本日発売『紙の爆弾』9月号に黒藪哲哉氏が〈三宅雪子元衆議院議員の支援者“告訴”騒動にみるツイッターの社会病理〉を寄稿

 
本日発売!月刊『紙の爆弾』9月号

本日7日発売の『紙の爆弾』9月号にジャーナリストの黒藪哲哉氏が〈三宅雪子元衆議院議員の支援者“告訴”騒動にみるツイッターの社会病理〉を寄稿している。この問題はデリケートであるので、これまで何回か書こうか、書くまいか思案していたが、同記事が世に出たこともあり、私見を開陳したい。

◆多発するSNSの副作用

黒藪氏の記事では〈ツイッター〉だけに限定されているが、Facebook、インスタグラムをはじめとする各種SNS、さらには動画配信や中継機能が手軽に伝えることになり、思わぬ副作用が多発していようだ。

これらの媒体は宣伝や広告として利用すれば、商売や市民運動など、目的を持った団体らには、非常に低コストで便利な情報伝達ツールとなる。現に「デジタル鹿砦社通信」もツイッター経由でお読みいただいている読者が多数であろうし、それをリツイートしていただくことで、わたしたちの原稿を読んでいただける可能性が広がる。十分に使い切れているかどうかはともかく、本通信もツイッターに一定程度依拠して拡散を期待している。ポイントは本通信のように購読は無料であっても出版社の発信の一環として利用されようが、商品の宣伝を行おうが、あるいは、まったくの個人がなにを書こうが、利用料金は「無料」であることである。

ツイッターには利用規約があるが、これは「契約」ではないから、ツイッター社も利用者も、双務的な責任や義務を負わない。ツイッター社は好き勝手に規約を変えられるし、規約違反とみなせばアカウントを凍結したり、ブロックすることができる。その基準は一応示されてはいるけれども、実際は厳格なものではない。

◆ツイッター社は一民間企業である

わたしはツイッター利用者ではないが、本原稿を書くにあたり、過日アカウント作成の実験をしてみた。どういうわけか、日本語ではなく英語のアカウント作成画面が表示され、指示通りに必要事項を記入していったらアカウントは出来た。そこで試しに「やったね」、「さすがだね」、「ざまあみろ」と多義的にとらえられる短い英語のフレーズを書き込んだ。誰に向けてというわけではない。

翌日再度確認しようとアカウントを開こうとするも、「あなたはロボットですか?」という英語の問いが返ってくるばかりで、アカウントにログインできない。説明文章を読むとどうやら1つ書き込んだだけで「凍結」されてしまったようだ。

こういう理不尽な出来事があることは、利用者から多数耳にしていたし、前述の通りツイッター社は公的サービスを提供しているわけではなく、一民間企業に過ぎないから、公平にサービスを受けられなくても仕方がないのだろう、と実感した。

◆「ツイッター仕様」の思考という病理

最大の問題点は「無料」で、誰もが利用できるサービスなので、他者のチェックなしに、不用意な書き込みが横行する宿命を負うことである。しかもツイッターは141文字の中でなんらかを表現したり、述べたりしなければならない制限があるため、勢い論理ではなく感情が先行する書き込みが増える。あるまとまった考えなり意見を述べるのに、141文字は少なすぎる。新聞の一番小さい記事がどのくらいの文字数があるか比較されるとわかりやすいだろう。小さな事故や地震などを扱う記事や、訃報などを除いて、100文字以下の記事はそうは見当たらない。

事実を正確に(5W1Hを含め)伝えようとすると、最低数十文字を要するので、それについての意見や論評を加えようとすると、141文字では不足する。のであるが、ツイッターを利用している方は、利用頻度が高いほど141文字内での発露技術が磨かれる。技術と同時に、思考の射程距離も141文字で完結させるようにトレーニングされてしまう。もちろんほかに複雑な出来事は日常生活に溢れているのだから、ツイッターを使っているからと言って思考が短絡化するとわけではない。しかしツイッターに向かい合ったときは「ツイッター仕様」の思考へと自然に脳のスイッチが切り替わる現象が起こってはいないだろうか。

さらに重大な問題点は、過度にツイッターへ依拠し過ぎることの危険性である。課金されたいだけに、依存傾向に陥るとなかなか抜け出すことができない。黒藪氏が取り上げた三宅雪子元衆議院議員にもそのような傾向がみられるという。

たしかに数多くのひとびとがツイッターを利用し、その閲覧は公開されているものであればアカウントを持たない人でも可能であるので、手軽な発信手段ではある。しかし「この人がこんなひどいことを平気で書くのか」と見て呆れるような書き込みにぶつかることは少なくない。それが社会問題化することまであり、ツイッターが原因で民事、刑事事件にまで発展してしまう事例も他人事ではない、と黒藪氏は警鐘を鳴らしている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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