戦わずにチャンピオンに成る方法(非推奨)! 堀田春樹

◆挑戦者の道

過去、「チャンピオンベルトに纏わる話」と「王座は誰のものか」というテーマでは書いていますが、これらとはまた別の視点になる特殊な王座がテーマです。

今や多くの団体やイベントが存在し、王座乱立も止まらない現状はすでに述べてきたとおりです。楽観的に言えば、しっかりした運営で地位向上を目指して頂ければ価値が上がるというものです。

本来、チャンピオン(国レベルの)に成るには、挑戦有資格者としての地位を確保し、チャンピオンに挑んで勝利する。または王座決定戦に勝利する。これが常識的王座獲得でしょう。ところがキックボクシングに於いてはもう一つ、チャンピオンに成り得る道が存在します。

◆ペーパーチャンピオン?

プロボクシングに於いては、すでに起こっているケン・ノートンの例。1981年に引退し、世界タイトルマッチで一度も勝っていないのに“元・世界ヘビー級チャンピオン”という肩書きが付いてしまいました。

過去、世界王座挑戦で、ジョージ・フォアマン、モハメッド・アリに敗れ、後にWBCから認定された王座はラリー・ホームズに敗れ初防衛成らず。アリ戦もホームズ戦も僅差でしたが負けは負け。これ以前に北米ヘビー級戦でアリに勝ったことがあり、世界王座認定前には挑戦者決定戦でジミー・ヤングに勝利した実績はあるものの、世界タイトル戦未勝利で終わっています。

そんな書類上の“ペーパーチャンピオン”と揶揄される恐れがある、戦わずして昇格される認定チャンピオンは、後に日本のキックボクシング界で派生していきました。

日本のキックボクシングは実質プロモーター制定王座であり、団体役員はジム会長の集まりで成り立っているもので、その時の思惑で役員会議に於いて「多数決により〇〇選手をチャンピオンに決定」といった成り行きも存在します。

当然、実績が無ければそんな話は湧いてきませんが、ある団体代表に尋ねてみたところ、「実績があるからチャンピオンに認定することの何が悪いの?」と言う認識。しかし本来、実績があってこそ“挑戦権”が回って来るものです。

二人は実力有りながら王座には届かなかったが、これが厳しい現状である。弾正勝vs足立秀夫(1982年10月3日)
極真空手からキックボクシング転向で活躍した竹山晴友。礼儀正しく実力あるチャンピオンだった(1986年11月24日)

◆時の運

昭和62年に、竹山晴友(大沢)選手が10戦10勝(10KO)の実績が認められ、日本ミドル級チャンピオンに認定されました。ウェルター級での挑戦者決定戦で鈴木秀男(花澤)にKO勝利し、当時の1位.弾正勝(習志野)に逆転KO勝利した実績は堂々たるのもがありますが、鈴木秀男の雪辱に敗れ初防衛成らず、そのまま引退。ケン・ノートン例が起こっています。実力はあっただけに正規の王座決定戦で勝ち獲らせたかった想いは残ります。

更には、分裂を繰り返しているキックボクシング界で、チャンピオンが新団体へ移った際、そのままスライドする形の初代認定チャンピオンも存在します。これはすでに前・団体でタイトルマッチに勝利している明確な実績が存在しますが、その王座返上して新団体へ移るので、実質スライド式は新たに派生する王座でしょう。

このような認定チャンピオンは、ファンから見れば拘りが無いか認識が低く、「団体が認定するならそれで良いんじゃないの!」と言う意見が多いようで、チャンピオンに手が届かず、夢破れた平成時代の某・選手は「タイトルマッチに勝っていない選手がチャンピオンと言われても、そんな形でチャンピオンに成れるなら、俺の実績も考慮して欲しかったなあ!」という声も少なからず有るものです。

逆に、「俺、いつの間にかチャンピオンに成ってた!」といった事例もありましたが、小規模の私的団体であれば仕方無い範疇と見るしかないかもしれません。

◆終わりなきトーナメントの初戦

分裂が起こり始めた昭和のキックボクシング低迷期に、新団体に移る毎に王座決定戦を勝ち得てチャンピオンに成った元・全日本フェザー級チャンピオンの酒寄晃氏。当時の団体は律儀な手順を踏み、これが当然の認識だったでしょう。

日本のプロボクシングに於いては終戦後のコミッション設立後、戦わずしての認定チャンピオンは誕生していません。さすがにプロモーターとは一線を引いた指揮管轄する組織で、厳格にタイトルマッチの定義を貫く立場です。

かつて徳山昌守氏が言った「チャンピオンロードは終わり無きトーナメント」という敗れるまで続く防衛戦。そこに至る初戦が挑戦者としての戦い。厳しいランキング争奪戦を勝ち上がってもチャンピオンに辿り着けなかった挑戦者、または挑戦する機会すら得られなかった実力者は多いもの。そこからの王座獲得の喜びはリング上で味わって、このチャンピオンシップ制度の価値を高めていって欲しいところです。

勝ち獲るのはどちらか、といった顔合わせは明確な対戦の証 (画像提供:ISKA Japan 中崎寿光)

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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日本政府がウクライナにドローンを供与 ── 戦争を止めるために、何をすれば良いのか? 横山茂彦

◆ナチスの再来を思わせるジェノサイド

「世界の人々は、何か行動を起こしてください」「われわれは化け物と戦っている」(マリウポリのウクライナ軍レポーター)

「国際社会は残虐行為を知りながら見ているだけだ」(ウクライナ大統領側近)

ソ連邦崩壊のトラウマに憑り付かれた独裁者による、独裁維持のための戦争は、新たな段階に入った。

30分に数度の砲撃、1時間置きのミサイル飛来で、ウクライナの東部の町は廃墟と化している。戦争犯罪(虐殺)の痕跡を残さないために、ロシア軍は火葬車を伴っているという。

キーウから撤退したロシア軍はドンバス地方(ウクライナ東部)へと転戦し、最低限の政治目標であるドネツィク州とルハーンシク州(ともにウクライナ語読み)の実効支配確立をめざしている。

この「実効支配」とは、8年間つづいたドンバス戦争(ウクライナ東部の内戦)を最終的に終了させ、ウクライナ住民をロシア各地に移住させることを意味している。ロシア軍が撒いている「極東ロシアが、あなたを待っている」というチラシの呼び掛けがそれを立証した。

そのいっぽうで、ロシア軍が支配下に置いていたブチャなどキーウ郊外の町では、後ろ手に縛られた市民が銃殺されている。侵略者に従わなければ、銃殺する戦争犯罪が行なわれたのだ。いわばロシアによる「同化政策」「民族浄化」が、今回の軍事侵攻の目的なのだと断定するほかない。

したがって、ウクライナの徹底抗戦の意志は、強いられた生存への戦いということになる。それゆえに、日本におけるわれわれの行動は、単なる反戦運動ではなくなるはずだ。

◆救国戦争とは?

地続きの国境線を持たないわれわれ日本人には、なかなか想像できない現実だが、想像力をはたらかせれば理解できる。

やや荒唐無稽な想像だが、ある国が在日邦人を保護するために、軍隊を日本に上陸させたと仮定しよう。上陸しないまでもミサイル攻撃を受けたと仮定しよう。じっさいに、日本はロシアと国境を接し、中国の領海侵犯および北朝鮮のミサイル圏内にある。

かれらは日本の都市を破壊しつくす。そして無防備なわれわれを連行し、移住先への切符といくばくかの準備資金、そして土地を提供(ロシア移住の場合は25万円と1ヘクタールの土地)するという。われわれは、その国の国民にされるのだ。

このような仮定を想像したとき、わたしは間違いなく抵抗するであろう。

ためらわずに武器をとって戦うであろう。かつてナチスの支配に抵抗したフランスやポーランドのレジスタンスのように。あるいは日本の侵略に抗して戦った八路軍のように。戦後日本の民衆も相手の暴力に相応して、コザや三里塚では武器を持って戦ってきた。

侵略者から身を守るために、戦う武器の供与を世界にもとめるはずだ。いまのウクライナのように。

ここに、帝国主義の侵略に反対する反戦の思想が、反侵略の救国戦争においては戦争の思想に変化するのだ。

このことは、80年前後のソ連のアフガン侵攻と中越紛争の時期にも議論されてきたものだ。ソ連のアフガン侵攻のように国境を侵す以上は「侵略」であり、中国のカンボジア支援の国境侵犯は「牽制」にあたるなどと、当時は華国鋒体制を支持する立場から論じられたものだった。

その後、鄧小平政権になってからも、ベトナムとの国境紛争はつづいた。そこで得られた結論は、たとえ反覇権の社会主義中国であろうと、日本を侵略した場合は日本人民の敵であると。革命中国(懐かしい言葉だ)の第五列として、日本革命に転化するという議論は起きなかった。

◆武器供与の問題

さて、現在問題になっているのは、ウクライナへの武器供与である。反戦運動の立場からは、戦争を激化させる武器供与に反対するのが原則だ。憲法9条に拠らずとも、武器供与は違法(防衛装備移転三原則違反)であると。

だがこの原則は、帝国主義の侵略に加担する自国の政府に「武器を供与させない」運動としては有効であっても、侵略された国への支援(供与)は行うべきではないか。少なくとも反対するのであれば、戦争の終わらせ方をも展望したものでなければならない。

すなわち、敗北による強制連行や民族浄化にも、反戦運動は責任を持たなければならない。いま「武器供与に反対」することは、ウクライナの敗北すなわちロシアへの隷属を意味するからだ。それはキーウにおけるロシア軍の敗退という「事実においても、戦わなければ占領・隷属させられることが実証された。

かつてべトナム反戦運動において、反対運動の抗議がアメリカと日本政府に向かったのは、ほかならぬ日米安保体制がベトナム侵略に加担したからである。ベトナムに向かう戦車が国鉄を使用していたし、沖縄米軍基地のB52がベトナムを爆撃していたからなのだ。

したがって、アメリカはウクライナへ武器を送れというスローガンを掲げるかどうかは別(あまりにも右翼的だ)として、ウクライナを見殺しにする武器供与反対も憚られる。人道的な支援として、ウクライナ大使館や民間援助団体への寄付は、積極的に行われるべきであろう。

いま、ヨーロッパ諸国の中で武器供与に消極的なドイツでは、シュルツ首相が与野党の批判を浴びている。シュルツの出身母体が、ロシアと親密な関係にあるSPD(ドイツ社民党)であることも、この批判には含まれていると思われる。

いっぽう、わが岸田政権は防護服や防護器具のほか、ドローンをウクライナに供与するという。


◎[参考動画]【政府】ウクライナに防護マスクやドローンなど提供へ(日本テレビ 2022年4月19日)

◆ドローンが戦況を支配している

いわく「ドローンは市販品であり、武器に使われるものではない」と。供与に反対する立場にはないが、敢えて指摘しておこう。ドローンの存在がロシア軍を苦戦させていることを。

ロシア黒海艦隊旗艦のミサイル巡洋艦モスクワは、対艦ミサイルネプチューンに撃沈されたとされているが、じつはドローンが攻撃に参加していたのではないかという説が、にわかに信憑性を帯びている。

というのも、それを示唆したのがロシア軍部に近いSNSのアカウント(Reverse Side of the Meda)だからだ。

同アカウントが公表したモスクワ沈没の経過によれば、ウクライナ海軍が所有するドローン(バイラクタルTB2)が、ネプチューン到達前にモスクワを攻撃したという。モスクワ搭載の防空システム(S-300F)がドローンに集中している間に、ネプチューンがモスクワに命中したというものだ。

この指摘を受けて、米誌「フォーブス」の電子版が14日に「ウクライナのバイラクタル・ドローンがロシア艦隊の旗艦「モスクワ」を沈めるのに寄与した」という記事を掲載している。いま軍事専門家のあいだでは、ドローンがネプチューンの制御(標的算出)に用いられたのか、防空システムを集中させる標的(囮)になったのか、あるいはドローンに搭載された小型ミサイル(MAM-1)による被弾なのか、さまざまに見解が分かれている。

いずれにしても、飛来した対艦ミサイルがウクライナ当局が主張する2発ならば、対艦防空システムで防げたはずだというのだ。

そもそも、第二次大戦の軍艦とはちがって、現代の艦船は防御装甲がきわめて脆弱である。大戦中の重巡洋艦と現代の巡洋艦が、大砲の射程距離内で撃ち合いをやったら、現代の巡洋艦は数発で撃沈されるという。大戦中の旧戦艦・重巡洋艦には艦測バルジ(装甲突起)があり、容易に沈まないのだ。たとえば雷撃機の攻撃で舵が効かなくなったドイツの戦艦ビスマルクが、英米海軍の砲撃では沈まず、最後はキングストン弁を開けて自沈したことが、最近の調査で明らかになっている。

いっぽう現代の艦船は、近距離で撃ち合う海戦を想定していない。装甲は軽量化(高速化)のために申し訳程度で、もっぱら防空システム(CIWS)と防空ミサイル(赤外線追尾)に依存している。このうちCIWSとは、ガトリング砲(円形に6門の砲身をもつ機関銃)がレーダーとコンピュータ制御でミサイルを撃ち落すものだ。1分間に3000発の掃射が可能だとされている。

ぎゃくに言えば、ドローンや無人機を飛ばしてCIWSをそっちに集中させれば、ミサイルがやすやすと艦体を捉えることが可能になることを、今回のモスクワ撃沈が立証したことになる。

それはともかく、キーウ防衛でドローンと軍事衛星が果たした役割は大きかった。ロシア軍の戦闘車両は的確にその位置を把握され、対戦車ミサイルジャベリンの犠牲になった。市販のものでも、ドローンは近代戦争に不可欠の武器になりつつある。


◎[参考動画]「ウクライナを支えるドローン部隊の実態に迫る!」(日本テレビ【深層NEWS】2022年4月14日)

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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「食」で地元に貢献20年、フードバンク共同代表の大学教授が選挙に初挑戦する広島市議補選第2ラウンド さとうしゅういち

広島市では、河井事件で辞職した市議の穴を埋める補欠選挙が相次いでいます。第一ラウンドは安芸区で行われ、定数1に4人が立候補。自民主流派の推す元市職員が圧勝。自民党主流会派に入会しました。第二ラウンドは安佐北区で4月15日告示、24日執行で行われます。定数2に以下の7人が立候補します。

無所属新人の会社社長山下正寛さん(45)、無所属新人の大学教授原田佳子さん(69)、共産党新人の党県委員清水貞子さん(75)、無所属新人の会社社長三宅朗充さん(56)、無所属新人の元県議正木篤さん(71)、無所属元職の酒店経営加藤万蔵さん(76)、無所属新人のオンライン学習塾経営大田清さん(49)です。

このうち、大田さんは第一ラウンドの安芸区補選につづく挑戦。正木さんは、2011年に県議に当選も無免許運転が発覚。2年以上も議席に居座ったあげく、2013年にリコールされました。その後も何度か選挙に立候補され、「一定の票」は得ています。

◆「過疎化」に相次ぐ水害が追い打ち

安佐北区は広島市の最北端に位置します。人口は可部線の可部駅を中心とする可部地区と芸備線沿線の高陽地区のニュータウンに集中しています。

他方で、冬には雪が多いときには数十センチも積もるような山岳地帯も抱えています。1990年代など、一時期は人口が20万人に迫るか、という勢いを見せていた安佐北区ですが、最近ではニュータウンで高齢化が進行。また、年配者は介護や医療のサービスが受けやすく買い物も便利な広島市の旧市街に回帰。いわゆる子育て世帯も南の安佐南区の方が便利ということで、そちらに新居を構える方も多く、過疎化が進んでいます。そこへ広島土砂災害2014,西日本大水害2018が追い打ちをかけました(写真は西日本大水害2018での安佐北区口田地区の被災現場)。筆者もボランティア活動中に倒れ、伊藤昭善市議に救護をいただいた思い出があります。その伊藤市議が河井事件でお金をもらい、現在は辞職せずに裁判闘争をされているのには筆者も文章ではとてもではないが表現できぬ複雑な想いです。

◆立憲民主党、連続不戦敗で野党支持者はカオス状況

今回の補欠選挙では、野党第一党の立憲民主党は候補を出していません。市議補選の第一ラウンドである安芸区に続く不戦敗です。これでは、とくに野党を支持している有権者は選びようがないのも事実でしょう。共産党の候補も出ておられます。

しかし、複数区で支持政党以外の公認候補に投票というのは難しい。そして、本選挙でライバルにもなるし、参院選ではライバルの足腰を補強する結果になるからです。立憲民主党幹部も、現職市議は別の保守系無所属候補、森本・宮口両参議院議員もさらに別の保守系無所属候補を消極的に推すというカオス状況です。党利党略以前に自分たちが、一定のアンチ自民票を得て、議席を防衛できさえすればいい。自分の政党でもライバルにもなる議員が生まれるのはのぞまない。

一方で、自民党は自由に保守系無所属候補を立候補させておいて、あとから追加公認したり自民党会派に入れたり。なぜ、広島で野党が弱く、与党が強いか。その背景のひとつを今回、かいまみました。

◆筆者は長年「食」で地域貢献の原田候補を応援

過疎化、災害に政治腐敗。地域課題が山積する中で、生活に困っている人も、コロナの前から増え、コロナが追い打ちをかけている状況は安佐北区も例外ではありません。そんな安佐北区でフードバンクの活動に長年携わり、困窮者への食料供給や食育に力を入れてきた大学教授です。

さて、なぜ、筆者は原田候補を応援するのか?

広島県、とくに広島市内の政治や選挙はこれまで政策の議論がおきざりにされてきました。国会、県議会、市議会ともその傾向は強く、選挙結果の大勢は政策の議論よりも、組織(力)で決まってしまっていました。

また、与野党関係なく、新規に政治に参画しようとする人に冷たい傾向を感じてきました。その結果、県議選では無投票、という選挙区も多数出る始末です。

一方で、こうした「組織本位」の広島の政治文化への反発の勢いあまって、「若ければ誰でもよい」的な流れも市民の間に一定程度強まったのも理解できます。

こうした流れを県議選安佐南区や参院選2019における河井案里さんや、そして、彼女のバックともいわれる安倍晋三さんらがうまくつかんだとみられます。しかし、その結果が大買収事件でした。

世襲や高級官僚「ばかり」だった広島与党本流にも、いわゆる「労働貴族」の影響がつよい野党にも、もちろん、「まったく新しい」を偽装していた案里さんにも、不足していた要素を大幅に広島の政界に補充し、広島の政治をリニューアルすることが、国政、地方関係なく大事ではないでしょうか?

今、原田よしこさんのような、長年、地道に一つの課題にじっくりと取り組んで来られた方を政治に送ることもその具体策のひとつである。そのように筆者は確信しています。

コロナの前から厳しく、コロナが追い打ちをかけ、さらに戦争による食料危機などがトドメをさしかねない庶民のくらし。フードバンクに取り組んで来られた原田さんの力がいまこそ、広島に必要ではないでしょうか。


◎[参考動画]原田よしこ候補の公式チャンネル

◆初々しい原田候補の出発式

原田候補は告示のわずか1ヶ月前に立候補を決断しました。困窮者への食料配給作業を続ける傍らでの選挙準備を拝見し、頭が下がる思いです。

15日、可部3丁目の事務所で出発式が行われました。無所属の女性広島市議、立憲民主党衆院候補、国政地方とも立候補経験のある筆者(れいわ新選組所属)を除けば、いわゆる素人の方ばかりです。それがいいのです。初々しさを醸し出していました。筆者ふくむ政党関係者も、挨拶などで、でしゃばることなく、一般市民と同じように候補の話をうかがい、そして黙々と地味な作業に徹しました。

原田候補も時々原稿に目をおとしながら緊張してしゃべっておられましたが、フレッシュな感じがしました。

子育て世帯向けには学校給食保護者負担ゼロ。

そして、高齢者に元気を!

安佐北区が2014、2018と大きな水害に見舞われたことに関連し、気候変動対策にも触れました。

そして政治を分かりやすく語ることで、クリーンな政治を、と訴えました。


◎[参考動画]筆者撮影の動画

◎原田よしこ候補の政策とプロフィール https://haradayoshiko.net/ 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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《鹿砦社特別取材班座談会》「鹿砦社ヘイト」(!?)を粉砕しよう! ── 対藤井正美控訴審、またぞろ始まった鹿砦社への誹謗中傷について語る

◆対藤井正美(しばき隊中心メンバー、元鹿砦社社員)控訴への内部事情

松岡 先日対藤井裁判、不当判決を受けて、控訴理由書を完成させました。一連の「しばき隊」関連訴訟は、これが最後になると思いますが、みなさんの感想を聞かせてください。

A  社長、これちょっと一般の人向けに説明しとかなあかんと思うんです。

松岡 どういうことですか?

A  いままでの裁判は、当たりまえやけど弁護士の先生にお願いしてましたやんか。でもこの控訴は、ちゃうんやと……。

松岡 あっそうですね。迂闊でした。私からまずお伝えします。Aさんが指摘されたように、これまでの「しばき隊」関連(「しばき隊」関連でなくとも)訴訟では、必ず弁護士の先生を選任して法廷闘争の指揮や実務をお願いしてきました。対藤井裁判でも大阪地裁では森野俊彦弁護士に無理をお願いし、代理人となって頂いていたのです。

ところが正直な話をすると、昨年の8月頃から鹿砦社はコロナ禍による、急激な売り上げ減少に見舞われました。一時は越年もおぼつかないのではないか、と思われるほど厳しい状況でしたが、多くの皆さんにご支援を頂き、なんとか年を越えることはできました。なかでも社債が1千万円集まったことは大きく、思わず涙が出ましたよ。まだまだ「極左崩れの企業ゴロ」と揶揄する人間がいても、「自由な言論」を希求する、鹿砦社に対する期待を抱いていただいているのだと、感じ入りました。

B  そのあとに、まさかの不当判決でしょ。だから俺、当初は控訴に反対してたんですよ。誰が見ても藤井の不法行為は明らかなのに、これで負けるとなると、じゃあどうすれば勝てるのか……。

松岡 そうそう。Bさんは大阪地裁判決を読んで即座に「控訴すべきではない。裁判所は鹿砦社に偏見を持っていることが明らかだから、言論で勝負すべきだ」と意見を明かされました。

B  だってね、いいですか。対藤井裁判だけではなくこれまでの裁判では取材をしてある記事を証拠で出しても「取材をしていない」なんて平気で判決が出る。簡単にいえば「ある」ものを「ない」というってこと。そういう無茶が平気で通る場所で、いくら証拠を出しても、論理を筋道立てて展開しても勝てる道理がない。これ、実は深刻な社会問題だけど、大手メディアまでそれに乗っかって(笑)。鹿砦社には司法記者クラブで記者会見すら開かせてくれないんですから。もう17年近く前になるけど、社長が「名誉毀損」容疑で逮捕された時でも、誰が見ても明らかに出版弾圧なのに、「鹿砦社だったら仕方ない」と言われたこともあった。俺、この言葉心底嫌いだけど、あえて使えば「鹿砦社ヘイト」ですよ。そんな場所に力を使うのはやめようと。椅子蹴飛ばし、壁を殴りながら、社長やみんなにメールしましたよ。

画像の左が藤井正美。上部に野間の推奨コメントがある。松岡ら鹿砦社の関係者は、この画像を見て強い衝撃を受けた
藤井が発信したツイッターの一部

C  あの晩Bさん悪酔いしてましたもんね。

B  え? なんで? 俺、自分の部屋から出てないんだけど。

C  12時過ぎにへべれけになって、僕に電話してきたじゃないですか。

B  Cに? 覚えてない。

C  覚えてないんですか! 2時間一方的に怒鳴ってたじゃないですか。

A  Bさんだけやなく、「もう裁判所ええかげんにせい!」は取材班共通の怒りやったからな。まあしゃあないんちゃうか。

C  でも、一番割食ったんって、僕ですやん。

松岡 皆さんにはご迷惑をかけました。そんなこともあったので皆さんの意見を伺いながらも、控訴すべきか、名誉の撤退すべきか、私も悩みました。

D  社長が悩むときは、悩んでるフリですやんか。やめるわけがないもん(笑)。Bさんと社長の激烈なメールのやり取り見とったら、喧嘩になるんちゃうかと思って冷や冷やでしたよ。

B  俺は「撤退派」の急先鋒だったね。会社の経営状態も一定程度知ってたし。言葉悪いけどね、「偏向した裁判所」に鹿砦社が金使う余裕がいまはない、の判断もあったよ。

松岡 Bさんの厳しい指摘を受けて私も考えましたね。たしかにご厚意で、社債を引き受けていただいたり、定期購読を申し込んでいただいたり、カンパとかね。支援していただいている中でどうすればいいのか、でもこのまま引き下がってもいいものか……。ここはBさんと違う性格で、血の一滴、涙の一滴が枯れるまで闘うと。17年前もそうだったけれど、アントニオ猪木の言葉じゃないけど「苦しみの中から立ち上がれ!」ですよ。

B  社長! それに俺は反対したんですよ! 裁判所は義理人情・精神論の通じる場所じゃない。それ以前に鹿砦社相手だと、証拠も論理も通じない。だから撤退しようとね!

A  それから、敢えてこの判決を確定させて、社会問題化させようか、という議論もありましたよね。簡単にいえば「勤務時間中に会社の業務とは関係ない膨大なツイッターやメールに時間を割いても問題はない」という判決でしょ? これが確定したら企業困るの間違いないですもん。

C  本田能久というのが裁判長だったんだけど、よくこんな無茶な判決書けたと思いますね。経団連とかに垂れ込んだら大事件になってたんちゃいますかね。

D  本田能久は悪質ですね。東住吉冤罪事件の被害者青木恵子さんの国賠でも、あたかも「和解」を勧めるかの如く振舞って、国が和解を蹴ったら、「国に賠償命令なし」の判決を出した裁判官でしょ。酷いよな。

B  一連の不当判決の「嵐」に、懇意にしている法曹関係者やジャーナリストは皆さん腰抜かしてますね。俺も入院したもん。

一同 またまた、冗談でしょ。

B  ところがこれは本当なんだ。控訴するかどうかを決めるのは原告、つまり社長だけど、控訴期限と俺の入院が重なってね。

C  Bさん本当に入院してたんですか?

B  うん。

C  失礼しました。

A  結局、社長の判断で控訴が決まり、ベテランのジャーナリストの皆さんや、多くの方々のご意見を反映させた長文の控訴理由書が完成したんですよね。

松岡 そうです。いろいろな皆さんのご意見を聞き、やはりこれは最後まで闘わなければ、と決意しました。でもBさんの指摘はその通りの部分もあったので、今回は、意見は頂くものの代理人の弁護士先生をお願いせず、私たちの想いをダイレクトに裁判所に伝わるように「本人控訴」としました。印紙代実費は掛かりますが、それ以外にはお金を使っていません。

苦しい時期だったからこその窮余の措置ですが、この「控訴理由書」は、血と涙の結晶でした。ただそれができたのも、17年前の「名誉毀損」事件や、50年前の三里塚闘争で腰まで沼に浸かって逃げたことなどが肥やしになっていると思います。また、譬えは悪いけど日々テレビに映し出されるウクライナの戦士には比べるべくもないですが。私はそう簡単にはくたばりません。

B  社長の回顧談は事実にしても、こういうのを「学生運動武勇伝をいまだに話す新左翼の爺さん」って藤井に書かれるんだよな(苦笑)。それはそれとして、本人控訴を社長が決断したから、「なら俺も手伝います」となったわけよ。

C  わかりにくいですね。いつもBさんの話って。

B  なに言ってるんだ! 相変わらずCは飲み込み悪いな!

A  まあまあ、後で叱っておきますから。

◆再開された鹿砦社やリンチ被害者M君への誹謗中傷を許さない!

 
c.r.a.cによる誹謗ツイートのごく一部。ホワイトで消した部分は、リンチ被害者M君の実名

D  ところで最近また「しばき隊」がなにを考えたのか鹿砦社やリンチ被害者M君中傷を再開しましたね。

C  社長のフェイスブックにも載ってたやつですよね。

A  サイバー班って、いまも動いてるんですけど凄いですよ。「しばき隊」の「内ゲバ状態」を人間関係ピンポイントで挙げて説明してくれますもんね。どんだけ調査能力あるんやろうと。今回も内ゲバきっかけにまたこっちサイドへの誹謗中傷が出てきたようですね。

松岡 まさに「説明テンプレ」ですね。

B  社長、ちょっと口軽すぎます。

松岡 失礼しました。

D  でも、残党はもう確信犯というかカルト化したSNS依存症ばかりで、リツイートとか見ると「またこいつか」の名前ばかりですよね。

B  そうそう。元祖ネット荒らしのNね。反原連で鹿砦社に後ろ足で砂かけたミサオ・レッドウルフとは内ゲバ状態のようですね。ミサオは山本太郎にすり寄ったけど、Nには有田芳生議員がいますしね。あんまり有名じゃないところでは、京都の南の方で資本金3億円以上の企業で取締役やっている、いまや悪役ロシアの革命家レーニンじゃなく、え~とLenyとかいうお偉いさんとか。〇アンコってお菓子屋さんかと思ったら違うんだよな。

A  ナイスボケです。笑っときます。

松岡 十三でね。あれを、あれして、いまでもあれしている人とかね。

 
Lenyこと鈴木伸哉による誹謗ツイートのごく一部。ホワイトで消した部分は、リンチ被害者M君の実名

A  社長、きょうは滑舌いいですね。「棺桶に片足突っ込んでいる爺さん」のようには見えないですよ。

松岡 それは、藤井正美が私を評しツイートした言葉ですよね。でも大阪地裁によれば、名誉棄損ではないそうです。

一同 爆笑

C  やーい、やーい「棺桶に片足突っ込んでいる爺さん」裁判所のお墨付きだから怒られないわ(笑)。

B  それからSNS中毒者の発信には、いちいち反応しない。これ試験に出るよ! 実際命落とした人までいるからね。

A  Bさんが怖いのは、本当に「命落とした人」を本当に知ってるところですわ。ただ、鹿砦社に対する不当な罵詈雑言はほぼすべて、サイバー班が記録してくれているのは心強いですね。

C  たしかに。

松岡 私も誹謗中傷にはいちいち反応しないつもりでしたが、Lenyこと鈴木伸哉のツイートは以前から酷過ぎるので、いつまでも「仏の松岡」とはいかないつもりです。なんらかの“措置”は考えようと思っています。「極左」「極左」って言いますが、何が「極左」なんだろうね? 私が京都でLenyや神原元弁護士らの言うところの「極左」の学生運動に関わっていたのはもう50年近く前の1970年代の前半ですよ。そんなに「極左」「極左」と言うのなら「ええやないか、半世紀前に戻ってお前らの言う『極左』の神髄見せたるわ」ってなもんです。

同上

A  社長、時節柄それはどうかと思いますが……。

松岡 ハハハ、半分冗談ですよ。いずれにせよ、時機が来たら、27ページと長文になりましたが、控訴理由書は全文公開します。大阪地裁判決がどんなに無茶苦茶だったのかを、法律の専門家ではない私が書いたので誰にでもわかりやすいと思います。

C  社長の文章って繰り返しが多かったり、ちょっと古い表現が多いかなぁと思うんですけど今回は大丈夫なんですか。

B  C、お前度胸のある質問するな。

C  だって俺、『紙の爆弾』のライバルとも言える、香山リカも連載してる月刊誌『壊』(偽名)の仕事ゲットしたんですよ!

大学院生リンチ加害者と隠蔽に加担する懲りない面々(『カウンターと暴力の病理』グラビアより)

B  そうか。それはおめでとう。でもB、知ってるか? あそこはどんな有名な作家にも原稿料払わないんだよ。怒って、それを一冊本にしたライターもいるぐらい。連載してた有名な作家だけには「原稿料払っているだろう」が業界のウワサだったけど、彼女も実はもらってなかった(笑)。俺も何回か書いたけど一回も原稿料はもらってないぞ。

C  ホンマですか!?

松岡 お前、そんなことも知らなかったんかあ? 

B  〇アンコジャパンで、甘いもんもろうて、十三で「○○は友達」って叫んで来い!

C  鹿砦社に関わってる人間って、なんなんやろ……。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

石川県中能登町で町長選をめぐる不正疑惑が浮上、候補者が無理心中、真相解明を阻む「100日裁判」の壁 黒薮哲哉

石川県中能登町で行われた町長選をめぐって、選挙管理委員会が絡んだ不正選挙疑惑が浮上している。皮肉なことに「100日裁判」と呼ばれる司法の壁が、事件の真相解明を阻んでいる。そこから、権力構造の歯車としての司法の立ち位置と、形骸化した日本の議会制民主主義の実態が輪郭を現わしてきた。

 
記者会見する木原弁護士と林前町議

事件の発端は、2021年3月21日に投開票が行われた町長選である。この町長選で落選した林真弥(前町議)氏は、選挙管理委員会に対して選挙の無効を申し立てたが、選管はこれを棄却した。そこで林前町議は、石川県選挙管理委員会に対して審査を申し立てた。しかし、石川県選挙管理委員会は、それを棄却した。

そこで林前町議は昨年の9月29日に、石川県選挙管理委員会を相手に選挙の無効を求める裁判(名古屋高等裁判所・金沢支部、合議体)を起こしたのである。審理は現在、林前議員側が忌避(裁判官の交代を求める手続きで、現在は最高裁で継続している)の手続きを行っているために中断している。

このところ地方議会を舞台とした不祥事が相次いでいる。たとえば以前に筆者がとり上げた神奈川県真鶴町の事件である。町長(当時は町職員)が選挙管理委員会の職員と結託して選挙人名簿などの複写を持ち出し、自らの選挙に使用した事件である。現在、住民グループが町長らを横浜地検へ刑事告発している。

◎[参考記事]すでに崩壊か、日本の議会制民主主義? 神奈川県真鶴町で「不正選挙」、松本一彦町長と選挙管理委員会の事務局長が選挙人名簿などを3人の候補者へ提供 http://www.rokusaisha.com/wp/?p=40794

この記事を読んだ石川県中能登町の住民が、同町で起きた事件についての情報を筆者に提供したのである。

◆町長選の候補者が母親と無理心中

疑惑は、昨年の3月21日に投開票が行われた町長選で浮上した。この選挙には当初、尾田良一(前町議)氏、林真弥(前町議)氏、それに廣瀬康雄氏(前副町長)の3名が立候補した。このうち廣瀬氏は、杉本栄蔵前町長の後継者とみられていたらしい。

ところが廣瀬氏は、選挙選がスターとする前に変死を遂げる。

2021年2月16日付け『北陸中日新聞』(電子)によると、「中能登町武部の前副町長、広瀬康雄さん(65)方で、『家族二人が血だらけで意識がない』と、親族の女性から一一九番があった。駆け付けた七尾署員が、広瀬さんと母芳江さん(93)が同じ部屋でいずれも首から血を流し倒れているのを発見。二人は病院に搬送されたが、一時間後に死亡が確認された。広瀬さんは3月16日告示の同町長選に出馬予定だった」(https://www.chunichi.co.jp/article/202839)という。

警察は、後日、この事件を無理心中と結論づけた。実際、廣瀬氏は町長選に出馬することを嫌がっていたという。廣瀬氏は、副町長の経験があるとはいえ、元々は中能登町の職員で、選挙の経験はない。

 
当選した宮下為幸氏、自民党石川県連、公明党県本部推薦(出典:北國新聞電子版、2021年3月21日)

とはいえ町の工事請負業者選定委員会の委員長などを務め、杉本町長とは親密な関係にあった。杉本町長の会社である杉本工務店の公共事業の入札に関して、林前町議から談合疑惑を追及されたこともある。町長を務めるにしては汚点があったのだ。その廣瀬氏が心理的なプレッシャーから自殺したのだ。

廣瀬陣営としては、談合を追及したことがある林前議員が町長に当選する事態だけはどうしても避けたかったようだ。そこでやはり杉本町長に近い宮下為之氏(撚糸の会社の経営者)を擁立したが、選挙選には完全に出遅れたのである。ところが開票の結果、次のようになった。

宮下為之:5,069
林 真弥:2,565
尾田良一:1,501

この選挙結果に林前町議が異議を申し立てた。開票プロセスの中で、宮下陣営に不正があったとして、4月5日に中能登町の選挙管理委員会に対して選挙の無効を申し立てたのだ。しかし、申し立ては却下された。そこで前町議は石川県選挙管理委員会に審査を求めた。審査は却下された。そこで林前議員は、最終的に石川県選挙管理委員会を被告として選挙の無効を求める裁判を起こしたのである。

◎訴状の全文 http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2022/04/mdk220415.pdf

 
中能登町役場(出典=ウィキペディア)

◆林前町議が裁判所へ求めた4つの調査

林氏が、不正選挙の根拠としたものは、開票のプロセスに不可解な点があることだ。

訴状によると、最初に開票された当日投票分は、林氏が2400票で宮下氏が1200票だったが、「17分の立会人への回付が止まった後に回付された期日前投票」(訴状)の票は、林氏が100票、宮下氏が3200票になっていたという。その原因として、期日前投票の票が、すり替えられたり、偽造された可能性などを指摘している。また、開票作業中にすり替えが行われた可能性も指摘している。

これに対して石川県選挙管理委員会は、「一時的にせよ、原告が大幅に得票数でリードしていた、あるいは17分間という長時間にわたり、選挙立会人への回付が止まったという事実はない」と真向から反論している。また、投開票のプロセスにも汚点はないと主張している。

原告は、今回の町長選に限って開票の際に票の「読み取り分類機」が使用されなかったことも疑問視している。

原告の林前町議は、11月24日に行われた第1回口頭弁論で次の4点について裁判所が職権で調査するように申し立てた。

1、北國新聞が実施した出口調査の結果の開示。(調査嘱託申立書)

2、未使用の投票用紙の確認。(検証物提示命令及び検証申立書)
 ※票のすり替えがなければ、適正な枚数の用紙が残っている。当然、有効票についても確認する

3、有効票の筆跡鑑定(鑑定申出書)

4、開票作業のビデオ映像の確認(調査嘱託申立書(2))
 ※テレビ金沢と北陸朝日放送がそれぞれ撮影したとされる開票作業のビデオにより、開票作業が公正に行われたか否かを確認する。

◆真相解明の壁、「100日裁判」

閉廷後に記者会見した林前町議と代理人の木原功仁哉弁護士によると、蓮井俊治裁判長は早々に請求を却下すると告げたという。これに対して木原弁護士が抗議したところ、蓮井裁判長は第2回の口頭弁論の期日を12月24日に設定した。1回で結審することに、さすがに良心の呵責を感じたのだろう。

しかし、第2回口頭弁論で裁判長は結審を決めた。もちろん原告が裁判所に求めた4件の調査も実施されない。こうした状況の下で原告は、裁判官らの忌避を申し立てた。しかし、それも却下された。原告は抗告、さらには特別抗告(最高裁)を申し立てたが、やはり棄却された。現在、裁判は継続している。

ちなみに選挙の無効などを求める裁判では、公職選挙法の213条が適用され、裁判を迅速に進めるために、起訴から100日以内に判決を出すよう努めなければならないとされている。俗に「100日裁判」と呼ばれている。中能登町のケースも、「100日」裁判が適用されたのである。

しかし、筆者が取材した限りでは、明らかな疑惑がある。選挙結果が覆らないにしても、裁判所は真相を解明する義務がある。とりわけこの町長選に関連しては、自殺者が出ているわけだから、曖昧に闇に葬るわけにはいかない。司法制度が不正を隠す役割を担ってはいけない。

日本の議会制民主主義は形骸化して、すでに中身は崩壊している可能性もある。選挙監視団を導入する制度が必要なまでに劣化しているのではないか。


◎[参考動画]2021年11月24日の記者会見

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!
黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』

大阪IR・カジノで大阪がつぶれる! 「負け」が決まっている大バクチに、大阪維新が突き進む理由 尾崎美代子

大阪で多重債務者らを支援する「大阪いちょうの会」の事務局長・川内泰雄氏から、西成でヤミ金に悩む人たちの相談の場を作りたいといわれ、店で相談会を数回やったのち、西成市民館での週1回の無料相談会に繋げることができた。10数年前のことだ。その川内氏から当時、ギャンブル依存症の問題からカジノ問題を教えて頂いた。韓国で、韓国人の入場を認めているカジノ「江原ランド」周辺に、質屋、中古車店、風俗店、金融屋が多数でき、「カジノホームレス」が増えている実態など。ほかにも、マネーロンダリング、治安の悪化など問題山積のカジノを含むIR計画を、大阪維新が進めている。公金を絶対使わないと豪語してきた大阪維新だが、昨年12月公金を投入することが発覚し、潮目が一挙に変わってきた。

◆「違うんです」と公金投入を否定してきた松井市長

大阪府と大阪市は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を、大阪湾の埋め立て地「夢洲」で進めている。昨年12月21日、大阪府と大阪市、事業者に決まった米国MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス合同の大阪IR社で作成した「区画整備計画案」が公表された。3月24日府議会で、29日市議会でIRカジノ関連議案が採択されたため、4月末に国へ申請を行うこととなった。

これまで「カジノに税金は一切使わない」と公言してきた松井市長だが、12月21日の計画案で、夢洲の液状化対策や土壌汚染の改良工事費用に約800億円の公金が投入されることが明らかになった。

2月16日、大阪府と大阪市が大阪IR社との間で締結した「基本協定」によれば、初期投資1兆0800億円、経済波及効果は1兆1400億円(運営)で、年間売り上げは5200億円(うち8割の4200億円がカジノ)となりという試算が出ている。大阪府は、そこから年740億円の納付金を受け取るほか、入場者収入320億円と120億円の税収も入るという計算だ。儲かるならば、ばくちに公金を投入しても良いという訳ではないが、果たしてこの構想は実現可能なのだろうか。

大阪府内各地で繰り広げられる署名活動

◆大阪維新の「負の遺産を作り替える」のウソ

その検証の前に、大阪維新のいつものやり口からカジノ構想が始めった経緯を見てみよう。実は、松井市長自身も「IRは全員が賛成とは思っていない。賛否拮抗していると思う。ただ夢洲の負の遺産を有効な資産に作り替えると公約で掲げ、エンタメの拠点としていく」と発言している。出た! 大阪維新の「負の遺産」。「どうしようもない場所を維新が見事に発展させてやった」という維新がよく使ういつものパターンだ。しかし、それが嘘であることは、私の住む西成の釜ヶ崎の「西成特区構想」が見事に証明している。橋下氏が市長時代が「西成がよくなれば大阪がよくなる」と始めた「西成特区構想」で、「まちづくり会議」の座長を務めた鈴木亘教授も、「ゴミが溢れ、ションベン臭く、覚せい剤の売人がいる酷い町」と釜ヶ崎をさんざんコケにし、俺の手で釜ヶ崎がよくなったと手柄にしようとした。

しかし、長年この街に住む私は、この発言に非常に違和感を覚えた。確かにかつての町の主流であった日雇い労働者は高齢化し、多くが生活保護受給者、年金生活者になり、活気は失せつつあるものの、皆が助け合う町であること、新参者、生活困窮者、様々な障害などを抱えた人にも非常に住みやすい町になったとの印象しかなかったからだ。そんななか、始まった「西成特区構想」はどうなったか?

西成特区構想の目玉の「あいりん総合センター」(通称センター)の解体は、その理由を10年以上前から「耐震性に問題があるから」と言われてきたが、2019年4月23日強制閉鎖されて以降も進んでいない。センターは未だにしっかりそこに建っている。コロナ禍にあるとはいうものの、本当に「耐震性に問題がある」ならば、即刻どんな手段を使ってでも、解体工事を進めなくてはならないのではないか。しかも、解体後に空き地をどうするかの具体的な計画も決まっていない。インバウンドが押し寄せていた当時は、センター跡地に屋台村を作ろうとの構想もあったように、維新が欲しいのは金になる土地で、そこに維新関連業者を投入し、儲けさすだけだ。

維新が「負の遺産」という夢洲も、大阪市のごみの最終処分場として機能しているうえ、コンテナヤードが整備された関西圏の物流の中心拠点となっている。 釜ヶ崎同様、夢洲も決して「負の遺産」ではないのだ。

◆「カジノで儲けて福祉に回す」のウソと欺瞞

大阪IR・カジノがダメすぎる2つのポイント

松井市長は、2016年12月22日、総合区・特別区に関する意見募集・説明会(平野区)でこう発言した。「カジノに税金は一切使いません。これは民間が投資する話なので、皆さんの税金がIR,カジノに使いません。特定の政党が間違った情報を流布していますけれど、これだけははっきり言っておきます。IR、カジノには一切税金は使いません。」。

更に、2019年9月12日大阪維新の会親睦会ではこう発言していた。「よく役所の周りにデモ隊がくるんですよ、『カジノをやめて福祉に回せ』言うてね。違うんですよ。カジノをうまく利用して、儲けて福祉に回すんです」。おい、いいのか、これ。ギャンブル依存症のオヤジが、ごはん食べれない子供らに「父ちゃん、次のレース取ったら、お前らに旨いもん食わせてやっからな」と同じではないのか。

しかもこの間のコロナの影響などもあり、カジノを含むIR構想は、2019年12月の基本構想から、IR施設の延床面積が3分の2、展示場は5分の1に削減・縮小され、当初掲げてきた「世界最高水準のIR」とは程遠いものになっている。松井市長がいう「経済波及効果1兆円超、納付金など収入1060億円」を達成するには、カジノで年間約6兆円の掛け金が必要になるという。ちなみにセブンイレブンの国内売り上げは約5兆円、JRA(競馬)の掛け金の全国合計は約3兆円。それよりカジノが集客できるというのだろうか?

コロナでインバウンドが激減して以降、カジノへの来場者は国内の日本人などが想定されているが、年間1430万人の集客しているユニバーサルジャパンと比較し、カジノは年間1070万人を想定しているという。この数字は、日本中の20歳以上の10人に1人が入場料6000円を払ってカジノに来場し、全員が1日あたり60万円をかけるという想定だ。これ、実現可能なのか?

しかも、大阪IRは35年契約のうえ、その後「事業継続を前提に」30年の延長ができ、実質65年のライセンスという異例に長期契約になっている。マカオのライセンスが20年から10年と厳しくなったばかりなのに。

一方で、万博・IRのために夢洲造成費用は、2021年度以降で2482億円を予定。この金額は、大阪市の年間税収約7500億円の3分の1に相当し、大阪市民一人あたり9万円負担することになる。

さらに驚くことがある。大阪市港湾局の資料によれば、そんなカジノで利益が出るのは、2076年以降、つまり54年後ということだ。ここまで来たら、辞めるしかないと考えるのが普通ではないか。

では、何故大阪維新が、初めから「負け」がわかっているバクチに売って出るのか? 答えは簡単、そこに利権があるからだ。土建屋はじめ維新の関連業者に儲けてもらうためだ。こんな大バクチにつきあってはいられない。

3月25日から始まった、カジノ誘致の賛否を問う住民投票条例制定を求める署名が始まっている。「ノーカジノ」を突き付け、維新政治を終わらせよう!

▼尾崎美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!
〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の脱原発季刊誌 『季節』2022年春号(『NO NUKES voice』改題 通巻31号)

《ご報告》対藤井正美控訴審、4月15日、「控訴理由書」を大阪高裁(第3民事部)に提出しました! 心血を注いで書き上げたものです。第1回弁論は6月の見込み! 鹿砦社(控訴人/一審原告)代表 松岡利康

藤井正美は、「しばき隊/カウンター」の中心人物として鹿砦社に入り込み3年間在籍しました。この間、労働契約に基づく「職務専念義務」を無視し勤務時間中に、私や社員に分からないように仕事をしている振りをして、鹿砦社の業務とは無関係のツイッターとメールを異常かつ膨大に発信しました。その数、ツイッターだけで約2万! メールも数多く、とりわけ近畿大学はじめ団体・企業に対して「取材」に名を借り「鹿砦社」の名を騙った恫喝メールを送り付けました。そうしたことから、常識的に考えて責任を追及されるべきでしょう。

また、本件訴訟は「カウンター大学院生リンチ事件(別称「しばき隊リンチ事件」)」とも絡み、藤井はその隠蔽活動にも尽力しました。

こうしたことに対し、鹿砦社は放ってはおけず給与返還、損害賠償を求め大阪地裁に提訴しました。しかし、大阪地裁第16民事部・本田能久裁判長(先般、冤罪被害者・青木恵子さんの国賠訴訟で国の責任を認めなかった判決を出したことで話題となった)は本年2月24日、原告鹿砦社の請求を全部棄却し、逆に反訴した藤井正美に対する名誉毀損とプライバシー侵害を認め鹿砦社に10万円の賠償金+弁護士費用1万円を課す判決を下しました。

当然鹿砦社は3月7日、大阪高裁(第3民事部)に控訴しました。その「控訴理由書」を4月15日提出したのです。これには心血を注ぎ27ページにも及ぶ長文となりました。一審判決の判決文に沿って一つひとつ丁寧に検証し、一つひとつに批判・反論を加え誤判と結論付けました。本控訴審は、代理人弁護士を立てず、私たちの主張がダイレクトに裁判官に伝わるように本人訴訟の形を採りました。なので「控訴理由書」も、これまでの対しばき隊関連訴訟を見てきた方々のご意見も反映させ私が執筆いたしました。前日夜まで推敲、修正、加筆を加え、現時点では最善のものになったと思っています。

画像の左が藤井正美。上部に野間の推奨コメントがある。松岡ら鹿砦社の関係者は、この画像を見て強い衝撃を受けた
藤井が発信したツイッターの一部

◆私たちの生きる社会の〈常識〉から逸脱した藤井正美の行為と、これを容認した大阪地裁の誤判

私たちの生きる社会は畢竟〈常識〉によって成り立っています。藤井正美が行った異常な行為は〈常識〉からかけ離れています。法律を司る者も、法律以前に〈常識〉がなければ虚妄です。ところが本件一審判決は、ことごとく〈常識〉に反し、現実からかけ離れた文集です。原告鹿砦社は、あくまでも私たちの生きる社会の〈常識〉に基づき一審判決の誤りを指摘し、控訴審に妥当な判断を求めるものです。

「釈迦に説法」かもしれませんが、そもそも裁判の意味とは、一切の予断と偏見なく証拠と法律に基づき事実関係を客観的に精査し公平・公正に審理し裁くことにあることは言うまでもありません。裁判所の存在理由(レゾン・デートル)はそこにあります。

しかし一審判決は事実関係のごく初歩的な精査もなさず、一審原告である鹿砦社が提出した数々の証拠を意図的に無視したとしか考えられません。それに対して一審被告藤井正美(代理人・神原元弁護士)の主張を過大かつ恣意的に評価しています。双方の主張と証拠を公平・公正に審理したとは到底言えない粗雑な判断です。

鹿砦社のリンチ関連本で有名になった、ITOKENこと伊藤健一郎(当時立命館大学大学院生)が作成し藤井と配布を画策したリンチ隠蔽の内部文書「声かけリスト」
同上「説明テンプレ」

◆鹿砦社に対する予断と悪意に満ちた一審判決は破棄されるべきです

一審判決は、被告藤井正美に不利なことには全部目をつむり、原告鹿砦社の主張のうち、藤井を勝訴させるにあたり、裁判所として都合の悪い部分や、きちんと説明できないことは無視して、鹿砦社を敗訴に持ち込む。そういう極めて恣意的な、鹿砦社に対する予断と悪意に満ちた不当判決だというのが、控訴人(一審原告)鹿砦社の見解です。

よって、一審判決は全面的に取り消され、あるいは変更されるべきであり、高等裁判所は、控訴人鹿砦社の主張を認め、被控訴人藤井正美への損害賠償が認められるべきです。

今後悪しき判例として残さないために、控訴審にあたり大阪高等裁判所は、一審判決のような誤判ではなく、藤井に対して〈社会の常識〉に照らした判断を下すべきです。

そうでなければ、裁判所が労働契約に基づいた「職務専念義務」を蔑ろにし藤井の不法行為を容認することになり、社会的にも、また藤井本人に対しても良い影響を与えません。かつて前例を見ない異常な不法行為には厳しい判断を藤井に課さないと、「裁判所が容認したから」と他社でも同様のことを繰り返しかねません。司法は、藤井が行った不法行為を決して容認してはならないのです。

さらに、昨今のSNSの拡大により、今後も本件と同種・同類の事件が起きることが予期されます。実際起きていて、例えば大阪国税局の職員は、勤務時間内にスマホで株取引を行い、懲戒処分を受け退職に追い込まれています。

そんな中、一審判決のような非常識な判断が確定すれば、裁判所が不法行為を容認することになり、この国が長年培ってきた社会規範が崩壊するでしょう。いくらなんでも、これは絶対避けなければなりません。

そうとすれば、本件は、単に鹿砦社と藤井正美間の雇用問題に留まらず、公益に係る問題であり、極めて公共性のある問題なのです。

よって、〈社会の常識〉から乖離した非常識な判断を下した一審判決のような〈ゼロ回答〉は変更されるべきであり、鹿砦社の見解を汲み常識的な社会規範に基づいた判断を求めるものです。鹿砦社が主張していることは常識的でシンプルです。

本件訴訟は、広く多くの人たちが注目しています。大阪高裁は、誰が見ても納得できる判断を下すべきです。

私たちは、これまでのリンチ被害者M君による対李信恵らリンチ加害者に対する訴訟、同じく野間易通に対する名誉毀損訴訟、また鹿砦社と李信恵間の訴訟同様、本件訴訟の帰趨について、今後も機を見て「控訴理由書」や判決文の公開と分析、これに対する意見などを全て報告していく所存です。

《関連過去記事カテゴリー》
 M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62

ウクライナの事態は「日米同盟基軸」を問い直す絶好の機会 「情報戦」を疑い、エビデンスを追究して「真実」を求めよう ── 平壌からの手紙 LOVE LETTER FROM PYONGYANG〈最終回〉 小林蓮実

朝鮮の平壌市内に暮らす、よど号メンバーの魚本公博さんより、次のテキストが届いた。ただし、「依頼のあった」ということだが特に依頼したつもりはないため、今回で最終回としたい。

衛星放送を観ている魚本公博さん

◆「『日米同盟基軸』を問い直す絶好の機会」よど号メンバー・魚本公博さんより

「ピョンヤンからのラブレター」。今回、小林さんから「ウクライナ情勢で東側の言い分」を書いてはどうかとの提言をもらったので、それを考えてみました。題目をつけるとすれば「『日米同盟基軸』を問い直す絶好の機会」とでもなりましょうか。

ウクライナ事態を見る上で重要なことは、それが日本にとってどういう意味をもつのかということだと思います。

今、日本でのマスコミ報道は、「プーチン=悪」のオンパレードです。そして、それを利用して、様々な聞き捨てならない論説が出てきています。その典型は、安倍元首相や維新が主張する「核の共同所有」論でしょう。そして「非核三原則」の廃棄、敵基地攻撃能力保持、専守防衛の見直しなど9条改憲の動きが強まっています。

「核の共同所有」、その論理は「ウクライナは核を放棄したから侵略された。日本は核をもたねばならない。そこで、NATOのような核シェアリングを」ということです。

これを聞いて、私は1980年代初頭の欧州反核運動のことを思いました。当時、私は、欧州でこの取材をしていましたので、ことの外このことが頭をよぎったのです。

ことの始まりは、米国がNATOの未核保有国であるドイツ、ベルギー、イタリア、オランダ、トルコの5カ国に中距離核ミサイル・パーシングIIを配備する計画を発表したことです。それまで、核戦争は米ソ両国がICBMを相互に打ち込むというイメージでしたが欧州に中距離核ミサイルを配備すれば、欧州が核戦争の戦場になる可能性が高まります。そこで、「欧州を核の戦場にするのか」「米国を守るために欧州に盾となれと言うのか」という怒りの声が高まり、空前の「欧州反核運動」が起きたわけです。

安倍元首相らの「核の共同保有」論なるものは、「パーシングII配備」とまったく同じであり、それは、「日本を核の戦場にするのか」「米国を守るために日本は盾になれというのか」という問題だと思います。

このような「とんでも論」が出てくるのは、ウクライナ事態を「プーチン=悪」とのみ見るからです。しかし、その根本要因は「NATOの東方拡大」にあるということを見逃してはならないと思います。

冷戦終結期に米国のベーカー国務長官が「NATOの東方拡大はしない」と約束し、2014・15年の2回のミンスク合意でも約束したことを「俺が約束したことではない」と反故にし、NATOへの加盟、ドネツク、ルガンスク攻撃を強めたゼレンスキーに責任はないのでしょうか。そう仕向けた米国に責任はないのでしょうか。

そして考えるべきは、「米国の核の傘の下での平和」論の虚構性です。本来なら米国は核の脅しで、ウクライナへの侵攻は許さない、撤兵しろと言った筈です。しかし、それをせずに、米国もNATOも武器を送り込み、諜報部員を送りこんで、ウクライナ人に戦わせている。核の脅しなどやれば米国自体が危うくなると踏んでいるからです。

それだけ米国の覇権力が落ちたということでもありますが、そうであるのに、いまだに「米国の核の傘」を信じ、あるいは「核の共同所有」で、これを支えるなど、日本を核戦場にし、日本だけが戦わされるものにしかなりません。

日本は、あの地獄のような戦争を体験し、「もう二度と過ちはくりかえしません」と誓い「非戦、非核」を国是としました。ウクライナ事態は、その正しさを証明しているのではないでしょうか。9条自衛、専守防衛に徹し、対外的に敵を作らず友好国を増やして日本の平和と安全を守り、外交の力で対外問題を解決するということです。

そのためにも、「米国の核の傘の下での平和」。その具体化としての「日米同盟基軸」の国のあり方、そして、米中新冷戦で日本が対中国対決の最前線に立たされようとしていることの危険性などを真剣に考えるべき時です。

ウクライナ事態は、それを契機に起きた物価高騰などの経済混乱を含めて、日本が今まで通り「日米同盟基軸」でやっていくのか、それとも真に日本の平和のために、日本の国益のために、「日米同盟基軸」を見直すのかを問う絶好の機会となっているし、しなければならないと思っています。

◆防衛論の前に意識したい、善悪二元論を疑うこと

「『日米同盟基軸』を問い直す」こと自体は、国内の動きとして見受けられる。バイデン政権が対ロ参戦を否定したことにより、日本の防衛の前提とされていた「核の傘」が危ぶまれたからだ。

マスコミ報道には、変化が見られるようになった。個人的には日頃よりマスコミ報道を懐疑的に見ているが、左派などの間でブチャの虐殺などはデマであるという論調が広まり、それに対する反応も含めて眉唾ものだと考えていた。特に極端なものというのは、左右を問わず内容を疑い、エビデンスを追究すべきではないだろうか。すると、報道の側にも冷静なものが出始めるようになってきた。ただし、冷静を装うようなものもあるし、エビデンスが十分であるともいえない。

現代における情報戦では、情報が速く広く収集できるようになっている。いずれの側も権力者はそれを最大限に活用しようとするだろう。受け取る側も、ポジショントークとはいわないまでも人間であるがゆえ、信じたいものを信じがちだ。極端に走れば、いずれかの「陰謀論」に陥ってしまう。事例が多々見受けられる。このような問題に自覚的であるべきだと、私は思う。そのうえで、「真実」に近づくべきではないか。

「核の共同所有」論や(少なくとも現時点での)9条改憲には反対であり、そもそもアメリカから「独立」して戦争責任も取り直すべきと考えているが、その先に関してここに一度書いたものは消しておく。議論も重ねたいところだ。

ここ数日の間、インターネット上では、護憲派や自衛隊論を述べた共産党に対する批判が見られたり、「プーチンはアイヌ民族をロシアの先住民族に認定している」と危機感を表す人もいる。『ロシアにおける遵法精神の欠如 : 法社会学と経済史の側面から見たロシアの基層社会』という論文も注目された。朝日新聞社編集委員が安倍氏インタビュー記事公表前の誌面を見せるよう週刊ダイヤモンドに要求していたことも報道された。その一方で、日本とロシアの共通点をあげる人もいた。だが、「日本のために戦おうという国民は、ほとんどいないのではないか」と問う人もいる。今こそ「真実」を見極めながら、私たちはこれらのことについて考えるべきだろう。

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター、編集者。労働・女性・オルタナティブ・環境 アクティビスト。地域搾取や自然破壊の現場でカウンター活動をしていらっしゃる方、農作業や農的暮らしに関心ある方からのご連絡をお待ちしております。
https://www.facebook.com/hasumi.koba/

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!

ウクライナ戦闘の長期化で勢いづく不穏な「金正恩主義」 一刻も早い停戦を! さとうしゅういち

ロシアのウクライナ侵攻による戦闘は長期化しています。最近ではキーウ(キエフ)周辺からロシア軍が後退する一方で、東部の2州での戦闘が激化していると伝えられています。

◆広島でも反戦運動の反面、核武装論も勢いづく

こうした中で広島市でも、ロシアのウクライナ侵攻に抗議する行動が行われています。4月10日には、若者たちの3日程度前の呼びかけにより、原爆ドーム前に多くの人が集まりました。

一方で安倍晋三さんや「維新」による「核共有論」なども物議を醸しました。「核共有論」については、自民党でさえも、正式な党の見解として否定をしています。しかし、最近、「金正恩主義」とでもいうべき主張が街頭で接する有権者の方からも目立つようになりました。

この4月10日も、別の場所で街宣をしたあと、原爆ドーム前にかけつけようとした筆者に対して、以下のような主張をしつこくされる方がいらっしゃいました。「これからはアメリカには頼れないから、日本が独自に核武装して自衛するしかない。」ということです。

これは、そのまんま、朝鮮の金正恩総書記の主張です。金正恩総書記の主張は大まかにいえば、以下のようなものです。

「アメリカにやられないようにするには、我々は核兵器で対抗するしかない。」

アメリカをロシアや中国に入れ替えれば、この「おっさん」の主張とまったく同じになります。

4月10日、若者たちの呼びかけにより、原爆ドーム前に多くの人が集まりました

◆イラク戦争で加速した「金正恩主義」

冷戦崩壊でソビエトや中国の後ろ盾がなくなった以上は、アメリカにやられないようにするには、核兵器をもつしかない。そう金正恩総書記が考えるのも思考回路として「わからなくはない。」

実際、2003年のイラク戦争は、アメリカはイラクに大量破壊兵器がないにも関わらず、「ある」と決めつけて攻撃しました。金正恩総書記の父の金正日が「イラクは核兵器がないからアメリカにやられた」と考えたとしても不思議ではありません。実際、イラク戦争後に朝鮮は核兵器開発を加速させているのは皆様もご存じのとおりです。

◆「5大国はまとも」という国連・NPTの建前と実態のかい離

アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランス。この5大国は第二次世界大戦の主たる戦勝国であることを背景に、国連安全保障理事会の常任理事国となっています。また、1968年に発足し、1995年無期限延長が決まったNPT(核拡散防止条約)で核兵器の保有を既得権として認められた国でもあります。両方のことには明らかに密接な関係があるといえます。

この五大国は「ある程度はまとも」だから、拒否権や核兵器の保有といった大きな力をもたせておいてもよかろう。また、大国同士なら、いわゆる核抑止力もはたらくだろう。

上記のような建前で、20世紀後半の国際秩序は動いていた、といって間違いないでしょう。5大国以外の国でとくに北半球の国は多くがアメリカかソビエトかにつき、どちらかの核の傘に入りました。

もちろん、実際にはヒヤリとする場面もありました。たとえばアメリカは朝鮮戦争で核兵器を使おうとしました。また、キューバ危機は有名です。その他にも核兵器という刀の柄に手を掛けたことは、何度かあったことが明らかになっています。実際のところは、たまたま、核戦争が幸運にも起きなかっただけかもしれません。ただ、核兵器の実戦使用は、ヒロシマ、ナガサキにおけるアメリカ。そして、アルジェリア独立戦争における実験と称したフランス軍による使用。これでとどまっているのも事実です。核兵器使用に反対する世論が大きいこと。それを考慮する程度の合理性は5大国の為政者にあったこと。これも事実でしょう。

他方で、冷戦時代、核は使わなくても、集団的自衛権と称した侵略も米ソ双方やっていました。そして、核兵器を独占する5大国への不満もつねにありました。「君たちは非核兵器国の安全を保障してくれるのか?」と。

◆イラク戦争契機に建前と実態のかい離拡大、そして「金正恩主義」の勃興

こうした建前と実態のかい離は、21世紀に入ると拡大していきました。911テロ後、アフガニスタンを侵略したアメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュ被疑者はさらにイラクに先制攻撃。これは「大量破壊兵器がある疑い」で一方的に行ったものでした。そして、多くの市民が犠牲になりましたが、大量破壊兵器はありませんでした。「共犯者」の英国首相・トニー・ブレア被疑者は謝罪して政界を引退したものの、ブッシュ被疑者はまったく謝罪もせず補償もされませんでした。そして、中東は荒れ、ISが興隆。ISの鎮圧に手こずった米英は、結局、ロシアによる手荒なシリア空爆作戦を黙認することになります。このことで、プーチンが勢いづいた面は否定できないでしょう。そして、ロシアのウクライナ侵攻です。

そんなこんなで大国の信用は地に墜ちています。そうしたなかで、金正恩主義ともいえる考え方が日本をふくむ世界各地に広がるのも支持はしませんが「理解」はできます。

◆反米・反グローバリズムの一部に食い込む金正恩主義

また、反米主義・反グローバリズムの考え方の皆様の一部にも「金正恩主義」がくいこんでいる感じがします。街頭などリアルでも、筆者の食料安全保障強化や脱原発は支持しつつ、核武装して自衛するべき、という方に遭遇する頻度も以前に比べて増えています。アメリカへの反発の勢いあまって、という感じも受けます。もちろん、過剰なグローバリズムは脱却するべきでしょう。しかし、「金正恩主義」で大丈夫なのでしょうか?

◆収拾がつかなくなる金正恩主義

では、全ての国が「(核兵器をもつ)大国から防衛するために核兵器をもつ」などと言い出したらどうなるでしょうか?

おそらく、大混乱になるでしょう。日本だけがNPT/国連の例外だ、などということを納得する人はいないでしょう。「日本がもつなら俺も」と言い出す。実際に、過去にはアルゼンチンや南アフリカ共和国なども核兵器を開発していました。それを非核地帯条約加入にともない、放棄しているのです。昔のアルゼンチンや南アフリカ共和国のようなことを多くの国がやりだしたらどうなるか?合理的でない指導者が核のボタンをもつ確率もあがる。そして、おそらく、核兵器を使ってしまう国も出てくる。一度使われてしまえば、使用への心理的なハードルが下がる。そして、気がつけば地球滅亡、になりかねません。やはり、核兵器は禁止しかない。5大国も朝鮮などの小さな国も持たないようにしないといけないのです。

◆加害国であった過去 日本は忘れず核兵器禁止条約推進を

そもそも、日本が独自に核武装しようとすれば、国連憲章の敵国条項に抵触します。日本は袋叩きにあうこと必定です。日本は第二次世界大戦の敗戦国であり、アジアへの加害国です。そのことを忘れて独自に核武装など、袋だたき必定です。いわゆる反米や反グローバリズムは構わないのですが、日本が加害国であることを忘れて頂いては困ります。

日本の近隣にはASEAN・東南アジア諸国連合があります。すべて核兵器禁止条約に署名しています。あのミャンマーでさえです。最近では連携して米中両方にモノを言うようになっています。

NPT体制は核兵器廃絶を進めるものではありません。しかし、取りあえず、野球でいえばファウルボールでゲームセットを逃れるイメージで捉えれば良いでしょう。その上で、緊張緩和を、ランナーをコツコツ貯めていくイメージで進めていくべきです。

日本はとりあえず、核兵器禁止条約の締約国会議が6月にあるのですから、ぜひ、参加するべきでしょう。そうなると岸田総理の人気も上がって、参院選で広島の野党は筆者も含めて苦戦はまぬかれませんが、それはそれで仕方がないことです。党利党略ではなく、日本があるべき方向にすすむことが大事なのですから。

◆ウクライナ 1秒でも早い停戦を!

戦闘が長引けば長引くほど、核兵器をふくむ、力で問題を解決しようという考えが広がっていきます。正直、冷戦崩壊後、アメリカが調子にのりすぎて新自由主義グローバリズムで暴走した反動で、アメリカべったりの文脈の力の論理は、かつてほどは力がないかもしれない。

しかし、「金正恩主義」ともいえる「大国に対抗するために核武装」という考えは勢いづく恐れが日本国内はもちろん、世界でもありえます。わたしが街頭でお会いした「おっさん」のような方が一般市民の立場で発言する程度なら、笑い話でまだ済むかもしれない。しかし、朝鮮以外でも、国家の為政者が暴走して核を持ち出すようになってからでは手遅れです。あらゆる手段で1秒でも早くとりあえず、戦闘を停止することが大事です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン『紙の爆弾』2022年5月号!

浮き足立った日本全体の戦争翼賛状態を嫌悪する ──「自衛隊容認姿勢」を示した日本共産党に電話で問うた一問一答 田所敏夫

◆ウクライナ情勢が浮き彫りにした日本の「好戦」指向

個別の事態が確実なものであったとしても、ではなぜその事態が生じさせられたのか?ある独裁者の思い込みだけが原因だと、断定することは乱暴ではないのか?身近な何人もの識者や学者がロシアによるウクライナ侵略の全体像をどのように考えればよいのか、苦悶している。

まさか21世紀に突きつけられようとは、予想もしなかった隣国へのある意味原始的な手法による侵略。この設問への私的な困惑は深く簡単になにかを断じることができない。ロシアの侵略行為に私は全く同感しないし、承認することはできないが歴史(直近から中長期のそれ)や、現存するNATOと消滅した「ワルシャワ条約国機構」の問題、さらには原発を巡るロシアの一貫しない軍事行動などを耳にすると、これが総体としていかなる現象(現地で痛みを負い無くなっておられるひとびとには失礼な表現かもしれないが)であるかの総体を表現することが極めて困難に感じるのだ。

◆軽すぎ薄っぺらすぎる言説と報道

一方でいまだに「西側」、「東側」という呼称が通用しているのもおかしな話だとしか思えない。ロシアもベラルーシも自称「旧社会主義国」ではあったが、現在経済体制は資本主義であり、その視点を維持すれば「西」対「東」の対決ではなく、帝国主義間の終末的領土・資源収奪争いの側面も、あながち無いとはいいきれないのではないか。

わざわざ「キエフ」を含む複数都市の日本における読み方の変更を政府が発表したら、何の疑問もなく新呼称を採用するのが大マスコミであり、政府専用機で20名の避難者を林外相が連れてきたことが大きく報道される。これまで政治難民申請に冷酷無比と言ってよかった日本政府の入管政策を知るものとしては、強烈な違和感を禁じ得なし、米国が侵略したアフガニスタンやイラクから日本政府は(米国侵略直後)難民を受け入れたか。そもそも「米国」を侵略者と規定する報道があったか……。

難民を受け入れることにわたしが反対なのではない。「日本政府は、ウクライナ情勢の前と後で、やることが全然違うじゃないか」というのが正直な感触だ。

◆強烈な違和感を象徴する「共産党の自衛隊容認姿勢」に迫る

そしてこの違和感は政府・マスコミだけに向けてのものではない。リベラルと呼ばれる層も含め、日本全体がまたしても「次のきな臭い段階」に入ったのではないか、とわたしは感じる。以下に一つの例を挙げよう。4月8日には「有事の際には自衛隊を活用すると訴え」共産党の志位委員長が述べたと報道された。

ことの次第を確かめるべく、4月11日共産党本部に電話で話を聞いた。

田所  報道で拝見しましたが、志位委員長が「日本に侵略があった際は自衛隊を活用して侵略を防ぐ」と発言をなさったと聞いているのですけれども、それは間違いありませんでしょうか。

共産党 共産党は日本国憲法を順守する考えだと理解していますが。

田所  日本国憲法と自衛隊は矛盾しない、というのが共産党の考えですか。

共産党 矛盾します。矛盾するというか今の自衛隊は9条とは相いれないと思っています。ですので将来的には解消を目指す立場です。

田所  憲法と矛盾する自衛隊に国を守らせる、ということですか。

共産党 そうですね。

田所  それがにわかには理解できません。

共産党 順序だてて言いますとね、憲法と相いれないと思っていますが、今すぐには無くせないんですよ。御存知の通り国民の8割、9割は自衛隊に好意というか、評価していますので。

田所  共産党の方々はいかがなのですか。

共産党 私たちだって憲法とは相いれないけど、敵視しているわけじゃないし。災害出動なんか大いに評価していますよ。

田所  災害出動が役に立つのは理解できますが、武装している自衛隊も是認なさっているわけ?

共産党 是認というか、憲法にはやはり相いれない。ですから解消を目指すんですけど、時間がかかるんです。明日政権に入っても国民がこれだけ「自衛隊が必要だ」と言っていると、いきなりは無くせないですよね。そんなことをやったら独裁になっちゃいますから。相当長い期間がかかるんですよ。そうしたら国民が自衛隊がなくても安心できる状態なるかといえば、やはり北朝鮮のミサイル開発ですね。あのようなことが解決するとか、中国の覇権主義的な行動がなくなるとかね、そういうことがないと、なかなかそういう世論にはならないです。平和な東アジアを作る外交を大いに共産党はやって、その条件を作る努力をしていきますけれど、時間がかかる。その前に私たちは「過渡期」と言っていますが、5年10年ひょっとしたらもっとかかると思いますよ。その間に仮に、そういう事態が起きたらどうするのかという話なんです。

田所  万一そう事態が起きたときに共産党は与党であったらという前提で仰ってるわけですか。

共産党 与党であっても野党であっても賛成するってことですよね。

田所  今は野党でしょ。

共産党 今、野党です。

田所  野党であってもあの憲法違反の自衛隊の存在に塩を送ると宣言なさるということですか。

共産党 認めるということですよ。

田所  (あまりの断言にやや間をおいて)日本国憲法の前文をもちろんご存知だと思いますが、その前文と9条は結びついてますね。にもかかわらず9条違反の自衛隊を認めないのに、侵略があった時には自衛隊の活動を認めると。その理屈はなかなか分かりにくいですね。

共産党 わかりにくいですか。さっき言ったように「過渡期」があると。

田所 「過渡期」というのであれば、共産党が自衛隊をなくそうとした時からが「過渡期」なのでしょ。

共産党 はいはい。

田所  今なくそうとするところにも至ってないんじゃないですか。

共産党 いえいえ、だから、なくそうとしていますよ。

田所  誰が?

共産党 私たちが党として。

田所  どういうふうに?

共産党 なくすために努力して、その為に平和な東アジアを作ることが大事なんですよ。

田所  でもあなたさっき仰ったけど、例えば北朝鮮の脅威、中国の脅威がなくなるようにということは外交努力で出来るかもわからない。けれども、今外交する立場に共産党はないわけですよね。いまは外交を司ってるのは自民党と公明党の連合政権でしょ。で彼らの延長線で良いということなんですか。

共産党 いえ、違いますよ。例えば夏に参議院選挙がありますけどそういうことをうちが掲げて……。

田所  いま仮に政権の座にいらっしゃったら、例えばロシアがウクライナに侵攻した。北朝鮮はミサイルを発射する。中国は軍備を増強している。これについてどう対処なさるんでしょうか。

共産党 例えばいま国会をやっていますけど、近々の課題はウクライナ問題ですよ。これは政府に質問をぶつけていますよ。外交的解決をするためにあるいは国際的世論を高めるために、日本政府として大いに努力しろと、いうことは常に言っていますよ。

田所  それは承知しています。ではなくて仮にですよ、いま政権の立場にあればウクライナ、あるいはウクライナがなくても危機と仰った朝鮮、中国に対してどのような外交を展開になさるんでしょうか。

共産党 中国で言えば、いま敵対しているわけですよね。中国とアメリカ、日本、豪州、インドとかなり軍事的な方向でやっているわけです。軍事演習も中国の目の前でガンガンやっているわけです。それではあかんと。たとえばASEANは域内で数十年来紛争しないと努力してきているわけです。ASEANを中心に東アジアサミットという枠組みがありまして、そこには中国もアメリカも日本も入っているわけです。その枠組みを利用して、中国も引き込みながらその中の話し合いで中国に「ちょっとやめとけよ」という話し合いをやって行こうと訴えています。

田所  中国の軍拡をちょっと収めてくれという訴えをするということですか。

共産党 順序がありますので、まずはそう言うところからはじめるというね。大事なのは信頼醸成ですよね。お互いに話し合って同じ方向で解決してゆこうと。急にこんなことはできるものではありませんから。で、最初の話でいうとそういうかなり時間のかかるプロセスがあると思うんです。その時に万が一攻め込まれた時、目の前で日本の国民が殺されかけているときに「自衛隊は憲法違反だからじっとしていろ」と、いう話にはならないですよね。

田所  なるかならないかは共産党のご見解です。憲法違反と言いながら憲法違反のやつらに武力行使を認めるというのが共産党の立場でしょう。

共産党 そうです、そうです。そういうことです。

田所  それを私は個人的には理解できないですね。憲法違反のものは憲法違反。憲法違反の人たちに何でもさせるということであれば、例えば刑法違反の人たちが何かを行っても認めると。刑法はもっと下位法ですから。

共産党 お宅様の立場は、そういう事態になってもじっとしていろと?

田所  日本国憲法に従う限りそうですね、仮に侵略があっても。

共産党 私たちはそれを責任のある政党の立場だとは思っていませんので。

田所  私は別に団体の代表でも何でもなくて個人なので、共産党が今まで自衛隊をすぐにはなくさないということを過去表明された事実も知っています。また国会の開会式には天皇がやってくることを理由にずっと出席をしなかったけれども、ある時期急に天皇が出席する国会の開会式に出席されるに至った経緯も知っています。ということは、どんどん右傾化してるんじゃないですか。共産党は。

共産党 だっていま仰いましたけど自衛隊のことは20年前ですよ。いまの見解を表明したのは……。

田所  だから20年以上前に明確に「転向宣言」出されたんじゃないですか。

共産党 そんなことないですよ。それはなんの絡みで言ったかといえば「9条の全面実施」という流れで言っているわけです。

田所  9条を全面的に実施するのに自衛隊を認められた。

共産党 うん。そういう国民的な疑問も出てきて、その中で改めて表明したわけです。

田所  だって「長沼ナイキ」って古い話ですけど、違憲判決もあったわけですよね。裁判所ですらが。控訴審でひっくり返っておりますけれども、それを共産党は認めるというわけですか。

共産党 何を認めるというのですか?

田所  だから自衛隊というもの自体が憲法違反だということを認めていながら、彼らが、仮に侵略者がいるとすれば武力行使することを認める、というご判断なんですね。

共産党 自衛隊が解消するまでの期間に、万一そういう事態があれば、ということです。

田所  なんでそんなこと今頃おっしゃるんですか。

共産党 だから……あなた自身も前から知っているとお認めになってるじゃないですか。

田所  いえいえ。志位委員長がどうしてこのタイミングで仰るのか。自衛隊をなくす間に、連立政権を実現するために共産党が自衛隊問題については「留保する」判断だと私は理解してたんですけど。

共産党 「留保」ではなく自衛隊が万一の窮迫性の事態の時には自衛隊を活用する、ということですよ。ちゃんと言っています。

田所  そんなことを胸張って言われたら余計にがっかりしますね。

共産党 22年前の22回大会で……。

田所  わたし党員じゃないから詳しいところまで知りません。だけども、22年前からはっきり言えば自民党と同じ主張をしていらっしゃったということですね。

共産党 同じじゃないですよ。違憲だというところは全然違う。

田所  違憲と言いながら、武力行使を認めるわけでしょ。違憲の武装集団が仮に攻撃を受けた場合の武力行使を認めるわけでしょ。それはごく基本的な論理的なところで矛盾じゃないかな。

共産党 個人で矛盾だと言う方々がいるだろうとは思いますけど、お宅様もたぶんそうなんでしょう。ただ私たちは政党ですからね。現実にそういう事態があってその時に自衛隊があって、訓練も積んでいると。スタンバイOKだというときにその出動を待てと。「お前ら憲法違反だから一歩も動くな」というのは政党としてはちょっと無理ですよ。国民の命がかかってるわけですから。

田所  国民の命がかかっている?

共産党 一方でそういう事態が起こらないように努力をしてゆくということです。

田所  分かりました。ありがとうございました。

例によってわたしと共産党のやり取りへの判断は読者諸氏にお任せする。ただし、わたしは共産党の言に強烈な違和感を抱いたことだけは強く述べておく。


◎[参考動画]日本共産党の躍進で日本の前途を切り拓く(日本共産党2022年4月7日)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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