9月15日朝鮮が長距離弾道弾(ICBM)と思われるミサイルを発射した。報道によればミサイルは北海道上空を飛んで北海道から2000キロあまり東の太平洋に落ちたという。朝鮮の中長距離ミサイルの試験的発射は、もう日常的な感すらある。私はこのような朝鮮のミサイル発射実験を好感しない。


◎[参考動画]【ニコニコ実況付】北朝鮮がミサイル発射 Jアラート発表時のNHKニュースダイジェスト(sk5417さん2017年9月15日公開)

2017年9月15日付け産経新聞

それにもまして「対話と圧力」で朝鮮との二国間関係に臨むと宣言した、安倍政権及び、それに追従する中央省庁、さらには地方公共団体の、過剰かつ全く無意味な反応に気持ち悪さと怒りを禁じ得ない。9月15日のミサイルは日本の上空700キロを飛んだと米国当局は想定を発表している。上空700キロとはどんな場所か? 一言で言えば「宇宙」だ。静止衛星は高度35万キロ以上の上空に打ち上げられるが、用途が限定される人工衛星は高度600-700キロにいくらでも飛んでいる。

今回打ち上げられたミサイルの飛行した弾道を各種報道で見る限り、日本上空を通過した時は上空700キロ程度で飛んで行った可能性が高い。この高度で飛ぶミサイルが弾道に高性能爆薬や核兵器を仮に搭載していたとして、この島国はどのような対策を取るのが最も適切だろうか。

それは「放置」することだ。

隠された技術があるのかもしれないが、現在公表されている地対空ミサイルの最大迎撃距離は地上から500キロだ。これでも本当かな? と思うが日米は「実験」で何度か上空500キロの「標的」迎撃に成功しているというから、そこまで飛んでいく性能はあるのだろう。しかし、朝鮮が実験で打ち上げたミサイルを万が一にも日本が迎撃ミサイルで撃ち落としたら、朝鮮や国際社会はこの島国をどのようにとらえるだろうか。それは仮に日本が種子島宇宙センターから「ロケット」を打ち上げた際に、中国、ロシアや朝鮮から「撃ち落とされた」事態を考えてみれば、想像の助けとなるだろう。

「メルカトルの呪い? 地図のおはなし」(2013年3月2日付けNonrealさん海国防衛ジャーナルより)http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50695367.html

「メルカトルの呪い? 地図のおはなし」(2013年3月2日付けNonrealさん海国防衛ジャーナルより)http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50695367.html

「メルカトルの呪い? 地図のおはなし」(2013年3月2日付けNonrealさん海国防衛ジャーナルより)http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50695367.html

◆「全く無意味」な訓練が大きな反対もなく行われている

「民生」ロケットを撃ち落とされたら(そうでなくとも、日本のロケットはしばしば打ち上げに失敗するが)、重大な国益棄損と場合によっては、軍事的攻撃として対象国は非難の的になるだろう。J-アラートがバカ騒ぎして待機していたようなタイミングで早朝官房長官が会見を行う。地下鉄が止まり、多くの市町村のHPには「ミサイル飛来の際には」との穏当ではない見出しが躍り、義務教育の現場で「全く無意味」な訓練が大きな反対もなく行われている。

万が一弾道を搭載したミサイルが人のいる場所に着弾すれば、「丈夫な建物」に入っても、「頭を何かで覆っても」、「窓際から離れても」全く無意味である。中程度の地震対策と同じように「何の効果もないミサイル対策」を無責任に流布する政府、地方自治体のありさまは、あえてきつい言葉で言えば「愚の骨頂」である。


◎[参考動画]北朝鮮ミサイル発射 J アラート情報 在京キー局報道の5分間(J-POP遺産さん2017年9月15日公開)

◆どうして朝鮮と「対話」を行おうとしないのか?

ミサイルが飛んで来たら「何をしても無駄」なことは、シリアや中東紛争地帯のニュース映像が伝えるとおりだ。

であるから、仮にこの島国の国土にミサイルが飛来しようが、「放置」するのが現状では最善の策であると私は考える。ただし、それには条件がある。朝鮮がこのかん何回中距離長距離ミサイルの発射実験を行ったか、正直興味がない(調べれば簡単に判明するが、その回数は本質的な問題ではない)。

もっと注視されるべきは、この島国の政府が本当にこの島国に住む(あるは滞在する)人々(日本国籍保持者に限らず、特別永住者を含む)の安全、安寧を第一に考えるのであれば、「圧力」ばかりでなく、どうして朝鮮と「対話」を行おうとしないのか、という基本的な問題だ。

「そんな昔の話とミサイルは別問題だ」とおっしゃる向きが多いかもしれないが、この島国は朝鮮半島の南半分を統治する「大韓民国」とは不充分ながらも占領時代の保障を含んだ、「日韓条約」を締結している。一方日本占領時代には2つの国に分かれてはいなかった片方の国、「朝鮮民主主義人民共和国」との間では、なんら植民地支配、戦後補償の話が行われていない。

つまり直近の状況がどうであれ、この島国が行った「植民地支配」に対する最低限の保障も行っていない中で、「拉致問題」を先頭に「北朝鮮=悪の国」との政府を先頭としたマスコミも同調する広報により、私たちは重要な歴史的過去の債務を忘却しかけており、それゆえ「圧力と対話」などと、はなから朝鮮を敵国視した歪な態度にすら、批判の声は小さく、「対話」を行おうとする態度は、われわれが知る限り、「皆無」だといっていいのが今日の姿である。

そして、マスメディアは歴史を全くと言ってよいほど無視し、何かにつけて容疑者を常時監視している警察のように、朝鮮中央放送がニュースで流す日常的な独特の派手な言い回しをとらえては、明日にでも朝鮮が暴発するかの如き報道を何十年も続けてきた。

◆金日成以来「天皇制」を模して作られた「独裁」体制

国力や外交力、何よりも自国民の福祉に対して現在の朝鮮独裁政権は、評価に値しないと私は考える。その根拠は朝鮮における金日成以来の「独裁」体制が、この島国の「天皇制」を模して作られたものであり、実際に世襲3代目の昭和天皇の時代にこの島国は、途方もない他国への侵略と自滅を経験している事実から導かれる。

この島国は何故あの様な暴虐を成しえたのか。そしてありもしない神話に依拠した「天皇制」に多くの人々が洗脳され、殺し、殺されたのか。独裁三代目の朝鮮に私は危機感を感じる。100年弱前のこの島国の自滅とどこかが似ている。そしてその過ちを加害的に起こした日本国安倍政権は「対話」を一切行わず「経済制裁」という名の「虐め」に専念している。歴史に学ぶということが、この島国の権力者には不可能なのだろうか。


◎[参考動画]ドキュメント北朝鮮①個人崇拝への道(60min)(アナログチャンネルさん2017年1月16日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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