3・11東日本大震災-福島原発事故から15年の日に『季節』を発行するにあたって──

鹿砦社代表 松岡利康

日本で唯一の脱(反)原発雑誌『季節』2026春号が出来上がってまいりました。今号も多くの皆様方のご寄稿、ご協力を賜りました。心より感謝申し上げます。

すでに取次会社に搬入し、東日本大震災―福島原発事故から15年の日3月11日に書店の店頭に並びます。定期購読の方々には3月6日に発送も済みました。チェルノブイリ以外に世界にも類例のない原発事故、そして被災された皆様方がいろいろな想いを持って過ごされた15年、お一人おひとりに、それぞれ感慨深いものがおありのことと察します。被災してはいない私たちにも、福島への想いがあり、バカはバカなりに15年間、福島の復興や原発問題を見つめて来たつもりです。

2011年3・11からしばらくの間、国会や官邸前を取り囲んだ脱(反)原発の叫びは、どこに行ったのでしょうか? おそらくこの3月11日にはメディアもこぞって、この特集を放映、報道するでしょう。アリバイ的に──。

私たちは、そうありたくないということから、小さな雑誌ですが、定期的に発行することで、「福島を忘れるな!」の声を外に向かって叫び、また内に向かっても自分に言い聞かせるつもりで、この雑誌を創刊し持続してきました。最初は威勢よく(創刊号は2万部!)、今は青色吐息(4千部)で続けています。被災された方に接したりお声を聴くと、到底やめるわけにはいかないのです。

昨年、当社から著書を2冊上梓された精神科医・野田正彰先生は直接福島に足を運ばれ、本誌に時々そのレポートを掲載させていただきましたが(その多くが『流行精神病の時代』に収録されています)、あらためてそのレポートを読むと胸が痛みます。このところ本誌休刊の危機に直面していますが、被災された皆様方、無念の死を選ばれた皆様方のお気持ち、想いを顧みると、本誌は何としても継続して発行していかねば、と願っています。

かつての名優・志村喬の代表作に『生きる』という作品があります。監督は巨匠・黒澤明です。30年間勤め上げつつも、さほどの実績がない事なかれ主義の役人が、末期がんを告知され亡くなる直前に子どもたちのために公園にブランコを作ったという作品です。後期高齢者直前の私は、長年かなりの数の本を作ってきましたが、早晩憤死するでしょう。ベストセラーがあるわけでもなく、こうした編集者はざらにいます。『季節』は、この国唯一の脱(反)雑誌です。いささか情況や解釈が違うかもしれませんが、私の『季節』は、“志村喬のブランコ”のようなものです。一つぐらいはのちのちに残したいと願っています。

ちなみに、志村喬は、戦争で多くの仲間が亡くなり、それでも生き延びた贖罪からみずからの映画のギャラをほとんど戦争の被災者、その家族らにこっそりと送り続け、みずからや家族は清貧な暮らしをして来た話は、今や有名で、『生きる』という作品は志村の人生を象徴する秀逸な黒澤作品といえるでしょう。

本誌は今、苦境に喘いでいます。創刊以来黒字になったことがなく、万年赤字です。コロナ前は、他のジャンルの書籍が好調で、これで赤字をカバーしていましたが、コロナ以降は、こちらも売行き急減で、そうもいかなくなりました。

皆様にも、たとえ1冊でも拡販いただければ助かります。さらには定期購読もお願いいたします。定期購読こそが発行継続のベースとなります。

ともかく、多くの方々のご協力で本誌は継続の方向でおりますので、これを大前提として、もっと拡販に努めて行きたいと考えています。何卒ご協力をお願い申し上げます。

本格的な春の訪れが近づいていますが、この15年、復興は道半ばどころか、棄民政策といえる愚策、原発事故に対する無反省、なし崩し的忘却にあり、さらには原発回帰……。

『季節』は小さな雑誌ですが、まだまだ使命があると確信しています。今後共、『季節』存続のために皆様のお力をお貸しください。大きなバックがなく、ギャンブル関係財団からの資金援助(これに喜々として飛びつく「人権団体」の感覚を疑います)もない私たちにとっては読者の皆様方が最大のスポンサーです。わが国唯一の脱(反)原発雑誌『季節』の存在意義をご理解いただき、ご購読のほど、よろしくお願い申し上げます。

3・11の彼方から―『季節』セレクション集 Vol.1