自分の白ブリーフ姿をインターネット上に公開していることで知られる東京高裁の岡口基一裁判官が、ツイッターで自らの半裸写真を投稿したことについて、戸倉三郎東京高裁長官(現在は最高裁判事)から口頭で厳重注意を受けたのは昨年6月のこと。岡口裁判官はその後、この件に関して東京高裁内で「膨大な資料」が作成されていることをツイッターで明かし、再び物議を醸した。

私は、司法行政文書開示請求によりこの資料を入手しようと試みたが、それによりわかったのは、裁判所はこれまで思っていたよりはるかに不誠実で、モラルの低い役所だということだった。

問題の文書の存在を明らかにした岡口裁判官のツイート

◆退けられた開示請求

〈俺の処分の時に作られた膨大な資料は廃棄されずに保存されているだろうか・。ダビデエプロン画像の拡大コピーなど〉

岡口裁判官がツイッターでの半裸写真投稿を戸倉長官に注意されたのち、そんなツイートをしたのは昨年9月22日のこと。私はこの投稿を見て、同27日付けで東京高裁に対し、岡口裁判官が言うところの「膨大な資料」の開示請求を行った。岡口裁判官の半裸写真投稿問題が東京高裁内でどのように取り扱われたかにおおいに関心があったためである。

しかし約3カ月後、東京高裁から文書で届いた答えは、「開示しない」というものだった。そして開示しない理由は、次のように綴られていた。なお、この文書は同年12月21日付けで、戸倉長官名義で作成されている。

〈文書中には、特定の個人を識別することができることとなる情報及び公にすると今後の人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報が記載されており、これらの情報は、行政機関情報公開法第5条第1号及び同条第6号ニに定める不開示情報に相当することから、その全部を不開示とした。〉

私は、この説明をまったく納得できなかった。何より、当の岡口裁判官が自分の処分に関する資料が東京高裁に存在することを公表しているのだから、「特定の個人を識別することができることとなる情報」が含まれていようが、そんなことには何の問題もない。公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるという話にも何ら具体性がない。要するに戸倉長官は面倒くさいから開示したくないだけだろう。私はそう思った。

ただ、私はこの時点で、この不開示決定に対する苦情申出の手続きをとっていない。最高裁に対し、そのような手続きをとる手段があることは知っていたが、そういうことをしても徒労に終わる場合が多いことを過去の経験から知っていたからだ。

しかし、その後、私はあるきっかけで苦情申出の手続きをとることになる。

疑惑の主である最高裁判事の戸倉三郎氏(裁判所HPより)

◆場当たり的に虚偽の説明か

今年5月11日、私は、弁護士の山中理司氏がツイッターで行った投稿により、とんでもない事実を知った。それによると、山中弁護士は私より一足早く、昨年6月29日付けで東京高裁に対し、「東京高裁が平成28年6月21日付で岡口基一裁判官を口頭注意処分した際に作成した文書」の開示を請求していた。ところが、戸倉長官は同年8月2日付けで山中弁護士の開示請求を以下のような理由で退けていたのだ。

〈作成又は取得していない〉

要するに戸倉長官は、私に対しては「存在するが、開示できない」と答えていた文書について、山中弁護士には「そういう文書は存在しない」と答えていたわけだ。では、なぜ、このように戸倉長官の答えが食い違っているのか。答えは明白だ。

山中弁護士が開示を請求した時点では、岡口裁判官は自分が口頭注意処分を受けたことに関する「膨大な資料」が東京高裁に存在することをまだツイートで公表していなかった。そのため、戸倉長官は山中弁護士の開示請求については、そのような文書は〈作成又は取得していない〉として開示しなかった。要するに嘘をついていたのだ。

戸倉長官らの疑惑を黙殺した情報公開・個人情報保護審査委員会の答申書

一方、岡口裁判官のツイートにより「膨大な資料」が存在すると判明後に私が行った開示請求については、戸倉長官も〈作成又は取得していない〉とごまかすことは不可能だ。しかし、それでもなお、「膨大な資料」を開示したくないから、「特定の個人を識別することができることとなる情報」が含まれるなどという言い訳を考え出し、開示を拒んだのだ。

このような不誠実な対応をされたら、戸倉長官は司法行政文書の開示申出があるたび、場当たり的に虚偽の理由を考えて不開示にしているとみなすほかない。そこで私は、この時点で不開示決定を受けてから5カ月近くが過ぎていたが、最高裁に苦情申出をすることにした。苦情申出は3カ月以内にしなければならないが、「正当な理由」があればこの限りではないためだ。

ところが――。

「戸倉長官が司法行政文書の開示申出があるたびに場当たり的に虚偽の理由を考えて不開示にしているとみなすほかないことを示す事実を知ったため」という理由で苦情申出をした私に対し、最高裁の今崎幸彦事務総長は「苦情申出人の主張する事情は、苦情の申出の動機というべき事情であり、苦情申出期間を徒過したことの正当な理由にならない」と主張してきた。戸倉長官が場当たり的に虚偽の理由を考え、司法行政文書の開示請求を退けてきたのが事実か否かについては、何の言及もなく、あまりにも不誠実な対応だった。

そして去る10月23日、最高裁から諮問を受理し、審議を行った情報公開・個人情報保護委員会(委員長は髙橋滋氏、その他の委員は久保潔氏、門口正人氏)も同日付けで作成した答申書により、この今崎事務総長の主張を認め、私の苦情申出を退けた。つまり、戸倉長官が場当たり的に虚偽の理由を考え、司法行政文書の開示請求を退けてきた疑いについて、第三者的立場である情報公開・個人情報保護委員会も黙殺してしまったのである。

私は今回の東京高裁や最高裁、そして情報公開・個人情報保護委員会の対応は容認しがたいので、今後も岡口裁判官の半裸写真投稿問題に関する「膨大な資料」の開示を目指し、しかるべき措置をとる。今後何らかの成果が得られたら、この場で再び報告する。

▼片岡健(かたおか けん)
1971年生まれ、広島市在住。全国各地で新旧様々な事件を取材している。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(片岡健編/鹿砦社)

愚直に直球 タブーなし!『紙の爆弾』12月号!