世襲高級官僚〈自民〉と原発推進〈大手労組〉の「2議席独占」に風穴をあけたい! れいわ新選組の候補者公募に参院選2022広島で応募します! さとうしゅういち

2021年12月6日、れいわ新選組代表の山本太郎代表は、参院選2022や次期衆院選、そして統一地方選挙2023の候補者公募を開始しました。期限は12月27日までです。

【候補者公募!】れいわ新選組 次期衆議院及び参議院、自治体議員選挙
https://reiwa-shinsengumi.com/start2021koubo/

筆者も、参院選2022広島(改選数2)で応募することとしました。広島選挙区については、まだ、れいわ新選組として、候補者を出すとも出さないともはっきりは決めていません。しかし、筆者としては、2021年4月25日執行の再選挙に立候補し、20848票、6人中3位の得票をいただいたこの選挙区で捲土重来を期す覚悟です。


◎[参考動画]れいわ新選組候補者公募に参院選広島で応募します2

衆院選立候補予定者の竹村かつしさん(左)と対談する筆者

筆者再選挙後、れいわ新選組の政策・政治姿勢を支持し、地元の広島のれいわ勝手連のみなさまと活動をともにさせていただきました。衆院選2021でもれいわのマイクを握り、自身の支持者のみなさまにもれいわへの投票をよびかけました。なんらかの選挙で公認をいただくなられいわ新選組以外に考えられません。

◆被爆地・広島の世襲高級官僚と原発推進大手企業労組による議席独占を崩せ

筆者は、「世襲高級官僚と原発推進大手企業労組による議席独占」を崩し、「ガツンと「あなた」の暮らしを立て直す政治」、そして、「平和憲法をいかし、核兵器も原発もなくす政治」をガツンと、この広島から打ち出していく覚悟です。

「広島は被爆地で平和都市だから、脱原発派や(自民・維新的な)改憲への反対派の国会議員もそれなりにいるに違いない。」と思い込んでおられる県外の皆様も多いですが、事実はまったく違います。

広島県内、それも広島市ほど、超保守王国なのです。まだ、東部(旧備後国)の山間部をふくむ広島6区には、佐藤こうじ衆院議員がおられ、立憲でも保守系ながら、脱原発寄り、護憲寄りでいらっしゃいます。しかし、安芸郡も含めたいわゆる広島都市圏(旧安芸国)には、「脱原発派」「(自民・維新的な)改憲への反対派」双方を満たすような国会議員は存在しません。

参院議員は毎回、自民党さんと原発推進企業の影響が強い連合広島さんが担ぐ方で、議席を分け合ってきました。

今回、改選対象になるのは、自民党公認が故宮沢喜一総理のおいで父も県知事や参院議員をつとめた宮沢洋一さんで、連合広島系が、原発や武器をつくる大手企業労組幹部の柳田稔さんです。ただし、柳田稔さんは引退の意向ですが、過去の経緯から、原発推進労組かそれに近い方しか後継になれないとみられます。

他方で、日本共産党さんも公認候補は出されますが、どちらかといえば、比例区での仁比聡平さん(元議員)の国会復帰を重視した活動をされるとみられます。

◆過去の成功体験から卒業できぬ自民党と原発推進労組

自民党さんはもちろん、原発を全国各地につくってきました。さらに、とくにこの四半世紀は、新自由主義を進め、貧困を広げ、広島もふくむ地方を衰退させています。

一方で、連合広島さんのカラーが濃い立憲民主党さんの参院議員はどうしても、中央の市民連合と立憲民主党さんも合意している原発なき脱炭素に後ろ向きです。また、正直、連合さんは、まだまだ大手企業正社員男性中心です。筆者が従事する介護や保育などの労働者、あるいは公務員でも女性が多い非正規労働者の抜本的な待遇改善には正直、冷たいのです。そのことをずっと筆者は自身が連合系自治労広島県職員労組の支部の役員をさせていただいた県庁マン時代から疑問に思っていました。また、わたしと連合さんとの対立の背景にもなっています。

自民党さんも原発推進労組さんも、どちらも広島が原発製造も含む重工業でとくに栄えていた1975年ころの「過去の成功体験」から卒業できていない勢力であるというのがわたしの評価です。

広島でいままではばを利かせてきた大きな組織は否定しません。しかし、自民党さんにせよ、連合さんにせよ、大きな組織が汲み上げられなくなったニーズがあまりにもおおくなったのです。消費税廃止や教育費無償化などでひとりひとりの暮らしをガツンと底上げする。また、いままで女性の仕事だからとないがしろにされてきた介護や保育、あるいはDV相談員含む非正規公務員などの労働者の抜本的な待遇改善でみなさまの暮らしの安心を高める。もちろん、原発をなくし、グリーンニューディールを進める。平和憲法をいかし、海外派兵ではなく災害救助で貢献する日本へ。こうしたれいわ新選組の政策・スタンスを広島の既存政治への対抗提案としたいのです。

◆「政権選択」の衆院と、「ガツン」が存在意義の参院は違う

衆院選2021の小選挙区ではそうはいっても、立憲民主党さんも、中央では消費税減税や原発なき脱炭素に同意されていました。そのため、「3区はライアン真由美、比例はれいわ」とれいわのマイクを握って叫びました。

しかし、参院選は複数区です。そして、参院選はなにより、衆院をガツンとチェックするのが憲法上定められた機能です。その意味からも、衆院より、ガツンと物申す人がふさわしい。

また、筆者の場合はそもそも、非正規労働者の問題でも原発でもガツンと物申してしまうために、連合さんが「うん」とはいわないでしょう。そのことの自覚もあるため、基本的に小選挙区の衆院議員は目指しません。改選数が複数の参院選広島でガツンと物申す。これがわたしの当面(向こう数年)のスタンスです。


◎[参考動画]さとうしゅういちIN古市橋 コロナ対応は改憲ではなく災害指定で ただちに一律給付を 消費税は廃止 介護保育給料10万アップ れいわ新選組 伊方原発再稼働にNO 原発なき脱炭素

◆河井批判よりも制度改正の前向きな議論を

案里さん・克行受刑者の罪はもちろん誠に重大です。お金をもらった方もただちに腹を切っていただきたい。しかし、地方議員を買収することはほかの自民党国会議員の多くも「政治献金」という形でやっていたことです。今後は河井夫妻個人への批判よりも、国会議員による地方議員への金配り禁止などをきちんと立法化すべきです。

再選挙で当選された立憲民主党系の方は残念ながら、国会議員による地方議員への金配り明文禁止については「どちらとも言えない」というスタンスをマスコミのアンケートに答えておられました。河井批判を利用して支持を得られながら、この対応はあり得ない、と感じました。

正直、衆院選2021や安佐南区県議補選で野党が惨敗したように、河井批判自体が、賞味期限切れです。前向きな制度改正の議論をしていくほうがよいと思います。

◆参院選2019で河井案里さんを支持した皆様にも呼びかけたい

参院選2019で河井案里さんを支持された皆様にもよびかけたい。皆様の大半は案里さん・克行受刑者からお金をもらったから、案里さんを支持されたというわけではないと思います。むしろ、案里さんに、従来型の「世襲や大手企業出身や高級官僚出身の男性政治家」とは違ったものを感じられたからでしょう。

とくに女性の方にそういう傾向を強く感じます。実際に、2019年に案里さんを応援した女性が再選挙2021では筆者に投票し、周りにも筆者への投票をよびかけてくださったということも起きています。

旧来型男性政治家はあまりにも介護や保育などの分野に冷たかったのも事実。地方自治のあり方でもとくに広島は中央官僚のいいなりだったのも事実。原発への固執など産業政策も古くさいのも事実。

そういう広島の与野党の旧来型男性政治家へのアンチテーゼとして案里さんを選ばれた方にも、積極的に筆者は協力を呼びかけます。広島の旧来型政治にかわるあたらしい政治をご一緒につくりませんか?

最後に、3分間をめどにした想定街頭演説をご紹介します。

昨年の再選挙に続いて、今回はれいわ新選組公認で参議院に挑戦します、介護福祉士・元県庁マンのさとうしゅういちです。

コロナの前から厳しく、コロナが追い打ちをかけた皆様のくらし。徹底した財政出動で、ガツンと立て直します。あなたの所得をふやし、あなたの負担を減らし、あなたの暮らしに安心・安定を。

さとうしゅういちとれいわ新選組は消費税を廃止します。消費税を増税して社会保障を充実させると言ってきた自公政権。実際にはお年寄りの負担もふえるばかりです。消費税廃止で中小企業にも賃上げの余裕を!そして全国一律の最低賃金1500円も実現しましょう。

さとうしゅういちは、介護・保育で働いている人のお給料を10万円upします。現場で働く人を大事にしてこそ、みなさまの子育てや老後の安心があるのです。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、学費はただ、奨学金はチャラにします。若い人が借金の重荷なしで人生をスタートできるよう応援します。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、医療や保育や介護、防災はじめ、学校の先生など現場の公務員を増やします。非正規公務員の皆様の正規化を進めます。広島県は全国2番目に市町村を減らし、保健所も全国以上に減らしました。その結果、4年前の水害の復旧がおくれ、コロナ対応のために1年で2年分以上働かされる県庁職員もおられます。先生の不足も深刻です。広島にこそ、れいわの政策がぴったりではありませんか?

さとうしゅういちの父は原爆直前まで原爆で全焼した地域に住んでいました。引っ越しが遅れたらわたしは存在しません。核兵器禁止はわたしの原点です。核兵器禁止条約に署名するとともに、平和憲法をいかし、災害救助で国際貢献する日本を世界最初の戦争被爆地・広島から打ち出します。防災庁をつくり、気候変動で多発している国内外の災害に対応します。

さとうしゅういちとれいわ新選組は、広島から原発なき脱炭素をガツンと進めます。広島の技術をいかして、地域密着の環境にやさしいエネルギーを進めます。伊方原発ふくめ、原発はすぐやめます。原発関係の会社のみなさまもご安心ください。廃炉担当の公務員として仕事をしていただきます。

参議院の広島は大きな組織をバックとする方、すなわち自民党と大手企業の労働組合の方で2議席をずっとしめています。わたくしは、あなたと一緒に、この構造に風穴をあけ、あなたに忖度して、ガツンと国会で物申して参ります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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総理のお膝元・広島発で全国とつながり 介護労働者の抜本的な処遇改善とご利用者・ご家族の安心めざしオンラインおしゃべり会 さとうしゅういち

筆者が社主の広島瀬戸内新聞では、12月22日(水)20時~、オンラインで以下の要領でおしゃべり会「どうなる 介護現場 働く人の処遇改善、そして利用者・ご家族の安心はどこへ」を開催します。お待ちしております。

オンラインおしゃべり会
「どうなる 介護現場 働く人の処遇改善、そして利用者・ご家族の安心はどこへ」

主催 広島瀬戸内新聞
とき:2021年12月22日(水)20時~
ミーティングID: 411 718 3285
パスコード:5N6b38

本社社主のさとうしゅういち(介護福祉士・元介護保険担当県庁マン・岸田総理の選挙区の有権者)から、介護保険制度のこれまでの経過と岸田政権がおこなおうとしている処遇改善など介護保険制度について問題提起。

そのあと、参加者との質疑応答、そしてみなさまでの意見交換をしていきます。ご発言はよりおおくの方にしていただくために原則2分以内。また、チャット機能もご活用ください。

どなたでもご参加いただけます。入退室ご自由です。顔出ししたくないかたはされなくても結構です。

趣旨 介護の「社会化」があやしくなる中でご利用者・ご家族の安心をどうつくるか?

2000年に介護の「社会化」(とくに女性を中心にご家族ばかりで介護労働を背負うのをやめる)をかかげて介護保険制度ができて21年が経過しました。

しかし、現場で働く労働者の労働条件は劣悪で慢性的な人手不足となっています。給料が低いので人手が不足する。不足するから現場の人間関係も悪化する。ますます人が定着しない、の悪循環が依然、続いています。

全産業平均(役職者抜き)の平均月収が36.6万円に対して介護職員平均は27.4万円。(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai6/siryou1.pdf の7ページ)
そこへ、コロナ禍がおそいかかり現場の疲弊は頂点に達しています。

この間、「消費税増税」を社会保障の充実ために使うという安倍晋三さんらの触れ込みとは正反対に、利用者負担は増える一方です。たとえば、お金持ちとはいえない水準の利用者に2割負担、3割負担が導入されています。そして、利用控え、家族の介護負担が増え、当初から危惧された「保険あってサービスなし」になりつつあります。

さらに、家族の介護で人生を消耗してしまうという状況がいまや、いわゆる老老介護だけでなく、若者や子どもにもいわゆる「ヤングケアラー」として広がっています。

介護の社会化という当初の目標がますますあやしくなっています。こうした状況をどう改善し、働く人もなによりご利用者・ご家族も安心でできる介護をどうつくるか? 現状を勉強した上でざっくばらんに意見を交換したいと思います。

◆衆院選2021の前にも開催

広島瀬戸内新聞では、2022年10月7日に、オンラインおしゃべり会「介護と衆院選」を開催しています。介護現場のあり方はすべて法律で決まっています。介護現場の改善のためには衆院選への取り組みが大事という趣旨で開催させていただきました。わたくし・さとうしゅういちと、介護福祉士で衆院選2021山口4区において安倍晋三さんに挑んだ竹村かつしさん、そして関東地方の現役介護職員2名をパネラーに意見交換しています。給料の抜本的な改善は本当に共通の切実な思いであることを確認。

また、特養における夜勤の人員基準の改善をもとめる声が強く出ました。とくにユニット型ではプライバシーが守れると言われて進められてきたのですが、人員が少ない日本では目が行きにくくなって危険、などの現場を踏まえた意見が出ています。

また、「普通の会社員」という方からも、そもそも、こういう市場原理で介護をやるのは難しいのではないか?というご意見もいただきました。

今回は、衆院選2021終了後、最初の取り組みとなります。地元・広島選出の岸田総理が、自民党総裁選2021、そして衆院選2021で介護職員の給与アップを公約にして勝利したことを受けての開催となります。

◆岸田総理による介護労働者の給料アップ・改革案をどうみるか

ただし、総理が現時点で打ち出しているのは、2022年2月からの3%アップです。普通の状況であるなら3%アップはありがたい。しかし、介護職員の場合はベースとなる現在の給料が低いのです。

そして、そもそも、総理は経団連に対して労働者全体の3%賃上げを求めています。これでは、他の産業平均との格差は実額ではむしろ拡大してしまいます。たとえば広島で言えばマツダの社員のほうが一般的には介護職員より給料は高いから、一律に3%アップなら格差は拡大してしまいます。

もちろん、総理もおっしゃるとおり(本当は連合など労組がもっとガツンと取り組まないといけないのですが)、労働者全体の給料アップもマクロでみて必要ですが、人手不足解消の決定打にはならないのです。

一方で、介護労働者の給料アップを介護報酬の中だけで行うのは困難です。今までは「処遇改善加算」という形で介護報酬に上乗せして、給料アップを事業者に促してきました。

こうした中で、わたしがれいわ新選組の政策の「介護職員給料10万円アップ」をご紹介させていただくと、「たしかに介護の給料が低いのは問題だが、俺の介護保険料負担が上がるのは勘弁してくれ」といったご反応も少なくありません。今回の給料アップは補正予算で当面は行うものです。今後、恒久的な給料アップを実施する際は介護保険の枠ではなく、一般財源(税金でもいいが、れいわ新選組などが主張するお金を刷って調達するのでもよい)投入で行うべきと考えます。最終的にはやはり、公務員化(そもそも大昔は広島市でも訪問介護を公社でやっていた)をめざすべきではないでしょうか?

また、総理はITなどを導入しての効率化も打ち出しています。もちろん、ITの導入で現場が効率化するのはよいことです。しかし、それとセットで人員基準の緩和が目指されているのが大問題です。

実際に、介護施設で夜勤をしてみればわかります。わたしは、一人でグループホームのワンフロア9人を見ています。夜、あちこち徘徊されるお年寄り、心配事を何度も相談に来られるお年寄りもおられる中で、IT化したとしても、人員を削減する余地はどこにもない、と実感します。

これまで、根本的には女性の仕事だからと、与野党から結局は後回しにされてきた介護労働。総理が重視をせざるを得ない状況になったのは事実です。

いまこそ、現場の声を、利用者・ご家族の声をガツンと総理に伝えていかないといけない。総理のお膝元・広島から全国とつながりながらがんばっていきましょう。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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なんじゃこりゃ?! 「パパ」は子育て部外者扱いの「働く女性応援よくばりハンドブック」── 筆者の元職場・広島県庁の惨状 さとうしゅういち

◆「なんじゃこりゃ?! あの湯崎さんがトップの組織でなんでこんなことに?!」

広島県が公式Twitterで広報した「働く女性応援よくばりハンドブック」を拝見した感想です。

広島県が公式Twitterで広報した「働く女性応援よくばりハンドブック」

【働く女性応援よくばりハンドブック無料配布中!】
働く女性、働くことを考えている女性、育児中の女性、仕事と家庭の両立を希望する女性…すべての女性を応援する小冊子です♪

WEBでも読めます ⇒ https://pref.hiroshima.lg.jp/site/womanjob/ouen-handbook.html(広島県公式Twitterより)

女性が子どもを持ちながら、働くことを『よくばり』という印象を与えてしまうのではないでしょうか?

そもそも、登場人物のパパが「『私ばっかり家事と育児をしている』というけどこっちだって仕事で疲れているんだよね。夜泣きがうるさくても我慢しているし、多少は手伝っているんだから勘弁してほしいな」というのは、いつの時代の話でしょうか? そもそも子どもは二人が主体で育てるものでしょう?!「手伝う」ってなんですか?! 男性の意識も後退させてしまうものではないでしょうか?

◆「イクメン知事」から10年、広島県庁の惨状

わたくし・さとうしゅういちは、広島県庁マン時代、男女共同参画行政も担当させていただいたことがあります。

そして、わたしの県庁マン時代の末期の2009年には湯崎英彦現知事が初当選。湯崎さんは、2010年の妻の出産に際して、休暇をとり、お嬢さんの幼稚園からの迎えをするなどされて話題となりました。

当時は大阪府知事だった橋下徹さんは、当時隆盛を極めていた公務員バッシングの文脈で湯崎さんを攻撃。

広島県内でも「民間は厳しいのに知事はなにをさぼっている?!」というバッシングが年長者を中心に湯崎さんへ寄せられました。

これに対して、湯崎さんは「価値観を変えることが大事」と反論。筆者は湯崎さんの新自由主義については批判的でしたが、この点については評価していました。その後、筆者は河井案里さんと対決するために県庁を退職。それから10年。その筆者の湯崎さんへの評価の肯定的な部分をひっくり返すような事件がおきたのです。

◆バッシングに屈した湯崎さん がっかりです

広島県庁は、結果論ですが、10年前の橋下さんや年長者を中心とする皆様からの「男性が育児労働に従事することへのバッシング」に屈したといえるでしょう。男女共同参画行政担当だった県庁OBとして情けない思いで一杯です。

わたしは、「育児休暇」は「育児労働」に名前を変えるべきだ、というのが持論です。言い方を変えると、カネを稼いでくる「稼ぎ」と、育児や介護、近所付き合いなど「務め」は両方大事な労働であり、性別にとらわれずに、バランスをとりながら従事できるようにしていくのが望ましいと考えます。

湯崎さんが「価値観を変えることが大事」と10年余り前におっしゃったものですから、そういう方向へ改革するのかとおもいきや、橋下さんらに屈してしまった。こんなことなら、わたしは、2021年は4月の参院選広島再選挙よりは、11月の知事選挙でかつての上司である湯崎さんに挑むべきだったかという思いが脳裏をかすめなかったかといえば、うそになります。

◆妻側企業の女性支援にただのりする夫の勤務先企業という構図

そうはいっても、昔にくらべたら、随分と働く女性への支援策は充実したものです。しかし、問題は、それに、夫が勤務する企業がただのりしているというのが問題です。

どういうことか? 筆者は県庁を退職した今は、介護現場に勤務しています。筆者以外のほとんどが女性、という場合も多い。そのなかで、やはり、お子さんがいらっしゃる女性職員がたとえば、子どもが熱をだしたとか、制服の採寸につきあわないといけないとか、部活の応援でやすまないといけない、というのは日常茶飯事です。

そのために、子どもがいない女性、男性職員がカバーするというのはやむをえないことです。当該の女性職員を責める気はさらさらありません。
 
問題は、その女性職員の夫、そしてその勤務先企業です。たしかに、男性は家事が苦手な人はいまでも多いかもしれない。しかし、子どもを病院につれていく、制服の採寸につきあう、部活の応援にいく、なんて、別に料理や掃除ができない男性だってできることではありませんか?

いや、ふだん家事ができていないならなおのこと、「よし、こういうときこそ俺が」と自分から申し出るべきでしょう。勤務先もそうしやすい環境を整えるべき、というかむしろ上司が「お前、行ってこい」くらいいうべきところでしょう。わたしもときどき、ついつい「あそこの夫さんの勤務先企業、ええかげんにしろよ。」と心の中で吐き捨てたことがないといえば嘘になります。

こうした構図を解消するには、これ以上の「女性支援」ではなく「男性支援」が必要ではないか?そうでなければ、湯崎さんが率先して育児に従事した意味がありません。

「女性の権利向上の政策ではなく、経済界からの労働者不足の要望から出来た政策なのではないか?経営者や男性の意識改革がないのでは、女性の負担は減らないのでは?経営陣のトップや労働局のトップが実際に主夫業を実践してはどうか?」(広島市内の50代男性)との指摘はそのとおりです。

◆保育や介護の労働への評価を引き上げよう

今後とも、性別にとらわれずに、「稼ぎ」だけでなく育児労働など「務め」を果たせる社会にしようではありませんか?同時に、保育や介護などのサービスの充実は欠かせません。

東大・京大出たような高級官僚・政治家ら、男性のエライ人もまだまだ、結局は「育児、介護の価値などたいしたことはない」という価値観なのかもしれません。なら、自分でやってみるべきです。いや、「やっぱりきつそうだからやりたくない」というなら、それは大変だということです。きちんとした育児や介護への評価をすべきです。それと連動して保育士や介護職員の抜本的待遇改善をもとめます。岸田さんの3%アップではまだまだです。

筆者は、参院選2022へ向け、れいわ新選組のみなさまとともに、引き続き、育児や介護への評価の向上と従事する労働者の公務員化含む抜本的待遇改善をガツンと広島県民の皆様に訴えるものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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《NO NUKES voice》広島地裁がまさかの「非常識決定」! あなたの家の半分以下の耐震性しかない伊方原発を司法はなぜ止めないのか? さとうしゅういち

「嘘だろう!」

2021年11月4日。広島地裁前で我々「伊方原発運転差止広島裁判」原告が申請した四国電力伊方原発3号機運転差し止めの仮処分を却下するという「非常識決定」を伝える「びろーん」(俗称)にわたしは言葉を失いました。

「今回も勝てる(仮処分申請は認められる)だろう」と思い込んでいたので、ショックは倍増です。


◎[参考動画]#伊方原発3号機止まらず #広島地裁 #非常識決定(佐藤周一 2021年11月4日)

報告会場で「非常識決定」「差止ならず」を伝える「びろーん」

◆4年前とは正反対の経験

わたくし、さとうしゅういちをふくむ「伊方原発広島裁判」の原告は、4年近く前の2017年12月13日に同一の建物の前で今回とは正反対の経験をしました。このときは、地裁の建物と同じ高裁の判断を待っていました。地裁では「不当決定」が出ていたので、わたしは、諦観していました。

この日、わたしは、広島駅南口地下広場で行われていた反貧困ネットワーク広島の相談会のお手伝いに来ていましたが、

「地裁で不当決定だったものが高裁で通るわけがないだろう。まあ、俺も一応、原告で当事者だから結果は見届けにいってくるわ。」
「そうか、行ってこい。幸運を祈る。」

という会話を仲間とかわしたあと、自転車にまたがって、裁判所までかけつけたのを覚えています。奮闘してくださっている弁護団には大変失礼なことですが、そんな諦めつつ軽い気持ちで裁判所にチンタラ自転車を漕いで到着しました。

ところが、びっくり仰天。広島高裁は我々の「阿蘇山噴火が伊方原発にもダメージを与える可能性がある。」という主張を受け入れ、伊方原発の運転を差し止める決定をしたのです。

「嘘だろう! 俺は夢を見ているのに違いない。」

わたしは、頬をなんどもつねったが間違いありませんでした。

2017年12月13日の広島地裁前。うれしい誤算だった


◎[参考動画伊方原発3号機差し止めを命令!広島高裁(佐藤周一 2017年12月13日)

◆仮処分期限切れ後、新たな仮処分を申請

その後、2018年9月25日、広島高裁は裁判長がかわった結果、四国電力による異議申し立てをみとめ、伊方原発3号機運転を認めました。いっぽう、我々原告側は地裁に仮処分の期限延長を申し立てていましたが、同年26日、地裁に却下されてしまいました。そしてその直後に伊方原発は動きだしました。

しかし、2020年1月17日、今度は山口地裁で運転差し止めをもとめている原告申し立ての仮処分申請を広島高裁は認めました。裁判長により判断が分かれた形です。

その後、提訴からちょうど4年の2020年3月11日、我々広島裁判の原告も新たな仮処分を申し立てました。我々は「中学生でもわかる理屈」(河合弘之弁護士)で攻めていきました。伊方原発の耐震基準がわずか650ガルであり、一般家屋の1500ガルの半分以下の耐震性しかないこと。原子力規制委員会が基準地震動を定める考え方が「どういう地震がおきるか予知・予測できる」と考えられていた時代のもので、現在では阪神淡路大震災や熊本大震災など想定を超える地震が多数起きていることなどをデータをあげて指摘したものです。

◆非常識決定 判断から逃げた広島地裁

しかし、広島地裁は、以下の理由で我々の申し立てを却下しました。

まず、第一に原子力規制委員会が専門的知見を持って許可をしたのだから、審査基準の合理性及びその適用に過誤欠落がないかを裁判所が事後的に判断することは無理であると述べました。これは、原発について司法がその安全性を判断することを放棄したものです。

第二に、伊方原発訴訟最高裁判決は、民事差止訴訟には適用ができず、行政訴訟のみに適用があるとした。しかし、裁判所の判断不能ということであれば、行政訴訟についてもおよそ判断が不能となるはずなのに、それに限っては判断ができるというのも矛盾しています。

第三に、我々の「日本国内の地震の精密かつ網羅的な観測記録(K-NET)と比較すると、伊方原発の基準地震動650ガルというのはあまりに低すぎる」と主張したのに対して裁判所は、それぞれの地震についての震源特性、伝播特性、増幅特性を詳細に調べて補正し、比較しなければならないとしました。しかし、そのようなことはおよそ住民側にとって不可能なことであり、不可能事を住民側に押し付けるものである。しかも、プロであるはずの四国電力側でさえそのような精査は一切放棄しているのです。

また、ハウスメーカーのハウスのほうがずっと耐震性が強いこと(例えば三井ホームは5000ガル以上)及び建築基準法においても1500ガル程度までが基準地震動になっていることについても、震源特性、伝播特性、増幅特性の精密な分析、補正がないことを理由に、我々の主張をしりぞけてしまいました。

我々は、この裁判において、常識に基づいた分かりやすい問題提起をし、判断を求めたにもかかわらず、裁判所は、徒に複雑な科学技術論争を持ち込み、一知半解な理由で我々の主張を退けました。

誠に不当な決定であるとして、我々は直ちに広島高裁に即時抗告をしました。

◆地震の巣の上にある広島から最も近い原発 

伊方原発は広島から最も近い原発です。90kmくらいしかありません。瀬戸内海、そして太田川を通じて伊方原発と原爆ドームや広島駅などはつながっているのです。

そして、伊方原発の直近には中央構造線断層帯があり、豊臣秀吉の時代には大地震を起こしています。

また、これとはべつに、この地域の真下にはフィリピン海プレートが潜り込んでいるために伊方原発は地震の巣の真上にあります。広島でも時々地震がありますが、多くの場合、伊方原発周辺が震源地です。江戸時代には何度も死者を出すような大地震があったほか、最近でも2014年3月14日にM6.2の地震で伊方町において震度5弱を観測しています。江戸時代には何度もあったようなM7クラスの地震がおきれば、650ガル(震度6弱程度)の耐震基準をオーバーすることも十分ありえます。そうなれば、原発からもれた放射能が瀬戸内海、太田川経由で原爆ドームや広島駅、さらには広島市の安佐南区南部あたりまでを直撃することは十分ありえます。

以下の論文によると、潮汐にともなって塩分が太田川をかなりさかのぼっています。塩分が遡るなら放射能も遡るのです。
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00549/2013/65-02-0031.pdf

伊方原発直下を震源とするM7クラス、広島では震度5弱~5強程度で家屋には被害がないような地震でも、伊方原発では650ガルをオーバーして原発の事故で広島の市街地の大半が壊滅する、というばかげたことが起きる危険性は十分です。

そのことを訴えることも、わたくし、さとうしゅういちが2021年4月25日執行の参院選広島再選挙に立候補した理由でした。当時の立憲民主党系候補の陣営に接触して、伊方原発廃止をふくむ原発ゼロを条件にわたしが立候補をとりやめることを持ちかけようとしたのですが、陣営の方の「候補者本人が具体的な政策がわかる人ではない」とのお話をうかがい、諦め、わたしが独自に立候補したという経過があります。

◆高裁がある! 四国電力が「オウンゴール」を連発の中、諦めない

今回の広島地裁の決定は詳しくは省きますが、2000年の伊方原発運転差し止めを求めた裁判の最高裁判決よりも、法理論的には後退するものです。三権分立の意義をさらに低下させるものです。

ただし、四国電力も報道されているように、宿直職員が無断外出するという不祥事が発覚して、再稼働への準備に手間取っています。愛媛県知事は条件付き再稼働を認めるスタンスですが、四国電力が「オウンゴール」を連発しているような状況があります。今後は広島高裁の判断に望みをつなぎたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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「ジェンダー平等」は意味不明!「女性差別撤廃」「男女平等」と言えばよし! 衆院選2021で恥ずかしすぎる日本の女性議員比率のさらなる低下!「ジェンダー平等」から「男女平等」の原則へ立ち返ろう さとうしゅういち

◆サウジアラビアの半分以下に転落した日本の女性議員比率

衆院選2021は、野党はマスコミ予測を下回る伸び悩みでした。それとともに、わたしがショックを受けたのは「ただでさえ低い」女性議員比率の低下でした。

ご承知のとおり、女性議員比率は前回衆院選2017の10.1%から9.7%の45人に下がってしまいました。世界平均は23.9%。男尊女卑が激しいとされるサウジアラビアでさえ、19.9%で日本の2倍以上です。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。

広島では比例復活を含めた初めての女性衆院議員誕生はなりませんでした。それどころか、広島3区は野党が前回につづいて女性の候補を出しながら、前回より得票を減らしてしまいました。

わたくし、さとうしゅういちは、国政・地方を関係なく、全国の女性政治家の選挙応援に入ってきました。とくに県庁マン時代に山間部での介護に関する行政に従事。女性がおおい、あるいは、女性の仕事とみなされるがゆえに、低賃金、劣悪な労働環境にある介護・福祉現場の状況に憤り、将来を憂えていたことがあります。やはり、女性の議員を増やすことが、問題解決の近道だと考え、自主的にこうした活動を続けてきました。ときには当時所属していた労働組合「連合」の方針に反してまで、わたしが女性の候補を応援したことが、わたしと連合の長きにわたる確執につながったことは否めませんがやむを得なかったと考えています。

広島市では男女共同参画審議会の委員も公募に応募してさせていただきました。

こうした経験から今回も、小選挙区では3区の立憲民主党新人と1区の社民党新人の応援に入り、1区では短時間ですが社民党のマイクも握りました。1区は総理の選挙区ですから、正直、「どこまで追い上げるか」という状況であるのはわかっていました。他方で3区は河井克行受刑者の選挙区ですから必勝の意気込みでとりくみした。それだけにわたし自身の中でのダメージも大きく、しばらく、心の整理がついていませんでした。

◆時期尚早だった性別非公表 現段階での「男女関係ない」は「現状固定化」に

衆院選で全国の選挙管理委員会は、候補者の性別を非公表としました。「これからは男女関係ない」という選管のメッセージと受け止めました。

結論から申し上げると時期尚早でした。「これからは男女関係ない。またLGBTへの配慮も必要だ。」というのは正論に見えます。しかし、そういう理屈を実行するのは、議員の比率が男女ほぼ同数の状況が定着し手からで良いのではないでしょうか?
 
サウジアラビアさえよりも女性議員比率の少ない現状で、「男女関係ない」というのは、サウジアラビアより少ない現状をもたらしている制度的、文化的背景を軽視した議論です。ひいては、そうした制度的、文化的背景を変えることを妨げ、固定化してしまいます。

◆女性議員比率を低くしている制度的・文化的背景

女性議員比率は、昔はどの国でも低かったのですが、日本において、とくに低い原因は制度的には以下でしょう。

1.高すぎる供託金
日本の立候補に際しての供託金は極めて高い。国政選挙比例区で600万円、選挙区は300万円。女性の平均所得が男性より低い、すなわち「カバン」がないことを考えれば、この制度は女性をとくに排除する方向に働くでしょう。

2.小選挙区制
比例代表制中心の制度なら、各政党が比例名簿に女性をあらたに付け加えればよいだけの話です。しかし、小選挙区制では男性の現職を女性の新人にすげ替えることは現実的には難しいでしょう。

文化的には以下のことが考えられます。

1.選挙までは支えても終わると知らんふりで女性・若手候補者使い潰し
わたし自身も反省しないといけないのですが、選挙までは支えても終わると知らんふり、ということを支持者もやってしまいがちです。男性でも大変ですが、とくに、女性はとくに様々なハラスメント含めたストレスにさらされがちです。男性では問題にならないことも、批判の対象になりがちです。きちんと支える体制がないと、せっかく当選した女性議員が1期でやめてしまい、定着しません。

2.政策・政治姿勢以外がモノをいう文化
政策や政治姿勢ではなく、そのほかの三バン「地盤、看板、カバン」地縁で選挙結果がきまってしまうような政治文化は決定的に問題です。女性の場合はとくに結婚を機に、他の地域へ転出するケースも多いのです。そうなると、地盤もできにくい。参院選の場合、衆院より比較的女性議員比率が高いのは、参院選のほうが、有権者から遠いぶん、政策や政治姿勢で選ぶケースが多いからでしょう。

3.男性のエライ人が夜中に酒席で勝手に決めてしまう文化
コロナ災害で廃れ気味とはいえ(実際は緊急事態宣言中もエライ人が宴会をして時々バレていますが)、日本の悪いところは、極論すれば、夜中に男性のエライ人が酒席で何でもきめてしまうことです。与野党関係なく、こういう文化はあります。こういう場所にはそうはいっても現状では家事や育児、介護の負担がまだまだ重い女性は参加しにくい。男性でも若手はこういうのは苦手な人は多いので、参加しにくいでしょう。女性が仮に要職に登用されたとしても、こうした男性のエライ人に従順な人(俗に言う「名誉男性」)が真夜中の酒席で選ばれるわけです。

◆野党の気迫不足 女性議員を本気で増やしたいのですか?

今回の衆院選で自民党はともかく、野党は「女性議員を増やす!」という気迫に欠けていたのではないですか? とくに野党第一党の立憲民主党さん。そして、野党共闘を主導した日本共産党さんに申し上げたい。

立憲民主党さんは、いわゆるジェンダー平等に熱心なイメージはあった。しかし、女性候補の割合はわずかに18%でした。ここまで低いと「やる気があるのですか?」と申し上げたい。否。ここまでくると、立憲民主党さんの「ジェンダー平等」とは、LGBT問題のことで、「男女差別撤廃」はあまりやる気がないと疑わざるをえない。

2010年、当時は消費者大臣だった福島瑞穂社民党党首とともにデモに参加して。筆者はれいわ新選組支持だが社民党さんの政党で唯一、女性候補を半数以上出す方針は高く評価している

現実には立憲民主党さんの支持基盤は、連合組合員であるところの大手企業正社員や正規公務員の男性が中心ですからそうなるのも必然か、と邪推してしまいます。たとえば、広島県では、立憲民主党系の県議はいらっしゃいますが、女性はゼロです。

今回の衆院選2021で広島では立憲の女性候補は6人の県内候補のうち、広島3区のライアン真由美さんだけでした。もっと「広島では、はじめての女性衆院議員を!」と叫びつつ、広島3区に広島県内、いや中国地方のリソースを集中させるべきだったでしょう。

傍目に拝見していて、立憲民主党さんは、「必勝区」と表向きは叫びつつも、3区にそんなにリソースを割いているようには思えませんでした。与党は斉藤鉄夫候補を国交大臣に任命するなど必死なのに。それこそライアン真由美さんを比例中国ブロックの1位にもしておけばいい。そうすれば、斉藤鉄夫さんだけでなく、ライアン真由美さんにも天秤をかけるような団体・組織も現れたことでしょう。序盤の優勢の報道で油断はあったかもしれないが、つくづく惜しかった。

日本共産党さんもジェンダー平等を熱心に叫ばれた。女性候補比率も35.4%と社民党に続き2位でした。しかし、たとえば、比例東京ブロックでは池内沙織さんを比例名簿の3位にした。本気で池内さんを当選させたいなら1位におく。そして、3位に下がった現職男性議員は当選するために必死で票を稼ぐ。そういう構図をつくったほうがよかったのではないか? 次回以降はご検討くださいますようお願いします。

◆そもそも「女性差別撤廃」ないし「男女・女男平等」でよかった

そもそも、若い方はともかく、年配者で「ジェンダー平等」と言われてもピンとこない人が多いでしょう。

いや、「ジェンダー平等」自体が実は意味不明な言葉です。ジェンダーとは、性別に対して社会的に押し付けられた規範ですよね? 男性は外で仕事、女性は家事育児、でないといけない、などはその典型例です。あるいは、男性は化粧したりスカートをはいたりしたらおかしい、というのもジェンダーでしょう。

しかし、「社会的に押し付けられた規範」の平等とは何ですか? 日本国憲法第24条などに照らせば推進するべきは、「ジェンダー平等」ではなく「ジェンダー解消」でしょう。

ただ、「ジェンダー解消」といっても、多くの年配者にはピンとこない。普通に「女性差別撤廃」「男女平等」、すこしラジカルに言えば、「女男平等」でいいでしょう。

ともあれ、とくに広島県内のように、女性衆院議員そのものが存在しない現状で、野党が「なんとしても広島で初めての女性衆院議員を!」ではなく「ジェンダー平等」を声高に叫ぶことは、女性議員の比率の低さをふくむ男女不平等を結果として覆いかくしてしまった。そして、ピンボケをもたらしました。ジェンダーはもちろん大事な問題だが、打ち出し方を立憲民主党さんや日本共産党さんは誤った。女性議員を少しでも出すことに本気でなければ、ブーメランとして自分たちに突き刺さってしまいます。

れいわ新選組のように、財政出動により、女性が多く、女性の仕事として財務省などに軽んじてこられた介護や保育の給料を10万円アップする、女性が多い非正規公務員を正規化するなどをガツンと前に打ち出したほうがよかったのではないか?この方が(少なくとも懐具合の面で)実効性のある女性差別撤廃ではなかったのか?悔やまれてなりません。

もちろん、わたくし、さとうしゅういち個人としては、参院選広島2022へ向けてねばりつよく活動を続けているところです。現状では、介護・保育や非正規公務員など「女性の仕事だから」と自民党や財務省などの「男性のエライ人」に軽んじられてきた分野への財政出動をガツンとメインのひとつとして訴えていくことになるでしょう。他方で、参院選広島再選挙2021でも自分自身が公約に掲げた小選挙区制の廃止と比例中心の選挙制度への改革とクオータ制の義務化、供託金の引き下げ、さらには、政策・政治姿勢本位の政治文化の確立にコツコツと取り組んで参ります。

◎[参考]衆院選2021における女性候補比率
自民   9.8%
立憲  18.3%
公明   7.5%
共産  35.4%
維新  14.6%
国民  29.6%
社民  60.0%
れいわ 23.8%
N党  33.3%

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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衆院選2週間後の県議補選 河井案里さんの地元でまたも野党惨敗 「金権批判の追い風」暗転、どう建て直すか? さとうしゅういち

石橋林太郎さんが、衆院選比例区に立候補(当選)のため辞職したことに伴う広島県議選安佐南区選挙区の補欠選挙は11月14日、執行されました。安佐南区選挙区はかつて、河井案里さん(2021年2月4日、有罪確定で参院選2019での当選が無効)がトップ当選してきた地元であり、夫の克行受刑者の広島3区に含まれる「河井事件の震源地」です。

産廃問題の勉強会をかねた山根候補の個人演説会

◆あっと驚く野党の大敗

自民党が議席死守を狙い、公明党の推薦も得て擁立した「維新」の元国政候補者の灰岡香奈さんと、河井事件の追及の先頭にたち、日本共産党や広島3区市民連合が推薦し、さとうしゅういち後援会やれいわ新選組の地元のメンバーもバックアップする事実上の野党統一候補の山根岩男さんの事実上の一騎打ちに、河井克行受刑者の元秘書の伊藤守さんが割込む構図、というのが多くの人の見立てでした。しかし、その見立てを覆して、野党候補が3位に沈むという、結果になってしまいました。

当選 灰岡香奈  自民・新  3万961票(公明推薦)
   伊藤 守  無所属・新 1万3719票(克行受刑者の元秘書)
   山根岩男  諸派・新   7727票(共産推薦・地元のれいわ・社民支持)

河井受刑者の元秘書の伊藤候補も合わせると自公系で44680票。
野党は14.7%しか得票できませんでした。

◆過去の各種選挙で見える安佐南区における各政党の勢力は?

この結果を分析する前に、過去の安佐南区における選挙結果をおさらいしておく必要があります。安佐南区を含む広島3区では、2週間前の衆院選で、公示前は優勢も伝えられた野党統一候補のライアン真由美さんが、斉藤鉄夫国交大臣にフタをあければダブルスコアに近い大敗を喫しました。安佐南区における衆院選各候補の得票は以下です。

斉藤鉄夫    公明・前  49515(自民推薦)
ライアン真由美 立憲・新  28401
せぎひろちか  維新・新  11159
大山宏     無所属・新  2146
矢島秀平    N裁・新   1610
玉田のりたか  無所属・新  978

比例区の得票は以下です。

与党 
自民党    41888
公明党    11719

共闘野党
立憲民主党  16250
日本共産党  4879
れいわ新選組 2907
社民党    1423

補完勢力
日本維新の会 11694
国民民主党  3652
N裁党    1256

2021年4月25日執行の参院選広島再選挙での各候補の得票は以下です。

宮口はるこ    諸派   29280 立憲、国民、社民推薦、共産支持
西田ひでのり   自民   26607  公明推薦
さとうしゅういち 無所属   2157 (れいわ「公認漏れ」)
山本貴平     N国    1441 
大山 宏     無所属   1060
玉田のりたか   無所属    866

いっぽう、10年前の2011年4月の県議選安佐南区選挙区では以下のような得票でした。(当時は定数4)

当選 河井案里     無所属元  20799 自民党に復党
当選 石橋良三     自民現   17684
当選 くりはら俊二   公明現   16452
当選 佐々木ひろし   自民元   14234
   梶川ゆきこ    民主現    9987
   さとうしゅういち 無所属新   4278(反自民系)

自公が69169,反自公が14265で反自公が17.1%です。

その1年8ヶ月後の2012年衆院選では以下です。

当選 河井克行  自民前 41457
   橋本博明  民主前 25101
比当 中丸ひろむ 維新新 20744
   藤井としこ 共産新 7530

自公   41457
反自公  32631
補完勢力 20744

上記のデータと、わたくし・さとうしゅういちが、選挙運動中に見聞した状況、そして10年余りの参院選広島予定候補者としての活動経験をベースとした勘を総合すると、以下のことが言えます。

(1)県議選では、伝統的にアンチ自公は17%前後しか得票できない。2015年県議選を最後に引退した佐々木ひろしさんのように自民党県議でも、国政レベルの共産党や社民党の支持者にも食い込んでいた人がいた。

(2)ただし、衆院選では克行受刑者の評判が非常にわるいために、県議選で自民党・公明党に投票する人たち(6-7万程度)もふくむ自公の基礎票(5万前後)から1万程度は、克行受刑者の対抗馬の旧民主党などや、維新に流れていた。このアンチ河井保守層の存在は、マスコミなども分析の際に見落としている。

(3)2021年4月の参院選広島再選挙のときは、案里さん有罪確定で自民党への批判が頂点に達しており、自民党の選挙運動はにぶく、本来の自公の基礎票の半分しか得票できなかった。野党系は実はさほど票を増やしておらず、自民党の自滅だった。

(4)しかし、その後、克行受刑者の失脚に伴い、アンチ河井の自民党支持者が急激に与党陣営に回帰。さらに地元から岸田総理が誕生した効果、斉藤鉄夫さんが国土交通大臣になった効果で「河井事件効果」で半減していた自民党支持者が与党に回帰し、斉藤鉄夫さんの圧勝を支えた。

(5)今回の県議補選は、「岸田総理誕生効果」=自民党への追い風と、「河井事件効果」が打ち消しあった上、安佐南区では河井受刑者の失脚でアンチ河井の自民党支持者が安心して与党を応援できるようになった中で行われた。

(6)野党の山根候補の得票7727は直前の衆院選比例区の共産党とれいわ新選組の得票合計7786とほぼ符合する。

(7)実際、共産党さんはしっかり組織内を固めた印象があったし、さとうしゅういち後援会、またれいわ新選組の地元のボランティアメンバーも「身内」はしっかり固めているが、「外部への伸び」が感じられなかった。そのことと得票数が符合する。

(8)立憲民主党さんは、ほとんど、今回の県議補選で動きがとれていなかった。衆院選大敗のダメージの大きさを感じる。立憲民主党支持層は多くは棄権されたと思われる。あれだけの大敗のあとで仕方がないのかもしれないが、悔やまれる。

(9)失礼ながら、伊藤候補の克行受刑者の元秘書というのは常識で考えれば印象が悪い肩書きだ。しかし、実際には河井夫妻、とくに案里さんへの同情論は一部ではそれなりに強かった。それが伊藤候補を押し上げた可能性はある。

(10)灰岡候補は河井事件には一切ふれず、女性の労働環境や医療の改善などを訴える戦術をとった。野党が「金権政治批判」を軸にしたことで、女性政策を重視するリベラル層(国政では)の一部が灰岡支持に回った可能性はある。過去の県議選や参院選でも、河井案里さんが同様の手法でリベラル層の一部も取り込んだ前例はある。

◆賞味期限切れの「河井」批判 野党は再選挙の成功体験にこだわりすぎるな

正直、克行受刑者も衆院選中に自ら控訴を取り下げ、有罪が確定して収監されました。また、事件の発端となった「文春砲」から2年以上経過しました。さらに、この夏は、コロナ災害や、大雨災害も深刻になりました。事件当時の自民党の二階幹事長も岸田さんにより、事実上失脚しています。

こうした中で「河井批判」は、「賞味期限切れ」ではないでしょうか?

そのことを良い、といっているのではありません。正直、案里さん・克行受刑者からお金をもらった広島県議がだれひとり腹を切っていないのは元県庁マンとしても悔しいです。

しかし、いま、短期にも中長期にも、他に大きな課題がたくさん出てきすぎたのです。コロナはもちろん、気候変動やそれによる災害も大問題です。

もちろん、河井夫妻のやったことは、裁判所も断罪したように、民主主義の根幹を揺るがすことです。だが、それをいうなら、多くの自民党国政政治家もたとえば、表面上、合法のカンパとして、地方議員にお金を配っている実態もあります。政党交付金の使い道の問題にしても、そもそも、ずさんな処理をみとめてしまう政党交付金をめぐる現行法を変えるしかない。しかし、そこまではとくに立憲民主党さんなどは踏み込まないのです。

もちろん、2021年4月の時点ならマスコミが「河井事件」ばかりを取り上げていました。具体的な政策なんかそっちのけ、与野党対決のみをあおり立てる報道姿勢でした。だから、政治経験のない宮口はるこさんを担いで野党第一党が再選挙で勝利したのです。しかし、いまはそうではありません。

これ以上、河井事件批判ばかりだと、他の政策に野党は不熱心とおもわれかねません。わたくし、さとうしゅういち自身、山根候補を他人に紹介するさいは、「新自由主義脱却の即戦力でもある」ということをお伝えしました。あるいは、産廃問題に彼が取り組んでいることも紹介しました。もっと、いろいろな人が候補者の魅力をいろいろな角度で伝えることがこれからの野党の課題のひとつでしょう。

勉強会のレジュメ。今後も勉強を軸にした活動が野党側は重要だ

これより先、衆院選では「財政出動で暮らしをガツンと立て直す」と、れいわ新選組のおもに経済政策のアピールに街頭では比重を置きました。全国でもれいわは立憲や共産が手薄になった分野を強く訴えました。

そのことが、一定評価をいただき、れいわは立憲、共産が票を減らすなかで、衆院選初挑戦で3議席をいただいたとかんがえています。

広島の立憲民主党さんや日本共産党さんにおかれても、再選挙の成功体験をすてていただきたい。あのときは、政策なんかそっちのけで、とにかく河井批判さえしていれば勝てた特殊な選挙なのだから。成功体験卒業が遅れれば遅れるほど、今度は広島でも比例復活で議席を確保した維新に足元をすくわれかねません。今回の県議補選における伊藤守候補が維新に置き換わったような選挙結果、すなわち野党共闘が維新の後塵を拝する結果が、今後の県内で多数出現しかねない。

特効薬はありませんが、以下のことは申し上げたいし、自身も実行したい。

(1)各種選挙の候補者はコロコロ変えずに固定する。素人がいきなり当選するような奇跡はほとんどおきえないことを肝に銘じたい。

(2)共闘はもちろん大事。しかし、それにたよりすぎずに各政党が自力をつける努力をすること。ある程度熱心な支持者の方でも、基本的な知識などが不足している場合もある。勉強を軸に強化していきたい。すでに、さとう自身はれいわ支持者を中心に介護福祉現場改善へ向けたオンライン勉強会などを開いていく。

(3)いまは、とにかくコロナ災害前から厳しく、コロナに追い打ちをかけられた人々の暮らしの再建を軸にしたい。そして中長期には災害救助隊や原発なき脱炭素など、平和憲法と広島の技術・経験をいかした国のありかたへ投資する方向性をきちっと打ち出していきたい。

(4)金権政治批判にしても、今後は河井批判から、政策そっちのけの政治・選挙をもたらしている制度の改革や政治文化の見直しにシフトしたほうがよいのでは?

(5)正直、具体的な方向性を打ち出そうとすると身内からの反発も出る。だから、「河井事件批判という最大公約数」でお茶を濁したくなるのも理解はできる。しかし、くどいようだが、それで勝てたのは再選挙のときの特殊な状況ゆえだ。もう、それは通用しない。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』12月号!

河井案里・克行夫妻疑惑糾明のリーダー山根岩男さん、11月14日補選で「ぬるま湯」広島県議会に殴り込み! さとうしゅういち

河井案里さんが当選(2021年2月4日に本人の有罪判決確定で無効)した参院選広島2019における河井夫妻による前代未聞の買収事件。2019年10月31日の「文春砲」で車上運動員買収に怒った県民が「河井疑惑をただす会」を結成。多数の県民の連名で河井案里・克行被疑者を12月に告発しました。そのリーダーが元中国新聞社員の山根岩男さん(70)でした。

県民の怒りを背景に東京地検が動き、2021年6月18日、案里・克行被疑者は逮捕されました。

その後、案里さんの有罪は確定し当選は無効。夫の克行被告人も2021年6月18日、懲役3年の実刑判決を受けました(現金授受は認めつつも控訴中)。「民主主義の根幹である選挙の公正を著しく害した」として、東京地裁も事件を厳しく批判しました。

◆開き直る被買収県議、大甘の同僚議員

中でも案里さんの「元職場」の広島県議会では、被買収の県議会議員は13人おられます。それぞれにお金をもらった事実は認めています。しかしながら、東京地検はこれらの県議も含めた被買収者全員を「受け身だった」として起訴猶予処分としています。ただ、起訴猶予処分といっても被買収の事実は事実。にもかかわらず、2021年10月10日現在、誰も腹を切っておられません。

西洋は罪の文化、日本は恥の文化といわれていますが、いまの広島県議会にはどちらも欠けています。

広島県議会では「政治倫理審査会」も開催されました。13人の被買収議員については、「辞職勧告」でもされるかとおもいきや、「厳重注意」で済まされてしまいました。審査会はいわば「身内」の同僚議員が疑惑を追及するもので、非公開でした。

そして、各議員は弁明にもらった時間を大幅に余らせていました。各議員がいかに同僚議員、なにより県民をなめきっていたか?そして、時間があまったということは、同僚議員も被買収議員に質問などで厳しいツッコミをあまりいれていなかったということです。そして、13人中、6人が委員会の正副委員長という要職につく有様です。

河井議員からお金をもらった議員は論外として、お金をもらっていない議員、アンチ河井議員、自民党、公明党はのみならず、国政では野党に属する立憲民主党系の議員も含めた被買収者に大甘である。そのことが明らかになってしまいました。

◆案里さんの地元の安佐南区で県議に空席

こうした中、克行被告人の離党に伴い、自民党は衆院広島3区の候補者を公募。安佐南区の県議・石橋林太郎さんが合格しました。ただし、広島3区については自民党が与党候補のイスを公明党にゆずる形で斉藤鉄夫国交相に決まっています。そして石橋さんは比例代表に回りました。

石橋さんの衆院立候補で安佐南区(定数5)の県議が1つ空席となるため、安佐南区では11月14日の知事選にあわせて県議補選が行われます。

この安佐南区はまさに河井案里さんが県議を4期つとめた疑惑の震源地です。毎回のように物量をものにいわせた選挙を案里・克行夫妻が展開してきた場所です。

わたくし自身も2011年の県議選で案里さんに挑みました。このときは、わたしが4278票、案里さんが20799票という結果でした。街中が案里さんのビラや看板で溢れかえっていたのを記憶しています。広島の政治・選挙がいかに政策などそっちのけか。そのことを痛感しました。

◆恥知らずの県議会に憤り 山根さん立ち上がる

山根岩男さんを推す政治団体のビラ

あれから10年。状況はちっとも変わっていません。こうした中、「河井事件」追求の先頭に立っていた山根岩男さんが業を煮やして立ち上がったのです。現在、無所属で野党の統一をめざしています。立憲、共産、社民、れいわ、新社会各党に推薦を求め、共産党からはすでに推薦決定が出ました。立憲民主党は10月10日に行われた山根さんの決起集会に3区の衆院選予定候補のライアン真由美さんが檄文を寄せています。

れいわ新選組もわたくし、さとうしゅういちが、10月10日の決起集会に参加し、山根さんから推薦依頼書を受領。れいわ新選組の最寄りの総支部に進達しています。本部の決定にかかわらず、れいわ新選組の地元の支持者としては、山根さんを支持していくことを申し合わせています。

「河井疑惑の徹底追及・解明」「被買収者への辞職勧告」「政治倫理審査会に外部者をいれて公開とする」などを掲げています。また、コロナ対策として医療者への支援や全国でも異常なペースで進められた「分権」で廃止された広島3区内の保健所の復活などを提案しています。

また、土砂災害対策や黒い雨被害者救済、核兵器禁止条約参加を政府に求めることなどを国に強く求めるとしています。

◆圧倒的に自公が強い過去の県議選

今回の補選は衆院選の2週間後に実施されます。山根さんの他には元維新の国政選挙候補者で自民党の3区公募に応募した灰岡香奈さん、克行被告人の元秘書の伊藤守さんが立候補を予定しています。

過去の県議選では得票でみれば、自公系が圧倒的に有利です。たとえば、わたくし、さとうしゅういちが立候補した2011年の県議選では自公が案里さん20799+石橋良三さん(林太郎さんの父)17684+公明党候補16452+自民党元職佐々木弘司さん14234で69169票。非自公が、さとうしゅういち4278+民主党候補9987で14265票。

非自公はわずかに17.1%です。2015年の県議選では非自公系の候補がわたしの参院選広島への転出と民主党候補の市議選転出で入れ替わっていますが、力関係に大きな変化はありませんでした。

衆院選挙ではこの地域ではいつも自公(克行被告人)と非自公(民主、維新、共産)の得票は互角です。

その原因は、案里さん以外の自民党県議や市議が、アンチ河井克行で、克行被告人民主党や維新の国政選挙候補に票を流していたという事情があります。「俺は(克行被告人より)共産党のほうが仲良しだ」と公言する自民党市議もおられた始末でした。克行被告人の評判の悪さが透けてみえます。

しかし、県議選では国政とちがい、与党の各議員の地盤は非常に強いのです。2015年県議選を最後に引退された佐々木さんなどは国政では共産党支持、社民党支持という人にも根強い人気がありました。

県議安佐南区候補者のポスター。右は知事選挙。補選は山根(野党系)vs 灰岡(自民公認・公明推薦)の与野党対決に克行受刑者の元秘書の伊藤候補が割り込む構造に

◆このまま自民党に有権者をなめさせるな

案里さん・克行被告人からお金をもらっている県議のほとんどが自民党所属です。彼らがなぜ腹を切らないのか?その背景には、過去の選挙では、彼らが無投票か楽勝かだったことがあります。

「どうせ、次の選挙は俺は私は無投票か楽勝。」

そのように思ってなめきっているからこそ、とれる行動です。いまは風当たりが強くて恥ずかしくても、国会議員とそう遜色ない給料をもらいながらやりすごせば、どうせ有権者は忘れてくれる。

そういう彼らをあわてさせないといけません。安佐南区という、過去の県議選では与党圧倒的優勢の場所で野党が勝てば彼らも慌てるでしょう。

◆「腐敗」の後の「新自由主義隆盛」を防げ

もうひとつ、今回の補欠選挙で進めるべきは、広島出身の総理・岸田さんでさえ打ち出している「新自由主義からの脱却」です。

今回、自民党県連が推す女性候補は2013,2016と「維新」の参院選挙候補として「アンチ河井の保守層」を中心に一定の得票をしています。「クリーンな新自由主義者」というイメージです。腐敗への批判が高まるなかで、「38歳という若さを売りにして、新自由主義者である女性候補が議席を取る」というシナリオを自民党サイドは思い描いているのでしょう。

ただでさえ、前知事のもとで、保健所は3分の1に減らされ市町村合併で自治体減少率NO2の広島県。腐敗した河井夫妻が失脚したのはよい。しかし、入れ替わりに、新自由主義者が入れ替わりに勢力をのばした、ではなんのために河井事件を追及したのか?訳がわからなくなってしまいます。

大阪でもあったように、新自由主義者は既存勢力の腐敗に便乗して台頭します。今回の広島でもそれは要警戒です。

こうしたなかで、山根さんとわたしも含めた支持する人たちの責任は重大です。山根さんは中国新聞社員時代、労働組合の委員長など役員をつとめました。昔の中国新聞では女性は非正規にしかなれなかったのです。それを組合で追及して女性も正社員になれるようにしたのは山根さんの功績大です。退職後も労働相談員などをされています。

腐敗をゆるさないとともに、労働者の味方でもある山根さん。彼の今回の補欠選挙のとりくみの成否は今後の広島県の流れを左右するといっても過言ではない、と感じています。

◎山根岩男さん Twitter
◎河井疑惑をただす会 Facebook 


◎[参考動画]山根候補の出発式における応援弁士の演説(さとうしゅういち2021年11月05日公開)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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立憲と共産はなぜ歴史的惨敗を喫したか? 河井事件による野党の楽勝ムードが暗転した岸田総理の地元広島 さとうしゅういち

第49回衆院選は10月31日執行され、自民党が石原伸晃さんら大物を落選させるなど議席を減らしたものの、単独過半数を確保。公明党とあわせて絶対多数となりました。立憲民主党は関東や四国の小選挙区で野党共闘で大物の首を取るも比例がふるわず100議席を切る惨敗。共産党もマスコミ予想を裏切り大敗しました。自民党以上の新自由主義政党の「維新」は41議席と大躍進。「積極財政」を打ち出した国民民主とれいわ新選組が議席を増やし健闘しました。

筆者が住む広島ではどうだったのでしょうか?結論から申し上げると広島市では自民党が圧勝。立憲も共産も衆院議員を出せませんでした。

広島は河井事件の震源地である一方で岸田総理の地元です。「河井事件効果」と「お国の総理効果」どちらが勝るか?も注目されました。わたくし、さとうしゅういちは、河井事件効果は賞味期限切れになっている、と危惧しており、それが的中した形です。

◆広島1区 現職総理の前に野党は供託金回収にいたらず

一住民として応援した1区の有田優子候補

広島1区
岸田文雄  自民前 133,704
有田ゆうこ 社民新  15,904
大西オサム 共産新  14,508
カミデ圭一 諸派新  1,630

広島1区は爆心地があるが、過去の選挙は岸田総理が一度も負けたことがない超保守王国です。わたしが支援するれいわ新選組のポスター活動も一番苦労するのが1区です。

わたしも一住民として有田さんのマイクを握りました。前回まで共産党候補を支援していましたが後述する理由で今回は「選挙区は有田、比例はれいわ」を支持者のみなさまにも徹底的にお願いしました。わたしが「乗り換えた」効果もあってか、社民の有田さんが共産の大西さんを上回ったものの供託金回収に至らず。ただし、社民党県連幹部からは「今後も広島から候補者を出していきたい」と意欲的な声をうかがいます。社民党はれいわ新選組とも政策は近い一方で支持層が被らない面もあります。わたしとしても今後とも社民党とも連携はしていきたいと考えています。

◆広島2区 野党統一もダブルスコアで大敗

広島2区
平口ひろし 自民前 133,126
大井赤亥  立憲新 70,939

広島2区は広島市西部の住宅街と廿日市市、大竹市、江田島市の一部からなっています。

1996、2000、2003、2009年と当時の野党が勝利しており、統一すれば勝ち目があるとも言われてきました。今回は共産党新人が公示直前に立候補を取りやめました。

しかし、それでも大変厳しい結果になりました。核兵器禁止条約にも前向きなどリベラルな面も強い自民党のベテランの平口さんに対して攻めあぐねた感じはします。ただし、平口さんも次回は引退が濃厚です。大井さんにもチャンスはあると見えます。

◆広島3区 勝利ムード暗転、過去20年で最悪の野党惨敗

広島3区
斉藤鉄夫    公明前 97,844
ライアン真由美 立憲新 53,143
せぎひろちか  維新新 18,088
大山宏     無新   3,559
矢島秀平    N裁新  2,789
玉田のりたか  無新   2,251

言わずと知れた河井案里さん、克行受刑者の地元である広島3区。4月の参院選広島再選挙でも当選した宮口はるこさんとさとうしゅういちの合計で約6万票なのに対して自民候補は5.3万票でした。

さとうしゅういちがライアン真由美候補を支援しているわけですから、負けるはずがない選挙区でした。しかし、マスコミ予想や地元の前評判と全く正反対の結果になりました。

「広島3区は、野党が最終的にはそうはいっても勝てるだろう。最悪でもライアン真由美さんが比例復活はするだろう。相手は国交相とはいえ、河井事件の震源地で有権者が与党の候補をそんなに支持するはずがない。」

こんな前評判を覆すどころか、蓋を開けてみれば2003年以降のすべての選挙結果における立憲(前身の民進党、民主党)系と社民党(2005まで擁立)・共産党(2009は擁立せず)候補の合計を下回る惨敗でした。

しかし、冷静に考えれば、以下のことがいえます。もともと、克行受刑者は非常に評判が悪い方でした。地元で克行受刑者のことをよくいう方はだれひとりいないような有様でした。それでも小選挙区制度の弊害で自民党公認というだけで、議員を続けられていただけでした。従って広島3区は自民党支持者や議員でも河井克行受刑者を嫌って野党に票を流していた人が多くおられました。ところが、そうした方が、克行受刑者の失脚により、与党に回帰したのです。

さらに、菅退陣、岸田総理誕生、斉藤国交相誕生で一挙に形勢が逆転しました。

それに追い打ちをかけたのが、維新の瀬木さんの立候補でした。瀬木さんは、「公明党には投票したくないからライアンにしようかな」と迷っていた保守層の一部を吸収したのです。

いっぽうで、河井案里さんを支持していたような方々はどうされたのか?再選挙の際は棄権された方が多かったのです。しかし、今回は現職の国交相、しかも、災害が続いている3区ではそれはたのもしい、ということで、斉藤候補に回帰したとみられます。

かくて、4.4万票もの大差で野党は敗北してしまいました。

れいわ新選組選挙カー。インパクトがあった

◆超保守王国で一定の地盤、れいわ

わたくし、さとうしゅういちは、れいわ新選組の街宣車に乗り込み、1区では「選挙区は有田、比例はれいわ」2区では「選挙区は大井、比例はれいわ」3区では「選挙区はライアン比例はれいわ」と叫びました。超保守王国広島市14,240人、広島県内で32,955人が「れいわ」と書いてくださりました。

小選挙区候補がいないとほとんど活動らしい活動ができない衆院選で、それも初めての衆院選でこれだけ票を頂いたことに感謝申し上げます。中国地方では残念ながら議席に及びませんでしたが、政党交付金には反映されますし、広島でも一定の地盤を築いたと言えるでしょう。

実はわたくし、自身、広島の立憲さん、共産さんが、「河井批判」に傾きすぎて、庶民の暮らしなどについて言及が薄いことに危機感を覚えていました。野党が庶民を見捨てていないところを見せるためにも、「財政出動で庶民の所得を上げて負担をへらす、暮らしの安心を確保する」という訴えを徹底しました。立憲さん、共産さんに戦術変更をお願いするよりは自分がれいわで言いたいことをガンガン訴えたほうが生産的だと見切りました。


◎選挙運動最終日の10月30日に街頭でれいわのマイクを握り、#比例はれいわ #3区はライアン真由美 と訴える筆者

◆筆者の「れいわ」への「乗り換え」も阻んだ共産の議席奪還

さて、比例中国ブロックでは共産党は前回失った議席を奪還するだろう、というのがマスコミの前評判でした。しかし、それは的中しませんでした。その背景のひとつは、ほかならぬ筆者・さとうしゅういち自身の行動でした。選挙結果に悪影響をあたえぬため、選挙期間中は控えていましたが、終わったので説明責任をこの場をお借りして果たします。

さとうしゅういちは第49回衆院選(衆院選2021)において比例区は「れいわ新選組(略称=れいわ)」を応援し、県内だけでなく全国に呼び掛けました。れいわの選挙葉書を引き受けたほか、広島3区では小選挙区のライアン真由美さんの選挙葉書にも「比例はれいわ、をお願いいたします」と書き添えました。

居住する広島1区では日本共産党と社民党から候補が出られました。さとうしゅういちは、地元一住民として、社民党の有田優子さんを支援。事務を手伝う、短時間だがマイクを握るなどさせていただきました。同区で社民候補の得票が共産候補のそれを上回るのに貢献した形になりました。

さとうしゅういちは、衆院選2014、参院選2016、衆院選2017、参院選2019と日本共産党を比例区で支持し、多いときで1000枚近い選挙葉書を引き受けるなどしてきた。また市議選・県議選2015、市議選2019でも共産党候補を推薦し、共産候補への投票を自身の支持者に呼び掛けたり選挙葉書も多数出したりするなどさせていただきました。

わたくし、さとうしゅういちは2021年4月25日執行の参院広島再選挙で20848票の得票を頂いた。わたしの行動により、支持政党を日本共産党かられいわ新選組にシフトされた方も少なくない。結果としてマスコミ予想を裏切り、共産党は比例中国で議席を奪還できない要因のひとつとなったとみられます。

支援先変更の理由1 政策軸

れいわ新選組が最も庶民の暮らしを重視しているからです。

ここ2年ほど、立憲、共産両党は、全国では支持者でも一部の内容で議論も大きく別れるLGBT法案推進などを重視しすぎました。

それよりはコロナのもとで苦しくなっている庶民生活の再建を重視して頂きたかった。例えば「女性のことだから」と軽視されてきた介護や保育労働者の給料アップ、DV性暴力被害者支援など高いスキルを買い叩かれている非正規公務労働者の処遇改善、生理用品に10%も課税する消費税の廃止などに財政出動する議論をしていただきたかった。

県内では、両党は、河井批判に偏りすぎ、庶民の暮らし軽視に見えた。また、2021年4月参院選再選挙の頃から、当選した宮口議員の最大の支持基盤である大手原発推進労組に遠慮してか、原発なき脱炭素に熱心でないのも頂けませんでした。

参院選広島再選挙は、それで通用したが、もう河井批判だけの戦術は賞味期限切れです。

さとうしゅういちは、こうした中、両党の路線修正を待つより自分で動こう、と考え、「れいわ」のマイクを握り「比例はれいわ、でガツン、と庶民の所得を増やし負担軽減、防災など暮らしの安心。選挙区はライアンで大掃除」と叫びまくった。また、被爆地であり被災地広島からこそ、原発なき脱炭素、海外派兵ではなく災害救助隊で尊敬される日本を提案させていただいたものです。

支援先変更の理由2 党代表との関係性

れいわ代表の山本太郎が2014年初秋、当時の現職国会議員で唯一わたくしの結婚祝いに出席してくださったからというのも、大きいのです。政策は重視しますが、やはり義理人情も考慮しないと言えば嘘になります。

支援先変更の理由3 共産党支持者を自称する方によるさとうへの名誉毀損

複数の日本共産党支持を自称するLGBT法案推進活動家の方から執拗な名誉毀損をさとうしゅういちはネットで受けていました。すでに東京地裁に弁護士を通じて発信者情報開示請求をTwitter社に行い、裁判所は認容。あとはプロバイダーに本人情報を開示していただくことになります。東京地裁は日本共産党支持者を自称する方による名誉毀損を事実認定したのです。こうした状況で、共産党を比例区で推すことは支持者の方の理解は到底得られません。

県議安佐南区補選の山根岩男候補のはがき。日本共産党を支持することはできないが、できるところはご一緒にさせていただく大人の対応をとる

◆今後について

さとうしゅういちは11月5日告示、14日執行の県議安佐南区補選については日本共産党も推薦する山根岩男さんを推薦し、選挙はがきも支持者に出します。県政における新自由主義台頭をふせぐため、大人の対応を取ります。

他方で統一地方選2023の市議選安佐南区では立候補に意欲を示す共産党以外の新人が立候補すれば推薦する意向です。ご本人にも伝達しています。日本共産党におかれては安佐南区におけるさとうしゅういちやれいわの支持票である約2000〜3000票がなくとも勝てる体制をつくられることをお祈り申し上げます。党と個人は違うとは言え日本共産党候補を市議選通常選挙で推すことも支持者の理解は到底得られないからです。

そうはいっても、維新の躍進という新たな危機の中、日本共産党は、れいわや社民党とならび、維新が自民以上に進める新自由主義や自民がこれまで通り進める原発・核燃サイクルの両方にきちんと反対する貴重な勢力です。しっかりしていただきたいと思います。

以上の記述は日本共産党におかれてはなぜ今回、とくに広島県内で大きく票を減らされたのかの参考材料になれば幸いであり、今後の同党の再建・健闘を祈るものです。

わたくしはわたくしでれいわの皆様とともに、庶民の暮らしをガツン、と建て直すと共に、「原発なき脱炭素」や海外派兵ではなく「被災者支援」などで尊敬される日本を目指し奮闘します。

もちろん、日本共産党など他の野党の皆様とも核兵器禁止条約推進、ヒバクシャ救済などで大いにご一緒したいという考えも変わりはありません。

◎[参考]過去の衆院選 日本共産党比例票 広島県
衆院選2009  81875
衆院選2012  59892
衆院選2014 107749
衆院選2017  73440
衆院選2021  58682

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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岸田総理の地元、広島市の衆院選の終盤情勢 さとうしゅういち

10月31日執行の衆院選。岸田総理の地元である広島市の最終盤の情勢をご報告します。

◆広島1区──爆心地ながら超保守王国の総理の地元に初日から社民・福島党首が殴り込み

広島1区は爆心地を抱える選挙区。わたくし・さとうしゅういちが住んでいます。しかし、過去の選挙では岸田文雄総理が(民主党候補に僅差に迫られた2009年以外は)圧勝してきた超保守王国です。民主党とその推薦候補の亀井静香さんで1-7区まで占めた2009年でさえ岸田さんが勝ったということは、いかに1区が保守王国かというのがよくわかります。

岸田総理に対して共産党新人の大西理さん、社民党新人の有田優子さんらが挑む構図になっています。残念ながらというべきか予想通りというべきか、岸田さんが大幅にリードしています。

広島1区の各候補のポスター

しかし、こんなところに、党首でただひとり、殴り込んだ人がいます。社民党党首の福島みずほさんです。わたしは、そのことにちょっと感動して、その場にうかがいました。福島さんは、平和公園の入口で有田優子候補の応援のマイクを握り、その後、献花しました。

福島さんの口から出た「核兵器禁止・脱原発でぶれない」というフレーズに感動、他の内容を失念するありさまでした。なぜなら、広島では伝統的に野党第一党が、原発製造関連企業の超大手労組などに忖度して脱原発を叫ばない悪しき伝統があるからです。この悪しき伝統とわたしは悪戦苦闘してきたようなものだからです。

わたしは、比例ではもっとも庶民にやさしい経済政策を打ち出すれいわ新選組支持を呼びかける立場です。しかし、24年来の交流がある大学の先輩でもある福島さんの熱意にこたえ、岸田総理の地元で、なおかつ原発推進企業労組も強い1区で立候補しようという有田さんを応援しなければ、少しでも総理を追い上げ、総理をヒヤリとさせなければ、という思いをつよくしました。

有田さんは、地元生まれ地元そだち。岸田さんは東京うまれ東京育ち。地元の庶民の暮らしを岸田さんはどの程度わかっておられるのか? 政権交代がもし今回できなくても、岸田さんに、地元の庶民の声に耳をかたむけざるをえない状況をつくれれば、という想いです。あるいは、いままで日本政府が反対してきた核兵器禁止条約もオブザーバー参加ぐらいはせざるを得ない状況をつくりたい。広島1区の一有権者として有田さんを応援する理由です。

平和公園で出発式の福島みずほ社民党党首と有田優子さん

◆広島2区──原則的左派の大井候補、「立憲民主党」の表示がない選挙カーで野党統一をアピール

大井赤亥候補

広島2区は広島市の西部と廿日市市、大竹市などで構成されます。この2区では40歳の若き政治学者の大井赤亥さんが、自民党の前職の平口洋さんに挑んでいます。広島2区では大井さんが野党統一候補です。

マスコミの情勢調査では平口さんが大きくリードという状況です。実はこの選挙区では2003、2009年と民主党の候補が平口さんを破って当選してきました。民主党候補が改憲派に対して平口さんが、2012年のマスコミアンケートで9条改憲反対と回答するなど、「ねじれ」がありました。

今回の立憲民主党候補の大井さんは、わたしとも生前、懇意にさせていただいた地元では著名なフェミニスト活動家を母親に持ち、ご自身も英国労働党左派に近いと自認される大井さん。大きくすべき政府のサービスは大きくし、小さくすべき個人の生き方への介入は小さくする。左翼のあるべき姿を絵に描いたようなスタンスをビラなどでも公言しています。

ラジカルな市民運動家が多数支援するなど、以前の2区の民主党とは様変わりです。選挙カーも「立憲民主党」の表示がないもので、まさに野党統一を意識しています。

ただ、2003年の初めての立候補以来、2005、2009、2012、2014、2017と6回立候補して4回当選、しかも、穏健なイメージものこっていて中道リベラルくらいにも人気のある平口さん相手に苦戦しています。

小選挙区では大井さんのような原則的左翼は厳しいかもしれない。それでも、これまで政策論議不在だった広島の政治に新風を吹き込む意味でまだまだ若い論客の大井さんに政治家としての活躍を期待をしています。

◆広島3区──斉藤国交相を再逆転へ食いつくライアン真由美候補

広島3区はいわずと知れた河井夫妻の地元です。事件の震源地です。ここでは、公明党の比例前職の斉藤鉄夫国交相が、防災対策充実を訴え、公明党支持層の9割と自民党支持層の7割を固めややリード。これを立憲野党統一のライアン真由美候補が激しく追い上げる展開です。また、公示の直前に維新が擁立した瀬木寛親さんが、当選圏外ではあるものの、一定の支持を広げているように体感されます。

岸田総理誕生、斉藤国交相就任までは明らかに、ライアン候補が優勢でしたが、同じ広島市出身の岸田さんが総理になり一挙にムードは逆転しました。災害が続く3区で災害担当の国交相に期待する方が出たのはやむを得ないとはおもいます。

一方で、野党共闘という概念が一般市民に浸透していないことを思い知らされることもあります。

「さとうさんはもうライアン真由美さんの応援はやめたんでしょ?」

広島3区でこんなお話をうかがい、びっくりしました。

「だって、さとうさんは、れいわ支持でしょ。だから立憲のライアンさんは支持していないのかとおもった。」

とおっしゃるのです。

「わたしの方針は #小選挙区はライアン真由美 #比例代表はれいわ です。野党共闘ですから、当然、れいわの候補者がいない #広島3区はライアン です。」

と申し上げると「そうなんだ?!」とびっくりしておられました。

まだまだ野党共闘という概念が浸透していないし、比例と小選挙区の使い分けも難しいと痛感しました。

3区のポスター

それでも、この選挙区は参院選広島再選挙では、当選した立憲系の宮口治子議員の57359票と、わたくし・さとうしゅういちの3357票の合計の得票60716票は自民党候補の53627票を大きく上回っています。ライアン真由美候補が再逆転するポテンシャルは十分あります。

もうひとつは、わたしを維新系と誤解されているかたもおられ、そういう方が維新の瀬木候補に流れている面は感じます。わたしについて、「若い男性が勢いよく演説しているのは維新」という思い込みから、わたしが立候補した選挙ではわたしに、わたしが立候補しない選挙では維新に投票されている方もおられるのは把握しています。

また、再選挙では、多くの若手有権者が棄権しました。そういう方が衆院選は、野党に投票するかといえば、こころもとない。正直、「河井事件」よりも給料アップとか、児童手当増額、教育費負担減などを求める声が若手、とくに女性の方からはおおくうかがいました。れいわを比例区で支持されるような方もそういう傾向はみられます。金権腐敗の追及は年配者には食いつきがよくても若手にはそうでもないのも現実だし、若手労働者、とくに女性の皆様がおかれた厳しい環境を考えたらうなずけます。

しかし、他の小選挙区ならいあざしらず、河井克行受刑者(有罪確定)の選挙区で与党が勝てば広島の恥です。また、地元の公明前職が国交大臣に就任されたことを喜ばれる方もおられる。お気持ちはわかるが、東京以外の地域がさびれるような政策をとってきたのも与党です。大臣の地元でなくても、公正に防災対策や、地域が元気になるような施策を受けられるのが法のもとの平等であり、政府の責務ではないでしょうか?

一方、若手の皆様にはライアン候補が金権腐敗追及「だけ」でなく、女性会社役員としての経験から、労働条件の改善に力を入れていることもご存じいただきたいのです。公明党もふくめて与党こそがこの20年かけて労働条件をぶっこわしてきました。労働条件の改善、とくにコロナで厳しさをます女性の労働条件の改善など、ライアン候補には国会で取り組んでいただければとおもいます。

ライアン真由美候補の出発式

◆核兵器禁止条約発効・コロナ後・西日本大水害後・製鉄所閉鎖後、河井事件後最初の衆院選、政策論議不在に終止符を

今回の衆院選は、核兵器禁止条約発効後、最初の衆院選です。かたくなに条約そのものにさえ反対してきた自民党の姿勢が問われます。また、コロナ災害の発生後、さらに西日本大水害2018後最初の衆院選です。現場公務員削減などで危機管理体制も弱体化してきた自公の新自由主義が問われます。そして、災害が頻発するなかで、安心してくらせる広島、日本をどうつくるか、が問われます。気候変動にも広島からどう対応するか。問われます。そして、製鉄所閉鎖などの中、広島が依存してきた重厚長大産業が大きな曲がり角を迎えます。そして、河井事件後最初の衆院選でもあります。

これまでの政策論議不在の広島の政治に終止符を打たないと大変なことになります。候補者も市民も大いに語り合いたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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広島は今こそ賞味期限切れの「1975年の成功体験」から卒業を! 衆院選・知事選・県議補選・呉市長選を前に1975年生まれの筆者からの提言 さとうしゅういち

◆なぜ、広島の政治は全国でも群をぬいて保守的なのか? 長年の疑問

わたくし、さとうしゅういちは1975年に広島県福山市に生まれましたが、その後は東京で育ちました。2000年に広島県庁に入庁。11年近く、主に県内の山間部の介護や・医療などの行政を担当してきました。2011年にあの河井案里さんと県議選で対決するため退職。その後は広島市内を中心に民間での介護の仕事についています。一方で、わたしは、ジェンダー解消を求める「全国フェミニスト議員連盟」に所属し、全国で女性議員の応援に入らせていただいた経験もあります。この21年間、疑問に思っていたことがあります。

端的にいえば、「なぜ、広島の政治・行政は全国でも群をぬいて保守的なのか?」ということです。

全国でも群を抜いて政策不在の選挙や政治のあり方。政策もろくにかたらない与党勢力の候補が県議選では8割以上も得票する。

全国でも群をぬいて中央官僚のいいなりでの市町村合併・権限丸投げを進めるなど、中央に従属的な行政。

河井案里さんの有罪が確定したいま、案里さんからお金をもらった議員はいわば犯罪事実が確定したのにもかかわらず、だれひとり腹を切らない。

野党第一党も、全国と比べても非正規労働者やケア労働者が直面する問題に対して消極的。中央の市民連合や野党が合意している「原発なき脱炭素」にも後ろ向き。

これらは、いったいどうしてなのか? このままでは、広島は時代の流れから取り残されてしまうのではないか?

長年の疑問であり、わたしの危機感、苛立ちの原因でもありました。

重厚長大産業が立ち並ぶ呉市沿岸部

◆強烈すぎた? 1975年ころの「広島の成功体験」

しかし、とくに2011年以降、政治活動を本格化する中で、有権者のみなさまのお話しや過去の統計などを総合的に分析すると以下の仮説にたどり着きました。

「政治家や企業経営者もふくむ多くの広島県民が1975年ころ、広島がなしとげた成功体験にいまでもとらわれているのではないか? そしてその成功体験とはあまりにも強烈すぎたのではないか?」ということです。

具体的にお話しすると、1975年度、広島県のひとりあたり県民所得は東京、大阪についで第3位でした。わたしも、神奈川県や愛知県などの方が広島より上だったと思っていましたが、そうではなかったのです。

東京が156.7万円、大阪が135.6万円、そして広島は120.4万円でした。ちなみに神奈川県は114.3万円、愛知県が119.6万円。全国平均は111.8万円でした。 

また、この年、山本浩二・衣笠祥雄らを主力に古葉監督率いる広島東洋カープが初優勝。さらにこの年には新幹線が広島駅を通るようになりました。このころ、広島市の郊外には次々と新しく団地が開発され、まさに、広島は栄華を誇っていたのです。

その原動力のひとつは、「原発製造をふくむ重厚長大の大手企業」であることは間違いありません。一方で、戦前の「軍都広島」「軍港呉」の延長で広島が「中枢都市」だったことのメリットがあったのも見逃せません。こうしたことを背景に

・「中央の方針」に従っていれば間違いない。

・「原発製造ふくむ重厚長大産業中心に」突き進めば間違いない。

・山を削って土地をどんどんつくって開発すれば、どんどん工場や人が広島にやってくる。

・大手企業さえよければ、正社員たる男性世帯主を通じて子どもの教育や住宅も大丈夫だ。

という「成功モデル」が無意識のレベルまで染み付いているのではないか?

従って、自民党ですら河野太郎さんあたりは積極的な「原発なき脱炭素」に、広島では野党第一党の一部国会議員も後ろ向きの発信をSNSでする状況があるのも、支持はできませんが、事実認識としてはうなずけます。

◆1980年代には賞味期限切れ、1990年代末には破綻していた「成功モデル」

高校廃校で揺れる呉市焼山地区。デパートもあるのに閑散としていた

しかし、広島の政治も行政も経済界もとらわれていた「成功モデル」はとうの昔に賞味期限切れです。ひとりあたり県民所得の全国比較で見てみましょう。

1976年度には、ひとりあたり県民所得は、東京都171.5、大阪府159.1、愛知県136.5、神奈川県134.8、広島県133.1、全国124.6(単位、万円)と神奈川県、愛知県に抜かれてしまいます。

そして、1982年度からは、東京都272.7、大阪府224.2、愛知県217.3、神奈川県209.8、広島県189.0、全国189.8(単位、万円)と広島県は全国平均を下回っています。

円高不況がはじまった1985年度には、東京都320.3、大阪府242.3、愛知県258.8、神奈川県238.4、広島県212.1、全国220.5(単位、万円)と全国平均に引き離されていきます。鉄鋼や造船などが打撃を受けたことが背景にあったとみられます。

広島アジア大会が開催された1994年度には、東京都421.1、大阪府341.6、愛知県356.3、神奈川県336.0、広島県301.9、全国308.6(単位、万円)。

金融恐慌があった翌年の1998年度には、東京都417.5、大阪府337.1、愛知県359.4、神奈川県332.5、広島県301.3、全国309.3(単位、万円)でした。

このように、1990年代には、全国に遅れをとりつつあった広島ですが、工業団地をはじめとする土地開発が、河井案里さんの師匠で「天皇」と恐れられた県議会議長の檜山俊宏さんらが主導して進められます。開発をしても経済が伸びていないので、必然的に余ります。広島県の財政も悪化します。

◆中央の方針いいなりで新自由主義強行も事態好転せず

このため、1999年度以降は県職員の給料カットや総務省の指導にストレートに従った形での「市町村合併・権限移譲」という名前の「丸投げ・サービスカット」が強行されます。

基準が代わりますので一概に以下は比較できませんが参考までにひとりあたり県民所得の数字を挙げます。

わたしが県庁マンになった2000年には、東京都461.9、大阪府318.0、神奈川県343.1、愛知県343.3、広島県313.0、全国312.2(単位、万円)とやや盛り返すものの、小泉純一郎さんによる新自由主義が頂点に達した2005年度には、東京都454.6、大阪府300.1、神奈川県324.6、愛知県349.8、広島県301.3、全国309.3(単位、万円)と引き離されてしまいます。このころ、大阪が全国平均を下回り、閉塞感が橋下徹さん登場を準備したことも推測されます。

東日本大震災があった2011年度には、東京都526.6、神奈川県301.2、愛知県324.2、大阪府295.3、広島県279.9、全国298.5(単位、万円)と広島は取り残されてしまいます。

そして、西日本大水害があった2018年度には、東京都541.5、神奈川県326.8、愛知県372.8、大阪府319.0、広島県310.9、全国331.7(単位、万円)で、東京の「一人勝ち」構造が鮮明になります。他方で新自由主義が広島や大阪を余計に沈没させていることも見てとれます。

西日本大水害2018では、高度成長期に開発された住宅地が多数被害を受け、多くの方が犠牲になられました。さらに、2021年9月末で呉の日本製鉄が60年の歴史に幕を閉じました。

広島市東区や呉市の高台の住宅地では高度成長期に新設された高校の廃校なども問題になっています。いわゆる過疎地ではなく、都市部で広島が一番栄えた時代に郊外の高台の団地にできた高校の廃校が地域をゆさぶっています。呉駅前ではそごうの跡地が長年、利用方法が決まっていません。コロナ災害に輪をかけて暗いニュースが相次いでいます。

◆衆院選・広島県知事選・県議補選・呉市長選挙を前に 広島はどうすべきか?

10月31日、衆院選が執行されます。11月14日には、広島県知事選・県議補選・呉市長選挙が行われます。コロナと気候変動で多発する水害。二つの大きな災害にどう対応するか? これは大きな論点です。だが、 それは、広島がずっと依拠してきた成功モデルからの卒業を行政にも企業にも県民にも迫るものです。

一方で、広島は日本の都市では東京につぐ知名度があります。製造業の技術も健在です。新幹線駅のほぼ前に野球場がある、東京ほど密ではないが、北海道や東北などのように分散しすぎて不便というほどでもない、ほどほどの生活の便利さがあります。

上記のことを踏まえ、以下のことを県選出の国会議員や県知事、市長(の候補者)、経済界や市民運動・労働運動幹部に提言します。

中国電力本店。ここで原発ゼロを訴えて街宣をした候補者はさとうしゅういちだけだった参院選広島再選挙

「原発なき脱炭素」への転換と暮らしの保障を

たしかに、CO2をたくさん出す鉄鋼業や原発製造をふくむいわゆる重厚長大産業中心に、1970年代くらいまでの広島は栄えました。

しかし、気候変動によるとみられる水害に広島は2014年、2018年、2021年と何度もおそわれています。また、広島から90kmの伊方原発は、一般住宅より耐震性がおとり、地震の巣の上にあります。

鉄鋼についていえば、欧州の大手メーカーが炭素を使わない製鉄法に5兆円を投資しています。エネルギーは効率を考えても「大型の電源でつくって配る」従来の方法を改めてクリーンな方法での「分散型電源」にしていくことに広島のものづくりの技術をいかすべきです。

そして、構造転換に際しては新しいエネルギーや技術開発への投資ともに、従来の方法での現場、例えば原発関連で働いている人たちに思い切った補償・生活の保障をセットでするのです。大幅な財政出動が必要ですが、安倍晋三さんが総理時代に「お友達」やアメリカにばらまいたのとくらべたら、よほど前向きです。

大手企業出先より中小企業の本社誘致

今の時代、大手企業の出先を誘致することの費用対効果は、意外と悪いのではないでしょうか? それよりは、面白い中小企業の本社に移転してもらったほうが、税収の面でもプラスです。東京への密集を防ぐ上でも効果があります。呉駅前のそごう跡地のようなケースでは若い人に無料に近い低額で貸し出し、企業や様々な社会活動をしてもらう、などの手があるのではないでしょうか?

思い切った住まいや教育の保障でチャレンジャー誘致を

住宅や教育を「大手企業正社員たるお父さん」を通じて保障してきたのがこれまでのモデルでした。しかし、そこから外れる人には厳しいモデルでもあります。これからは、思い切った住まいの保障や、また教育の無償化などこそ、チャレンジャーを支援することになるのではないでしょうか? 広島県内では尾道市や佐伯区湯来町あたりなどに新しいことをはじめるために東京などから移住する人も少なくありません。そうした流れを後押しする施策や立法を、県知事にも県選出の国会議員にも望みます。

災害多発と人口減少時代に対応し、新自由主義と新規開発にストップ

人口減少時代にこれ以上の新規開発は無駄です。さらに空き家や空きビルを増やすだけです。また開発された場所によっては水害や地震によるリスクが高まるだけです。2021年7月、熱海では「やりくさし(広島弁でやりかけのまま放棄の意)」の開発が災害の原因となりました。広島でも西日本大水害2018では、南区でやりくさしの開発箇所が崩れ、犠牲者が出ました。国の責任で開発規制を全国で行うべきです。

広島をはじめ瀬戸内は昔から「台風はそれてくれる」というのが常識で災害が少ないと県民の多くも思い込んでいました。しかし、いまや、梅雨や夏期は熱くて湿った空気が瀬戸内地方を直撃し、記録的な豪雨が日常茶飯事になっています。「災害が少ない」という従来の常識をベースに進めてきた広島県の新自由主義はゆきづまっています。

これまで広島県が中央いいなりで強行してきた現場公務員の削減はストップし、ふやすべきです。災害救助隊(日本版サンダーバード)の創設とそれによる国際貢献。また、地方の医療や福祉、教育や防災などをになう公務員の補充および、非正規公務員の正規化をすべきです。前知事は大阪に先んじて新自由主義を進めましたが、新自由主義は東京以外にとっては自分の首を締める行為なのです。広島県民は新自由主義を脱却する議員を国会に送るべきです。

政策議論中心の選挙や政治を

広島の選挙や政治は全国と比べても群をぬいて政策不在です。そのことが、河井事件の背景にもありました。

河井夫妻だけでなく、アンチ河井の政治家も責任は重大です。金権の河井か?組織依存のアンチ河井か?それくらいの違いで、政策不在という点では違いはありません。

対抗するべき野党も現時点では、河井批判で手一杯になりがちでジレンマを抱えています。

ガチンコの政策議論を広島でも活性化する努力を政党や政治家はもちろん、マスコミもすべきです。

社会運動・労働運動もバージョンアップを

広島は世界最初の戦争被爆地であり、反核平和運動は強い。しかし、一方で、労働運動はどうでしょうか?

たとえば、他の地域と比べても非正規の問題、ケア労働者の問題などについての取り組みは遅れているのではないか?わたくし、さとうしゅういちは、この点は責任をもって、活動を担っていきたいとおもいます。

中央・東京への過剰な信仰をやめよ

戦前の広島は軍都であり、その延長で戦後は中枢都市としてのアドバンテージをもってきました。他方で、東京から降りてきたものを真面目にやっていれば大丈夫、という思い込みにもつながっているように思えます。必死で独自のものを考えずに済んだのは恵まれていた証拠です。しかし、変化が大きな時代にはそれが災いします。中央・東京への過剰な信仰はやめましょう。

いままでの「常識」を疑おう

いままでの常識は、たとえば、「山を削って海を埋め立てたり田んぼをつぶしたりして工場や宅地にする」のが進歩です。しかし、災害多発で人口減少時代、食料の入手が困難な時代には、逆に工場が潰れて食料生産工場や農地になるということもあり得ます。いままでと正反対が常識になることも考えて政策立案を!

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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写真1枚目は「重厚長大産業が立ち並ぶ呉市沿岸部」

写真2枚目は「高校廃校で揺れる呉市焼山地区。デパートもあるのに閑散としていた。」

写真3枚目は「中国電力本店。ここで原発ゼロを訴えて街宣をした候補者はさとうしゅういちだけだった参院選広島再選挙」