私の内なるタイとムエタイ〈61〉タイで三日坊主! Part.53 想い出の地と藤川さんからの手紙

ニーモンに出掛ける比丘達が用意されたトゥクトゥクで向かう

◆最後のワット・ミーチャイ・ター

ビエンチャンからノンカイに戻るとナンマラタナさんと一緒に再びワット・ミーチャイ・ターの門を潜った。もう慣れた寺の雰囲気。堂々と入って行くと、クティの玄関前を掃いていたバーレーくんと出くわした。「オッ、来たか!」と早速私のカメラバッグを奪って以前の倉庫部屋へ運ばれてしまう。

「オイ、精密機械だからソッと持て!」と言う間も無く、それよりも「2階の和尚さんの部屋がいいんだが」と言う前に、バーレーくんは「和尚さんは留守で今日は帰らないよ」と言う。それは仕方無いが、まあ倉庫部屋でも問題は無い。ナンマラタナさんは「明日の朝出発してバンコクに帰る」と言い、ノンカイ駅へ列車の切符を買いに出掛けた。

ここではバーレーくんが、はしゃいで「ペン回しが出来るようになったぞ!」とやって見せる。以前、英語を教えていたネイトさんが何気なく右手で指を弾いて手の甲でペンを1回転させて再び持つ、単純な遊びだが、「オオ、何だそれ、どうやってるんだ!」と興味津々だったバーレーくん。ほんの3分ほどでコツを掴みつつあったが、探究心があり、「こいつは覚えるの早いぞ」と思ったし、「学校で自慢するだろうなあ」とも思っていた。若いキーリーという比丘やネーン達も興味津々に加わって来て賑やかなもんだ。今やバーレーくんが先生だ。私はこれより10年前に職場で教わったが、不器用で何年経っても出来ない。

キーリーくんの部屋。大人しいが明るく真面目な比丘だった
三輪自転車で出掛けるキーリーくん

翌朝、ナンマラタナさんは、予定通り、皆が托鉢に行っている間に早々とバンコクへ向けて引き上げて行かれた。ワット・チェンウェーで出会ってからずっと見て来たが、物静かで藤川さんのような高笑いもせず、修行僧と言うに相応しい比丘だった。

そこへ入れ替わるようにプラマート和尚さんが帰って来た。再びワイをして「もう少しだけここに居させてください」とお願いするとそこは問題無く了承して頂いた。

ここでも最後に尋ねてみた一番候補のこの寺での再出家の可能性。
やる訳にはいかない立場とは思うもこの問い掛けに、
「再出家は出来るよ。還俗も出来るよ。でももっとタイ語を勉強してからにしなさい。」

優しい言い方で、唯一許可してくれた比丘であるプラマート和尚さんではあったが、遠回しには好ましくないから諦めさせようとするニュアンスが含まれている対応であったかとは感じられた。

市場で出会ったTシャツ屋の兄ちゃんに住所を書いて貰う

◆想い出の地

旅の最後の想い出に、一人でノンカイの街を歩き市場にも出掛けると、屋台ではオバチャンが「美味しいか? 美味しかったらまたおいで!」と声掛けてくれたり、サパーンミタパープの近くでTシャツ屋をやっているという、ちょっと怪しい雰囲気の兄ちゃん2人に、「一緒に飯食おうよ!」と勧められてテーブルについてみた。「心のいい日本人に会ったことがある」という彼らが奢ってくれたが、彼らも心のいい奴らだった。私も心いい人で居て、心いいタイ人に繋がなければと思う。こんな人達ばかりではないけれど。

バンコクでもこういう屋台では何度も訪れると、声掛けられたことがよくあった。こんな地元の人との触れ合いが楽しい。そんな和気藹々とした中、メコン河から見える対岸のラオスを眺めていると、ビエンチャンの街が思い出される。また行きたいな。来年また行こうかな。寺の皆や信者さんの綺麗なお姉さんに会いに。オカマのオジサンは要らんが。

そんな想いに耽りながら、今はもう比丘ではない。藤川さんもいない。修行の成果は何も無いが、髪も伸びたし、そろそろ社会復帰しようと思う時期に来ていた。

ビエンチャンの街、古い車、自転車の庶民

◆藤川さんへ御礼の手紙を書く

三日ほど滞在した後、夜行列車でバンコクに帰ると、アナンさんに「何だ、再出家しなかったのか?」とからかわれた。「お願いして歩いたけど、まずタイ語覚えなさいって、やるのは無理だったよ!」と笑ってやり過ごす。

でも将来的には藤川さんと同じ道を歩むかもしれない。そんな気持ちが少しは沸いてきたノンカイ・ビエンチャンの再訪問だった。

そして数日後、ネイトさんとカンボジアに行った藤川さんは、おそらくもうワット・タムケーウに帰っているだろうと思う3月下旬、手紙を書いてみた。

出家に誘ってくれたこと、ラオスまで旅できたこと、無事に還俗できたこと、修行とは言えぬ日々でムカつく日々でもあったが、いろいろ忠告してくれたこと、感謝の気持ちを書き、宛名だけ貶して「ジジイへ」と書いた。

もう会うことも無いだろうが、最後のけじめの礼状をポストに投函した。返事など来ないだろう。私も頼りない出家で藤川さんから見れば失望したろうし、今後もネイトさんみたいな弟子が現れたら受け入れて旅すればいい。私のことはやがて忘れるだろう。

コンビニエンスストア(?)が立ち並ぶビエンチャンの街
メコン河沿いの道、今も歩いてみたくなる

◆次の悪企みか!

そのわずか4日後、アナンさんが持って来てくれたのは藤川さんからの手紙だった。返事が来るとは驚いた。しかもこんな早く。嫌な予感がしたが、封を開けて、以前のとおり“字が下手だから”とタイプライターで打ってある、それでも誤字だらけで所々手書きの下手糞な文字が入っている手紙を開いてみると、「ジジイで悪かったなあ。まだ居ったんけえ~」と拍子抜けする笑える出だし。

そして以前のように朗らかな内容の中にも、「出家したことは、春樹の生涯の良い経験としていつまでも心に残ると思うよ。そしていつかあの経験が役に立つ時があると思う。やっぱり出家のチャンスを与えてくれたこの寺や、和尚、サイバーツして下さった皆さんに感謝する必要があると思うけど、幾らお金を積んでもチャンスが無ければ出家はそう簡単には出来ないと思う。そう考えればこの寺で出家したのも何かの縁。仏陀の言われる『この世の総ての現象には必ず因があり、それが何かの縁により、果となる。因なしに、また縁なしに果のあるものは絶対にない』ということだと思う。人がやらない経験をしたんやから、ここから更に自信を持って仕事を増やして行けや。またいい結果に繋がるぞ。」との励ましには愛情すら感じ、そんな文章の最後には、「6月に日本へ行くからまた面倒見てや!」

はあ? 人を散々貶しておいて勝手なこと言いやがって。また俺を利用しようという魂胆見え見え。誰がまたあんな遠い成田空港まで迎えに行くものか。東京に来たって誰も面倒見てくれる人は居ないだろう。ザマアミロ!と手紙は破って捨てたいところだが、相手が藤川ジジィだろうと可愛い女の子だろうと私は貰ったものは捨てない性格なのであった。

さて、ムエタイ選手の日本招聘手続き等があって滞在が長引き、4月半ばのタイの正月、ソンクラーン祭(水掛け祭り)が終わったら本当に帰国しようと思うが、その前にチャンリットさんに預けっぱなしの黄衣を何とかしなければならない。そして何の因果かソンクラーンに向けて、ある可愛そうな事故が起きてしまうのだった。

メコン河沿いでカメラを向けると恥ずかしがったビエンチャンの学生達

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

最新刊!月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

波乱の幕開け、ジャパンキックボクシング協会、石川直樹は倒される!

5月12日のジャパンキックボクシング協会プレ旗揚げ興行に続いて、正式旗揚げ興行が開催。お笑いトリオのジャングルポケットの太田博久さん、斉藤慎二さんのお二人がリングアナで登場。

ジャパンキック協会設立御挨拶は武田幸三氏、ドスの効いた力強い声が響いた

◎KICK ORIGIN / 2019年8月4日(日)後楽園ホール 17:00~21:05
主催:ジャパンキックボクシング協会(JKA)

◆第12試合 メインイベント 52.5kg契約 5回戦

石川直樹の左ヒジ打ちはかすった程度、カウンターで大崎孔稀の左フックがヒット

JKAフライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/32歳/52.15 kg)
   VS
WMC日本スーパーフライ級チャンピオン.大崎孔稀(OISHI/19歳/52.5kg)
勝者:大崎孔稀 / TKO 3R 1:22 / 主審:仲俊光

大崎孔稀の実兄・一貴は、ルンピニースタジアム王座にも挑戦した経験を持ち、兄弟揃ってムエタイ技術を持つテクニシャンで、石川直樹は大崎孔稀との首相撲争いが注目されていた。

序盤、大崎が強い前蹴りで石川を突き放し転ばす。石川の返しの前蹴りはやや浅く、大崎の距離の取り方が上手い。石川は大崎のリズムに付き合ってしまい、首相撲からのヒザ蹴りへ繋いでもバランス良く蹴るに至らず、いきなりの大崎の左ボディーブローを貰ったり、組み合った瞬間、大崎の転ばしに掛かかるなど、ムエタイ技で苦戦してしまう。

第3ラウンドにはヒザ蹴りに出たところへ大崎の右ストレートでノックダウンを喫し、更に接近して左ヒジ打ちに合わされた大崎のカウンターの左フックで2度目のノックダウンを喫すると、ダメージ大きい石川は、カウント中に止められ、新団体における認定チャンピオンベルトを巻かれたばかりで屈辱TKO負けとなった。

大崎孔稀の前蹴りで石川直樹を突き放す
いきなりの左ボディーブローも狙っていた大崎孔稀
大崎孔稀が石川直樹を倒した

◆第11試合 ジャパンキック協会バンタム級王座決定戦 5回戦

1位.馬渡亮太(治政館/19歳/53.52kg)vs5位.阿部泰彦(JMN/41歳/53.5kg)
勝者:馬渡亮太 / KO 2R 2:24 / 主審:椎名利一

阿部泰彦も王座挑戦の経験は2度あるが、2003年と2007年のこと。「若くて勢いのある馬渡に向かっていく姿を見て欲しい」と言う。昇り龍の馬渡と親子ほどの年の差がある阿部では勢いの差は有り過ぎたが、阿部は成長著しい馬渡に試練を与えられるか、そんな期待も持たれた試合ではあった。

試合は馬渡が早くからスピード差で主導権を握った展開。阿部を上回る蹴りパンチヒジのヒット。組み合えば阿部にもヒザ蹴りがあるが、馬渡を慌てさせるには至らない。馬渡は第2ラウンドもスピーディーにヒットを決め、2度右ヒジ打ちで阿部からノックダウンを奪い、このラウンド、何とか持ち堪えたい阿部だったが、再度、馬渡のヒジ打ちを貰って崩れ落ち、3ノックダウンによる馬渡のノックアウト勝利となった。

斉藤慎二さんのコールに乗って、ジャパンキックの若きエース格、馬渡亮太登場
馬渡のヒザ蹴りは何度も阿部を襲った
馬渡がノックダウンを奪ったのは効かせるヒットのヒジ打ち
不覚にも新人のヒジ打ちを喰らった瀧澤がノックダウン

◆第10試合 フェザー級3回戦

JKAフェザー級1位.瀧澤博人(ビクトリー/28歳/57.15kg)
   VS
WBCムエタイ日本フェザー級チャンピオン.新人(E.S.G/30歳/57.0kg)
勝者:瀧澤博人 / TKO 2R 2:24 / 主審:松田利彦

国内フェザー級トップクラス同士で、互いに負けられない立場。初回、様子見の蹴りやパンチに強烈なヒットは無いが、接近戦で新人のヒジ打ちが入ると瀧澤はノックダウン。

呼吸を整え立ち上がり、瀧澤はやや下がり気味の展開が続くも、当て勘鋭いのは瀧澤の方。時折、接近すると瀧澤の距離を計るようなヒジ打ちが軽くヒット。

第2ラウンドには接近して来る新人の額に、瀧澤の狙った強いヒジ打ちがヒットすると、新人の額から流血しドクターがストップ勧告するとレフェリーが受入れ試合終了。2試合連続で瀧澤博人が“ヒジ打ちの名手”と言える貫禄の勝利となった。

ヒジ打ちが優っていたのは瀧澤の方、この後、額を切る強いヒットになる
瀧澤のヒジ打ちで深い傷を負った新人の額から勢いよく出血

◆第9試合 73.5kg契約3回戦

JKAミドル級1位.今野顕彰(市原/36歳/73.4kg)
   VS
NKBミドル級チャンピオン.西村清吾(TEAM KOK/41歳/73.4kg)
引分け0-1 / 主審:桜井一秀
副審:椎名29-29. 仲28-29. 松田29-29

昨年10月に日本キックボクシング連盟興行で対戦した両者で、西村清吾が2-1判定で勝利しているが、今回も差が付き難い展開が続いた。単発ながら互いにパンチのヒットが多かったが、距離を詰めての主導権を奪う強いヒットは無い静かな戦いが続き、ポイント振り分け難い引分けとなる。重量級においては交流戦が充実している団体間で再々戦が期待される。

度々ヒットがあった今野と西村だが、差の付き難い展開だった

◆第8試合 62.0kg契約3回戦

JKAライト級4位.興之介(治政館/30歳/61.5kg)
   VS
キム・ボガン(韓国/22歳/60.8kg)
勝者:興之介 / 判定2-0 / 主審:少白竜
副審:椎名30-29. 桜井29-29. 松田30-29

◆第7試合 バンタム級3回戦

JKAバンタム級3位.翼(ビクトリー/23歳/53.2kg)
   VS
NKBバンタム級4位.海老原竜二(神武館/28歳/53.2kg)
勝者:翼 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:松田29-28. 桜井29-27. 少白竜30-27

初回のパンチとローキックの攻防から翼のヒザ蹴りでノックダウンした海老原だったが、凌ぎきるとパンチのヒットを増やし始める。

翼も打ち返し、ダブルノックダウンに繋がりそうな互いの強いヒットが続くが、やがて打ち疲れでスタミナ切れそうな中、このまま判定まで持ち堪えた。

新団体設立に伴ない5月のプレ興行から始まった、前半戦のベストファイターに贈られるヤングライオン賞はこの両者に贈られた。

ヤングライオン賞獲得となった海老原竜二と翼の攻防

◆第6試合 スーパーバンタム級3回戦

JKAバンタム級4位.田中亮平(市原/29歳/55.2kg)
   VS
WMC日本スーパーバンタム級2位.加藤有吾(RIKIX/19歳/55.25kg)
勝者:加藤有吾 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-30.桜井28-30. 少白竜29-30

◆第5試合 ライト級3回戦

JKAライト級5位.大月慎也(治政館/33歳/60.7kg)vs野崎元気(誠真/24歳/61.23kg)
勝者:野崎元気 / KO 2R 2:22 / 3ノックダウン / 主審:松田利彦

◆第4試合 ヘビー級3回戦

JKAヘビー級1位.ショーケン(山田/33歳/94.2kg)
   VS
ゴリ・セノオ(月心会チーム侍/44歳/89.8kg)
勝者:ショーケン / KO 1R 1:17 / 3ノックダウン / 主審:桜井一秀

ヘビー級として力強いノックアウトシーンを見せ付けたショーケン。この新団体ヘビー級ではトップに立つ選手。

※前座3試合は割愛します。

直闘の涙の理由は“勝って獲りたかった”

《取材戦記》

新たに分裂して出来た団体とは感じ難い、新日本キックの名残ある雰囲気。しかしそこは元からある治政館ジム主催の活気ある興行でもあった。

また、他団体首脳陣の顔触れがリング周りにあり、新団体としての姿勢、協力態勢が表れている、今後の興行でも新日本キックを上回る交流戦を充実させていく印象があった。

新日本キックではランカー中堅クラスだった直闘が、この新団体で王座決定戦へ抜擢されるも、対戦予定だった永澤サムエル聖光が脱水症状による体調不良で出場不可能となり、戦わずしてチャンピオンベルトを巻かれてしまった。

国内王座が更に乱立するのは仕方無いにしても、初代から早々にチャンピオンに任命される“認定チャンピオン”も作られるなど、団体レベルで都合のいいルールを作り上げるから、反対論が出てももう止めようがない。

いずれにせよ、国内すべての団体タイトルは、日本の国レベルタイトルには追いつかないローカルタイトルであり、他の認定団体チャンピオンとの対戦や「KNOCK OUT」などのビッグマッチ興行へ選出される出場権でしかないが、そういう立て構造の図式が成り立つのも自然の成り行きかもしれない。

そんな直闘がチャンピオンベルトを腰に巻いて貰い、涙を流したのは、うれし涙ではない、くやし涙だった。勝ってチャンピオンベルトを巻きたかったのだろう。永澤選手には「体調戻して早くこのリングに戻って来て欲しいです。」と語り、真のタイトルマッチにおける決着戦を願ったが、この日、戦わずしてベルトを巻くより、後日へ延期して改めて王座決定戦をやることがプロスポーツのやり方だと思う。

ジャングルポケットのトリオのうちの御二人、太田博久さん、斉藤慎二さんはリングアナウンサーとしての存在感は大きかった。低い太い声で力強い。毎回やればいいと思うが、本業が忙しければそうはいかないのが芸能人。ジャパンキック協会も短期で新顔に替わるリングアナでなく、団体の、興行の顔となるメインリングアナウンサーを育てる方がいいだろう。

ジャパンキックボクシング協会の次回興行は、11月9日(土)新宿フェースに於いて昼夜の2部制で行なわれる予定です。新日本キックにおける昨年組まれた今年分の年間スケジュールで会場が押さえられているので、来年はジャパンキック協会としての年間予定が多く組まれることでしょう。

KO賞とMVP賞を獲得した大崎孔稀
勝ってチャンピオンとなった馬渡亮太、ジャパンキック協会初代バンタム級王座獲得

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

ムエタイオープン45、次なる大舞台へ繋げるか、3つのタイトル戦!

上原真奈が圧倒的に攻める

NOWAYは昨年7月22日に獲得した王座の初防衛成る。馬木愛里と、女子の上原真奈が新たに王座獲得。でもまだまだ中間点の国内下位王座である。

8月18日開催の「KNOCK OUT」興行へ、出場予定選手5名(ぱんちゃん璃奈、今村卓也、安本晴翔、与座優貴、壱センチャイジム)の紹介がありました。このイベントは国内トップ選手が集結する中、皆、「いちばん目立つ良い試合したい」と、ほぼ共通したトップ争いとともに、そこには選ばれてビッグイベントのリングに立つことへの責任感を持つ意識がありました。

各プロモーターが独自路線を行く、世間からは知られ難い小さな興行から、それぞれの兵が選抜されて、大企業がスポンサーとなり、テレビ局が取り上げるほどのビッグイベントのリングに上がり、名を売るパターンが定着した現在。その大舞台を目指す前段階のひとつ、MuayThaiOpenでも、壱(いっせい)は完勝して、このビッグイベント「KNOCK OUT」へ出場し、火出丸(クロスポイント吉祥寺)と対戦予定。

この日、本場タイの二大殿堂のひとつのルンピニースタジアム管轄下となる、ルンピニージャパンの、更に下部となるMuayThaiOpenタイトルを獲得した馬木愛里と上原真奈も、当然更なる上位とビッグイベント出場を目指すことでしょう。

◎MuayThaiOpen45 / 2019年7月28日(日)新宿フェース16:00~20:05
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

圧倒する壱だが、ミンクワンも逃げ技のひとつ

◆第12試合 54.0kg契約3回戦

LBSJバンタム級チャンピオン.壱センチャイジム(センチャイ/53.85kg)
   VS
ミンクワン・チュンクエージム(タイ/53.9kg)
勝者:壱(=いっせい)センチャイジム / 判定3-0 / 主審:河原聡一
副審:北尻30-29. 少白竜30-28. 神谷30-28

ミンクワンは下がり気味に、壱(=いっせい)の出方を窺がいながら、接近戦ではヒジをタイミングよく振って来たり組んで転ばそうとして、さすがにムエタイテクニックに長けているが、壱は積極的にパンチと蹴りで前進してミンクワンをロープに追い詰める展開が続き、攻撃力で圧倒し判定勝利を掴む。

先手を打ったり打ち終わりを狙ったり、壱の攻めは強かった
ロープ際でパンチを打ち込む壱

◆第11試合 MuayThaiOpenフェザー級タイトルマッチ 5回戦

左ストレートを打つNOWAY

チャンピオン.NOWAY(NEXTLEVEL渋谷/57.05kg)
   VS
千羽裕樹(スクランブル渋谷/57.1kg)
勝者:NOWAY / 判定3-0 / 主審:田中浩明
副審:河原49-47. 少白竜49-47. 神谷49-48

千羽がローキックを蹴ってきても、奥足へ強く蹴り返すNOWAY。更に手数多く攻める勢いが上回ると、ヒジ打ちで千羽の額を切ることにも成功。

千羽も突破口を開こうとアグレッシブに打ち合いに出るが、NOWAYは冷静にかわし、攻勢を維持したまま判定勝利し、初防衛成功。

常に前進し続けたNOWAYの左ミドルキック

◆第10試合 MuayThaiOpenウェルター級王座決定戦 5回戦

最後の前蹴りでセーンケンのボディーを突き刺す

馬木愛里(岡山/66.2kg)vsセーンケン・ポンムエタイジム(タイ/66.0kg)
勝者:馬木愛里 / TKO 2R 0:56 / 前蹴り、カウント中のレフェリーストップ
主審:北尻俊介

1ラウンドから馬木愛里がハイキック、ローキックのけん制から突き刺すような前蹴り主体で様子を探り、パンチと蹴りの交錯の中、セーンケンは馬木の威力に圧されたまま。前蹴りはかなりプレッシャーを与え、セーンケンは表情に表れずもボディーがやや効いた様子。

第2ラウンドには馬木愛里は狙いを定めたか、再び強い前蹴りをボディーに突き刺すと、セーンケンは耐え切れず倒れ込み、レフェリーがカウント中にストップした。

前蹴りでセーンケンを突き放す馬木愛里
堪らず倒れ込んで追い討ちかける馬木、割って入る北尻レフェリー
まだ通過点の馬木愛里、まだ上位を目指すのは当たり前

◆第9試合 ライト級3回戦

下東悠馬(TSKJapan/60.9kg)vs亜努(新宿スポーツ/63.4kg)
勝者:下東悠馬 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:河原29-28. 北尻30-28. 田中30-28

亜努が2.17kgオーバーにより試合中止が検討されるも、特別ルールで行なわれることになった模様。試合は手数足数多いが、強烈なヒットは無い緩やかな攻防の末、順当に下東悠馬が判定勝利。

◆第8試合 スーパーフライ級3回戦

バンサパン・センチャイジム(タイ/51.55kg)vsMASAKING(岡山/51.65kg)
引分け0-1 / 主審:少白竜
副審:神谷29-30. 北尻29-29. 田中29-29

◆第7試合 スーパーフライ級3回戦

白幡裕星(橋本/51.8kg)vsペットウボン・チュンクゥエージム(タイ/51.85kg)
勝者:白幡裕星 / 判定3-0 / 主審:河原聡一
副審:神谷30-29. 北尻29-28. 少白竜30-29

◆第6試合 ウエルター級3回戦 

高木覚清(岡山/66.55kg)vs斎藤敬真(インスパイヤード・モーション/65.85kg)
勝者:高木覚清 / KO 1R 2:26 / 3ノックダウン / 主審:田中浩明

◆第5試合 スーパーバンタム級3回戦 

稔之晟(TSK・Japan/54.55kg)vs森岡悠樹(北流会君津/55.1kg)
勝者:稔之晟 / 判定2-1 / 主審:北尻俊介
副審:田中30-29. 河原29-28. 少白竜29-30

◆第4試合 MuayThaiOpen女子ピン級(100LBS)王座決定戦 5回戦(2分制)

上原真奈(NEXTLEVEL渋谷/45.3kg)vsミレー(ペルー/HIDE/45.35kg)
勝者:上原真奈 / 判定3-0 / 主審:神谷友和
副審:田中49-48. 河原49-48. 北尻49-48

上原が積極的に出て、徐々にパンチと蹴りが増していき、ミレーも諦めない打ち合いに出るが、僅差ながらも展開は上原真奈が攻勢に攻め続け王座獲得。

諦めないミレーとの攻防が続く

◆第3試合 女子フライ級3回戦(2分制)

ルイ(クラミツ/50.5kg)vsRAN(MONKEY☆MAGIC/50.55kg)
勝者:ルイ / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:田中30-28. 神谷30-28. 北尻30-28

◆第2試合 62.0kg契約3回戦 

加藤雅也(TSK・Japan/61.5kg)vs飯島直己(キック・フィットネスOZ/61.7kg)
勝者:飯島直己 / 判定0-2 / 主審:河原聡一
副審:少白竜29-29. 神谷29-30. 北尻28-29

◆第1試合 フェザー級3回戦

山下勝義(クラミツ/56.9kg)vs青木大(キック・フィットネスOZ/56.85kg)
勝者:青木大 / TKO 1R 2:24 / ハイキックでダウン後、右ストレートから連打、ノーカウントのレフェリーストップ / 主審:田中浩明

初防衛し、協力者や応援団に感謝を述べるNOWAY

《取材戦記》

NOWAYは本名の井上の頭の“イ”を後ろにもっていくと“ノウエイ”となることから、バンドマン時代のこのアーティストネームを使っているという。

昨年7月にヒジ打ちTKO勝利でチャンピオンとなり、ベルトを巻いてもらう時、センチャイプロモーターに、「ベルトに相応しいムエタイ戦士になる」と約束したという決意が今回もアグレッシブな前進とヒジ打ちを見せた38歳NOWAYの成長。

日本の統一した王座が存在しない中、この日本国の下部タイトルとしか言えない国内王座は10以上(認定組織)。ひとつの団体で2段階に分かれた上位と下位の王座や、ルール分けした王座があるのはもう異常な状態。

その中で強者を集結させた「KNOCK OUT」のようなビッグイベント興行が幾つか存在するが、段階的に目標となるものが存在して盛り上がることは、昭和の低迷期には想像できない世界が広がっている訳で、時代を経たキックボクシング界の成長なのでしょう。しかし、決して順風満帆とはいかない業界であることは確かなキックボクシング界である。

MuayThaiOpen.46は9月29日(日)新宿フェースにて開催されます。

センチャイジムの若きエース、壱はKNOCK OUT出場

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』9月号「れいわ躍進」で始まった“次の展開”
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

飯村誓に続く試練! NJKF若武者会主催DUEL.19

新人の域を越え、日本ランカーを倒すまでの出世は早くても、ムエタイの壁には撥ね返される選手は多い。今年、飯村誓はタイ選手に2連敗して更に今回、タイでの戦歴が多い儀部快斗と対戦。

◎DUEL.19 7月21日(日)大森ゴールドジム17:15~19:35
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF

◆第9試合 メインイベント スーパーフライ級3回戦

誓の前蹴りをキャッチする儀部快斗

NJKFフライ級2位.誓(=飯村誓/ZERO/51.8kg)
   VS
儀部快斗(エクシンディコンJapan/51.75kg)
勝者:儀部快斗 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:少白竜28-30. 宮本28-30. 君塚29-30

初回のパンチとローキックの様子見から、誓の打つタイミングを見計らって儀部快斗が蹴るタイミングなどリズムを作っていく。

第2ラウンドには儀部快斗がヒジ打ちで誓の右目尻を小さくカットさせ、誓にやや心理的に影響あるかに見えたが、誓はアグレッシブに攻めるも、儀部快斗が主導権を握った展開は変わらず、的確さで優った判定勝利。

儀部快斗の右ハイキックと誓のローキックが交錯
しぶとさではマリモーが上、パントリーが攻め倦む

◆第8試合 セミファイナル スーパーライト級3回戦

NJKFスーパーライト級5位.マリモー(キング/63.4kg)
   VS
NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/62.75kg) 
勝者:パントリー杉並 / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:少白竜28-29. 宮本29-30. 竹村29-30

パンチとローキックのアグレッシブなパントリー杉並の攻勢も、しぶといマリモーの打たれ強さと返し技のローキックがしつこい。

第2ラウンドにはマリモーがヒジ打ちをヒットさせ、パントリー杉並の右目尻を小さくカットしたが、影響はほぼ無さそうで攻防は激しくなり、パントリー杉並の連打で出る勢いは衰えず、僅差ながら判定勝利。

パントリー杉並の連打でマリモーを圧倒
パントリー杉並がアウェイで勝利

◆第7試合 68.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級3位.JUN DA雷音(E.S.G/67.35kg)vs渡邊知久(Bombo freely/67.6kg)
勝者:JUN DA雷音 / 判定3-0 / 主審:君塚明
副審:少白竜30-29. 中山30-29. 竹村30-29

◆第6試合 フェザー級3回戦

NJKFフェザー級7位.小田武司(拳之会/56.75kg)vs?太朗(DTS/57.1kg)
勝者:小田武司 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:君塚30-29. 中山30-28. 竹村29-28

◆第5試合 フライ級3回戦(2分制)

EIJI(E.S.G/50.8kg)vsRISING力(己道会/50.6kg)
勝者:RISING力 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:君塚28-30. 中山29-30. 宮本28-30

◆第4試合 58.5kg契約3回戦(2分制)

上田祐也(E.S.G/58.45kg)vs田中崚(VALLELY/58.05kg)
勝者:上田祐也 / TKO 3R 0:45 / 主審:竹村光一

互いの左ストレートの相打ち気味に、上田がクリーンヒットさせ、田中を一発で沈めレフェリーがストップした。田中崚は暫く立ち上がれないダメージで、一瞬で終わる怖さの試合だった。

上田祐也と田中崚のパンチが交錯した瞬間
倒された田中崚は暫く動けなかった

◆第3試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーバンタム級3回戦(2分制)

菅原麻子(トイカツ/55.1kg)vsKAEDE(LEGEND/55.05kg)
勝者:KAEDE / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:竹村28-30. 少白竜27-30. 宮本27-30

◆第2試合 女子キック(ミネルヴァ)45.0kg契約3回戦(2分制) 

ピーポー梨乃(STRIFE/44.1kg)vs七瀬千鶴(138KICKBOXING/44.95kg)
勝者:七瀬千鶴 / TKO 1R 0:28 / 主審:君塚明

七瀬の左ミドルキックで苦痛の表情を浮かべた梨乃はしゃがみ込むとそのままレフェリーストップされた。

七瀬千鶴の左ミドルキックがピーポー梨乃のボディーにヒット

◆第1試合 女子キック(ミネルヴァ)アトム級3回戦(2分制)

亜美(OGUNI/46.0kg)vs愛裟(PON/45.5kg)
勝者:亜美 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:竹村30-28. 君塚30-28. 中山30-27

儀部快斗もアウェイで判定勝利

《取材戦記》

この日、都内でビッグイベント興行が重なる中、単にいちばんお付き合いの縁が深いだけのNJKF若武者会主催のDUELプロ興行に訪れました。

しかし、16時30分開始予定のプロ興行が45分遅れの17時15分開始。アマチュア試合が朝10時開始で108試合あったようで、タイムスケジュールの組み方に最初から無理があるように感じられました。

先月の松谷桐vs仲山大雅戦同様に、年齢的に高校生vs大学生の構図となる誓vs儀部快斗戦。歳の差は3歳差でも18歳と21歳では大きな人生経験の差があるように感じられました。

その儀部快斗は、5月12日の石川直樹にヒザ蹴りの猛攻で敗れた試合から復活。飯村誓にとってはすぐ先の目標となるNJKF王座は、今年18歳となる者同士の松谷桐がNJKFフライ級チャンピオンである以上、挑戦する日までこれ以上の連敗は避けたいところ。“誓”が正式リングネームですが、文中、意味を間違いやすいので本名で載せています。

パントリー杉並は、ホームリングとなる日本キック連盟興行でもパンチ主体のアグレッシブな試合で、徐々にランクを上げていた。マリモーは華やかさは無いがシブとく打たれ強い。こんなタイプは昔にも居たなあと思う二人の戦いだった。

リングネームの由来をいつか聞こうと思っていたが、この日の試合を前にNJKFの公開インタビューで、「“パントリー”はお笑いの養成所に通っていた頃のコンビ名」と発表されていた。昨年はKOによる連敗があり、トップクラスに躍り出ることはなかなか難しいが、打たれないこと重視して今後の上位挑戦に期待したい。

マリモーのリングネームは“何となく”付けたそうだが、これはキングジムの向山鉄也会長の仕業っぽい気がする。変なリングネームいっぱい付けてきた人だから。今度改めて聞いておきましょう。

NJKF次回興行は9月23日(月・祝)に後楽園ホールで「NJKF 2019.3rd」が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

重森陽太がWKBA世界王座獲得、誰もが目指す王座へ、メジャー化は叶うか!

前蹴りでラックチャイの突進を止めた重森陽太
軽いパンチだが、ラックチャイと相打ちとなった瞬間の重森陽太

勝次が返上した日本ライト級王座は髙橋亨汰が獲得。

◎MAGNUM.50 / 7月7日(日)後楽園ホール17:00~20:45 
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会、WKBA

◆WKBA世界ライト級王座決定戦 5回戦

重森陽太(前・日本フェザー-級C/伊原稲城/60.8kg)
   VS
ラックチャイ・ジャルンクルンムエタイ(タイ/60.55kg)
(ラックチャイはアマチュアムエタイ60kg級チャンピオン経験有り)
勝者:重森陽太 / 判定3-0 / 主審:椎名利一
副審:少白竜50-46. 桜井50-46. 宮沢50-46

右ローキックで攻める重森陽太

重森は突き刺すような鋭い前蹴りでラックチャイの突進を阻み、自分の距離を掴んでパンチや蹴り、ヒジ打ちを叩き込んでいく。

重森は中盤以降も前蹴りを多用し、ラックチャイのバランス崩させる展開が続くが、接近すれば組みに来るラックチャイ、この体勢になると本領発揮のバランスの良さが表れるが、重森も不利な体勢にはならず、ヒザ蹴りも蹴り負けない。

最終ラウンド、倒すに至らない展開と前進衰えないラックチャイのタフさが印象付いてしまうが、それでもポイントは大差で圧倒した展開の勝利となった。

日本バンタム級とフェザー級の2階級制覇を果たしている重森は世界と合わせて三つめのベルト獲得となった。

3度のダウンを奪ってKO勝利の江幡睦

◆54.0kg契約 5回戦

WKBA世界バンタム級チャンピオン.江幡睦(伊原/54.0kg)
   VS
トーン・ハーブタイジョンジム(元・スラタニー県フライ級C/タイ/54.0kg)
勝者:江幡睦 / KO 1R 2:41 / 3ノックダウン / 主審:仲俊光

毎度のスピードある蹴りで、様子見ながら一気に倒しに掛かるような睦の勢いの中、ローキックからパンチの連打でロープ際に詰めたところで左ミドルキックをボディーにヒットさせるとトーンは蹲ってしまいノックダウンとなるが、トーンはまだ心は折れていない様子で立ち上がる。

組み合えば崩しに掛かる上手さを見せるトーンだが、睦の勢いは増していき、コーナーに詰めてのパンチ連打、離れても蹴りの上下の使い分けで、続けて左ミドルキックをボディーヒットさせ計3度目のノックダウンを奪い、ノックアウトに繋げた。
マイクを持つと、10月20日、後楽園ホールに於いて、ラジャダムナンスタジアムの王座挑戦が決定したことをファンに報告した。

コーナーに追い込み、右ストレートを打ち込む体勢の江幡睦
髙橋亨汰の左ストレートで内田雅之がダウン

◆日本ライト級王座決定戦 5回戦

1位.内田雅之(藤本/61.1kg)vs3位.髙橋亨汰(伊原/61.23kg)
勝者:髙橋亨汰 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:椎名47-49. 桜井47-49.仲48-49

序盤は探り合いながら互いに主導権を奪いに打って出る攻防。

第2ラウンドには、高橋がヒジ打ちで内田の右眉辺りを小さいがカットさせ、更に左ストレートで内田をグラッとバランス崩させると、高橋が積極性を増し、再び左ストレートで、内田からノックダウンを奪う。

ダメージは軽そうで体勢を立て直し、第3ラウンドは内田のヒジ打ちが強くヒットし、高橋の額を深くカット、ここから流れを変えたい内田はペースを上げていくが、高橋はハイキックで内田の顔面を襲いリードを譲らない踏ん張り。

終盤、激しくなる攻防の中、内田の強引な蹴りとパンチ、ヒジ打ちを狙って出て行く。高橋も内田の顔面へ前蹴りをヒットさせ内田の突進を止める勢いがあった。ダウンの差を縮めるには至らなかった内田は惜しい敗戦。高橋は新しい時代を担うチャンピオン誕生となった。

髙橋亨汰の左ハイキックを受けながらバックハンドブローを繰り出す内田雅之
額を切られながらの攻防、髙橋亨汰の前蹴りが内田のアゴを捕える
念願の王座獲得で号泣する髙橋亨汰。お母さんの祝福を受けて更に号泣
伊原稲城ジム栗芝貴会長と並ぶ重森陽太

◆72.6kg契約 3回戦

日本ミドル級チャンピオン.斗吾(伊原/72.5kg)vs小原俊之(キングムエ/72.1kg)
勝者:斗吾 / 判定3-0 / 主審:宮沢誠
副審:椎名29-27. 少白竜30-27. 仲30-26

蹴り合いの様子見からコーナーで組み合うと小原が強引なヒジ打ちの連打で斗吾の右頬をカットさせ、これで怒り心頭となった斗吾がパンチで圧倒し、右ストレートでノックダウンを奪う。

小原の踏ん張りで斗吾も打ち合いに応じ、ノックアウトには繋げられなかったが、連打で追い詰めた斗吾が大差を付けた判定勝利。

◆67.0kg契約 5回戦

日本ウェルター級チャンピオン.リカルド・ブラボ(アルゼンチン/伊原/66.7kg)
   VS
助川秀之(Turning Point/66.8kg)
勝者:リカルド・ブラボ / 判定3-0 / 主審:桜井一秀
副審:宮沢50-46. 少白竜50-46. 仲50-47

序盤から重いパンチと蹴りの交錯が続く両者。ブラボのパンチがヒットすると、リズムに乗って連打で追い詰める。

第4ラウンドにはノックダウンを奪う寸前までいくが、倒すには至らない。助川は劣勢になりながらも耐え切り、ブラボが大差判定勝利。

メインクラス最終2試合のリングアナウンサーを務めた生島翔さんの代打、お父さんの生島ヒロシさん

◆70.0kg契約 5回戦

喜多村誠(前・日本ミドル級C/伊原新潟/69.9kg)
   VS
ペッダム・ペットプームムエタイ(タイ/68.4kg)

勝者:喜多村誠 / 負傷判定2-0 / テクニカルデジション 1R 1:00 / 主審:宮沢誠
副審:椎名10-10. 桜井10-9. 少白竜10-9

ミドルキックの蹴り合いから縺れ合って倒れた両者だったが、喜多村が後ろ向きからペッダムのアゴ辺りに圧し掛かかってしまい、ペッダムはもがき苦しみ立ち上がれず、ここでレフェリーは試合終了を宣告。

裁定はルールの在り方とレフェリーの判断によって結果は分かれるところ、ここでは偶然のアクシデントと判断され負傷判定が行なわれ、わずか1分の試合ながら、2-0で喜多村誠が勝利。

◆51.5kg契約3回戦

泰史(前・日本フライ級C/伊原/51.5kg)
   VS
WBC・M日本フライ級チャンピオン.仲山大雅(RIOT/51.5kg)
勝者:仲山大雅 / 判定0-3 / 主審:仲俊光
副審:椎名28-29. 宮沢29-30. 少白竜28-29

先手を打つ仲山のタイミングいいパンチと蹴りがヒットする。仲山の上手さが目立つが、ラウンドが進むと泰史は仲山の動きが読めるようになったか、泰史のパンチのヒットも増えてくる。しかし巻き返すには至らず、仲山の柔軟な技が目立った印象が残る。

◆63.0kg契約3回戦

日本ライト級2位.渡邉涼介(伊原新潟/62.95kg)vsイ・クロウ(Kick In The Door/62.75kg)
勝者:イ・クロウ / TKO 2R 2:29 / 主審:桜井一秀
渡邉の顔面負傷によるドクターチェック中の陣営によるタオル投入による棄権

◆62.0kg契約3回戦

日本ライト級4位.ジョニー・オリベイラ(ブラジル/トーエル/61.35kg)
   VS
ルンピニージャパン・スーパーフェザー級1位.角谷祐介(NEXT LEVEL渋谷/61.65kg)
勝者:角谷祐介 / 判定0-3 / 主審:少白竜
副審:宮沢29-30. 桜井29-30. 仲29-30

◆フェザー級3回戦

平塚一郎(トーエル/57.15kg)vs仁琉丸(ウルブズスクワッド/56.5kg)
勝者:平塚一郎 / 判定2-0 (29-29. 30-29. 30-29)

《取材戦記》

喜多村誠vsペッダム戦は、あの事態で終了ならば、プロボクシングなら試合の前半に起きたもので負傷引分け、ムエタイなら負傷裁定は無いので、ペッダムの試合続行不能による喜多村のTKO勝利となる。また、試合は成立しているので無効試合(災害や暴動などの収拾付かない事態)とはならない。昔だったら、アクシデントで負傷したものは、立ち上がれない時点でノックダウン扱いとなり、カウント数えられたものである。いずれにしても喜多村の負けにならない限り、異議申し立てる声を上げる者はいないだろう。

追い続けたラジャダムナンスタジアム王座の挑戦が決まったことを報告する江幡睦

重森陽太が語った、WKBAをメジャーにしたい想い。「このベルトが誰もが目指すベルトとなるように、ドンドン試合して、このベルトの価値を分かり易く証明していきたい」と語る。

それは以前から江幡睦も塁も同じ想いを持っていた。古く遡れば1993年に日本ライト級チャンピオン(MA日本キック時代)だった飛鳥信也(目黒)氏がWKBA世界戦に挑む時、提唱した日本統一論でもあった。このベルトを目指して皆が挑戦して来れば、必然的にここが頂点となる。

しかし現在もこの理想には近づいていない。それは統一を目指しながら実現できない国内王座が増え過ぎたことや、いずれのチャンピオンも、防衛戦の相手や場所・日時を決められる訳ではないことに繋がる。それでも新しい時代に新しいスターの重森陽太の目指す新たな挑戦に期待したい。

江幡睦が10月20日に後楽園ホールに於いてタイ国ラジャダムナンスタジアム・バンタム級王座へ4年ぶり4度目の挑戦が決定。現チャンピオン、サオトー・シットシェフブンタムがそれまで王座を維持していれば、このサオトーが来日することになる。江幡ツインズと同じく、サオトーも双子の兄弟が居て、サオエーク・シットシェフブンタムが居るようです。

這い上がる力、奪いに行く力が試される時、それが江幡ツインズであり、新日本キックの今である。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

ベテラン記者の技!レジェンド大集合の宴「舟木昭太郎氏喜寿を祝う会」!

レジェンド勢揃い

レジェンド達が集まるパーティーを開くことの凄さ、その羨ましい立ち振る舞い!──。先月のことになってしまいましたが、6月8日(土)、新宿京王プラザホテルに於いて行なわれた、「舟木昭太郎氏喜寿を祝う会」は盛大に130名あまりの格闘技関係者を集めて行なわれ、舟木さんの長き取材経験と実績を称える、同じ時代を生きた選手、ジム関係者で賑わいました。

発起人代表の新日本木村ジム・木村七郎会長、実行委員長の具志堅用高氏、渡嘉敷勝男氏、大熊正二氏、藤原敏男氏、富山勝治氏、シーザー武志氏、猪狩元秀氏、増沢潔氏、佐竹雅昭氏が並び、3年前から行なわれている舟木さんのトークショーで集まる面々は慣れたトークをドンと展開。

乾杯の御発声は新日本木村ジム・木村七郎会長
左から富山勝治さん、舟木昭太郎さん、関口修平さん、木村七郎さん

舟木昭太郎さんは大学を卒業後のフリーライター時代からプロボクシング、キックボクシングを取材し、日本スポーツ出版社へ入社後のゴング誌では昭和のプロボクシング全盛期と言える15回戦制世界チャンピオンから、キックボクシング生誕以降を生で見て来た取材の先駆者でした。

舟木昭太郎氏は「私が今ここにあるのは、多くの格闘家、関係者のお陰であります。とりわけ鬼籍に入られた野口修社長(野口プロモーション)、大山倍達総裁(極真空手)、金平正紀会長(協栄ジム)、梶原一騎先生(作家)と夫人高森篤子さん、そして、病床にある黒崎健時会長(黒崎道場)等の支え、皆様の導きがあったればこそです。御礼の言葉もありません。」

御存命、御健康であれば、会いたかったであろう先人の名前を披露し、感謝の気持ちを伝えられました。

全日本系のスター・島三雄さん、田畑靖男さんも祝いに御参加
具志堅用高実行委員長の祝辞

この舟木さんとレジェンド達との長年の物語は多様にある中、並んだ顔触れが祝辞を述べ、代表的にいちばん実体験から来る貴重なお話となった具志堅用高さんは、高校卒業して沖縄を発ち、プロデビューまでの経緯はかなり有名なところで、ゴング誌の取材を通じて舟木さんと出会い、「世界戦に挑む前の山中湖でのキャンプでは舟木さんが付きっきりで密着取材されました。

私生活では十代の頃から世間をあまり知らない遊びたい盛りに、後に世界チャンピオンになっても舟木さんから、“あれは駄目、これは駄目”とずっとマネージャー以上に、親父並に指導されました。」と語る。

「舟木さんに人生教えて頂きましたよ。私生活が変わり真面目になりましたねえ。引退してからは一緒に温泉に行ったり、一緒にお酒を飲んだり、楽しい思い出いっぱいあります。」と続けて語った具志堅さん。

具志堅用高さんの傑作トークが続く
大熊正二(小熊)さんもファンの前へ久々の御登場だった

2006年、そんな舟木さんの人生最大の危機が起こる。そこにたまたま居合わせた具志堅さんは、
「私が調子悪い時、キックボクシングの以前のコミッションドクター(日本系TBS)だった矢吹芳一先生の信濃町診療所でよく看て貰うんだけど、たまたま舟木さんが風邪をひいて診察に来ていた時に偶然会って、舟木さんの何だか顔が赤いな、何か静かだなと思ってたら、だんだん顔色が悪くなって、私は普段、選手の試合の動きとか練習の動き見て調子が分かるから、舟木さんを見てこれは大変だと、診療所で間に合う範疇ではない一刻を争うから、救急車呼ぶより自分の車ですぐ、外苑のインターにバァーンと乗って新宿の出口でバァーンと降りて、新宿ヒルトンホテルの隣の東京医科大まで飛ばして時間的に救急車より速かったあ。

とにかく元気な佐竹雅昭さん、“栄光の架け橋”を歌う

病院着いて受付け通り越えてロビーで“急患だ急患だ、お願いします!”と叫んだら、看護婦や医師が集まって来て私を取囲んで、みんな私が急患だと思ったんだね。“違う違うこの人(舟木さん)だ”と、でも騒いだことがよかったんだね。すぐ処置に掛かってくれて舟木さんは集中治療室に運ばれました。」

脳梗塞だった舟木さんは無事全面回復し、「具志堅さんは命の恩人です。あんな迅速な救いが無かったら私は後遺症が残っていたと思う。」と語る。

何が因で、また縁によって果に繋がるか、命を救ったのはこの仕事に就き、レジェンドを世に広め続けた縁が導いた結果となったのでしょう。

いつも大きな声と滑舌いい佐竹雅昭さんのトークは評判がいい
現役時代にクイズダービーに出演したコンビ、具志堅さんと富山さん

「これからのボクシング界のキーワードはレジェンドだ!」と30年以上前に舟木さんに言われたと言う祝辞を述べた参加者の一人は、「舟木さんが“日本名ボクサー100人”という新しい本の企画を考え、レジェンドを作り上げた先駆者です。」という、その先を見据えた発想は、その後、乱立していくチャンピオンの枠を越えたレジェンドが、今こそ希少価値ある存在となった時代でしょう。

選手の引退後、記者としての退職後、互いが歳を重ねた今、キックボクシング創生期から取材して来た格闘技記者はごく少数。レジェンドの取材を通して業界の裏側も見て来たであろう、ここがいちばん羨ましいところ。

富山勝治さんは渋く“皆の衆”を歌う
富山さんの歌に聞き入る周囲
イタズラ好きコンビ、渡嘉敷さんを杖で攻める藤原敏男さん
渡嘉敷さんもユニークさで笑いを誘う

渡嘉敷さんが「長生きしてください。次は米寿、100、200、300歳まで生きた人はいませんから!」と語ったギャグでしたが、傘寿、米寿、卒寿、白寿、紀寿、100歳を超えた長寿には、108歳の茶寿、111歳の皇寿、120歳の大還暦、250歳で天寿というものもあるそうです。

ボクシング評論家の郡司信夫さんは90歳まで執筆に務められました。これを越えるであろう舟木さんが企画する今後のイベントで、まだまだ語り続けて頂きたいものです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』8月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

私の内なるタイとムエタイ〈60〉タイで三日坊主!Part.52 心に刻んでおこうラオスの仲間!

托鉢準備するブントゥーン
托鉢からの帰り道、餌の匂いに敏感な犬も日常の姿

◆いちばん撮りたかった托鉢

田舎道を歩くような托鉢が絵になる風景だった。私も比丘として一度歩いた道。頭陀袋は持たずバーツ(お鉢)を抱えて歩く比丘達。主に一握りの炊いたもち米がサイバーツされていく。

翌朝には別ルートを行く3人組の托鉢にお供した。こちらはサイバーツされた後、短い読経をして立ち去っていた。これは経文を覚えていないといけない。こういうところが巡礼先で出くわした場合、出来ないでは済まない事態に陥ってしまうだろう。数日見ていたが、もう一度、比丘として托鉢で歩いてみたくなる田舎道だった。

そしてお寺に寄進にやって来る信者さんの姿。老人から若い女性までやって来る。生活に根付いた習慣、私も信者さんに混じって新たな寺の在り方が見られる姿であった。

◆カンペーンと歩いたビエンチャンの街

スリランカから来たナンマラタナさんのビザ申請に付き合った他、サーマネーン(少年僧)とも外出。ワンナーくんとシーポーンくんとパトゥーサイ(凱旋門)に行ったり、ビザの受取りに行く時には、カンペーンくんが「俺も行っていい?」と言うので了解すると、すぐ水浴びして黄衣を纏うのを待って一緒に街に出た。

一緒に行動するのは初めてだったが、何とも気さくな奴だった。言葉が丁寧で年上を敬う姿勢が伺われ、領事館で待たされたり、長距離を歩いても「ボーペンヤンドーク(マイペンライ=大丈夫)」と言って暑い中でも我慢強く待ち、私が何を撮りたいかを察する配慮があり、アナンさんに似た感性を持っていた。ムエタイボクサーのような風貌もあり、スポーツマンではないが何かやらせればトップに立てるだろう体幹があるように見えた。

博物館に行くと、タイ軍に壊されたラオスの仏像を見る。展示物を説明してくれたが、私が無知で追いつけない感じだ。

徳を積む信者さん、喜捨を受けるカンペーン
信者さんの待ち構える位置はカーブ気味
読経して立ち去る3人の比丘とネーン
比丘を待つ御婦人の祈り

◆オカマのおじさん!

毎日、ワット・チェンウェーに寄進に来ていたオカマのオッサン、それは見てすぐ分かるそんな雰囲気の存在。やたら優しい眼差しで寄って来るようになり、夕方、カーオトム屋でも出会ったりして奢ってくれたので仲良く話は続けたが、やっぱり寄られると気持ち悪いオッサンだ。

そんな今回の旅行者としての旅で、ノンカイ、ビエンチャンのお寺の滞在で改めて意識したのは、ブンミー和尚さんやワット・ミーチャイターのプラマート和尚さんの様子。なよっとしていて優しいがちょっと変。以前、藤川さんが一時僧時代のことを言っていたことだが、寝ていてキンタマ握られたというのも不思議ではない。
私も警戒していたが、必要以上の異常な接近は無かった。それにしてもワット・ミーチャイ・ターの石橋正次似のスアさんもリップクリームを、女性が口紅塗るように鏡見ながら指でなく顔を横に振るように塗っていたし、やっぱり真面目に何年も修行すると男性ホルモンのバランスが崩れ、精力が衰えるのかなとは思う。タイはオカマの多い国ではあるが、因果関係は分からない。ラオスも似たものなのだろう。

托鉢から帰って足を洗うワンナー

他の逞しい比丘達はどんな意識で過ごしているのだろうか。下品な奴でなくても還俗したら「どこの女郎屋へ行く」とか、ごく自然に言う奴もいたが、大概は還俗ありきの修行で、健全な男として向かうのだろう。

かつて藤川さんが巡礼の旅をした際、タイ北部のある寺で展示された女性ミイラの遺体を目撃した話では、

「そこには若い美女の写真と、『私はかつて美人とモテはやされ、多くの男性から告白され、結婚を申し込まれましたが、今はこの有様です』と書かれた文言が掲げられておって、若い比丘が性欲を抑えられなくなった時、姿形ボロボロのミイラとなった遺体の横で一晩過ごすことを勧められるんや。人間は目ヤニや鼻糞、耳糞、糞尿など、九つの穴から臭い汚物を出す生き物や。牛や豚や人間も一皮剥がせば似た内臓を持っておって、死んでしまえば悪臭放つ物体。美女も同じ物体。そこで寝かされれば無駄な欲求に嫌気が差してしまうらしいで」

という話を聞かされたことがある。

美女は綺麗だなあ。でも誰もがやがて歳を取るのである。この世のものは不動のものなど無く、全てが変化していく物質世界。不老不死など有り得ない諸行無常のこの世の姿を考えるようになった。けど美女はいいよなあ。修行しても男は懲りないのである。

綺麗なお姉さんも仏教徒の務めにやって来る

◆ブンミー和尚の優しさ

こんな田舎道を歩く絵葉書になりそうな托鉢を見て、再び興味が沸いてしまった不純な動機。帰る前日に、「また将来、得度してみたい」とブンミー和尚さんにも相談してみた。まずラオスに来ての再出家は無いと思うが、その反応と可能性を探ってみたかったのだ。

ところが、今迄の人達とちょっと反応が違った。「自分が出家したペッブリーの寺は下品な奴ばかりで、ノンカイとこのラオスでの寺は皆、品が良くて優秀だ」と本音ではあったが言ってみると、ブンミー和尚さんの謙遜だが「お世辞を言わなくていい」と言われるし、「品のいい寺で再出家してみたい」という希望には「何の為に再出家するのか、再出家したい理由はそれだけか?やったら還俗はしないことだ。」と言葉は丁寧だが、やや不信感を持っているような応え方だった。

私はブンミー和尚さんの優しさから親近感が沸いた結果の相談だったが「マズイこと言ってしまったなあ」と思ったが、まあ仕方無い。正論を言われているのだ。
翌朝、なぜかブンミー和尚さんが私が帰り支度する部屋にやって来た。

昨日言ったことがキツいと思ったのか、急に軽く肩を抱き寄せ、ほんの5秒ほどだが「お前が帰ってもずっと忘れないよ、またいつでも来なさい」と優しく言い出す。「オオ、これが藤川さんも気持ち悪がった抱擁か」と思うも「ヤメロや!」と突き放すことが出来ない。

帰り際には三拝して泊めて貰った御礼を言うが、ブンミー和尚さんはサーイシン(木綿の白糸)を右腕に巻いてくれて、更に額にインド人がやるような指でチョンと白い液を塗られて短い読経をしてくれた。有難いことだったが、額の白いモンは要らんなあと思ってしまう。けど嫌がることも失礼で、寺出るまでは我慢しようと思う。

ワンプラの日、寺へ寄進に訪れる信者さんの姿
比丘の朝食準備に掛かるワンプラの日の寺

◆ビエンチャンでまた逢う日まで

でもまた来よう。ビエンチャンは何も無いがその静けさと昭和30年代のような田舎道の佇まいがいい。今回はお腹壊しての不完全な別れ際とはならないよう気をつけていた。

最後は笑顔で何言ったか分からなくなるほど皆にキチンと挨拶を済ませた。カンペーンくんらには「今度会う時は語学優秀なビジネスマンとなって私より金持ちになっているかもしれないな」と言っておだてておく。努力家の彼らは謙遜していたが、アジアの奥地に居ても有り得る話である。

ナンマラタナさんと一緒にサパーンミタパープからタイへ渡る国境越えも問題なく終わり、ノンカイに戻ってすぐ、トゥクトゥクに乗ってワット・ミーチャイ・ターに向かった。

旅の最後となる滞在先、早速迎えてくれたのは、わんぱく坊主のバーレーくんだった。

首都だが田舎らしさが漂うビエンチャンの朝

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 7日発売!月刊『紙の爆弾』8月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

NKBフェザー級王座決定戦で髙橋亮がNKB2階級制覇! PRIMA GOLD杯決勝戦は10月12日、田村聖vs清水武戦に決定!

左ミドルキックを繰り出す高橋亮
左ローキックをヒットさせる高橋亮、上下の打ち分けが上手い

◎出陣シリーズvol.4 / 6月15日(土)後楽園ホール 17:15~21:20 
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第14試合 メインイベント 第16代NKBフェザー級王座決定戦 5回戦

NKBフェザー級1位.ひろあき(=安田浩昭/プラスα/57.0kg)
   VS
NKBフェザー級3位.髙橋亮(真門/57.0kg)
勝者:高橋亮 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:竹村光一47-50. 鈴木義和46-50. 佐藤友章46-50

ハイキックは狙い過ぎたが、圧力掛け続けた高橋亮

蹴りの鋭さや試合運びは高橋亮が上手だが、ひろあきは強い右クロスカウンターがあり、一発当たればそれだけで勝利を導く怖さがある。高橋三男・聖人との初戦(2017年12月16日)はこれで倒したこともあり、緊張感ある対峙となった。

ひろあきの強打を警戒しつつも、高橋亮もパンチの強打は無くても的確さは十分あり、先に当たるジャブやストレート、当たれば痛そうな素早いローキック、ミドルキックが炸裂。ひろあきは左瞼が腫れ、鼻血を出すほど高橋亮のパンチがコツコツ当たっていた。

第4ラウンド、高橋亮は一発KOを狙うハイキックを出すのはちょっと早過ぎたか、聖人との2戦目(2018年6月16日)で倒されたハイキックが教訓となっていたひろあきにはヒットしても浅く、ノックアウトには結び付けられなかった。やや不完全燃焼となるも、各ラウンドを抑えた大差判定勝利で王座獲得。高橋亮は「倒す技は幾つも考えていた」と言うが、「力み過ぎました」と反省点を述べていた。

パンチでも負けてはいない左ストレートを打ち込む高橋亮
左ヒジ打ちを打ち込む高橋亮、細かい技が冴える

◆第13試合 PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント準決勝3回戦

右ストレートカウンターで今野を倒すイレズミの田村聖

NKBミドル級1位.田村聖(前・C/拳心館/72.2kg)
   VS
ジャパンキック協会ミドル級1位.今野顕彰(市原/72.5kg)
勝者:田村聖 / KO 2R 2:24 / テンカウント / 主審:佐藤友章

トーナメント初戦(4月13日/準々決勝)で、吉野健太郎をKOした田村聖。井原浩之をヒジ打ちでカットし、ダウンを奪う判定勝利した今野顕彰。

距離を取った蹴りとパンチを打ち込むタイミングは今野が先手を打つペースで始まるも、田村が一気に距離を詰めパンチを打ち込むと今野はやや貰って効いてしまい、ロープ際へフラつくように下がってしまう。

これで出難くなった今野、第2ラウンドにはパンチの交錯が見られるも、田村のパンチで切られたか、今野の左目尻から出血。終始冷静に距離を見計らっていたのは田村。今野の右ストレートで出るところへ逆に右ストレートをカウンターで打ち込んだ田村がノックアウトで倒し切った。

あっさり倒した田村聖と見上げる今野顕彰
決勝戦は清水武vs田村聖に決定

◆第12試合 PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメント準決勝3回戦

清水武の左ローキックが小原俊之にヒット

清水武(元・WPMF日本SW級C/sbm TVT KICK LAB/72.5kg)
   VS
J-NETWORKミドル級3位.小原俊之(キングムエ/72.25kg)
勝者:清水武 / ヒジ打ちによる瞼のカットでドクターの勧告を受入れレフェリーストップ
主審:鈴木義和

トーナメント初戦(準々決勝)、郷野聡寛をヒジ打ちで終わらせた清水武。西村清吾を左縦ヒジ打ちでノックダウンを奪取し終わらせた小原俊之。

第1ラウンドはローキック中心に静かな展開からパンチに繋ぐ交錯が続き、第2ラウンドに、清水がここでもヒジ打ちで小原の右眉尻辺りと額をカット、2ヶ所とも傷は小さいが、第2ラウンドに入っての打ち合いで清水のパンチとヒジ打ちが何度か小原の顔面をかすめていたが、今度はヒジ打ちで右目瞼を深く切り、これがストップの直接的原因となって試合を終わらせた。

やがて接近戦になり、清水武のパンチが当たりだす

◆第11試合 64.0kg契約3回戦

NKBライト級1位.棚橋賢二郎(拳心館/63.85kg)
   VS
セーンアーティット・ワイズディー(タイ/63.6kg)
勝者:セーンアーティット / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:佐藤28-30. 鈴木28-30. 前田28-30

(セーンアーティットはフェザー級で元・ルンピニー系6位、元・ラジャダムナン系5位)

棚橋はローキックのけん制から強打を狙っていくが、セーンアーティットが柔軟なかわしと距離感を上手く利用したキレ味ある蹴りとヒジ打ちの返し技で大きく上回る判定勝利。

棚橋のパンチは貰わず、ムエタイ技が冴えるセーンアーティット

◆第10試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級2位.稲葉裕哉(大塚/66.6kg)vs蛇鬼将矢(テツ/66.3kg)
引分け 0-1 / 主審:前田仁
副審:佐藤29-29. 鈴木29-29. 竹村28-29

◆第9試合 55.0kg契約3回戦

NKBバンタム級2位.高嶺幸良(真門/54.6kg)
     VS
NJKFバンタム級6位.鰤鰤左衛門(CORE/54.5kg)
勝者:鰤鰤左衛門 / 判定1-2 / 主審:竹村光一
副審:佐藤29-30. 前田30-29. 鈴木29-30

◆第8試合 スーパーライト級3回戦

NKBライト級3位.野村怜央(TEAM-KOK/63.4kg)
   VS
ジャパンキック協会ライト級7位.大月慎也(治政館/63.15kg)
勝者:大月慎也 / 判定0-3 / 主審:鈴木義和
副審:佐藤27-30. 前田27-30. 竹村27-30

◆第7試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ/53.45kg)vs TOMO(K-CRONY/53.52kg)
勝者:TOMO / 判定0-2 / 主審:佐藤友章
副審:前田29-29. 鈴木28-29. 竹村28-29

◆第6試合 女子キック(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制

TAMA(ReBORN経堂/51.9kg)vs sasori(テツ/52.16kg)
勝者:sasori / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:前田25-30. 鈴木25-30. 佐藤25-30

◆第5試合 フライ級3回戦

山野英慶(市原/51.06kg)vs則武知宏(テツ/50.8kg)
勝者:則武知宏 / TKO 3R 1:48 / レフェリーストップ
主審:鈴木義和
山野英慶はリミット超オーバーウェイトにより減点1

◆第4試合 フェザー級3回戦

森田勇志(真門/56.4kg)vs渉生(アント/57.15kg)
勝者:森田勇志 / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:鈴木30-28. 竹村29-28. 佐藤30-28

◆第3試合 フェザー級3回戦

山本太一(ケーアクティブ/57.1kg)vs藤平泰地(花澤/56.1kg)
引分け 0-1 / 主審:佐藤友章
副審:鈴木28-28. 竹村28-29. 前田28-28

◆第2試合 バンタム級3回戦

五嶋龍太郎(真門/52.9kg)vs剣汰(アウルスポーツ/53.52kg)
勝者:五嶋龍太郎 / TKO 2R 2:39 / カウント中のレフェリーストップ
主審:鈴木義和

◆第1試合 ライト級3回戦

小笠原裕史(TEAM-KOK/61.1kg)vs哲太(Team S.A.C/60.6kg)
勝者:哲太 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:佐藤24-30. 竹村24-30. 鈴木24-30

バンタム級に続き、フェザー級を制覇した高橋亮。次は兄が持つライト級王座?

《取材戦記》

高橋三男・聖人が返上したNKBフェザー級王座を次男・亮が獲得し、いずれはライト級も目指し3階級制覇すると言う。現在、ライト級は長男・一眞が王座に君臨する

「三兄弟でリーグ戦やれよ!」という身内間のジョークには3人とも笑って否定したが、兄弟対決は本当はやるべきではない。だが、王座の譲り合いとなる返上も望ましくはない。

他団体に見られる、“後輩に道を譲る”という選択肢が幾度かありましたが、個人競技たるもの、同門であっても上がってくる後輩は本来、返り討ちにすべきもの。下克上が起こればそれは世代交代の時。一概に選手を攻められず、本人の意思に関係なく、返上させられたという話も聞くが、王座たる頂点をビジネス優先に進め、好カードの面白さを奪ってはならないだろう。

PRIMA GOLD杯ミドル級トーナメントは10月12日に決勝戦を迎えます。この4ヶ月の期間が空くのは勿体無いところ。調整試合でも挟めそうなほど間が空くが、他のイベントの陰に隠れ、ファンが忘れそうになるほど熱が冷めないことを願いたい。

高橋兄弟2人のチャンピオンがそれぞれ王座を防衛し続けたら、現在無冠の三男・聖人はどうなるか。まさかウェルター級王座を狙うなんてことは有り得ないが、「KNOCK OUT」をはじめとする国内ビッグイベントに進出するでしょうか。

仮に、ライト級辺りでPRIMA GOLD杯トーナメントが大人数参加で行なえば盛り上がることでしょう。それこそ兄弟対決もトーナメント制なら仕方無いところです。

出陣シリーズvol.5は9月29日(日)大阪・すみのえ舞昆ホールに於いて開催。出陣シリーズvol.6は10月12日(土)後楽園ホールに於いて開催。出陣シリーズvol.7(ファイナル)は12月14日(土)後楽園ホールに於いて開催されます。

数年前から交流戦で盛り上がって来た日本キックボクシング連盟とNKB、高橋三兄弟をメインに何が行なわれるでしょうか。

PRIMA GOLD杯トーナメントに登場したラウンドガール

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

春日部パフォーマンス「絆」! ムエタイ戦士3名を迎え撃つ日本の若手戦士たち

2013年から始まった「絆」興行も12回目を迎え、日本の各ジムがトレーナー兼選手として招聘した第一線級を退いたタイ選手でも充分なベテラン技でムエタイを披露。日本滞在が長く、勝利者インタビューで日野リングアナウンサーが日本語で感想を聞くと、片言ながら日本語で照れながら「ありがとうございます。また頑張ります」程度の受け答えでもしっかり応えてくれるタイの選手達でした。

ノックアウトを狙うような技は少ないが、ダメージを与えるよりバランスを崩させる技、踏み込んだ前足を払う、蹴ってきた軸足を払う、足を掴んで吹っ飛ばす崩し、突進を拒むジャブのような前蹴り、どこを狙うか分からない素振りからのヒジ打ち、ヒザ蹴り。裏の裏をかくような相手のフェイントを見破ってフェイントを掛ける上手を行く技。若い日本人選手3名はムエタイ戦士の巧みな技に、ムエタイ技術を学ばせて貰ったような実戦での展開。タイ3戦士とも日本に慣れて、日本の選手を育てる役割を果たす、そんな指導者のような存在だった。

追い詰めるとジョッキーレックの左ミドルキックを浴びてしまう誓
組まれると動けない。ヒザ蹴りを喰らう誓

◎絆 Ⅻ
2019年 6月9日(日)
埼玉県春日部市ふれあいキューブ 16:00~20:15
主催:PITジム / 認定:NJKF

◆スーパーフライ級5回戦

ジョッキーレック・DRAGON(タイ/51.9kg)
   VS
NJKFフライ級2位.誓(=飯村誓/ZERO/52.0kg) 
勝者:ジョッキーレック / 判定3-0 / 主審:竹村光一
副審:君塚50-49. 松田50-48. 中山50-48 

蹴り足を取られ、吹っ飛ばされる誓

ジョッキーレックは過去にHIROYUKI、岩浪悠弥、佐々木雄汰といった国内チャンピオンを降してきた実力を持つ36歳。“ジョッキーレック・ポー・ポンスリン”が本来のリングネーム。

18歳の飯村誓がパンチを狙ってもジョッキーレックはスウェーでかわし、接近するとジョッキーは首相撲でしっかり組んでヒザ蹴りを出してくる。組んでから崩し倒すのが上手いジョッキーレック。中間距離では何を出してくるか読み難いムエタイ技に翻弄される誓。

第5ラウンドは勝ちを確信したら下がるパターンは仕方ないが、誓が出てくれば余裕の応戦。ムエタイの奥義見せたジョッキーレックだった。

誓のハイキックを軽くかわす余裕のジョッキーレック
ユットvs日下滉大。ロープ際でユットのパンチを貰ってしまう日下滉大

◆56.0kg契約3回戦

NJKFバンタム級3位.日下滉大(OGUNI/55.9kg)vsユット・ZEROジム(タイ/55.6kg)
勝者:ユット・ZEROジム / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:君塚27-30. 竹村27-30. 中山26-30 

初回から積極的に蹴りが出る日下だが、ユットは余裕で見ながら、かわしたり蹴り返したり、更にガードの空く日下へパンチを打ち込むタイミングを見計らう。第3ラウンドには日下は蹴りに行ったところにユットの素早い右ストレート貰いノックダウンを喫する。軽いヒットだがフラフラと倒れ込む。上手さが目立ったユット。更にロープ際で蹴りを出したところへユットの右ストレートを浴びると2度目のノックダウン。倒しきるほどラッシュは控えた感じの大差で判定勝利を掴んだユットだった。

ユットと打ち合う日下滉大
ユットの右ストレートを浴びてしまう日下滉大
ポンと打ち合う吉田凛太朗

◆59.5kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級7位.吉田凛太朗(VERTEX/59.3kg)
   VS
ポン・ピットジム(タイ/58.4kg)
勝者:ポン・ピットジム / 判定0-2 / 主審:松田利彦
副審:多賀谷29-30. 竹村29-29. 中山28-29 

吉田は正攻法な蹴りで前進気味に攻めるが、ポンは下がり気味でも圧力あるヒットが目立つ。組み合えばポンが吉田の頭をを押さえ付けて優位な態勢に持ち込んでヒザ蹴りを加える。吉田がパンチ連打で出るとポンは距離とって迎え撃つ。吉田のガードが空けばハイキックで顔面をかすめる。僅差ながらポンが上手さで優った。

ポンの右ストレートを浴びる吉田凛太朗

◆女子キック(ミネルヴァ)45.5㎏契約3回戦(2分制)

WPMF日本ピン級3位.田中“暴君”藍(PCK連闘会/45.3kg)vs祥子(JSK/45.3kg)
勝者:田中“暴君”藍 / TKO 2R 1:21 / レフェリーストップ
主審:君塚明 

◆女子キック(ミネルヴァ)48.0㎏契約3回戦(2分制)

アトム級1位.佐藤レイナ(teamAKATSUKI/47.8kg)
   VS
ライトフライ級6位.後藤まき(RIKIX/47.8kg)
勝者:後藤まき / 判定0-3 / 主審:中山宏美
副審:多賀谷28-29. 君塚29-30. 松田28-29 

◆女子キック(ミネルヴァ)スーパーフライ級挑戦者決定トーナメント準決勝3回戦(2分制)

ライトフライ級4位.佐藤”魔王”応紀(PCK連闘会/51.9kg)真美(TeamlmmortaL/51.8kg)
勝者:真美 / 判定0-2 / 主審:竹村光一
副審:中山29-29. 君塚28-30. 松田28-29  

同日、大阪市平野区で行なわれているNJKFミネルヴァ実行委員会西日本主催興行で、もう一方の準決勝で聖愛(魁塾)が楓(LEGEND)を破り、決勝戦は真美vs聖愛となります。

佐藤応紀vs真美。女子キック、ミネルヴァの戦いに勝ち上がった真美

◆55.0㎏契約3回戦

篠田兼一(DANGER/54.9kg)vs NJKFバンタム級4位清志(新興ムエタイ/54.8kg)
勝者:清志 / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:中山27-30. 君塚28-30. 竹村27-30 

◆80.0kg契約3回戦

J-NETWORKライトヘビー級6位.中平卓見(北眞館/80.0kg)
   VS
クイック・チョップリー(打撃武道我円/78.0kg)
勝者:中平卓見 / TKO 1R 1:15 / カウント中のレフェリーストップ
主審:松田利彦 

◆ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級7位.佐野克海(拳之会/66.68kg)
   VS
星裕久(ワイルドシーサー高崎/66.4kg)
勝者:佐野克海 / 判定2-0 / 主審:君塚明
副審:松田29-29. 多賀谷30-28. 竹村30-28 

◆52.0kg契約3回戦

清水保宏(北眞館/51.2kg)vsナカムラン・チャイケンタ(teamAKATSUKI/51.8kg)
勝者:ナカムラン・チャイケンタ / KO 2R 2:58 / テンカウント
主審:中山宏美

◆スーパーバンタム級3回戦

紺野大(DRAGON/55.1kg)vs雅(クローバー/55.0kg)
勝者:雅 / 判定0-3 / 主審:竹村光一
副審:松田29-30. 中山28-29. 君塚28-30 

大場総vs希望。タイを主戦場に戦うプロボクシングの大場総

◆70.0kg契約3回戦

中川達彦(打撃武道我円/69.6kg)vs謙(PIT/69.0kg)
勝者:謙 / 判定0-2 / 主審:多賀谷敏朗
副審:竹村29-29. 中山28-30. 君塚29-30 

◆ボクシングルール59.0kg契約3回戦

WBCアジア・スーパーフェザー級13位.大場綜(チームバカボン横浜西/58.3kg)
   VS
希望(D-TRIBE/56.8kg)
引分け(3R終了無判定) / 主審:松田利彦

大場綜はJBC管轄下のジムには所属せず、タイで実績を積み上げてきた選手。タイでのインターナショナル・スーパーフェザー級王座も獲得する経験を持つ。日本国内ではキックボクシング系のリングでボクシングマッチに出場している様子。

御挨拶に立つ権守幸男議員

《取材戦記》

今回、リングネームでちょっと不便に思うことがありました。実力を発揮したムエタイ3選手は在日タイ人で、タイで登録されるリングネームとは違った日本式リングネームで出場する場合がありますが、頻繁にリングネームを変えることは、過去の戦歴を調べ難いものとしてしまいます。

ポン・ピットジムは過去“ポンチャン”と言うリングネームで試合しており、来日経験豊富で国内チャンピオンクラスを下すベテラン選手。パンフレット製作者によって作られるものはしっかりインタビューや経歴、過去数戦の戦歴が載せられること多くなりましたが、過去の経歴や来日戦績を公表することは大事だなと思います。

松永嘉之プロモーターの御挨拶

各々の興行プロモーションによってはWebサイトで出場選手の詳しい戦歴・経歴が載せられるところもあるようですが、日本のキックボクシングの団体となる協会や連盟などの集団レベルではルールを基準とした管理・規制が行き届かない問題点。

プロボクシングでは昨年4月より、日本で試合するタイ人選手のリングネームは本名に限定されています。タイ人選手が複数のリングネームを使い分けることや、同一人物で複数の戦績が存在し、実力の無い選手、無気力試合をする選手を招聘する側が審査を逃れる手段であったところ、規制が厳しく改訂された訳です。但し、世界戦を戦うレベルの著名選手が来日した場合は特例でリングネームが認められるようです。

JBCのような管理体制がしっかりしたコミッションなら国内戦績・経歴がすべて管理されるところで、キックボクシング界も現在は団体単位でも、しっかりした体制造りが求められるところです。

マイクを持って立つラウンドガールの未来さん

毎度のラウンドガールを務める未来(みく)さんは今回は珍しくマイクを持ってちょっとだけ御挨拶。次の登場の埼玉県議会議員の権守幸男氏をコール。

権守氏は松永嘉之興行プロモーターと幼稚園からの同級生、とは何度か触れましたが、今回も演説慣れした御挨拶にリングに上がられました。選手が命を削る思いで今日まで練習してきて戦いに挑んでいることに敬意を表された権守氏。いつもは業務に追われ、早々に会場を後にすることもありましたが、今回はゆっくり最後まで観戦・歓談されました。

絆XIIIは来年6月14日(日)と1年後になってしまいますが、春日部パフォーマンスが行なわれます。 

ラウンド板を持ってファンに応える未来さん

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

このタイトルなくしては真の“王者”と語れない! NJKF 2019.2nd

今回もカッコいいタイトルが付いた興行。もっと活発になれば権威も増すところ。
以前からのWBCムエタイ日本実行委員会から新たに発足させたWBCムエタイ日本協会に移行して1ヶ月。若い戦士が成長してきたタイトルマッチ出場選手。他団体や海外出場が多い健太も凱旋試合。松谷桐の妹、松谷綺(16歳)がデビュー戦勝利と注目は多い。

◎NJKF 2019.2nd / 6月2日(日)後楽園ホール 17:00~21:00
主催:NJKF / 認定:NJKF、WBCムエタイ日本協会

大田拓真のヒジ打ちが新人の鼻をかすめる

◆第10試合 WBCムエタイ日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦

不覚にもヒジ打ち喰らってしまった大田拓真

第6代チャンピオン初防衛戦.新人(=あらと/E.S.G/57.0kg)
   VS
NJKFスーパーバンタム級3位.大田拓真(新興ムエタイ/57.0kg)
勝者:太田拓真 / 判定1-2 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷50-48. 宮本48-49, 少白竜48-49
太田拓真が第7代チャンピオン

新人の正攻法な攻めに対し、大田はムエタイ技のタイミング読み難い攻めと、足払いで倒す上手さは見映えがいい。3ラウンド終了時点の公開採点でやや不利な新人は、巻き返しの積極的な蹴り技が増える。

初回から新人の右ミドルキックで大田の脇腹が徐々に赤く腫れていく経過と、最終ラウンドにみせた新人のヒジ打ちはベテランの技。大田の額をカットし、やや勢いを鈍らせるも判定は1-2に分かれた。

新人の軸足を払う大田拓真
王座奪取成功した大田拓真を表彰

◆第9試合 WBCムエタイ日本フライ級王座決定戦 5回戦

松谷の右目瞼が切れ腫れあがる

1位.松谷桐(VALLELY/50.7kg)vs4位.仲山大雅(RIOT/50.5kg)
勝者:仲山大雅 / TKO 1R 1:45 / カウント中のレフェリーストップ
主審:宮本和俊
仲山大雅が第5代チャンピオン

開始からローキックからパンチの静かな展開から40秒ほど、両者接近したところへ偶然のバッティングで松谷の右目瞼が切れ、徐々に大きく腫れ上がる。

思わぬダメージを負った松谷はそのまま下がり気味になり、凌ぎきることができないまま、首相撲へ持ち込んだ仲山のヒザ蹴りを安易に貰ってしまう。

最後はボディーから顔面へヒザ蹴りを貰ってダウンすると、ダメージ大きい松谷はカウント途中でレフェリーに止められた。

首相撲に掴まり、仲山のヒザ蹴りを貰ってしまう松谷桐

◆第8試合 NJKFライト級タイトルマッチ 5回戦

野津良太vs鈴木翔也、ダウンしてから激しい展開となった鈴木の右ストレート

第10代チャンピオン.鈴木翔也(OGUNI/61.23kg)vs同級5位.野津良太(E.S.G/61.0kg)
引分け0-1 / 主審:神谷友和
副審:竹村48-48. 多賀谷48-48. 宮本47-48
鈴木翔也が初防衛

初回は静かな様子見も、鈴木が野津へのボディーへ打つ左フックがインパクトを残す。第2ラウンドに、静かな展開からいきなり野津の右ハイキックを喰らいノックダウンする鈴木。

呼吸を整えカウント8で立ち上がり、野津がチャンスを逃すまいと執念で調子を上げていく。両者は我慢比べの蹴りとパンチの攻防へ移り、鈴木は左目尻と右頬を切り、野津も鼻血を流す苦しい展開も互いに耐え切り、接戦ながら鈴木翔也が追い上げた形の判定0-1で、辛うじて引分け防衛に踏み留まった。

野津も王座へ執念の攻撃を見せた
引分けで辛うじて防衛を果たした鈴木翔也

◆第7試合 NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

雄一vs久保田雄太、右ストレートが交差する

1位.久保田雄太(新興ムエタイ/55.3kg)vs2位.雄一(TRASH/55.15kg)
勝者:久保田雄太 / 判定3-0 / 主審:少白竜
副審:神谷49-48. 多賀谷50-48. 宮本50-48
久保田雄太が第7代チャンピオン

前田浩喜が返上した王座を争う試合。有効なヒットが少ない展開の中、久保田の右ミドルキックが度々ヒット。雄一はその蹴り足を掴んで右ストレートを打ち込むパターンが増える。

互いのパンチの交錯や、組み合ってのヒザ蹴りや崩しの攻防は差が付き難い展開で、最終ラウンドには2度の投げに出た雄一に注意が与えられると、心理的に打つ手を阻まれたか、やや勢いが落ちた感じの雄一。

ラスト20秒は互いに懸命な打ち合いの激しさが増して終わるも、久保田がやや攻める勢いが優った印象が残る。「5ラウンドをフルに戦ってしんどかったが嬉しいです」と語った久保田雄太だったが、今後に課題を残した内容だった。

あらゆる技を酷使、バックハンドブローで攻める久保田雄太

◆第6試合 64.5kg契約3回戦

WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.健太(E.S.G/64.25kg)
   VS
ジョー・セイシカイ(タイ/64.45kg)
勝者:健太 / TKO 2R 1:06 / ほぼノーカウントのレフェリーストップ
主審:竹村光一

1年ぶりのNJKF出場となった健太は「初回から飛ばすつもりでいた」と言うとおり、不気味なジョーの出方を伺いながらも、ローキックで前進し、パンチのタイミングを見計らった展開。

ジョーはロープ際に下がり気味となるが、ジョーも蹴りのタイミングを見計らっている感じ。健太はパンチのタイミングを掴んだところで左ジャブから強烈な右ストレートでノックダウンを奪い、更に打ち合いに出て強烈な右ロングフックで倒し、レフェリーが試合を止めた。

健太のロングフックがジョー・セイシカイにヒットして倒す
新チャンピオン、大田拓真

◆第5試合 65.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級9位.田邊裕哉(京都野口/64.9kg)vs洋輔YAMATO (大和/64.9kg)
勝者:洋輔YAMATO / 判定0-3 / 主審:多賀谷敏朗
副審:神谷29-30. 少白竜29-30. 竹村28-30

◆第4試合 55.0kg契約3回戦

雨宮洸太(キング/54.7kg)vs檸檬(CORE/54.5kg)
勝者:雨宮洸太 / 判定3-0 / 主審:宮本和俊
副審:多賀谷30-27. 少白竜30-27. 竹村30-27

◆第3試合 60.0kg契約3回戦 

蓮YAMATO(大和/59.75kg)vs慎也(ZERO/59.5kg)
引分け0-1 / 主審:神谷友和
副審:多賀谷28-28. 宮本28-28. 竹村28-29

◆第2試合 ウェルター級3回戦 

vic.YOSHI(OGUNI/66.55kg)vs宗方888 (キング/66.25kg)
勝者:vic.YOSHI / TKO 3R 2:21 / カウント中のレフェリーストップ
主審:少白竜

◆第1試合 NJKF女子(ミネルヴァ)ピン級(45.359kg)3回戦(2分制)

松谷綺(VALLELY/44.75kg)vs七瀬千鶴(138KICKBOXING/45.1kg)
勝者:松谷綺 / 判定3-0 / 主審;竹村光一
副審:少白竜30-28. 宮本30-28. 神谷30-28

新チャンピオン、仲山大雅

《取材戦記》

バッティングの怖さ。それが目に当たれば視界や距離感を失うほどダメージは大きい。頭は硬く重く、この頭を素手で殴れば拳を痛めるのは当然で、グローブが着用されるのがボクシング。頭同士が当たればその骨の出っ張った部分の薄い皮膚が切れるのも当然で、顔の皮膚は部分にもよるが、他の身体の部分より10分の1ほどの薄さだという(皮膚科のお医者さんが言っていた話)。切れやすく腫れやすいのが顔面で、減量から徐々に回復する身体は、水分を摂ると翌日には傷もより浮腫むようです。女子選手はより大変でしょう。

松谷は右目を打ったダメージで戦略が狂ったのかもしれない。いつもはこんな劣勢には至らないと思うが、正攻法に戦う真面目さと17歳という若さではキックボクサーとしての経験値よりも、人生のずるさの経験値が足りなかったか。これが健太ほどの90戦近いベテラン選手だったら、無理に攻めずにこの場を凌ぐ時間稼ぎに出たでしょう。

試合は何が起こるか分からない恐ろしさがあります。昔読んだある記事ですが、「体調万全で試合に臨み、試合開始のゴングが鳴る直前に、コーナーで気合入れて思いっきり足の屈伸したら足首が“ブチッ”といった切れた音がした」という世界戦のリングでそんなことが起きた過去の日本人プロボクサー世界チャンピオンがいました。

“あっ、ヤバッ”と思っても、初回のゴングが鳴り、そのまま戦うしかなかったそうで、何とか15ラウンド判定勝ちで防衛したそうですが、試合後、シューズを脱ぐと足は腫れてパンパン。こんなハプニングは長い歴史の中、他の格闘技にもあるのではと思いますが、そんな世にも怖い魔物が住んでいる話を聞いてみたいものです。

今年の新役員に囲まれてチャンピオンベルトを巻いた久保田雄太

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

創業50周年!タブーなき言論を! 月刊『紙の爆弾』7月号
一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』
上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!