韓国大法院(最高裁判所)は昨年10月30日、元徴用工4人が新日鉄住金株式会社(以下「新日鉄住金」)を相手に損害賠償を求めた裁判で、元徴用工の請求を容認した差し戻し審に対する新日鉄住金の上告を棄却した。これにより、元徴用工の一人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。

韓国大法院2018年10月30日判決の全文翻訳(仮訳)の一部(1P-2P)

韓国大法院2018年10月30日判決の全文翻訳(仮訳)の一部(3P-4P)

◎[参考資料リンク]2018年10月30日の韓国大法院判決の全文翻訳(仮訳)

本判決は、元徴用工の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権であるとした。

その上で、このような請求権は、1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(以下「日韓請求権協定」という。)の対象外であるとして、韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していないと判示した。

本判決に対し,安倍首相は、本年10月30日の衆議院本会議において、元徴用工の個人賠償請求権は日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決している」とした上で、本判決は「国際法に照らしてあり得ない判断」であり、「毅然として対応していく」と答弁した。

しかし、安倍首相の答弁は、下記のとおり、日韓請求権協定と国際法への正確な理解を欠いたものであるし、「毅然として対応」するだけでは元徴用工問題の真の解決を実現することはできない。  

私たちは、次のとおり、元徴用工問題の本質と日韓請求権協定の正確な理解を明らかにし、元徴用工問題の真の解決に向けた道筋を提案するものである。“

下記は「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」の書き出しである。この声明には本年1月19日現在,弁護士280名,学者18名,合計298名の賛同者が名前を連ねている。書き出し以降の本文は下記URLに掲載されているので、是非ご覧いただきたい。

◎[参考資料リンク]元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明

元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明(1P-2P)

元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明(3P)

韓国の文政権に対しては、安倍政権はもとより、この島国のメディアたちも、頭に血が上ってしまったのか。真っ当な報道や論評がほどんどなされていない。あろうことか、政府は韓国に向けての「禁輸」にまで踏み込むという、愚の骨頂をおかしている。わたしは自民党や安倍晋三の行為に、一切の責任を負うものではないけれども、このような歴史と条約を無視した暴挙には、一国民として、限りない恥辱と痛痒を禁じ得ない。

その理由は「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」が適切に解説している通りである。まだ「21世紀版大政翼賛会」や、「産業報国会」が正式には発足していないにもかわらず、「官」も「民」のほとんどでも「韓国けしからん!」の論調が、穏当な反論を無視して進行していることに、わたしは不快である。

主語を「わたし」としたのは、一人でも多くの読者の方々が、歴史事実と、現在の韓国政権の判断、そしてこの島国の政権の判断に、みずからが向き合い、ご精査頂き、どちらに理があるかをご判断いただきたいからである。

不平等条約「日韓条約」でたしかに、大韓民国はこの島国に対する「国家賠償権」を放棄している。が、個人賠償権については放棄していないし、この島国の政権も代々「韓国国民の個人請求権は消滅していない」旨の答弁を国会で行ってきた。

もっとも重要なことは、安倍政権が不当にも輸出制限を隣国に発動させるという、異常事態にたいして、その決定的過誤を指摘できる知性と、メディアがほとんどこの島国からは消滅してしまっている惨状である。過去に侵略した隣国を、あたかも「敵国」のように唾棄する、羞恥心のない政権。それに追従するメディア。若くてまともな史実書や資料に直接触れたことがないから、そういったお馬鹿さんの大人に疑問を感じない若者たち……。

いったいどこまで「侵略」とその加害の矮小化をはれば気が済むのであろうか。「歴史修正(歪曲)主義」こそがもっとも悪辣な差別温存と、差別助長の現況ではないか。わたしは、徹底的にこのような歴史修正(歪曲)主義に抗う。歴史修正(歪曲)主義に抗うことなしに、あらゆる「在日コリアン差別」反対は成り立たないと私は考える。末尾で小魚が吠える言辞を問題にしていても、解決はしないのだ(もちろん小魚の差別言辞を肯定はしない)。

2019年.いまだに天皇の戦争責任を曖昧にし、訳のわからない元号へ変更したこの島国住民のメンタリティーが、一度は本格的に自らの発意により問題かされ、何らかの裁きを下さない限り、醜態の循環は終焉しないであろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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