TBS系バラエティー番組『マツコの知らない世界』(毎週火曜 後8:57)の公式サイトは、番組出演者から預かった資料を紛失したことを報告するとともに、資料の情報提供を呼びかけている。サイトに7月9日までに掲載された「お知らせ」では「2016年10月18日放送の『号外の世界』で、出演者の小林宗之氏からお預かりしていた貴重な資料の一部を、番組の不注意で紛失してしまいました」と報告。

小林近現代資料文庫HPより

すでに、小林氏とは和解しているといい「番組では引き続き、紛失した号外を捜しています」とし、紛失した資料として「明治17年8月30日付東京日日新聞号外(葉書号外)裏表1点ずつ『清佛要件の電報を特に御報申上候』」「昭和16年12月8日付 大阪毎日新聞号外 『ハワイ等奇襲奏功』」「昭和16年12月8日付 名古屋新聞第2号外『ホノルルを大空襲』」など計8点の資料写真を添え、捜索への協力を呼びかけている。

小林氏も自身のサイトで「TBS側に貸出した資料のうち、8点を紛失されるという事件が発生しました」と記し「TBS側により警視庁赤坂署に16年12月5日付で紛失届を提出済ですが、現在に至るまで、資料の返還を受けられておらず、資料も発見されておりません。もし、どこかで発見された場合は、是非ともご一報くださいますようお願いいたします」と呼びかけている。

小林氏とは5月頃に別件で情報提供をも求め、電話をかけた際に上記事件が発生したことは知らされていた。当時はまだ和解には至っておらず、TBSはずいぶんいい加減なことをするものだなと、しばし話し込んだ。

小林氏はこれまでも関西テレビの「ウラマヨ」や、CBCテレビの「ノブナガ」 に出演したことがあり、新聞や雑誌にも多数掲載されている。小林氏の所有する三陸沖地震の新聞資料は極めて貴重で、京都新聞の一面、社会面、28面に一挙に掲載されたこともある。新聞研究家あり、とりわけ号外研究・収集にかける小林氏の熱意は凄まじいいの一言に尽きる。小林氏に電話をかけて「また、珍しいもんを見つけましてねー」と嬉しそうな声が聞こえるときは、新しいコレクションが加わった時だ。国内新聞の資料・号外だけでなく、世界中の新聞の号外を時には人的繋がりで、あるいはオークションで落札することにより、地道に所蔵物を増やしている。

今回貴重な資料を紛失された事件については、TBS側と和解が成立しているものの、感想を聞くと「和解はしましたが、そりゃあ腹が立ちますよ。お金でいくらというものではないですから」と腹の虫がおさまらない様子だ。

それにしても、新聞資料収集・号外収集特集で番組に出演させておいて、その資料を失ってしまうなどということは、全国ネットのテレビ局としては、断じてあってはならないことだ。しかも、8点も行方不明にしてしまったというのだから、番組制作は下請け会社に丸投げしているのだろうが、TBSの信用の根本にかかわる問題だ。研究者・収集家にとってコレクションは何にも代えがたい貴重な分身のようなもので、「失くしてしまってごめんなさい」で済む話ではない。

TBSのガタツキぶりが感じられる事件でもある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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