日本キックボクシング連盟設立35周年、渡辺ジム設立50周年となる今年、台風による試合中止は初めてだったと言う渡辺代表理事。多くの関係者が初めての経験だったかもしれない。

2月28日、準決勝戦で対戦が決まったコッチャサーンvs 高橋亮

その開催中止となった10月12日、PRIMA GOLD杯ミドル級決勝戦は忘れた頃にやって来るほど期間が空いてしまい、来年2月8日(土)に延期となった。

2ヶ月毎の興行で、6月15日が準決勝で清水武と田村聖が勝ち上がり、8月興行が無いから台風の影響で10月興行が消えると今回は半年振りの興行となってしまった。

10月対戦カードの消化の為、その後の興行にズレ込むカードもあるが、12月14日は当初の予定どおりジャパンシフトランド杯59kg級トーナメントが開幕。こういうトーナメントは2ヶ月以内のペースでやらないと熱が冷めてしまうだろう。

もう一つの準決勝は村田裕俊vs遠藤駿平となった

この日の準々決勝となる4試合で高橋亮vs コッチャサーン、村田裕俊vs 遠藤駿平戦が決定。2月8日にこの2試合の準決勝が行なわれる。

このトーナメントを最後に引退を宣言していた村田裕俊とテープジュンは、敗れたテープジュンが簡潔ながら引退セレモニーが行なわれた。

多くの応援者に感謝を述べテンカウントゴングに送られた。生き残った村田裕俊は準決勝戦で終わるか、決勝まで残って有終の美を飾れるか。

◎出陣シリーズFINAL / 12月14日(土)後楽園ホール17:15~21:00
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第13試合 ジャパンシフトランド杯59kg級トーナメント初戦(準々決勝)3回戦

村田裕俊の相打ち気味の右ジャブから次のパンチを狙う

MA日本スーパーフェザー級1位.テープジュン・サイチャーン(ReBORN経堂/58.7kg)
    vs
NKBフェザー級2位.村田裕俊(八王子FSG/59.0kg)
勝者:村田裕俊 / 判定0-3 / 主審:前田仁
副審:仲28-30. 佐藤友章28-30. 亀川27-30.

長身から来る手足の長さ、離れてストレート、前蹴りやハイキック、接近戦でヒジ打ちやヒザ蹴りと距離に応じた技が上手い村田。

テープジュンもパンチやローキック主体に多彩に攻めながらも有効打では村田が優っている中、その差は縮まらず、村田が判定勝利した。

右ジャブから左ストレートを打った村田裕俊

村田裕俊の左ミドルキック、距離の取り方が上手い

村田裕俊の左ストレート、テープジュンは攻め倦む

村田裕俊に敗れたテープジュン、非情にも即引退式となった

◆第12試合 ジャパンシフトランド杯59kg級トーナメント初戦(準々決勝)3回戦

NKBフェザー級チャンピオン.髙橋亮(真門/58.9kg)
     vs
J-NETWORKフェザー級チャンピオン.一仁(真樹AICHI/59.0kg)
勝者:髙橋亮 / 判定3-0 / 主審:鈴木義和
副審:川上30-27. 佐藤友章30-27. 前田30-27.

初回、ローキック主体の蹴り合いから高橋亮の蹴り技の先手を打ったり、素早く蹴り返したり上手さが目立つが、一仁は見劣りしない蹴り返しで出る中、高橋は一仁の前進を迎え打ち、左ストレートでノックダウンを奪う。一仁は巻き返しに前進を強めるが高橋はハイキックのヒットが目立ち、終盤はやや攻め倦んだが、順当に判定勝利を収めた。

高橋亮の迎え撃った左ストレートが一仁にヒット

高橋亮の左ストレートで肩透かしを食ったように倒れ込んだ一仁

高い蹴りでは高橋亮が幾度かヒット、優勢を譲らなかった

高橋亮の右ジャブが一仁にヒット

◆第11試合 ジャパンシフトランド杯59kg級トーナメント初戦(準々決勝)3回戦

遠藤駿平の左ストレートで新人がノックダウンとなった

MA日本ライト級チャンピオン.遠藤駿平(WSR・F三ノ輪/59.0kg)
    vs
WBC・M日本フェザー級1位.新人(=あらと/E.S.G/58.9kg)
勝者:遠藤駿平 / 判定3-0 / 主審:亀川明史
副審:鈴木30-28. 佐藤友章30-27. 前田30-27.

新人の蹴りに合わせてパンチへ繋ぐのが上手い遠藤駿平。第3ラウンドには遠藤の左ストレートで新人がノックダウンを喫する。

より蹴りが少なくなってしまう新人。遠藤が勢いづいたまま判定勝利。

蹴りの勢いが増した遠藤駿平、新人は蹴りが少なくなる

遠藤駿平の右ハイキックが新人の唇をかすめる

◆第10試合 ジャパンシフトランド杯59kg級トーナメント初戦(準々決勝)3回戦

藤野伸哉の後ろ蹴りがコッチャサーンにヒット、大技では優る

WMC日本スーパーフェザー級2位.藤野伸哉(RIKIX/58.7kg)
    vs
コッチャサーン・ワイズディー(元・ルンピニー系SB級7位/Y’ZD/58.45kg)
勝者:コッチャサーン / 引分け三者三様 延長ラウンド1-2 / 主審:仲俊光
副審:鈴木29-28(10-9). 亀川30-30(9-10). 前田28-30(9-10).

我武者羅に出る藤野のパンチやローキックがインパクトを与えるが、コッチャサーンのムエタイ特有の蹴りと試合運びが地味にも光る。藤野は後ろ蹴りもヒットさせるが、コッチャサーンはヒジ打ちで小さいながら藤野の眉間をカット、更に首相撲からヒザ蹴りや、何度も藤野を崩し転ばせた。

派手な藤野のヒットと地味ながらコッチャサーンの重いヒットは三者三様に分かれ、延長ラウンドも差が出難いながらも要所要所でインパクトを与えるコッチャサーンが勝ち得た形。

このジャパンシフトランド杯トーナメントに於いて、引分けの場合は延長戦を含む勝者が決定するものと発表されています。

蹴り技ではコッチャサーンが優る

コッチャサーンのしなりあるハイキック

◆第9試合 66.0kg契約3回戦

北川”ハチマキ”和裕(PHOENIX/65.95kg)vs JKAウェルター級3位.隆政(治政館/65.2kg)
勝者:隆政 / TKO 1R 0:32 / 北川の右足の負傷、カウント中のレフェリーストップ
主審:佐藤友章

開始早々の軽い蹴り合いから北川が足を引き摺り倒れ込んでしまう。蹴り合ったダメージではなく、アクシデント的負傷した様子で立ち上がろうにも足に力が入らずまた倒れ込み、ノックダウンを宣せられ、レフェリーに止められてしまった。

骨折は無く、ふくらはぎに激痛が走ったという。リング上より控室に戻ってからの方が痛さが増したようだった。肉離れか筋が断裂したか。減量によるものか、練習からくる筋肉披露の影響だろうか。

◆第8試合 ライト級3回戦

NKBライト級5位.パントリー杉並(杉並/60.9kg)vs 川畑RYU直輝(NK/60.45kg)
勝者:川畑RYU直輝 / TKO 1R 0:55 / カウント中のレフェリーストップ
主審:川上伸

交流戦で他団体にも出場することも増えたパントリー杉並。このところはKO負けも増えた感があるが、この日も打ち合いから右ストレートで仕留められてしまった。

◆第7試合 ウェルター級3回戦

NKBウェルター級4位.蛇鬼将矢(テツ/66.6kg)vs 宮城寛克(赤雲會/66.68kg)
勝者:蛇鬼将矢 / 判定3-0 / 主審:鈴木義和
副審:亀川29-27. 佐藤友章29-28. 前田29-28.

◆第6試合 68.0kg契約3回戦 

雑賀弘樹(NEXT LEVEL渋谷/68.0kg)
    vs
YASU(NK/67.3kg)
勝者:雑賀弘樹 / TKO 2R 2:35 / カウント中のレフェリーストップ
主審:佐藤彰彦

◆第5試合 58.5kg契約3回戦

山本太一(ケーアクティブ /58.3kg)vs 渉生(アント/58.5kg)
勝者:渉生 / KO 2R 1:47 / 3ノックダウン
主審:亀川明史

◆第4試合 フェザー級3回戦

隼斗(テツ/57.0kg)vs 勇志(真門/56.4kg)
勝者:勇志 / 判定0-3 / 主審:佐藤彰彦
副審:佐藤友章27-30. 前田29-30. 川上28-30.

◆第3試合 バンタム級3回戦

古瀬翔(ケーアクティブ /53.52kg)vs 大崎草志(Struggle/53.4kg)
勝者:古瀬翔 / 判定2-1 / 主審:亀川明史
副審:鈴木30-29. 前田29-30. 佐藤彰彦30-28.

◆第2試合 バンタム級3回戦

裕亮(KSK/53.3kg)vs 剣汰(アウルスポーツ /53.52kg)
勝者:裕亮 / TKO 1R 1:05 / アクシデント的負傷ダウン、カウント中のレフェリーストップ
主審:佐藤友章

◆第1試合 フライ級3回戦

會町Tetsu(テツ/50.5kg)vs 小野拳大(KICK BOX/50.45kg)
勝者:會町Tetsu / 判定3-0 / 主審:前田仁
副審:川上30-28. 佐藤友章30-28. 鈴木30-29.

《取材戦記》

第2試合で、組み合った形で倒れ込んだ両者、剣汰は立ち上がろうにも、パンチを食らって効いたかのようにフラついて、意識があるのに立ち上がれない。首辺りを押さえていたが、倒れた際に首筋を痛めたか、中枢神経に衝撃が起こったか。これをレフェリーはノックダウン裁定でカウントを始め、起き上がれぬ様子を見て試合を終了させた。

もつれて倒れたダメージで立ち上がれない剣汰、カウントされTKO負けとなる

第9試合も北川”ハチマキ”和裕が右足を負傷したようで、何もしないまま倒れ込んでしまった。立ち上がろうにもすぐ崩れ落ち、これもレフェリーがノックダウン裁定でカウントを始めた。いずれも佐藤友章レフェリーが裁いた試合だった。

選手の異常事態を保護せずカウントすることに異議を唱える声もあるようだが、競技としてレフェリーはあらゆる事態を想定して裁かなければならない立場にある。選手が身体の異変を訴えると、レフェリーが「えっ、どうしたの?」と真に受けて聞いてしまうレフェリーが多いことに気付く。それは有効打によるダメージを回復する為に時間稼ぎしていている場合も有り得るので、その事態を読まなければならない。

北川“ハチマキ”和裕もふくらはぎの断裂で立ち上がれなかった

逆に、真剣に異常事態を訴える選手がいるのも事実。まあこの場合がほとんどだが、昔は立嶋篤史がタイ選手の蹴りを受けた際、ノーファールカップの紐が切れて、「これが証拠だ!」と言わんばかりに強引にカップをトランクスから引っ張り出したことがあった。

ただ訴えるだけでは単なる遅延行為と見なされ、そのまま続行せざるを得ない場合もあるからだった。レフェリーは選手の状態を見抜けない場合も多いが、正しく裁いて当たり前、間違えれば非難され、迅速適切に対処しなければならない難しい役割を担っている辛い立場でもあります。

2020年、NKB認定の日本キックボクシング連盟興行は「交戦シリーズ」として2月8日(土)をはじめ、大阪を含む6度の興行が予定されています。

4月11日(土)後楽園ホール
4月26日(日)大阪城東区民センター(NK、テツジム主催)
6月20日(土)後楽園ホール
10月10日(土)後楽園ホール
12月12日(土)後楽園ホール

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]

フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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