「残業代ゼロ法案」について、以前に日本総ブラック企業化という記事を書いた。その後もニュースやコラムを見る限り、この法案には反対意見が多い。誰だって当然同じ懸念を持つだろう。

この「残業代ゼロ」法案に賛成する記事やブログも結構多い。内容によっては政府の息がかかっているのだろうかとか、世間の流れに逆らう自分をかっこいいと思う人なのかとか考えてしまうこともあるが、逆に政府の方針に何でも反対するのは、やはり社民党や共産党の回し者かとか、どこか市民団体の関係者かと思うことがあるので、同じようなものか。どんな意見にも賛成反対の声が出るのは民主主義社会として正しい姿だ。確かに「残業代ゼロ」という呼び方も、作為的と思う。

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以前、『紙の爆弾』に掲載された記事の名義に、「自称ジャーナリスト」という肩書きをつけた人がいたが、これは皮肉であった。記事を読むと、追及を受けた者が記者に対して嫌味でそう言ったからだ。

これは主に、組織に所属しないフリーランスのルポライターなどが、後ろ盾が無いことから見下されて言われることだ。そして、記者クラブ制度の弊害を語るさいにも話題になる。記者を自称して変な奴が紛れ込んでも困るが、しかし大手に所属する者だけを特別待遇して報道を手玉に取る政治や行政の手口により、自由な報道が出来ないからだ。

また、外国では、主な収入源が報道に関係していることをジャーナリストの条件としている所があり、これだとフリーも認められるのだが、しかし日本の場合は、フリーだといわゆるワーキングプアが多く、副業の収入の方が多いという人が少なくない。

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先日、コンビニ強盗をしようとレジの店員にナイフを突きつけたところ、たまたま店内にいた友人に声をかけられ、強盗を断念したというニュースがあった。強盗未遂の男は駆け付けた警察官によって逮捕された。

この男、48歳にもなって「パチンコに負けて金が無くなった」という動機は情けないばかりだが、身近に一人友人がいた、というだけで店だけでなくこの男も救われた。もしたまたまこの友人が店にいなければ、刃傷沙汰になっていたかもしれない。警察が乗り込むのが早ければ、逆上して店員を刺殺していたかもしれない。人間、追い詰められると何をしてしまうかわからない。そうなれば無傷だった店員も、刑が重くなっていただろうこの男も一人の友人のために救われたといえる。

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警視庁蒲田署の警察官が、上司のパワハラが原因で拳銃自殺した。部下たちはこの上司に「お前らはダメだ。身の振り方を家族に相談しろ」だの「降格を申し出ろ」だの日々怒鳴られ、中には紙パックを投げつけられて「お前は警察官に向いていない」などと言われた人もいるという。

パワハラというものは捉え方で個人差がある。日頃からこれでは現場の人は厳しい限りだが、警察というところは職業柄、並の企業よりはずっと厳しいとはよく聞く。

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知り合いの30代の女性が、通信制の高校に入った。30代にして、女子高生になったわけだ。
高校を中退しているので、勉強し直して卒業資格を取ろう、という感心な心がけ。もちろん、セーラー服などは着用しない。
筆者なども、高校で勉強したことなど忘れている、というか、そもそも勉強せずにごまかして卒業している項目が多い。

彼女の話を聞いていて、やはり高校の勉強は大変だな、と思う。
そもそも、自分で働いて生活している30代が、いまさら微分積分など勉強する必要があるのだろうか。
高校生は、自分の進むべき道を見つけるために、ありとあらゆる可能性を試してみる必要があるかもしれないが……。

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オボちゃんを虐めたからこうなったんだとばかりに、小保方晴子博士のSTAP細胞の件以降、これまでの学者の論文にも厳しいチェックが入るようになり、ノーベル医学生理学賞を受賞した、山中伸弥教授の論文にまでデータ捏造疑惑が浮上している。

それらのことは徹底的に検証すべきであろう。
だが、データ捏造どころではないことをやっていた科学者のことも、忘れてはならない。
原発の危険性を指摘する正しい解析を「捏造」と言ってのけ、「プルトニウムは飲んでも大丈夫」と断言していたのが、東大大学院工学研究科の、大橋弘忠教授だ。

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もしも被告人が取調べで自白に追い込まれていたら、一体どれほどデタラメな自白調書が出来上がっていただろうか――。被告人が一貫して無実を訴えている冤罪事件を取材していると、そんなふうに考えさせられることがある。

たとえば、先月(4月)21日に札幌地裁が再審請求を棄却した恵庭OL殺人事件も、そんなふうに考えさせられた冤罪事件の1つだ。

事件の発生は2000年3月。千歳市内の運送会社で働いていた24歳のOLが恵庭市郊外の農道脇で真っ黒焦げの焼死体で見つかり、職場の同僚だった大越美和子さんという女性(当時29)が殺人罪などで逮捕、起訴された。大越さんは一貫して無実を訴えたが、2006年9月、最高裁に上告を棄却されて懲役16年の判決が確定。犯行動機は、大越さんが交際していた職場の同僚男性をめぐる恋愛関係のもつれだったとされている。

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「飯塚事件はDNA鑑定だけで有罪、無罪が決まったわけではないので、DNA鑑定がどうなろうと有罪認定は揺るがない」。そんなデマがいまだに流布しているようである。

1992年に福岡県飯塚市の小1女児2人が殺害された通称「飯塚事件」。一貫して無実を訴えながら死刑判決を受け、2008年に処刑された久間三千年氏(享年70)については、冤罪の疑いが根強く指摘されてきた。あの足利事件同様、警察庁科警研による捜査導入初期の稚拙なDNA鑑定が有罪の決め手になっているためだ。去る3月31日、福岡地裁はこの事件の再審を認めない決定を出したが、弁護側は福岡高裁に即時抗告しており、死刑執行後としては初の再審無罪をまだまったく諦めていない状況だ。

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今日も、セウォル号の話題でワイドショーは沸騰している。
それは当然だろう。船長を筆頭に真っ先に逃げ出した乗組員の無責任のせいで、死者・行方不明者合わせて300人を越えるという大惨事。責任転嫁にいそしんで、なかなか謝罪しなかった、朴槿恵大統領……。

だが、2009年に三重県沖で横転したフェリーありあけ号の事故では、乗客7人と乗員21人は全員無事だった、という報道が併せて流れるようになると、この沸騰ぶりの底が見えるようになった。

今回の事故で「三流国家」だと自嘲するようになった韓国に比して、久々に、日本ではこんなことは起きない、日本は立派だと胸を張れる時がやってきたのだ。
チェルノブイリ原発が事故を起こしたときに、あれはロシアのオンボロ原発、日本の原発ではあんなことは起きないと見下していた自尊心が、福島第一原発の事故で吹き飛んだ。
その自尊心が、取り戻せるというわけだ。

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たまに、「いつも、どんな本読んでるの?」と聞かれることがある。
いつも読んでいる本というのはない。
このところ読んだ本の著者を並べてみると、清水潔、山本周五郎、ヘッセ、大城立裕、モーパッサン、姫野カオルコ、門田隆将、ドストエフスキー、池上泳一、古賀茂明、エリカ・ジョングとなっていて、やはり「こういう本をいつも読んでます」と言えるような統一性はない。ライターの読書は、だいたいこんなものだろう。

ちなみに、前からちょくちょく読んでいた姫野カオルコは、デビュー作がおもしろいと聞いたので、『ひと呼んでミツコ』を出張先のホテルで読んだのだが、笑って頭を壁に強打してしまった。要注意である。
2人の女性を股にかけるお調子者の男を、お得意の深刻な語り口で描く、ドストエフスキー『虐げられた人びと』もけっこう笑えるので、タイトルの暗さで敬遠しないほうがいい。

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