《参院選2025》はんどう大樹・れいわ新選組初の広島県内国政選挙区初挑戦で健闘

さとうしゅういち

◆自公共敗北、多党化定着

第27回参院選は2025年7月20日執行されました。

与党自民党は、終盤のマスコミ予想よりは持ち直したものの、選挙区27、比例12の39議席と敗北。非改選と併せて101議席。

公明党は改選14議席から6議席減の8議席の大惨敗となりました。中でも比例代表では4議席しか取れず、過去最悪の結果になりました。非改選と併せて21議席となりました。

野党第一党の立憲民主党は比例代表で7議席しか取れずに伸び悩み改選22議席は変化なし。非改選と併せて38議席に。

国民民主党が改選4議席を17議席で非改選と併せて22議席。参政党が改選1議席を14議席で非改選と併せて15議席。それぞれ、大躍進しました。

日本維新の会は改選前6議席を7議席に増やしましたが、実際には、現職の梅村みずほさんが参政党に引き抜かれていますので、実質的には横ばいです。非改選と併せて19議席。

日本共産党は改選7議席を3議席に減らす大惨敗。比例区では日本保守党さえ下回りました。非改選と併せて7議席。

れいわ新選組は改選2議席を3議席に増やしました。非改選と併せて6議席。

日本保守党は参院選初挑戦で2議席確保。社民党は1議席を確保し、政党要件を死守し非改選と併せて2議席。34歳の若者・安野貴博さん率いるチームみらいが1議席確保し、初議席。他方、立花孝志さん率いるNHK党は改選議席を失い、非改選の1議席のみに。また、石丸伸二さんの「再生の道」も議席に遠く及ばず、都知事選挙2024の熱狂は完全に過去のものです。

自公はきついお灸をすえられたものの、野党第一党の立憲民主党ではなく、国民民主党や参政党に票が流れた形です。全体として「多党化」が進みました。いわゆる新自由主義グローバリズム・緊縮財政二大政党(実際は1・5大政党)が、小選挙区制を背景に主導権を取ってきた日本の政治でしたが、それが大きく崩れた形です。それは全体としては、例えばドイツのAFDとか、フランスの国民戦線、ハンガリーのオルバーン政権のようないわゆる右派ポピュリズムの参政党が躍進しています。一方、れいわ新選組の場合は、東京で大苦戦する一方、後述するように、広島など地方圏で善戦。政党の性格が変わりつつあります。

◆自民・立憲で独占継続も参政・れいわ・独立系が健闘 広島県選挙区

広島県選挙区では、以下のような結果になりました。

当選 西田英範 自民新 43歳 当選:1回目 推薦:公明 経済産業省課長補佐 399,640(33.9%)
当選 森本真治 立憲現52歳 当選:3回目 推薦:社民県連合 立憲民主党副幹事長 303,928(25.8%)
小石美千代 参政新 56歳 教材訪問販売員 251,370(21.3%)
楾 大樹 れいわ新 50歳 弁護士 92,896(7.9%)
高見篤己 共産新 73歳 共産党広島県委員会書記長 51,179(4.3%)
谷本誠一 無所属連合新 69歳 元広島県呉市議会議員 26,947(2.3%)
産原稔文 無所属新 57歳 元マツダ社員 17,094(1.4%)
堤美登里 NHK新 68歳 化粧品販売業 16,164(1.4%)
玉田憲勲 無所属新 67歳 医療法人理事長 13,598(1.2%)
上子 亨 無所属新 48歳 政治団体代表 6,469(0.5%)

安佐南区内の結果 
西田英範  30,958(30.0%)
森本真治  27,198(26.3%)
小石美千代 24,571(23.8%)
楾 大樹  8,602 (8.3%)
高見篤己  5,000(4.8%)
谷本誠一  1,933(1.9%)
玉田憲勲  1,553(1.5%)
産原稔文  1,513(1.5%)
堤美登里  1,420(1.4%)
上子 亨   588(0.6%)

河井案里さんの当選無効に伴う参院選広島再選挙2021で、筆者とともに宮口治子さんに敗れた自民党の西田さんが、逆風の中でも自民党王国の組織力に支えられ、堂々のトップ当選。

他方、立憲民主党は現職の宮口治子さんを引きずりおろして同じく現職の森本真治さんに一本化しましたが、参政党の小石さんに猛追され苦戦し、ひやひやものの当選となりました。

参政党の小石さんは全国同様の参政党の追い風に乗り、追い上げました。

れいわ新選組は広島選挙区で初めて候補擁立。「仁義なき候補者選考・楾―宮口事件」で、立憲民主党の候補に内定しながら、直前になってはしごを外された楾大樹弁護士に白羽の矢を立てました。楾候補は、初挑戦ながら、供託金没収点を大きく上回る7.9%の得票率。全国のれいわ新選組選挙区候補では宮城に続く二番目の得票率でした。日本共産党は前々回と同じ高見さんを擁立も、この数十年では最低の得票数・率にとどまり、歴史的な惨敗です。

一方、無所属連合で立候補し、広島瀬戸内新聞の取材にも応じられたことがある元呉市議の谷本さんが2万7千近く、筆者が衆院選2024で投票した経験のある元マツダ社員の産原さん、筆者が同じく衆院選2024で応援のマイクを握ったこともある玉田ドクターら、いわゆる独立系候補が1万票を超える健闘しました。

◆急遽、はんどう大樹候補の後援会事務局長をお受けした筆者

はんどう候補は筆者と同じ1975年に海田町生まれ。中央大学ご卒業後、弁護士登録。しかし、2010年代半ば、当時の安倍政権により憲法違反の政治が続いていることに危惧を抱き、憲法を檻に、為政者(政治家)をライオンにたとえた「檻の中のライオン」を著し、全国1200か所以上を講演しています。腐った政治を質すには「主権者がきちんと投票に行き、政治家をチェックしていかないといけない」とぶれずに主張してこられています。

なお、最近では、講演活動ばかりで、弁護士としての業務もほとんど行っていないという有様です。

筆者は、はんどう候補が、本来なら立憲民主党から立候補するはずだった参院選広島2021に立候補し、20848票をいただいております。今回は、はんどう大樹候補の事務局長を引き受けさせていただきました。

はんどう候補は、「広島瀬戸内新聞」主催で、何度もご講演をしていただいています。その経過から、筆者が出納責任者=後援会事務局長を引き受けさせていただいたものです。

「広島瀬戸内新聞」主催の講演会でのはんどう候補

◆時間不足で態勢づくりが不十分

ただ、広島県選挙区で候補を擁立するとれいわ新選組が明言したのは2025年5月10日の山本太郎の広島でのおしゃべり会の席上、山本太郎が記者に答弁する形でした。その時は、楾先生が候補者だとは全く知りませんでした。楾先生自身も、全国講演ツアーの途中でした。このため、公認決定は6月11日、正式発表は6月16日でした。参院選の公示が7月3日ですので、発表から公示まで17日しかありませんでした。

正直、選挙において支持を広げるには、公示前に政治活動としてのあいさつ回りや街頭宣伝が重要です。(あいさつ回りはあくまで政治活動としてのそれです。公示後は、あいさつ回りは戸別訪問として公示後は禁止されています)。ある程度、地域の有力者に知ってもらい、選挙運動をスタッフで実務的に支えてくれるような皆さんのご支持を取り付け、さらに一般市民にも存在を知ってもらう「政治活動」をある程度やっていないと、正直なところ、公示後の「選挙運動」の態勢づくりは難しいのです。

れいわ新選組は、県内に数千人のオーナーズ・サポーターズ会員がおられます。そうした方々の名簿も、公認候補はいただけるのです。本来であればそういう方々にスタッフになってもらえれば随分選挙活動は楽になりますが、時間がなさ過ぎて、本番の投票依頼をするのが精一杯でした。

はんどう候補の主張を理解してくれそうな有力者にあいさつ回りをするにしても、時間がなさ過ぎました。結局、政治活動期間自体ははんどう候補よりは長い筆者も代理で、必死であちこちに頭を下げて回りましたが、とにかく時間がなさ過ぎました。

ハッキリ言って「これで良く、92896票も取った」と思いました。そういう意味では伸びしろは多くあります。はんどう候補は中国新聞の出口調査では40代の19.2%から得票。当選した森本候補も上回る勢いでした。

◆筆者の寝坊でヒヤリ

公示日の7月3日、筆者は、はんどう候補の原爆慰霊碑への献花に同行した後、はんどう候補の代理で、広島県選挙管理委員会に立候補届け出書類を提出する予定でした。そのため、6時には自宅を出発しないといけない。ところが、寝坊してしまい目が覚めた時には7時10分過ぎでした。はんどう候補をはじめ、皆様に大変なご心配をおかけしたことを改めてお詫びいたします。

原爆慰霊碑へ献花するはんどう候補

なんとか、献花に同行し、県庁での立候補届け出に間に合いました。はんどう候補は、故郷・海田町から出発しました。

◆農村部でもはんどう候補の演説にネット告知だけで聴衆10名近く

はんどう候補は大崎神島町と江田島市を除く県内全市町を遊説しました。このうち、世羅町での街宣では、当日朝のネット告知だけで10名近くの方が応援に来られました。自ら進み出てはんどう候補のためにビラ配りをお手伝いしてくださる方もおられました。

世羅町で駆け付けた聴衆の「消費税ゼロ」を掲げるスーパーカブとはんどう候補

れいわ新選組は結党当時、山本代表が2013年-2019年と2022年から選挙区で議席を持っていた東京中心の政党でした。ところが、今回の参院選2025では、東京選挙区では山本ジョージさんが得票率3.5%だった一方で、広島ではんどう候補が7.9%を得票しました。東京では参政党・保守党(百田)や国民民主党(2020)などの新興勢力と一定程度、東京ではまだ健在な立憲や共産などの狭間で苦戦する一方で、広島などの地方では「地方の庶民に優しい政策の党」として認知されている状況が読み取れます。

また、はんどう候補の地元の海田町では得票率が10%を超えました。

ただ、残念なのは、街宣の日程が前日の夜まで固まらなかったことです。ようやく、当時の朝になって告知される。そんな状態でも、農村部でも少なくない方が駆けつけてくださったのです。きちんともう少し早めに日程を固められていれば、もっと多くの方にはんどう候補の生の声を聴いていただけたのではないかと思います。

◆「失われた30年を40年、50年にしないため」「はんどう大樹と書かなくていい、自分の頭で考えて投票を!」

はんどう候補の主な政策は「消費税廃止」、そして「税金は大金持ち・大手企業から」です。要は、所得再分配の強化です。消費税廃止で購買力を引き上げる。法人税は累進化することで、お金が内部留保ではなく、従業員の給料や設備投資に回るようにする、というものです。

それとともに、衆院選2024での投票率全国最下位を返上しよう!と訴えました。特に終盤では「はんどう大樹と書かなくていい。自分の頭で考えて投票を!」と敢えて訴える姿勢には、筆者も度肝を抜かれました。

そのおかげかどうか、わかりませんが広島県内の投票率は53.9%で、徳島県(50.48%)を上回り最下位を脱出しました。はんどう大樹のお訴えに応えて?投票に行かれたすべての県民の皆様に感謝申し上げます。その上で、はんどう候補は、れいわ新選組の選挙区候補では宮城に続く第二位の得票率を記録しました。

「はんどう大樹と書かなくていい。自分の頭で考えて投票を!」と訴えたはんどう候補

過去30年間、新自由主義・緊縮財政二大政党が広島の参議院の二議席を独占してきました。それも、毎回、ほぼ無風でした。そのことが、県民をあきらめさせてきた経過があります。

実は筆者自身も、はんどう候補がもし立候補しなければ、自民党の西田候補への「鼻をつまんでの」投票も検討せざるを得ないと覚悟していました。これは、立憲現職の森本議員が新自由主義的な湯崎県知事にある意味で自民党以上に近い一方で、その湯崎知事と比べても気候変動対策に後ろ向きではないか?と彼のSNS投稿から感じていたことなどが挙げられます。

不毛だった広島の政治に新たな選択肢を市民の手作りで示した。これが、今回の参院選の意義ではないでしょうか?手作りが故に、様々な行き届かないところもありました。それでも、この取り組みをあきらめてはいけない。そう筆者は確信しています。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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