プロ関係者の観戦も多かったこの大会。学生キックからプロ入りし、国内外のチャンピオンとなった選手も多く、OBの中には、土屋ジョー(東海大学)、小笠原仁(國學院大學)、SHIGERU(東海大学)、藤原あらし(明治大学)、城戸康裕(国士舘大学)、黒田アキヒロ(専修大学)、及川大夢(東海)、小嶋勇貴(東洋)をはじめ後輩となる現・大学生選手を指導する機会も多いようです。

この全日本学生キックボクシング連盟は1972年設立(大会開催は翌年より)。過去一度も分裂の起こらなかった、大学生を対象としたアマチュアキックボクシングの原点とも言える、地味ながら最も継続が長い団体で、伝統を守りながら防具付き試合、アマチュアムエタイ、女子フィットネスなど新しい試みもして、底辺拡大の為、加盟校増加にも力を注いでいる様子です。

大会会長・内藤光博氏、開会の御挨拶

新日本キックボクシング協会、伊原信一代表も応援に駆けつけた

◎第88回全日本学生キックボクシング選手権大会 2019年度チャンピオン決定戦
11月23日(土)後楽園ホール9:20~14:05
主催:全日本学生キックボクシング連盟

最優秀選手賞:西方大智(東海大学3年)
優秀選手賞:冨原旭日(創価大学2年)
喜多川賞:中原昴生(専修大学4年)
技能賞:執行航平(創価大学3年)
ベストバウト賞:小野祥平(東海大学3年)vs 三枝航己(日本大学3年)
団体優勝(1位):東海大学
団体準優勝(2位):日本大学
団体3位:拓殖大学

団体優勝は東海大学

ベストバウト賞:小野祥平(東海大学3年)の優勝ベルト姿

◆第1試合 ウェルター級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

柳 遼太(日本1年)vs 安河内大樹(中央1年)
勝者:安河内大樹 / KO 1R 1:15

◆第2試合 ウェルター級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

谷崎史麿(日本1年)vs 和島偉大(國學院1年)
勝者:谷崎史麿 / KO 3R 0:53

◆第3試合 ミドル級男子U-2 (3回戦/2分制/防具着用)

小宮諒也(明星4年)vs 植村直希(専修3年)
勝者:植村直希 / KO 1R 1:44

◆第4試合 ミドル級男子U-2 中止

甲斐野良介(日本4年)vs 加藤燿央(=計量失格/東洋1年)
甲斐野良介のエキシビジョンマッチ1ラウンド披露
◆第5試合 ライト級男子U-1 3回戦

冨原旭日(創価2年)vs 中原昴生(専修4年)
勝者:冨原旭日 / KO 3R 2:13

◆第6試合 フェザー級男子U-1 3回戦

今泉貴裕(中央3年)vs 須藤幸太(東海2年)
勝者:今泉貴裕 / 判定2-0 (29-28. 29-29. 30-29)

◆第7試合 ライト級男子U-1 3回戦

今村諄(拓殖2年)vs 浅川航平(日本2年)
勝者:今村諄 / KO 1R 0:50

◆第8試合 フェザー級男子U-1 3回戦

吉永 航(=アキレス腱断絶により負傷欠場/専修3年)vs 高橋伶諸(東海3年)
高橋伶諸の不戦勝

山口隼也(拓殖大学2年)、優勝ベルト姿

◆第9試合 ライト級男子U-1 3回戦

執行航平(創価3年)vs 佐藤広継(東洋3年)
勝者:執行航平 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-29)

◆第10試合 フェザー級男子U-1 3回戦

戸塚正弥(明星4年)vs 西方大智(東海3年)
勝者:西方大智 / KO 1R 2:29

◆アマチュアムエタイエキシビジョンマッチ1R

2015年ライト級チャンピオン.瓦田脩二(2016年WMFアマチュアムエタイ世界大会63.5kg級優勝/拓殖大学出身)
    EX
2010年ウェルター級チャンピオン.及川大夢(元・MuayThaiOpenスーパーライト級チャンピオン/東海大学出身)

プロで活躍する及川大夢(夢・センチャイジム)が登場。

◆2019年度UKFチャンピオン決定戦
 第11試合 フェザー級決勝 3回戦

山口隼也(拓殖2年)vs 安 晟太(中央1年)
勝者:山口隼也 / 判定2-0 / 主審:古居秀史
副審:小林30-28. 長谷川30-28. 千代田30-30
山口隼也が2019年度チャンピオン

激しい打ち合いが続いた展開。山口の上下打ち分け的確さが上回ると、安は頬を目の下を腫らし、鼻血も流す苦しさ。安のローキックを貰った山口も苦しい時間が続いた。

フェザー級決勝に向かう山口隼也の円陣

フェザー級決勝・山口隼也 vs 安晟太

山口隼也の右ストレートがヒット

◆第12試合 バンタム級決勝 3回戦

小野祥平(東海3年)vs 三枝航己(日本3年)
勝者:小野祥平 / 判定3-0 / 主審:河野友信
副審:小林30-27. 長谷川30-26. 千代田30-28
小野祥平が2019年度チャンピオン

パンチのヒットが目立った展開で小野がやや的確さが優ったか、第3ラウンドの残り少ない時間で更に打ち合うも小野がラッシュを強め、三枝からスタンディングダウンを奪って勝負を決定付けて王座を勝ち取る。

小野祥平は、なかなか活躍する舞台を見せてやれなかった御両親にこの優勝した姿を見せられたこと、またその両親への感謝、更に地元の友達、部活の先輩後輩に皆が居たから頑張って来れたことへの感謝を述べた。

小野祥平 vs 三枝航己

小野祥平がバンタム級優勝

◆第13試合 フライ級決勝 3回戦

川原俊將(創価3年)vs マグダレナ・ヴィンス(拓殖2年)
負傷引分け TD 1R 1:57辺り / 1R途中、偶然のバッティングによる川原俊將の試合続行不可能となり終了、両者を2019年度チャンピオンに認定。
主審:小林利典

蹴り合いから接近、クリンチになりがちなところへ頭同士が当たった様子。

川原俊路の円陣

ここでバッティングが起こった様子

フライ級はマグダレナ・ヴィンス、川原俊路、両者優勝

◆第14試合 ライト級決勝 3回戦

大館秀長(日本2年)vs 一ノ瀬浩太郎(東洋4年)
引分け1-0 / 主審:長谷川隆二
副審:古居30-30(大館を優勢支持). 河野30-28. 千代田30-30(大館を優勢支持)
大館秀長が勝者扱いにより2019年度チャンピオン(公式記録は引分け)

パンチとローキック主体の攻防。振り分け難い展開が続いた。ドロー裁定した二者のジャッジは大館を支持し、敗者扱いとなった一ノ瀬は4年生として後が無かったか、その場で泣き崩れた。

大館秀長は、今迄生きて来た中で、一番になったことが無かったと言い、ここで優勝できて大きな自信に繋がった様子。そして御両親、先生、先輩、大学や高校の友達に感謝を述べた。

大館秀長 vs 一ノ瀬浩太郎

引分けながら優勝果たした大館秀長と泣き崩れた一ノ瀬浩太郎

《取材戦記》

30年ぶりに学生キックボクシングを訪れ撮影。昔のキックボクシング(プロでの)のような雑な打ち合いもあったが、選手全体の技術は向上していた様子。

今あるアマチュアムエタイやジュニアキックは近年のプロ団体から派生し運営されるアマチュア部門ですが、全日本学生キックボクシング連盟は設立当初から大学役員による構成で大学生が運営進行する大会です。

偶然のバッティングによる試合続行不可能となったフライ級決勝。両者チャンピオンなんて矛盾した裁定だが、アマチュア学生タイトルだから仕方無いところかとは思う。

大館秀長がライト級優勝

最終試合のライト級決勝は“引分け勝者扱い”が発生したが、これは正しい裁定でしょう。延長戦ではなく、引分けを下したジャッジに“優勢支持”を義務付けた。

これはプロボクシングでも行なわれているトーナメント戦ルール。規定のラウンドを超えた延長は行なわないのが原則。

そして「公式記録は引分け」としっかりアナウンス。こういうところはプロの方が分かっていない。

ハーフタイムショーでは拓殖大学2年生女子による全身運動のエクササイズ、K-1 FIT FIGHTデモンストレーションを披露。各試合のラウンドガールは拓殖大学3年生の2名がリングに登場。30年前と比べれば大会がかなり明るく飾られたリングの華となりました。

今年のパンフレットは例年に比べ、豪華だったという声がありました。設立当時からの歴代団体優勝校と1995年から始まった歴代個人戦年度チャンピオンが掲載されており、

「この選手も学生キック出身か!」と新たな発見もできる貴重な資料となりそうです。

来年もプロ関係者の観戦も多くあるでしょう。プロ興行、アマチュアムエタイ、ジュニアキックと共に、現存する一番古い団体の学生キックは忘れてはならない存在でしょう。

K-1 FIT FIGHTデモンストレーションを舞う拓殖大学2年生の皆さん

ラウンドガールを務めた拓殖大学3年生の二人

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

月刊『紙の爆弾』2019年12月号!

一水会代表 木村三浩 編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

上條英男『BOSS 一匹狼マネージャー50年の闘い』。「伝説のマネージャー」だけが知る日本の「音楽」と「芸能界」!

« 次の記事を読む