黒薮哲哉
全米民主主義基金(National Endowment for Democracy=NED)から、2024年度、4,100万ドル(約63億~65億円)の資金がラテンアメリカ諸国の親米勢力(市民運動体やメディア)に支払われていることが分かった。支援対象となったプロジェクトの数は262。対象国は16カ国である。

NEDのウェブサイトは、支援の理由について次のように述べている。
ラテンアメリカとカリブ地域では、権威主義が広がりつつあり、指導者たちは民主的な制度を弱めて権力を固めている。
NEDは、キューバ、ニカラグア、ベネズエラのように強い権威主義体制が続く国々に特に注目している。
こうした国々でNEDは、現地の団体と協力し、政権の独裁的な性質についての理解を深め、市民が独立した情報を得られるよう支援し、反民主的なプロパガンダに対抗する。
厳しい弾圧がある中でも、活動家たちは平和的で民主的な改革を進めるという強い意志を持ち続けている。
NEDは、米国政府系の反共謀略組織で、他国の「民主化」を支援するための組織である。今年、ノーベル平和賞を受賞したベネズエラの反政府活動家で、同国への軍事介入を米国に要請しているマリア・マチャドも、NEDに深く連座してきたことが判明している。
NEDの手口は共通している。メディアを使って「親米」と「反共」で世論を誘導し、一種の混乱状態をつくった後にクーデターを試みる手口である。
しかし、ニカラグアでもベネズエラでも失敗している。日本にもNEDから資金援助を受けている人物がいるという情報もあるが、詳細については分からない。
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※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年12月01日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。
▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
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