◆学校で起きる諸問題

今日、学校(この記事では主に小中高を指す)では様々な問題が起きている。いじめ(という名の犯罪行為)とそれによる自殺、外国にルーツを持つ子供たちへの差別、過酷すぎる教員の職場環境……。

『いじめは、なぜ学校で次々に起きるのか』(『月刊Wedge』2012年7月31日=2018/11/16筆者閲覧)

『「日本人」になれない外国ルーツの子供たち』(クーリエ・ジャポン2018年10月14日=2018/11/16筆者閲覧)

『公立小中学校の教員はブラック勤務が前提?!週60時間以上働いても残業代は支払われず』(東洋経済2017年3月3日=2019/3/2筆者閲覧)

去る2月19日に、大津市立中学2年の男子生徒=当時(13)=の自殺をめぐる損害賠償請求訴訟で加害者側に賠償請求が命じられた。この事件では、自己保身集団である教育委員会と学校はまともにいじめについて調査をしないばかりか隠ぺいまで行っていたという。これに限らず、学校でのいじめは後を絶たない。嫌がらせレベルから暴行・脅迫レベルまで範囲は広い。

外国にルーツを持つ児童に関しても問題は多い。昔から在日朝鮮人の子供たちが出自から学校で嫌な思いをするということはあった。これに加え、両親がブラジル人でその児童も日本語がうまく話せず学校に授業についていけなくなる、または両親のどちらかがインドネシア出身で、宗教的な違いから学校になじめず引きこもるか荒れるといった事例を見聞きしたことがある。

教室の様子。現代はこのような教室で国家が決めたカリキュラムに沿って授業が行われる

近年はこのようなことが増えている。そういえば残虐性で恐れられたイスラーム国の兵士には、フランスやイギリスなどヨーロッパ出身者が多くいた。彼らはアラブ諸国から移住したヨーロッパ社会で疎外感を抱き、やがてイスラーム国に加わることによって、その社会に対して牙をむくようになったのである。この事実は今後移民が増える日本社会に大きな示唆を与える。

教える側も大変である。2019年時点で、小中学校とも週当たりの労働時間が60時間以上が70%以上を占める。週60時間労働は、月残業時間が80時間強の状態に相当する。私のいとこは名古屋市内で小学校の教師をやっているが、非常に大変だという。剣道部出身にもかかわらずサッカー部の顧問をやらされ、指導要領の改訂で教える内容が増加したなどでいつも夜遅くまで残業をしていて、まったく生活に余裕がないようである。

◆「国家の、国家による、国家のための」近代教育システム

このような状況が続くと、「先生に問題がある」や「生徒の生育環境に問題がある」といった以上に、根本的に今の教育システム自体に何らかの問題があるのではないかと考えてしまう。

そもそも今の教育システムは近代の西欧で登場し、その後世界に広まったものである。近代の西欧では、国民国家の形成や産業化に伴い同質な文化を持つ「国民」労働者が必要となった。そのために「国歌」「国史」「国語」が形成されることになった。このように近代教育システムというのは、国家が効率的に人間を動員しやすくなるために作られたものであり、「子供のためにどう教育するか」という視点が根本的に欠けている。

それは「義務教育」(高校は義務教育ではないが指導形態は小中と同じである)の名で児童・生徒を強制的に教室に押し込めて、中央政府が定めたカリキュラムに従って、生徒の様々な特性(性格、民族出自、宗教など)を一般的には無視したうえで画一的なコンテンツを頭の中に叩き込む。その目的は同質的な「国民」という、国家にとって使い勝手の良い者を作り出すためである。

近代以降の日本でも「教育勅語」によって国家や天皇に対する忠誠や奉仕が徹底された。現代の世界でも学校などで実践される、掲げられた国旗に対して頭を下げたり国歌を歌うといった行為はまさに国家への忠誠心を示すものである。また、同質的な「国民」を「生産」すべく教育の場では「国語」や「国史」が教え込まれ、その過程でアイヌなど少数先住民の言語や文化が壊滅的なダメージを受けたのは有名である。このように近代の教育システムというのは、本質的に「国家の、国家による、国家のための」教育制度であり、そこでは生徒一人一人に応じた教育は軽視される傾向にある。(後編につづく)

▼Java-1QQ2
京都府出身。食品工場勤務の後、関西のIT企業に勤務。IoTやAI、ビッグデータなどのICT技術、カリフ制をめぐるイスラーム諸国の動向、大量絶滅や気候変動などの環境問題、在日外国人をめぐる情勢などに関心あり。※私にご意見やご感想がありましたら、rasta928@yahoo.ne.jpまでメールをお送りください。

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