登氏を訴えた。この提訴の根拠となったのが、日本禁煙学会の作田学理事長が作成したA家の診断書だった。しかし、そのうちの1通が虚偽診断書であることが裁判の中で判明する。

裁判は、藤井氏の勝訴だった。その後、藤井夫妻は、作田医師を虚偽診断書作成の疑惑で刑事告発した。事件は受理され、作田医師は書類送検された。その後も藤井夫妻は反撃の手をゆるめずに、作田医師を訴権の濫用で提訴した。「戦後処理」としての反訴である。

この裁判の尋問の中で、作田医師は藤井敦子氏が「喫煙者である」と暴言を吐いた。さらに敦子氏の支援者に対しても根拠のない事実を摘示した。これに対して敦子氏と支援者の男性は、作田医師に対して名誉毀損裁判を起こした。男性は刑事告訴も行い受理された。その結果、作田医師は次の係争を抱えることになった。

1,前訴に対する損害賠償(訴権の濫用)裁判
2,損害賠償(名誉毀損)裁判
3,刑事告訴(名誉毀損)


◎[参考動画]【横浜副流煙裁判】まだまだ続きがあった!! 日本禁煙学会・作田学理事長のトンデモ発言連発!!タバコがダメなら〇〇で…誰もが被告になってしまう可能性が!?(2023/09/16)

◆「市民運動=善」という幻想

ここで紹介した2件の事件を通じて、筆者は読者に市民運動のあり方について考えてほしい。市民運動を敵視するわけではない。むしろ市民が結束して、社会運動を展開することは大事だと考えている。しかし、市民運動体の中には反社会的な勢力が紛れ込んでいることがあるのも事実だ。となれば、「市民運動=善」というスタンスは間違っている。

たとえばしばき隊が2014年に大阪市の北新地で起こした事件は、重罪である。重傷者が出ているわけだから、隠蔽するのではなく検証しなければならない。ところが実際は、多くの識者たちが隠蔽の方向で結束したのである。野党の一部もそれに加担した。

また、コラボ問題では、住民監査請求が通った事実があるわけだから、当然、ジャーナリズムはコラボの経理を検証しなければならない。仲間意識で曖昧にできる問題ではない。

ジャーナリズムは、市民運動の質を見極める必要がある。
 
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』