◆明治維新の過ちが混迷の原点

安倍政権に牛耳られた日本は、断末魔の様相を呈している。国会内でくりひろげられるウソ、はぐらかし、傲慢な態度。

役人は忖度し、公文書を改ざん=歴史偽造を実行しても甘い処分しか受けていない。一部の金持ちはどんどん肥え太り、貧しい人はより貧しくなる。そのうえ生活保護の削減で、関連する行政サービス(40以上)が低下し、保護受給世帯ばかりかほかの人々の生活も苦しくなる。

完全に日本は分断されている。いったい誰のせいか?
それは「安倍のせいだ」という人が多い。

確かにその通りで、貧困を拡大させ、国の基本法である憲法に明らかに違反する法律(安保法制、秘密保護法、共謀罪など)を次々と制定施行してきたのが安倍政権である。

「個別の問題に取り組むのではなく、安倍政権そのものを打倒しなければならない」

保守的な人まで含めて、この共通認識が定着したのは、安保法制反対運動が起きていた2015年夏頃だろう。

だが、もっと深いところに現在の日本の混迷と危機があるのではないか。それは、明治維新そのものが今日の安倍政権の暴走にみられる日本の危機をもたらせている、ということだ。

 

関良基『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(作品社2016年)

そのことを明示してくれたのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新~テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著・作品社刊)である。

この本が提示することをひと事で言い表すと、こうである。

《江戸時代末期に芽生えた立憲主義・議会制民主主義の夢をテロリストたちがつぶし、彼らが権力を握った。そして維新後に専制政治を打ち立て、第二次大戦の敗戦をも生き延び現在に至り、暴走している》

これを著者は「長州レジーム」と名付ける。つまり、この長州レジームをつぶさないかぎり、国民・住民・市民は安心して寝られない、と筆者は思う。

◆150年ぶりの大チャンス

筆者は、かなり長い期間にわたり、現在の日本社会の問題は、敗戦後の改革が徹底しなかったことに原因があると考えていた。

だから、日本をよりよい方向に改革するには、1945年までさかのぼらなければならない、と。

ところが昨年(2017年)3月、共謀罪に反対する集会の会場で、ある人に出会ったときにハットしたのである。

「もう一回、1945年に立ち返って日本を抜本的に改革しないとダメですよね。72年ぶりの真の政権交代が必要です!」
 
と私がいうと、こんな言葉が返ってきた。

「いや、150年ぶりですよ。政権交代どころか150年ぶりに市民革命の大チャンスがやってきた。世界情勢をみても日本国内を見ても・・。アメリカの支配層も割れている」
 
この「150」という数字を聞いた瞬間、私の頭の中でパチっとスイッチが切り替わったような感覚に襲われた。150年前といえば、明治維新である。

以来、それまで見えなかったものが見え、聞えなかった声が聞こえ、新しい視点や人物、情報などが筆者の視野に入ってきた。

◆歴史から消された巨人・赤松小三郎とは?

その中で出会ったのが、歴史的名著『赤松小三郎ともう一つの明治維新──テロに葬られた立憲主義の夢』(関良基著、作品社刊)に他ならない。

一読した筆者は、声も上げられないほどの衝撃を覚えた。

明治維新150年を目前にして数年前から、明治維新を批判的に分析・批評する本が相次いで出版され、「明治維新イコール善という神話」に強い疑念の声が増しているのは事実だろう。

しかし、この本が突出しているのは、全国民(国中之人民)を対象とした普通選挙で選ばれた議員が構成する議会を国権の最高機関と位置付ける構想を著した人物に光を当てたこと。

その人物とは、信州上田藩の藩士・赤松小三郎であり、彼の思想と生涯を丁寧に追い、現代の日本と照らし合わせたのが、この本なのだ。

赤松の建白書類では、明文化はされていないものの、女子の参政権も認めていると考えられる。江戸時代のことだから、世界最先端の思想と言ってまちがいない。

赤松の構想では、国軍(陸軍2万8000人、海軍3000人)を創設する。最初は武士がその任にあたるが、有能な者を育てたうえ志願制度に切り替え、軍人に占める士族出身者の比率を減らしていく。

国軍とは別に民兵制度も提唱しているのが特筆に値する。一般国民はふだんは各自の仕事を行い、居住地域で教官により定期的に軍事訓練を受ける。訓練は男女平等に課せられる。

著者の関氏は「小三郎が女性参政権を認める立場だったと推定する根拠はここにある」と述べている。

◆「維新の志士たち」がテロでつぶした立憲主義の夢

驚くのは、赤松小三郎の先進的な構想を認める人たちがたくさんいたことだ。つまり、道理をわきまえた改革者たちの間では、立憲主義は常識になっていた事実は「重い」。明治維新前の慶応年間に!

こうした動きをテロで葬ったのが、まさに長州テロリストたち。彼らによる「長州レジーム」が2018年の現在も続いていることが日本の最大の危機ではないか。

維新で権力を握った彼らが、どのように専制支配体制を固め、現在の安倍政権に至ったのか。近代日本の出発点とされる明治維新そのものに誤りがあったと思わざるを得ない。

そして現在、安倍政権は、長州レジームを暴力的に強化しようとしている。長州テロリストの末裔たちが安保関連法制、秘密保護法、共謀罪、刑訴法改悪・・・と違憲立法を強行し、最終的には憲法改正で大日本帝国を復活させようともがいている。

いま、道理のある人間、心ある人間がやるべきことは、長州レジームを終わらせることである。

かなり危険なところに日本は追いやられているが、一発逆転するチャンスが来ている。

なぜなら、多くの人々が「おかしい」と心の底、奥深いところで気づき始めているからだ。

こんなことを思わせる本だ。最後に著者の関良基氏の言をひいておこう。

《近代日本の原点は明治維新にあるのではない。
江戸末期に提起された立憲主義にある》

長州レジームから日本を取り戻すための必読書である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本書の著者、関良基氏の講演案内

■8月18日(土)第107回草の実アカデミー■
 
長州レジームからの脱却
2018年のいま、
テロリストたちに葬られた立憲主義を実現させる
 
講師 関良基氏(拓殖大学教授)
日時 2018年8月18日(土)
   13:30開場、14:00開演 16:40終了
場所 雑司ヶ谷地域文化創造館 第2会議室
http://www.toshima-mirai.jp/center/e_zoshigaya/
交通 JR山手線徒歩10分 地下鉄副都心線「雑司ヶ谷駅」2番出口直結
資料代 500円
主催 草の実アカデミー


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

▼林 克明(はやし・まさあき)
ジャーナリスト。チェチェン戦争のルポ『カフカスの小さな国』で第3回小学館ノンフィクション賞優秀賞、『ジャーナリストの誕生』で第9回週刊金曜日ルポルタージュ大賞受賞。最近は労働問題、国賠訴訟、新党結成の動きなどを取材している。『秘密保護法 社会はどう変わるのか』(共著、集英社新書)、『ブラック大学早稲田』(同時代社)、『トヨタの闇』(共著、ちくま文庫)、写真集『チェチェン 屈せざる人々』(岩波書店)、『不当逮捕─築地警察交通取締りの罠」(同時代社)ほか。林克明twitter

『NO NUKES voice Vol.16』総力特集 明治一五〇年と東京五輪が〈福島〉を殺す

『紙の爆弾』9月号