7月27日13時15分から大阪高裁第2民事部82号法廷で、われわれ鹿砦社に対して李信恵が名誉毀損・損害賠償を求め提起した訴訟の控訴審判決が言い渡された。開廷後、清水響裁判長は「主文、原判決を次のとおり変更する」と一審判決で命じられた165万円の賠償を110万円に減額する判決主文を言い渡した。

この日法廷には、被控訴人(一審原告)李信恵、代理人の神原元弁護士、上瀧浩子弁護士が揃って出廷していた。傍聴席には昨年の本人尋問後に酒に酔って暴行傷害事件を起こし保釈中の伊藤大介も神奈川からわざわざ傍聴に来ていた。おそらくは「大阪地裁判決通り」の満額回答を確信して神原、上瀧両弁護士は控えていたのだろう。しかし、主文が読み上げられると3人の表情は「えっ!」と不意を突かれたように変わったかに見えた。

法律的な判断はともかく、3人の表情に、この争いにおける当事者の感情が収斂されていたといえるだろう。

一連の訴訟の判決を受けて、われわれは、事実、真実には確信を持ちながらも、裁判所の判断には、ほとんど“絶望”に近い境地にいた。当たり前であろう。この日の大阪高裁の判決は、大阪地裁の“最悪判決”よりは、丁寧な事実判断を行っているとはいえ、市民感覚からは程遠い。何よりも1時間余り殴る蹴るされた被害者に対する賠償金と、その真相究明(われわれはこれまでに6冊の書籍に結実させ世に問うている)の賠償命令が同額近くである? これが司法の判断であれば、“集団暴力励行判断”といっても過言ではないだろう。

最も重要なことは、李信恵は鹿砦社出版物4冊(提訴当時出版されていたのは4冊だった)の販売停止など、いやしくもライターを生業とする者にとって全く不当極まりない請求を申し立てていたのであるが、この主たる請求は、大阪地裁でも、大阪高裁でも認められていないことである。

すなわち、本論でわれわれは負けていない、どころか〈勝利〉(松岡にいわせれば「敗北における勝利」)しているのであり、誤判によって大阪地裁から不当にも下された賠償命令が、減額されたというのが、客観的な事実である。

これでもこの事件にかんする限り、判決としては“マシ”であったのだ。判決の詳細の分析、今後のわれわれの法廷闘争、及び出版活動などの方針については、近日中にお伝えする。きょうの原稿では本件訴訟及び関連訴訟を一貫して共に闘っていただいた大川伸郎弁護士の言葉で結ぶ。

「事実認定はこれまで通りですが、たとえば『M君対5人訴訟』の控訴審では、全く訳のわからない理屈が持ち出されました。本件訴訟の地裁判決もそうでした。あれらは誤判です。それに比べれば、不満は残りますが、ある程度丁寧な事実認定がなされたと、一定の評価はできると思います。勿論判決に満足はしていませんが」

「結ぶ」とは述べたが、やはりこの男の感想を載せないわけにはいかないだろう。鹿砦社代表・松岡は判決への感想を、
「少しは押し返したかな、というところです。一審大阪地裁判決は素人目にも判る明らかな誤判でしたから。でもね……」
と含みのある言葉を紡いだ。

画像は法廷での李信恵。髪を切りイメチェン?(画・赤木夏)

判決後、相手側は司法記者クラブで、記者会見を行った模様だ。判決言い渡しの法廷には記者席があった。われわれには決して開かせてもらえなかった記者会見を相手方はいとも簡単に行うことができる。28日の新聞には相手側の言い分が掲載されるかもしれない。不公平じゃないか。

この裁判の詳細は、後日詳しくお伝えする。事実の末尾に真実が宿る。なぜ、われわれは、原告であっても被告であっても「記者会見」すら拒否されるのか。

このことが、このリンチ事件の〈本質〉を示唆しているのかもしれない。司法記者クラブに巣くうマスメディアが、被害者の必死の声に耳を貸さず黙殺し、リンチがあったという事実を隠蔽し、李信恵ら加害者側の声をのみ聞く――どこかおかしいのではないか?

われわれは、司法の場であれ、言論の場であれ、退路を持たない。あらゆる欺瞞を暴き出し、指弾し尽くす。それは自己満足のためではない。人間の根本矛盾を、そして〈生き様〉を問う問題だからだ。

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