明けて9月。夏休み明けの学生が、久しぶりの友人達とはしゃぎながら通学するのを横目に、イーダ社員は憂鬱な面持ちで出社する。

セントラル社の社員は、社長の請け負った開発の殆どを譲渡されていたが、まだイーダ社内に出向している。急ぎ開発を終わらせないといけないため、PC等開発環境を移転させる時間がないのだ。イーダ社員の方が把握している部分もあり、協調体制でやっている。以前より円満な関係になっているとも言える。社長を除いては。

社長だけは肩身狭そうに出社している。昼頃不意に社長から一通のメールが来た。社内にいるんだから直接話せばいいのに。誰にも聞かれたくないのだろうか。
「以前SNSに出した、モバイルゲームを他社に売り込めそうなので、そこの会社の人とアポイント取り付けました。戸次さんも出席してください」
唐突な内容で、理解するのに時間がかかった。この会社を傾けるきっかけともなったモバイルゲーム(手記1及び手記2を参照)を、再度別会社のSNSに展開するというのだ。

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