2022年の3・11。言うまでもなく、あの東日本大震災・福島原発事故がはじまって11年です。

「はじまって」という言い方をしたのは、いまだに現在進行形だからです。公式発表でさえ、3万人以上が福島県外への避難を余儀なくされている。そして「原子力緊急事態」は続いています。

筆者は、もちろん、この11年間、ずっと広島で過ごしました。しかし、今年は、一昨年来のコロナに加えて、世界最大の核兵器保有国に君臨する男が、核兵器という刀の柄に手をかけ、原発が戦争で争奪の対象になるという人類存亡の瀬戸際の危機的状況で3・11を広島で迎えました。

◆「黒い雨」主人公の被爆の場所 横川駅前からスタート

その日に自分はどう行動するか? 最初に選んだのは広島市西区の横川駅前での街頭演説でした。

横川駅は小説「黒い雨」の主人公の閑間重松が1945年8月6日に被爆した場所です。重松は現在の中区千田町の自宅を出発して、広電で横川駅に到着。国鉄可部線の古市橋駅近くの会社に向かうため、当時は横川駅始発だった可部線のホームに行き、そこで被爆します。そのあと、広島市内をさまよった挙げ句、可部線が運転再開していた山本駅(2021年の大水害被災地近くだが、現存しない。)から古市橋駅へ電車でたどり着きます。

筆者が、政治家を志した原点は小説「黒い雨」です。ですから、ここを原点に行動することにしました。


◎[参考動画]さとうしゅういちIN横川駅前 東日本大震災・福島原発事故11周年 ノーモア ヒロシマ・ナガサキ・チェルノブイリ、そしてフクシマ いますぐ停戦

演説で筆者は、ここが、重松被爆の場所であることを紹介。その上で東日本大震災の犠牲者の皆様に弔意をしめすとともに、いまなお避難を余儀なくされている皆様をふくむ被災者のみなさまにお見舞い申し上げました。

その上で、原発が戦場になっている状況に危機感を示し、ヒロシマ・ナガサキ・チェルノブイリ・フクシマを繰り返さないため、プーチン大統領に強く停戦を求めました、

一方で、ヒロシマ・ナガサキ・フクシマを経験した国日本として、イスラエルやトルコを見習って停戦へ向けた外交の努力をすべきだ、と訴えました。安倍元総理に対しても「核共有などということを言っている暇があるなら、動けるなら動いたらどうか」と勧告しました。

さらに、国内の物価上昇に対しては、「輸入物価上昇で庶民ほど打撃のいまこそ、財政出動で負担軽減を」と強調。さとうしゅういちとれいわ新選組の「消費税廃止」「ガソリン税ゼロ」「奨学金チャラ・学費無償化」などを紹介。また、食料安全保障のため、農業だけでなく漁業や酪農など食料生産者にコストの補償を、と訴えました。

維新などによる原発復活論に対しては、「ウクライナ戦争で原発が最大の安全保障上のリスクであることがあきらかになった。原発は廃止を。そして、クリーンで地域分散型のエネルギーを促進すべきだ。大きな発電所でつくって、遠くへくばる、という考え方から転換することが大事。そのためのグリーンニューディールにガツンと財政出動する。」と反論しました。

さらに、国家公務員一般職員の給料カット法案については、「公務員給料カットは、結果として民間労働者の給料を下げてしまう。総理の公約の労働者の給料アップも遠のいてしまう。むしろ民間労働者のコロナによる減収を補填した上で、女性が多い非正規公務員の正規化、介護や保育の労働者の給料10万アップをして暮らしを守るべきだ。格差是正は低いほうを上げることで実現を」などと訴えました。

余りにも熱をいれすぎて、広電の横川駅の駅員の方から、「演説と放送が重なると放送がきこえにくいので」とご注意をいただき、後半は場所をすこしずらしました。

◆古市橋駅前で演説、収賄で略式起訴された市議の支持者に遭遇

筆者は、このあと、可部線に乗車。重松が8月6日夕方にたどりついた古市橋駅前に到着し、上記と同様の内容の演説を行いました。

その後、駅近くの床屋で散髪をしていただきました。丁度、先客の女性が、河井事件で検察審査会が「起訴相当議決」をしたことを受けて辞職した議員の熱心な支持者の方でした。議員にがっかりした、とおっしゃっていました。

「わたしは、中途半端に辞職した人よりは、徹底抗戦する議員の方がスジは通っているとおもいますよ。自分でアウトだと思うならすぐに辞職するべき。無罪と思うなら最後まで裁判で闘うべきとおもいます。」と申し上げると、「まったくそのとおりだと思う」と同意をいただきました。

このあと、筆者は、妻と犬の昼食を買って一時、東区の自宅に帰宅しました。午前中の動画のUPをしていると、14時46分。PCの前で黙祷を捧げました。

 

◆元同僚に公務員給料カット反対と引き換え?に介護や保育の労働者の給料UPを訴える

夕方は17時前から元職場の広島県庁前で街頭演説。元同僚に向けて、さとうしゅういちとれいわ新選組が「国家公務員一般職員の給料カットに反対」であり「現場公務員をふやす」政策であることを紹介。一方で、介護や保育の労働者の給料大幅アップなどの政策へのご協力を、元同僚である県庁労働者に向けて訴えました。

中国電力前に「単独」で乗り込み「さとうしゅういちとれいわ新選組への支持を安心して検討してほしい」

県庁前のあと、NHK前、そして中国電力前でも街頭演説を実施しました。

中国電力は、島根原発2号機再稼働、3号機新規稼働を強行しようとしています。また上関原発の新設もあきらめていません。中国電力前では、退勤中の中国電力労働者の皆様に対して「今回の戦争で原発が最大の安全保障上のリスクであることがあきらかになった。また、原発になにかあれば御社は吹っ飛ぶ。それよりは、原発は廃止をしたほうがいい。さとうしゅういちとれいわ新選組は、原発をなくすいっぽうで、原発関連の部署ではたらくみなさまには、原発廃止を担当する公務員のポストをご用意する。安心してさとうしゅういちとれいわ新選組へのご支持をご検討いただきたい。」とお願いしました。

 

なぜ、中国電力前に単独で乗り込んだか? この日はそのあと、18時から原爆ドーム前で「つながろうフクシマさよなら原発ヒロシマ集会」がありました。しかし、コロナ対策で、例年はあった中国電力前までのデモが中止されていたのです。少数でも、中国電力の労働者に向けて訴えない311、それも原発が最大の安全保障上の脅威となったいま、中国電力前で訴えないわけにはいかない。そう考えて、のりこんだのです。なぜか、年配の女性労働者(ひょっとしたら幹部かもしれない)が最後までじっときいておられました。

なお、写真撮影には男性が自転車で筆者の後を追ってご協力をいただきました。ですから、「単独」という表現は実は不正確です。お礼申し上げます。

◆原爆ドーム前で「つながろうフクシマさよなら原発ヒロシマ集会」そして反戦スタンディング

原爆ドーム前では、「つながろうフクシマさよなら原発ヒロシマ集会」がありました。

幅広い市民団体が参加しました。今年は、ロシアのウクライナ侵攻に抗議するメッセージも出されました。福島からは毎年参加をいただいていますが、コロナ災害発生後は、メッセージの代読になっています。そして、島根原発の地元からの報告をいただきました。報告によれば、もはや、島根原発再稼働を松江市長もあっさり受け入れ、住民投票条例案も否決される危機的な状況です。伊方原発は再稼働されてしまいましたが、島根原発も再稼働されれば、広島はそれこそ、南北から原発の脅威で挟み撃ちになる恰好です。ただ、やはり、デモがないのは寂しいかぎりでした。


◎[参考動画]動画 3・11「つながろうフクシマ さよなら原発ヒロシマ大集会」

一方、同時進行で、れいわ新選組の「改憲阻止チーム」が呼びかけて、最初は平和公園噴水前、そして、「ヒロシマ集会」終了後は、原爆ドーム前へ移動してロシアのウクライナ侵攻に抗議するスタンディングが行われました。

ビートルズの「Give Peace a Chance(平和を我等に)」をうたいながら、反戦をアピールしました。
https://twitter.com/reiwakaikensosi/status/1502240723671736322

若いれいわ新選組支持者の発案で、しゃべるのが苦手な人も参加しやすい運動をという趣旨で数日おきにされています。

◆毎週金曜日はオンライン「定例記者会見」

筆者は毎週金曜日、オンラインで定例記者会見を実施しています。この日は3・11とウクライナ戦争、また、国家公務員一般職員の給料カット法案についてわたしから問題提起をし、参加者で自由にご発言をいただきました。もし、ご興味があればご参加ください。どなたでもご参加できます。入退室自由です。記者会見には、以下からどなたでもご参加いただけます。入退室ご自由です。

さとうしゅういち 定例記者会見
開催日時 毎週金曜日 20時~
Zoomミーティングに参加する
https://us04web.zoom.us/j/4117183285?pwd=bFhrcTlWOUpPRmZhUGFkTVpTZlV4Zz09
ミーティングID: 411 718 3285
パスコード: 5N6b38

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

介護福祉士である筆者は、衆院広島1区(広島市中区、東区、南区、総理の地元)内と広島4区(安芸区、安芸郡、東広島市の大部分など)内の介護施設に勤務しています。このうち、広島1区の介護施設に2022年2月14日、ご利用者1人、職員1人の感染が確認され、ついにコロナが上陸してしまいました。広島県内の感染者数も減少傾向に入ってほっとした矢先の出来事でした。

そして、2月22日までに当該施設の感染者はご利用者6人、職員2人に増え、5人というクラスター発生の基準を上回ってしまいました。いつかは、くるかも、と頭の中では考えてはいました。しかし、現実に自分が勤務する施設でクラスターが発生すると、まるで夢をみているような状況に不覚にもなってしまいました。

◆これまでの経過

これまでの状況を年表風にまとめると以下のようになります。

1/24(月)広島4区の介護施設に入居する予定の方がコロナ感染。入居延期に。
1/25(火)広島1区の介護施設に入社予定の職員がコロナ感染発覚。勤務開始の目処たたず。
2/10(木)筆者、1区の施設にコロナ上陸前最後の出勤
2/11(金)~13(日)筆者の仕事はお休み。
     広島市内で街頭演説や炊き出しのボランティア、労働組合の役員会など活動。
2/14(月)筆者、広島4区の介護施設に勤務。
     1区の介護施設でご利用者1人、職員1人の感染発覚 筆者は知らず
2/15(火)筆者は、ワクチン接種のため、お休み。広島市内の団体や政党など挨拶回り。
2/16(水)筆者、広島1区の介護施設に上陸後最初の勤務。
     職員1人の感染発覚。累計でご利用者1,職員2の感染者。
2/17(木)筆者、広島1区の介護施設に勤務。
2/18(金)筆者、広島1区の介護施設に勤務。
     あらたにご利用者1人の感染発覚。累計ではご利用者2人、職員2人の感染者。
2/19(土)筆者は仕事休み。
2/20(日)筆者は広島4区の介護施設に勤務。
2/21(月)筆者は広島4区の介護施設に勤務。
     広島県では、まんえん防止措置は延長も認証店では酒類提供可能に。
     2/19-2/21の3日間にあらたに1区の介護施設で2人のご利用者感染。
     ご利用者4人,職員2人の累計6人の感染者でクラスターに発展。
2/22(火)筆者、広島1区の介護施設に出勤。あらたに2人のご利用者感染。
     ご利用者6人、職員2人。合計8人に。

ちなみに、広島県、隣接する岩国市、そして感染の震源地とされる米軍岩国基地の新規感染者数の推移は以下です。

02/01 1056-20-17
02/02 1027-27-11
02/03 1179-20-13
02/04 1233-19-11
02/05 1277-22-0
02/06 1109-19-0
02/07 748-22-4
02/08 892-13-9
02/09 1042-10-10 広島県再び前週同日比増加
02/10 1008-9-10
02/11 1080-9-7
02/12 820-15-0
02/13 736-12-0
02/14 606-11-0
02/15 922-12-9
02/16 972-21-9
02/17 896-14-17
02/18 764-21-5
02/19 791-25-0
02/20 771-22-0
02/21 490-30-0
02/22 671-20-0

◆要介護度が低い方への感染契機に状況悪化

今回の施設内クラスターで最初に利用者で感染された方はほぼ、ねたきりの方でした。しかし、要介護度が低い方が感染して、一挙に状況が悪化しました。要介護度が低い方が感染するとなぜ状況が悪化するのか?ご説明します。

ねたきりの方の場合は、食事などで例外的に個室から出てこられる以外は出てこられません。ですから、
1 ご利用者には個室で食べて頂くようにする。
2 職員は徹底した手洗いなどを大前提にオムツ交換などに向かうときは、上下完全防備のガウンとフェイスシールドを着用し、個室を出る前に脱いで捨てる。マスクはもちろん、完全防備の医療用のもの(写真)をつかう、
を守っていれば問題は比較的少ないのです。

しかし、要介護度が低い方は、お元気です。他のご利用者とも普段からコミュニケーションは盛んにとっておられました。他のご利用者の個室にもよく遊びにいかれます。こうした方々がほぼ無症状で、意識しないで、大声でいろいろな人に話しかけられるということが起きます。マスクも職員とちがってきちんとすることはない。要介護度が低い方はいわゆる「スーパースプレッダー」になるリスクが極めて高いのです。また、こういう方々はお元気ですから、隔離されても、個室の外へ出ようとされます。そのことを制止しようとするだけでも相当なストレスです。

◆食事時間帯は人員不足とダブルパンチで野戦状態に

介護施設のクラスターで一番、大変なのは、朝昼夕の食事時間帯です。感染拡大防止のために、ほとんどのご利用者には、個室で食べて頂くことになります。ただし、食事の際に介助が必要な非感染者の方の多くは、食堂で食べていただくことになります。こうした方々は、きちんと見守りをしないと、誤嚥のおそれもあるからです。食事介助を必要とされる全てのご利用者の個室に職員を派遣して介助をする余裕はもちろんありません。

一方で、感染者の方は絶対に個室で食べて頂くしかありません。とくに問題は中途半端に立ち上がる能力はあるけれども、安定して歩けない方が感染した場合です。こういう方も個室で食べて頂かないといけません。職員は他の利用者の食事介助もしなければなりません。

そういうときに、このタイプの感染者のご利用者が歩こうとして倒れたら大変です。そうはいっても、転倒したご利用者を助けにいくのなら、ガウンにフェイスシールドを装備しないといけません。帰りは脱いで捨てるしかありません。そうこうする間に、元気な感染者が、個室を出ようとされたり、食事介助を必要とされる方が誤嚥をおこされたり、ということもあり得ます。

まさに、野戦のようなありさまです。これが、まだ、最低でも10日程度続くと予想されています。たまったものではありません。

◆やはり十分な人員確保とそれに向けた抜本的待遇改善が必要だ

さて、たとえば、利用者を歩かないよう拘束すれば、これは高齢者虐待防止法などで禁じられた違法行為になります。やむを得ず拘束をするにも、3つの要件がそろい、家族の同意が得られてからです。さりとて、このままでも転倒する方などが増えます。

そうすると、介護現場の人員を増やしすしかないのです。人員に余裕があれば、緊急時にも対応しやすくなります。当該施設においては、退職者があいつぐいっぽうで、補充で新規に入社予定の方がコロナ感染で出勤のメドが立たない状況の中で起きたクラスターでした。

その人員確保のためにも、地元の総理・岸田さんに対しては、3%賃上げなどと心細いことではなく、ガツンと財政出動による月給10万円アップをお願いします。そして、短期的にも今回のパンデミック対応として、危険手当の支給をお願いするものです。また、一時は当該施設でも濃厚接触者となった労働者が出勤停止となり、「野戦」状態はさらにひどくなりました。濃厚接触者となった人への補償もありません。濃厚接触者となった介護・保育労働者への補償もお願いするものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年3月号!

2月12日、広島中区の上幟町公園で呉市の男性会社員の呼び掛けで炊き出しが行われました。

今回が2021年12月26日、2022年1月22日に続き、3回目です。この会社員はどこかの団体に所属しているというわけでもないそうです。定期的に転勤がある全国規模の企業に勤務し、いまは、広島県内の事業所に配属されているということです。お会いしてみると、本当にどこにでもいそうな、フツーの会社員の好青年です。

「なんで炊き出しをするのかと問われると特に理由はないんだよな
別に慈善活動とも思っていないし
なんかとてもやりたい気持ちになっただけ 衝動
続けるけどね」

「広島で炊き出しやります
ホームレスのおっちゃんたちにカレー作って振る舞う 主催は自分
出来ることをやる 
止まってられん 寒いけどあったかいもん食べて冬乗り越えてもらいたい
仲間が少ない 誰でも手伝ってほしい
できれば定期的にやりたい」(いずれも本人のTwitterより)

◆人数が少なくてもやり切る気迫

こうした、ご本人の気迫をTwitterだけでも十分に感じた筆者。今回は、はじめてお手伝いさせていただきました。

本日のメニューは中華丼です。前回、前々回はカレーライスだったそうです。調理は広島市でも(平和公園から見ても)南部に位置する中区舟入のプロテスタント教会の台所を貸し出していただきました。

同教会の牧師は「広島夜回りの会」でホームレス支援を継続されています。

この日、10時に教会に集合したのですが、最初は主催者の男性会社員とわたししかおらず、あまりの人数の少なさにびっくりしました。しかし、「前回も、ほとんど俺一人で料理はしたのでなんとかなるでしょう。」という彼の気迫に気を取り直して、台所に向かいました。

前回、前々回はフードバンクから食材の提供を受けていましたが、「俺も仕事が忙しくてお願いにいけなかったので」(男性会社員)、1万円で彼が買った食材を使うことになりました。50人前を想定。白菜は2個相当、人参は4,5本、また、豚肉やシーフードの冷凍パック、そして米は4kgを使いました。

男性会社員の他に、男性会社員の同僚の女性もあらわれ、最初は3人で食材の白菜や人参などを切っていました。

次第に、生活困窮者の相談活動に従事している団体職員、筆者同様、ネットで情報を得た県内の大学教員、医療従事者らも現れ、食材を大きな鍋に放り込んで炒めるなど、作業を進めました。

途中、炊き出しに必要なビニール手袋(感染対策)やごま油などが足りないことに気づき、男性会社員が近所の百均に買い出しに行くなど、慌ただしい状況もありましたが、無事に12時半には、中華丼の具も出来上がり、御飯も炊き上がりました。

 

◆ホームレス数の変化はないが、在宅の困窮者は激増

調理が終わると我々は会場の上幟町公園に移動しました。ここでは、さらに、広島市内の主婦らもスタッフに合流。この主婦は、「食品だけでなく生活必需品も含め、リサイクルによる困窮者支援」の活動をネットでされています。

中華丼とミネラルウォーター、そしてお菓子をくばりました。既に「広島夜回りの会」などを通じて情報を得ていた人々20人あまりが並ばれました。

中高年の男性が多いのですが、一方で若い男性やかなり年配の女性も並ばれていました。

団体職員は、前回もこの男性会社員主催の炊き出しにも参加しています。学生時代から生活困窮者支援の活動に従事しており、実態に詳しい方です。彼によると広島ではコロナ災害発生後もホームレスの数自体の増減はあまりないようです。

しかし、在宅の生活困窮者の数は急増しています。彼の悩みは、生活困窮者に生活保護受給を薦めても、しぶる方がおおいことだそうです。貸付中心の社会福祉協議会に頼ってこられる方が多いのです。

彼は「多くの人が貸付ではにっちもさっちもいかない状況だ。生活保護は恥ではないと意識を変えてほしい。」とおっしゃいました。

また、ホームレスの方については、「つながりを続けていくことが大事。」ともおっしゃいました。「夜回りの会」でも、2020年にコロナ災害がスタートした最初の一ヶ月のみ活動は休んだがその後はずっと活動を続けているそうです。

会社員主催の炊き出しは団体ではなく、やりたいと立ち上がった個人に、既存の活動団体も協力し、また、筆者のようなネットで情報を得た人間も参加する形で行われています。

男性会社員は、今後も、毎月第二土曜日に炊き出しを行う意向です。

◆あの頃と変わっていない生存権を守らぬ政府に憤り──炊き出しが「持続」するようでは困る

「あの頃と変わっていないじゃないか?!全然、生存権を守る政府になっていないじゃないか?!」

これが、最近、筆者がいきどおっていることです。

筆者は、2008年~2009年のリーマンショック時にも、岡山や名古屋など県外でも年末年始の炊き出しなどに参加させていただいています。

すでにあのころから、貧困問題は広がっていたのです。すでにギリギリの生活を強いられていたひとたちが、リーマンショックで路上に投げ出された。あの時の教訓をいかしてほしい、と選ばれたのが民主党政権だったはず。しかし、民主党は自滅してしまい、安倍晋三さんが再登板。当時は、たまたま、団塊世代の労働人口からの撤退で若い人の就職率が改善した。それに便乗して、安倍さんは身内ばかりを優遇し、生存権を守る政府の機能の強化はなされない。こうした問題は不可視化されてしまいました。だが、実際には、コロナ前でもじわりじわりと人々の実質所得はさがりつづけた。政府の怠慢をやむなく補完する形で、「子ども食堂」も広がったわけです。

そこへ、コロナが襲いかかったのです。前回、すなわち、リーマンショックのときの教訓を日本がいかしていたのなら、こんな状態になってはいません。子ども食堂にせよ、炊き出しにせよ、こんなものが「持続する」ようでは困ります。生存権を石にかじりついても守る気概を政治・行政はもたねばならぬ。このことも強調させていただきます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年3月号!

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

正月明け以降、新型コロナウイルスのオミクロン株中心の感染爆発が続く広島県内。最近では東京都や大阪府も遅れて感染爆発が起きているため、全国的な注目は低下している感はあります。しかし、着実に筆者の身近に脅威が迫っています。

◆勤務先の介護施設入居予定者や山間部の友人も感染

1月24日(月)。筆者のまわりで激震が走りました。筆者はその日の朝、バイト先の介護施設で前日から夜勤をしていました。そろそろ、日勤で出勤してくる正社員にバトンタッチしようかなとおもっていると、正社員の人が息を切らして入ってきました。何事かと思ったら「きょう、入居予定の方がコロナ陽性で入居延期になった」ということでした。わたしは、背筋が凍る思いが致しました。

そして、会社を出て、妻とSNSで連絡をとろうと、スマホを取り出すと、県北部の山岳地帯に住む友人のSNSのタイムラインが目に入ってきました。なんと、その友人がコロナに感染したという報告でした。その友人は、17日ころからのどに異常を感じ、金曜日ころに38度の発熱で受診し、PCR検査の結果、陽性と判定。自宅療養で、保健所から食料を受け取った旨の投稿がされていました。画面には段ボール入りのカップ麺や即席味噌汁、お菓子などが映っていました。先ほどの入居予定者のこととあわせ、肝を冷やしました。

さらに翌日、別の勤務先の介護施設では新入社員が感染したという報告。まだ出勤していないのが不幸中の幸いでした。しかし、その人は、すでに退職した人の補充の意味もあったので、現場は目がまわるような状況になっています。

毎日、1000人以上、1週間で人口10万あたり300人以上感染している状況ですから、身近に事例が出てもおかしくはありません。

以下は、これまでの広島県内、そして広島県に隣接する岩国市、そして米軍岩国基地の感染数のまとめです。

今週に入って感染数は前週比では、さほど伸びていません。しかし、もともと、高い水準での感染数だったので油断できない状況です。

 

      県内-岩国-岩国基地
12/01~20 00-00-00
12/21   00ー00-01
12/22   02-00-01
12/23   03-01-00
12/24   01-00-00
12/25   05-01-00
12/26   01-01-00
12/27   01-01-08
12/28   01-01-05
12/29   03-07-80
12/30   06-07-27
12/31   23-08-23
01/01   21-14-00
01/02   57-13-00
01/03   40-44-50(岩国基地は3日分をまとめて発表)
01/04   109-62-47
01/05   138-70-182
01/06   273-81-115
01/07   429-61-91
01/08   547-77-71
01/09   619-80-05
01/10   672-45-12
01/11   588-71-71
01/12   652-79-34
01/13   805-54-29
01/14   997-79-26
01/15   1212-67-28
01/16   1280-67-0
01/17   973-59-0
01/18   900-45-8
01/19   1042-65-5
01/20   1569-37-77
01/21   1532-46-33
01/22   1585-52-13 
01/23   1476-44-0  
01/24   1056-53-0 
01/25   1099-44-30
01/26   1252ー63-17
01/27   1502ー52ー10

◆平和公園も直撃 「座り込み」も中止

感染爆発は平和公園も直撃しています。原爆資料館は2月20日まで、臨時休館です。原爆資料館の玄関には机がおかれ、その上に資料館のパンフレットがおかれ、自由に取れるようになっていました。被爆体験の継承のためのイベントももちろん、中止となってしまっています。こうした中、平和運動も感染爆発の直撃をうけています。

1951年1月27日、アメリカ・ネバダ州の核実験場が操業を開始。CTBT(核実験禁止条約)ができたあとも、未臨界核実験が行われています。この核実験場周辺では、ロケ中の西部劇の俳優らふくめ、多くの方が被爆。実際には放射能汚染は東部もふくめて全米に広がっていました。

1984年にとなりのユタ州の住民が反対運動に、たちあがり、全世界にひろがりました。広島でも、わたしが所属する広島県原水禁では、毎年1月27日は、日中に原爆慰霊碑前で座り込み、夕方から反核集会を取り組んできました。

コロナ災害が発生した2020年はまだ日本への影響は少なかったため、イベントは行われました。しかし、2021年は座り込みのみで、集会は中止。そして、2022年は座り込みも中止になりました。しかし、わたしや、複数の活動家は中止を知らずに原爆慰霊碑前にきてしまいました。定刻になっても、人がこないため、おかしいな、とおもい、主催者に近い人に電話をすると、中止になった、とのこと。仕方がないので、原爆慰霊碑に参拝して解散しました。

 

◆有権者との対話で痛感、災害指定の重要性

そのあと、せっかくここまで来たのだから、ということで、原爆ドーム北側の旧広島市民球場前で街頭演説をおこないました(写真)。ここは、あの河井案里さんもよく演説をされていた場所です。

わたしと友人が、れいわ新選組の消費税廃止やガソリン税廃止などを訴えていると、年配の女性が話しかけてこられました。

彼女は「カラオケ教室の先生をしていたが、コロナで生徒がまったくこなくなってしまった。ただ、収入が一定額にならないためにいわゆる持続化給付金を受け取れなかった。他方で、飲食店のような休業による協力金も受け取れなかった。年金だけでは生活は困難だ。」と窮状を訴えてこられました。

そして「消費税廃止はもちろんよいが、固定資産税、国保料なども減免してほしい。」
などと要望されました。いっぽうで、政治へのあきらめのようなことも口にされました。他方で激励もいただきました。

やはり、コロナは大震災や大水害が全国でおきたような災害であることを実感しました。それに対する手当てがあまりにも不十分だったために、あきらめや分断もひろがっていく、ということを感じました。憲法を変える議論をやっている場合ではない。コロナをいまからでも日本全土の激甚災害に指定して、大震災や大水害被災者なみの支援を全住民におこなうことが急務だと、会話を通じて実感しました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年2月号!

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

《2月のことば》心配ないんだよ 大丈夫 なるようになるんだよ(鹿砦社カレンダー2022より。龍一郎揮毫)

本年2月1日は、このかん本通信やFacebookなどで何度も申し述べているように、私にとっては特別なメモリアル・デーです。

二十歳の学生時代、学費値上げに抗して身を挺し闘い逮捕されてからちょうど50年が経ちました。

1972年2月1日、酷寒の京都、私たちが通う大学の学費値上げに対し、強い徹底抗戦の意志を持った同志社の学友のみならず全京都から連帯して駆けつけた学友と共に闘いました。

あれから50年──私は私なりに一所懸命に生きてきたつもりです。

決して清廉潔白ではなかったかもしれませんが、清濁併せ精一杯生きてきました。なんら恥じることはありません。

精一杯頑張っていれば、必ず浮かぶ背もあり助け舟もあることを実感しています。

いちいち挙げませんが、けっこう浮き沈みのある人生でした。

陽の当たる時ばかりではありませんでしたが、大丈夫、なるようになる!

この2年余りのコロナ禍で、私たちは心が折れる日々が続きますが、大丈夫、大丈夫、共に励まし合い進んで行きましょう! 

(松岡利康)

『紙の爆弾』『NO NUKES voice』今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

2022年の到来とともに、突然、オミクロン株主体の感染爆発がスタートした広島県内。県内全域がまん延等防止措置の対象になりました。

1月の10日からの週はそれでも、感染者数が500-600を行き来して「これは、ひょっとしたらオミクロン株は意外とピークアウトが早いのかな?」と淡い期待を筆者もどこかでしていました。

「勤務先の介護施設(広島市内と広島市に周囲を囲まれている安芸郡内の2カ所)でも、これ以上感染者数が増えれば、ご家族とお年寄りの面会が禁止になってしまう。そうすれば、また、お年寄りが急激に衰えてしまう。この程度でピークアウトしてくれないかな。」

だが、その期待は1月16日の日曜日に広島県内で1212人という、凄まじい数字の前に吹っ飛んでしまいました。

以下は広島県内(県内)、隣接する岩国市(岩国)、そして感染爆発「震源地」の疑いが濃厚なアメリカ軍岩国基地(基地)の感染者数です。

広島駅北口の県のPCR臨時スポット、1月16日に筆者撮影

     県内-岩国-基地
12/01~20 00-00-00
12/21   00ー00-01
12/22   02-00-01
12/23   03-01-00
12/24   01-00-00
12/25   05-01-00
12/26   01-01-00
12/27   01-01-08
12/28   01-01-05
12/29   03-07-80
12/30   06-07-27
12/31   23-08-23
01/01   21-14-00
01/02   57-13-00
01/03   40-44-50
(岩国基地は3日分をまとめて発表)
01/04   109-62-47
01/05   138-70-182
01/06   273-81-115
01/07   429-61-91
01/08   547-77-71
01/09   619-80-05
01/10   672-45-12
01/11   588-71-71
01/12   652-79-34
01/13   805-54-29
01/14   997-79-26
01/15   1280-67-0
01/17   973-59-0
01/18   900-45-8
01/19   1042-65-5
01/20   1569-37-77
01/21   1532-46-33
01/22   1585-52-13

◆岩国市長が「酒類の提供停止を求めない」矢先にまた急増 基地感染者数

1月16日以降、正月明けのころよりは、岩国基地の感染状況はいったん落ち着いたように思えました。そして、20日、岩国市の福田良彦市長は、岩国基地に対して「酒類提供停止は求めない」と発言されました。だが、その発言の矢先というべきか、同日、岩国基地の感染者数が77人という数字が発表されました。岩国基地の「人口」は約1万人です。22日までの1週間あたりの人口10万あたり感染者数は約1360人です。前週が約2060人です。ピークは過ぎつつあるといえばあるのですが、だからといって、対策に手を抜いて良い状況ではないでしょう。広島県民も山口県民もまん延等防止措置で酒類は我慢している。飲食店も儲からない状況になっている。しかし、米軍には大甘なのが岩国市長です。

福田市長は、2008年に、基地拡張反対派の井原市長を打倒して就任。基地拡張受け入れと引き換えに基地拡張にともなう交付金を受け取ってきました。そういう経緯があるとはいえ、あまりにも情けないです。

日米地位協定の壁はたしかにある。しかし、市民の生命財産を守るべき市長が、最初から腰が引けてどうするのでしょうか?市長はガツンと日本政府に対して、米軍にも日本人同等の対策にご協力いただくように物申すべきです。それを政府が受け止めて、日米地位協定廃棄も辞さぬ構えで米側と交渉する。そういう構図をつくるべく市長にはがんばっていただきたい。

◆ついに面会が禁止、重苦しい雰囲気の介護現場

筆者が勤務する老人ホームでは、1月16日頃から、ついにご家族とお年寄りの面会が禁止になりました。これだけ、感染爆発がひどいとやむを得ないといえばやむを得ない。しかし、コロナ災害がはじまって2年。筆者は多くのお年寄り、それも、身の回りのことが自分で一定程度できていたようなお年寄りほど、急激に衰えていくケースが多いのを目撃しています。

さらに、広島市内の老人ホームでは、所内でのレクリエーションも中止となりました。これは、面会禁止とあわせて、ダブルパンチになります。

もちろん、ひとたびクラスターが発生すれば大変なことになるのは事実です。いっぽうで、ご家族とお年寄りの両者がワクチン接種済みなら、対策をとりつつ、面会はあったほうがいいのではないか?という感覚もわたしは持ちます。オンラインでいいじゃないか?というご意見もあるでしょうが、やはり物理的に近くで、というのも大事ではないかとも思うのです。いずれにせよ、ピークアウトが早くきてほしいとねがうものです。

また、これだけ、感染が拡大すると、普通の風邪や頭痛でもコロナ疑い、また、家族の関係で濃厚接触者扱いとなって、出勤できないような職員も、介護現場でも、また、いつもお年寄りがお世話になっている医療機関でも増えています。現場は非常に重苦しい雰囲気に覆われています。

◆地域の交通にも打撃、迫られる交通政策の議論

感染拡大は県内の交通にも影響が及んでいます。

人口20万の呉市でも連日のように、感染者が100人を超えており、人口比では広島市を上回る場合もある爆発ぶりです。広島市に通勤する人も多いですし、逆に呉市役所や呉市内の工場に広島市から通う人も多くおられることも影響しているとみられます。

呉市では昔は市の交通局がバスを運行していました。しかし、いまでは、交通局がなくなり、市内の交通は基本的には民間にまかされています。しかし、民間会社は利益にならなければ運行はしません。呉市に吸収合併された旧音戸町も例外ではありません。そうしたなかで、結局、市の交通政策課が地元のタクシー会社に委託して一日14便(往復あわせて)を運行してもらっています。

◎音戸さざなみ線
https://www.city.kure.lg.jp/soshiki/28/seikatubus-ondosaihenngo.html

小中学生の通学やお年寄りの買い物・通院には欠かせません。では、運転手の感染に伴い、乗合バスが減便になりました。

このたび、運転手3人が感染し、一日6便に減便。急きょ、ジャンボタクシーを調達するなど、対応していますが、子どもやお年寄りの生活に影響が出ています。

コロナのあとも、地域の交通をどう維持するか?ということも重大な課題です。ステイホームですでに、打撃を受けている交通事業者も多い。しかし、他方で、池袋暴走事故を契機に国や自治体も免許返納を高齢者に奨励している。いまや、身体そのものは元気で、仕事自体はできても、運転に関する身体の機能には自信がない、という年配労働者も地方にはとくにたくさんおられる時代です。年金が足りないから各種派遣社員で働くという人も多い。そういう時代に、どのように移動手段を確保するか?県内でも議論が急がれます。

◆他地域から個人の炊き出しボランティア現れる

広島市内でも、コロナ災害による減収で困っている方がおおくおられます。住民税非課税の方への給付金も、ようやく、1月末あたりに書類がくるかどうか。給付までは時間がかかります。こうした中、1月22日、他地域から個人のボランティアで広島市内の公園で炊き出しをされた方がいらっしゃいます。食事の提供を受けたという男性は「30人くらいが、列に並んでいた。カレーライスはおいしかった」と報告してくださいました。今後もこの方は月一回程度の炊き出しを予定されています。

◆改めて、改憲よりもコロナの災害指定・そして日米地位協定の見直しを!

「コロナ対策のためにも緊急事態条項改憲だ!」

こうした方向で自民、維新はもちろん、参院選までには立ち上がることが確実な小池・玉木新党「国民ファースト」あたりまで暴走しかねない情勢です。

しかし、いますべきことは、まずは、コロナは災害指定をおこない、困っている人を大震災や大水害の被災者同様に行政が衣食住を支援するべきです。憲法を変えるのではなく、25条はじめ、いかすことが大事です。また、日米地位協定の見直しを今回の米軍震源の感染爆発を教訓に本腰をいれて進めるべきです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆人口比で東京に先行する広島

アメリカ軍海兵隊岩国基地に隣接した広島県では1月8日にご報告したとおり、オミクロン株主体の新型コロナ感染爆発が続いています。1月8日に新規感染者が100を超えると8日からは5日連続で500を超えるありさまです。9日からは広島都市圏中心にまん延等防止措置が発令されました。さらにここへきて、広島市など都市部だけでなく、安芸高田市など県北部山岳地帯でも感染が広がっています。広島県の人口は東京の約5分の1です。人口比で東京に先行する状況が続いています。

ときおり雪も降る厳寒の中、感染爆発続く広島市内の様子(1月12日筆者撮影)

まずは、広島県内(県内)、岩国市内(岩国)、米軍岩国基地(基地)の感染者数を振り返ってみましょう。

     県内-岩国-基地
12/01~20 00-00-00
12/21   00ー00-01
12/22   02-00-01
12/23   03-01-00
12/24   01-00-00
12/25   05-01-00
12/26   01-01-00
12/27   01-01-08
12/28   01-01-05
12/29   03-07-80
12/30   06-07-27
12/31   23-08-23
01/01   21-14-00
01/02   57-13-00
01/03   40-44-50(岩国基地は3日分をまとめて発表)
01/04   109-62-47
01/05   138-70-182
01/06   273-81-115
01/07   429-61-91
01/08   547-77-71
01/09   619-80-05
01/10   672-45-12
01/11   588-71-71
01/12   652-79-34

岩国基地では依然として、高い水準の感染状況です。アメリカの本土が毎日120万人感染、人口10万あたり1週間ですと2500人強。しかし、岩国基地はなんと4000人近く。岩国市が350人強、広島県は130人強という水準です。

◆広島市民のくらしにも激震

こうした中、激震が広島市民の生活にも走っています。まずは、冬の広島といえばひろしま男子駅伝。昨年2021年に続いて中止となりました。箱根駅伝は、沿道の応援は自粛を前提に開催されましたが、ひろしま駅伝は残念ながら中止です。

さらに原爆資料館は13日から、臨時休館となりました。

そして、まん延等防止措置により、飲食店での酒類の提供の中止が要請されています。多くの飲食店がこれにより、休業となっています。

広島市内の70代の男性飲食店主はカラオケ喫茶を経営。新年は5日から営業でしたが、その矢先の休業です。そのお店は昼間でも営業はしています。しかし、「酒類を提供できないとうちの店は利幅が確保できない。店を開いていても体力を消耗するばかりなので、休業することにした。」と話します。

別の喫茶店の女性店主は「うちは営業を続けるが、がくんとお年寄りの客足が落ちていて儲けにはならない。」とおっしゃいます。

酒屋の60代男性店主は、まん延防止措置について「仕方がない」と気を落とされています。そのかわり、以前は閉じていた日曜日にも開店して個人の宅飲み客にもアクセスしようとされていました。それぞれに、必死に「最適解」を必死で探っておられます。

◆面会は続くもレクレーション中止でお年寄りの衰えも心配

介護福祉士である筆者は、広島市内と安芸郡の介護施設で仕事をしています。広島市内の施設では、2020年の第1波、2021年の第4、第5波で出された緊急事態宣言の際には面会中止が行われました。今回、感染者数は緊急事態宣言の際よりも多いのですが、面会は中止となっていません。いっぽうで、多くのお年寄りが楽しみにしているレクレーションは中止となったのは残念です。

以前と比べれば、お年寄りも、ご家族もワクチンの接種は進んでいます。そのことを勘案すれば、気をつけつつ面会は継続というのはよいと思います。

筆者は、この2年間で、とくに元気だったお年寄りが異常なおとろえかたをするのを拝見して、心を痛めてきました。中には、信じられない衰えかたで亡くなられた方もおられます。やはり、面会中止、そしてレクレーション中止のダブルパンチは大きいのです。人間は刺激がないと衰える。これをまざまざと感じました。

レクレーションについていえば、もうひとつの筆者が勤務する施設では、継続しています。そもそも、こちらの施設では、いまでもお年寄りがホールに出てきてみんなでトランプを楽しむなどしておられます。これはよいことです。

感染対策に留意しつつも、刺激を維持する。そのために、ケースバイケースで知恵を絞る。このことの大切さは強調したいのです。

◆広島県は厳しめの対策

ちなみに、広島県は東京や大阪、あるいは沖縄県などと比べても厳しめの対策はとっているように見受けられます。認証店もふくめて、酒類提供中止というのは、沖縄と比べても厳しいものはあります。

「まん延防止等重点措置」指定に伴う沖縄県対処方針について(沖縄県)

新型コロナウイルス感染症に関する情報(広島県)

検査も手軽に広島駅北口(デッキの上)などで受けられます。

知事の湯崎英彦さんは、前知事同様に、新自由主義を進めて来られた方です。ただ、西日本大水害2018,そして今回のコロナ災害では従来からの路線からは、強いられたものとはいえ、軌道修正している面も見受けられます。この点は引き続き見守っていきますが、言うべきことについては、県民としてガツンと申し上げていきたいものです。緊急時だからこそ、萎縮せずに、きちんと声をあげていくことが大事と考えます。

◆アメリカ軍基地内は依然として、酒類提供

しかし、今回の感染爆発の「震源地」である米軍岩国基地内が問題です。一応、10日から関係者の外出は制限されます。しかし、どこまで守られるかが問題です。過去の不祥事への対応も実効性がなかったことを考えると不安があります。実際に、岩国基地内の飲食店では酒類が提供され、基地外ではされているような感染対策はされていない、という報道がされています。しかし、日米地位協定により、日本の保健所が立ち入り検査して事実を確かめることもできない状況です。これは米軍が悪いというより、そういう地位協定をこれまでだまって維持してきた日本政府の責任は重いということではないでしょうか?

日本政府はきちんと日本の全住民に大水害、大震災などとおなじような支援を行うべきです。それとともに、日米地位協定を破棄するくらいの気迫で、緊急にアメリカ軍に対して日本人並に対策に協力するよう迫るべきではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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新年1月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年2月号!

広島県内でも役所や企業が仕事始めだった2022年1月4日、広島県内の新型コロナウイルスの新規感染者数が109人と聞いて、筆者は腰を抜かしました。たった1週間前の2021年12月28日、すなわち役所の仕事納めだった日に1人だった感染者数が、指数関数的に爆発しています。こうした中、1月10日の成人式を広島市や大竹市は延期するなどの対応に追われています。広島県は宿泊療養施設の受け入れを開始しました。

今回の感染爆発の主役はオミクロン株とみられます。南アフリカなどでは死亡率や重症化率は従来型より低いというデータもありますが、反面で感染力が強いために、患者が桁違いに増えて、重症や死亡の「絶対数」は多くなる危険もあります。

◆隣接する岩国市との関連が多い広島県内感染例

そして、広島県の分析では、西隣で、広島市から直線距離でわずか30kmあまりの山口県岩国市との往来が関係する感染例が多いとのことです。

岩国市は広島県に隣接します。広島カープの2軍の本拠地も岩国市の由宇というところにあります。岩国からわたしの事務所がある広島市の安佐南区に通勤してこられる方も多くおられます。大昔、わたしが、岩国の酒場で県外だからと油断して大酒をのんで遊んでいたら、突然、となりの席の方に声をかけられ、「古市橋駅前でよく演説している人でしょう」と声をかけられ、驚愕して酔いが覚める、という不覚を取ったことがあります。また、それなりの有名な雑誌などでも「広島県岩国市」と誤記していたりすることがみられました。

◆拡張強化された岩国基地で先行して感染爆発

そして、その岩国市では一般市民に先行して、米軍岩国基地で感染爆発が起きています。米軍岩国基地は、現在は、軍人、軍属、家族をあわせて10000人以上の方がおられます。昔は、3000人規模だったのが、2013年度ころに空中給油機、さらには2014年度ころに厚木基地の艦載機が移駐して10000人にふくれあがりました。その岩国基地では2022年1月5日にはなんと182人もの新規感染者が出ています。

広島県内(県内)、岩国市内(岩国)、米軍岩国基地(基地)の新規感染者数は以下のように推移しています。

     県内-岩国-基地
12/01~20 0-0-0
12/21   0ー0-1
12/22   2-0-1
12/23   3-1-0
12/24   1-0-0
12/25   5-1-0
12/26   1-1-0
12/27   1-1-8
12/28   1-1-5
12/29   3-7-80
12/30   6-7-27
12/31   23-8-23
01/01   21-14-0
01/02   57-13-0
01/03   40-44-50(岩国基地は3日分をまとめて発表)
01/04   109-62-47
01/05   138-70-182

広島県の人口は280万弱(2021年に280万を割り込んだ)、岩国市が14万人弱、米軍岩国基地が上述のとおり1万人強です。

12月27日に岩国基地で8人の感染を確認すると、2日後には、80人に急増。岩国の一般市民でも1→7人に増えます。31日には、広島県内でも23人感染となりますが、これは県東部の尾道市でのクラスターによるものです。岩国とは関係がない可能性が高いでしょう。しかし、2022年元日。広島県で21人を記録。そして、わずか3日後の4日に109人、5日には138人を記録します。

◆人口あたり感染数、今の岩国基地は2週間後の広島か?

5日時点では、1週間の人口10万人あたりの新規感染者は岩国基地が3000人くらい、岩国市が150人くらい、広島県が14人くらいです。12月30日では、岩国基地が1200人くらい、岩国市が13人くらい、広島県内が6~7人くらい。12月28日では、岩国基地が150人くらい、岩国市が4人くらい。広島県内でも5人くらい。

岩国基地についていえば、毎日100万人が感染しているアメリカ本土と同等であるのはうなずけます。米軍兵士らは、パスポートもなしに、自由に日米を往来できるのです。

その岩国基地に遅れること8日で岩国市が基地と同程度の人口あたり感染数になる。さらにおくれること6日くらいで広島県内が岩国市と同程度になる。こういう関係が読み取れます。いまの岩国基地は2週間後の広島県という予測はできます。

◆変えるなら憲法よりも日米地位協定を変えるべき

広島県知事はすでに、岩国基地に対して、対策の強化を求めています。米軍基地を震源とする感染爆発はすでに沖縄県で起きています。沖縄県知事も米軍に対して激怒し、政府にはまんえん防止措置を求めていますが当然です。

コロナ対策に関連して、自民党など右派勢力からは、緊急事態条項創設を求める声が強まっています。しかし、まずは、米軍基地をなんとかするのが先ではないでしょうか?

米軍兵士らは、パスポートもなしに自由に日米を往復できています。これまでと桁違いの感染状況にある岩国基地からも事実上、自由に出入りできてしまいます。日本人は困窮者急増にみられるように、生活を犠牲にしてまで協力をしている。しかし、米軍にぶっ壊されてはたまったものではありません。

2008年岩国市長選挙の様子。この時、井原勝介前市長が打倒されたことが、14年後にコロナ災害の拡大につながろうとはおもいもよらなかった

日本政府は、コロナを災害指定し、全住民に、大水害や大震災の被災者と同様の生活再建支援をすればいいのです。緊急事態条項などいりません。日本全国を激甚災害に指定すれば、自治体が仕事をしやすいように、国が思い切った補助ができます。

それとともに、日米地位協定を変えるべきです。日本の国内にいる以上、米軍兵士の皆様にも、日本人同様にご協力をいただかなければなりません。今後も、コロナに限らず感染症が世界的な流行をみることは十分に想定できます。

岩国基地の地元の岩国市民は、2006年、いったんは艦載機の移駐を拒否する住民投票結果を出しました。しかし、自民党政府が財政面での執拗な締め上げを行ったのです。それに市議会多数派が屈して、当時の井原勝介市長の市政運営の脚をひっぱりました。

2008年の出直し市長選挙で議会多数派は、自民党代議士だった福田現市長をかついで井原市長を打倒。福田現市長が、交付金と引き換えに米軍基地強化を受け入れた経緯があります。基地の規模は人員ベースで3倍以上になりました。

それ以降、筆者が住む広島市内でも米軍機が我が物顔で飛ぶようになり、爆音が増えるなど被害が増えていました。その矢先の米軍によるコロナ災害拡大です。岩国市民も広島県民もこれ以上、米軍になめられてはいけん。日米地位協定改定を今回のことも教訓に強く求めていきましょう。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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1月7日発売! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年2月号!

東京オリンピックが招致された数年前から、反対運動は活発だった。本通信も開催反対の論陣を張ってきたが、オリンピックにかかる利権の深さを知るにつれて、何があっても開催が強行されることを確かめないわけにはいかなかった。

やむなく開催時には思いきって開き直り、酷暑のなか現地報告をしたものだ。

そこでは、あまり報じられなかった自衛隊の警備出動が、かなり過剰なものだったと判明した。追いかけ記事で、自衛隊の警備出動を報道したのは、「紙の爆弾」と「週刊金曜日」だけではなかったか。それはともかく、暑かった夏のメモリーを再読していただければと思う。

[関連記事]
《現地報告》猛暑の中で始まった呪われた東京オリンピック・パラリンピック[前編]スポーツを賛美しつつ、戒厳令的交通規制を見学してきた 2021年7月26日

《現地報告》猛暑の中で始まった呪われた東京オリンピック・パラリンピック[後編]警備費用こそが大会開催費の大部分ではないか 2021年7月27日
 
大きな成果もあった。ぼったくり男爵こと、バッハIOC会長のえげつない態度が、今回のオリンピックを通じて全世界に伝えられたことだ。これはオリンピックの将来に向けて、ひとつの指標になったのではないか。「平和の祭典」は利権と政商のスポーツショーである、と。


◎[参考動画]IOCバッハ会長「ガンバリマショウ」 五輪組織委を表敬訪問(2021年7月13日)


◎[参考動画]バッハ会長歓迎会に波紋 与党幹部「世論がおかしい」(2021年7月19日)

来年の北京オリンピックにむけて、ふたたびバッハ会長の振る舞いが問題視されている。何があっても、オリンピック開催という利権は失いたくない。もはや政商そのものというべきであろう。

すなわち、中国の女子テニスのトッププレーヤー・彭帥(ポン・シュアイ)選手の告白とされる文章がネット上に公開され、そのニュースが連日高い関心を集めている一件だ。

その内容は、「中国の前副首相から性的関係を強要された」というもので、選手の安否や北京オリンピック開催の是非、外交ボイコットをめぐる問題にも発展している。中国共産党の権力闘争と考えられる面もあるが、女性の「MeToo」であることに変わりはない。

激しい批判を前に、バッハ会長が中国当局を擁護するパフォーマンス(彭帥選手とのPC会談)を行なって、批判をかわそうとしたのである。

WTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモンCEOは、適切な調査が行われなければ、中国での大会の開催などを見送ることも辞さないという考えを示し、躊躇わずにそれを断行した。

もともとWTAは、大会賞金の男女格差是正を契機に立ち上げられた団体であり、女子選手の立場を護るのに積極的である。北京大会への影響(女子テニスが行なわれない)が注目されるところだ。

もしもこのまま紛糾して、女子テニスが大会からはずれるようなことがあれば、バッハはとんだピエロということになる。

さて、オリンピックが利権であり批判に値するとはいえ、スポーツそのものを否定するような批判の論調は少々危うい。身体を動かすことが健康を保つのは、狩猟・採取時代から濃厚時代に至っても、それが人類の本源的な行為であるからだ。

自動車が戦車や戦闘機の代替え行為である、という大戦後の消費スタイルとともに、スポーツも戦闘行為の代償として存在してきた。読売球団が「巨人軍」などという戦闘集団の名称を頂くのも、スポーツを戦闘と見做しているからにほかならないのだ。


◎[参考動画]「彭帥さん本人」IOCバッハ会長 別人の可能性否定(2021年12月10日)


◎[参考動画]CNN speaks to WTA chief on decision to pull tournaments from China(CNN 2021年12月2日)

◆国家的育成スポーツが、国民を疎外する

そこで、スポーツの祭典を否定するのではなく、将来の在り方を検討していかなければならない。そこで考えられるのは、近代オリンピックが、そもそも個人およびチーム単位での参加から始まった事実なのである。なるほど国家単位でしか資金は得られなかったし、国別対抗競技であるからこそ、オリンピックは戦争に代わる「戦闘行為」たりえている。

そして、国の代表になるためにはある意味で特別な資格、すなわち強化選手になる必要があるのだ。その強化選手になってこそ、育成が遅れていた日本でも味の素オリンピック強化センターなどの施設に入れるし、スポーツに専念できる育成費も支給される。海外派遣費も支給されるので、自前で海外に行く必要がなくなる。

問題なのは、このスポーツのエリート化である。かつて、ソ連および東欧諸国で行なわれていた、サイボーグ的な国家レベルでの強化策ばかりになってしまうと、国民はスポーツを観る人たち、選手は国家的プロジェクトで育成されたエリートということになる。エリートがいてはダメだ、と言うのではない。観る者と演じる者の断絶、スポーツの底辺が形成されない、国民のスポーツからの乖離がそこに発生するのである。


◎[参考動画]Tokyo 2020’ye hazır(Al Jazeera Turk 2016年8月22日)

[関連記事]
床屋政談的オリンピック改革論 ── 国単位ではなく、チーム・個人参加がよいのではないか? 2021年8月10日

それにしても振り返ってみれば、おびただしいオリンピック利権の数々である。利権に付きものの犠牲者(自殺者)も出ている。政商竹中平蔵、スポーツ界に君臨してきたドン・森喜朗、そして国民をコロナ禍に危機にさらした菅義偉。
オリンピックへの幻想が明白となった、2021年であった。

[関連記事]
嘉納治五郎財団の闇 犠牲者があばく収賄劇 ── 追い詰められた菅義偉の東京オリンピック 2021年6月15日 
東京五輪強行開催で引き起こされる事態 ── 国民の生命危機への責任が菅政権を襲う 2021年7月14日 
やはり竹中平蔵は『政商』である──東京五輪に寄生するパソナのトンデモ中抜き 2021年6月5日 
森喜朗=東京オリ・パラ大会組織委員会会長の辞任劇 何が問われていたのか 2021年2月13日 


◎[参考動画]滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会(ANNnewsCH 2013年9月8日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年1月号!

〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

パンデミックが始まっていらい、彼女の刻苦奮闘は国民の中にある種の感動を呼んでいた。毎日欠かさず、新たなキャッチ(標語)を考案しつつ、ていねいに都民へのお願いをする。

暗い表情の宰相がつっけんどんに、いかにも素っ気ない「安全、安心」をくり返すのとは好対照であった。

だがそのいっぽうでは、その政治的な野心が、やや強権的な処断によって警戒され、批判も浴びてきた。


◎[参考動画]東京 過去最多5773人感染発表、小池知事「私たちの意思で・・・」(TBS 2021年8月13日放送)

◆都の女帝が仕掛けたこと

思い起こしてみれば、彼女が都知事に転じようとしたとき、自民党のボスたちはまことに古い手法でそれを妨害したのだった。そのいかにも陰険な方法(応援した者を処分する)が、思想信条をこえて女性政治家の健気さにシンパシーを集めた。2016年の小池百合子都知事誕生とは、まさに政治が劇場と化すのをまざまざと見せつけたのである。


◎[参考動画]小池百合子氏が当選 初の女性都知事に」(ANN 2016年7月31日放送)

2017年の「希望の党」の頓挫もまた、劇場的な転落として印象に深い。彼女自身の「排除の論理」で、政権交代の千載一遇の機会は失われたのだった。浮動票のいかに敏感なことか。同情すべき女から、イッキに嫌な女に転落したのだ。彼女に同伴した「民進党のプリンス」は、いまや自民党の同伴者となり果てた。

だがしかし、2020年の都知事選挙に、史上2番目の得票数となる366万1371票で再選。希望の党の崩壊にもかかわらず、自身は国政政権と対等な政治的ポジションを維持したのだった。


◎[参考動画]東京都知事選 小池百合子氏再選 投票率は前回下回る(FNN 2020年7月6日)

はたして、第3の劇場が幕をあけるとは、誰も予想しえなかっただろう。わずかに、都議会選挙直前の「入院」がどう作用するのか。おそらく選挙の帰趨は、その一点だった。くり返すが、どのメディアも都民ファーストの大敗を予想していた。

※[関連記事]「小池都知事「入院」の真相と7月4日都議会選挙・混沌の行方」(2021年6月28日) 

◆悲運のヒロインにはならなかった

しかし、結果は戦前の予想をくつがえす、都民ファーストの善戦だった。自民党は2016年の大敗を回復できずに、小池都政は安泰となったのである。それもほんの「一日」のことだった。彼女は最後の一日に出てきたのだ。病院から――。

わずか一日、10カ所あまりの選挙現場を支援しただけで、大敗をまぬがれたばかりか、神がかり的な選挙での強さを再現してみせたのだ。おそるべし、小池百合子、である。

おそらく彼女の「健在」を確かめたのは、12カ所の応援で数百人にも満たなかったであろう。しかしメディアでそれを知ったのは、数百万におよぶであろう。メディア選挙を十分に意識した「入院」→「退院」「選挙応援」→「浮動票の獲得」だったのだ。

2017年の快挙いらい、あまりにも良すぎる政治的なタイミングの見計らい。自民党およびメディアは驚嘆した。都民と国民は、留飲を下げたのではないか。


◎[参考動画]東京都議選 僅差で自民党が第1党に(ANN 2021年7月5日放送)

※[関連記事]「《速報》2021年都議会選挙 都民ファーストの善戦、自民党の復活は不十分に」(2021年7月5日)

※[関連記事]「この秋、政権交代は起きるのか? ── 『紙の爆弾』最新号を参考に、都議選後の政局を俯瞰する」(2021年7月8日) 

かくして、菅政権は風前のともし火となった。

コロナ禍のもとのオリンピック開催という、およそ常軌を逸した既定方針の踏襲。ただひとつオリンピックだけが、他のイベントに優先されるという政治的な決断は、国民に「オリンピック不信」を植え付けた。

IOC会長トーマス・バッハ(Baron Von Ripper-off=ぼったくり男爵)への嫌悪感とともに、国民は菅政権への忌避を隠さなかった。そこで浮上してきたのが、福田康夫政権時いらいの、ひそかな「大連立構想」だった。政権を失いたくない自民党にとって、それは緊急避難にちかい選択肢であっただろう。

※[関連記事]「五輪強行開催後に始まる「ポスト菅」政局 ── 二階俊博が仕掛ける大連立政権」(2021年7月21日) 

さらに菅義偉の自身の地元である、横浜での市長選挙の敗北。これで命脈は尽きていた。もうボロボロである。二階が仕掛けようとした保守大連立は、小池の国政復帰を見越してのことだった。

※[関連記事]「【速報】横浜市長選挙 野党候補が勝つ! 菅総理の命脈が尽きた日」(2021年8月23日)

※[関連記事]「岸田内閣の二階派排除と衆院選の波乱 小池新党は第三極になれるか」(2021年10月6日)

だが政局がいったん無風となった夏季に、小池百合子および都民ファーストは何も準備できなかった。地域政党「都民ファーストの会」の荒木千陽代表が10月3日に都内で会見し、国政新党「ファーストの会」を設立すると発表したものの、ついに彼女らの出馬はなかった。

◆とん挫した政治構想

総選挙後のこと、「やっぱり、我々も候補者を立てていれば……」都民ファーストの会の関係者は悔しげな表情でそう漏らしたという。いうまでもなく、衆院選で日本維新の会が議席を4倍近くに増やした勢いを、肌で感じたからにほかならない。それどころか、都民ファーストは身動きをとれないほどの問題を抱え込んでいた。木下富美子都議(当時)の問題である。

木下元都議は7月の都議選中に無免許運転で当て逃げ事故を起こし、書類送検されていた。2度にわたる都議会の辞職勧告からも、逃げ続けるという醜態を晒している。9日に都議会に現れ説明を求められたが、事実上のゼロ回答だった。この問題児の「生みの親」こそ、ほかならぬ小池知事だったのだ。

「小池さんの環境相時代、木下さんは広告代理店社員として小池さん肝いりの『クールビズ』のキャンペーンを手掛けました。いらい関係性を深め、2017年の都議選で都ファ候補に抜擢。小池知事の『お気に入り』だからこそ都議になれたのです」(広告業界関係者)。
好事魔多しという言葉を、これほど体現する政治家も少ないであろう。政治的な絶頂期に、わずかな言葉づかいで党は失墜し、身内の不祥事で政治構想がとん挫したのである。(つづく)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

12月11日発売開始!『NO NUKES voice』vol.30(紙の爆弾 2022年1月号増刊)

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