コロナ渡航制限が長引き、中止カードは国際タイトル戦が2試合、大田拓真は代打カード発表後に濃厚接触者となって国崇(拳之会)戦も中止。国内戦も代行カード2試合有り、波乱のカード編成となった。

メインイベントはジャパンキックボクシング協会から乗り込んでのWBCムエタイ日本ライト級王座初防衛戦に臨んだ永澤サムエル聖光は元・ウェルター級チャンピオンの健太を判定で退けた。

前田浩喜は過去ノンタイトル戦で、判定で下している大輔に2-1の僅差判定勝利でNJKFタイトル三階級制覇。

NJKFフライ級王座挑戦者決定トーナメントは4名参加による準決勝戦2試合で、勝ち上がった嵐と吏亜夢が次回6月5日興行で挑戦者決定戦が行われ、年内にはチャンピオンの優心(京都野口)に挑戦となる予定。

以下二つの国際戦中止カードは延期として次期開催予定

WBCムエタイ・インターナショナル・フェザー級王座決定戦5R
大田拓真vs世界19位.トミー・7ムエタイジム(イタリア) 

S-1レディース・バンタム級 世界決勝戦5R
SAHOvsザ・スター・ソウクリンミー(タイ) 

◎NJKF 2022.1st / 2月12日(土)後楽園ホール17:30~21:05
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:WBCムエタイ日本協会、NJKF

◆第9試合 WBCムエタイ日本ライト級タイトルマッチ 5回戦

第6代チャンピオン.永澤サムエル聖光(ビクトリー/1989.11.10埼玉県出身/60.9kg)
     VS
挑戦者・同級1位.健太(E.S.G/1987.6.26群馬県出身/60.9kg)
勝者:永澤サムエル聖光 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:少白竜50-46. 竹村50-47. 中山50-46

パンチとローキック中心の静かな探り合いは様子見で、一気に仕留める気配は無いものの、第2ラウンドには永澤サムエル聖光のローキックが徐々に健太の脚を捕らえて主導権を奪った流れに傾いていく。以前のような日焼け褐色から色白に変身した健太の脚と脇腹は赤く腫れる箇所が増えていった。

第4ラウンドには永澤のローキックで健太がバランスを崩し効いた様子が見られるが、永澤が偶然のバッティングで眉間辺りを負傷。負傷判定ルールは採用されない為、続行かTKO負けかの緊張が走る。あと強い一発か数発のローキックで健太は崩れそうなところ、しつこくは行かず、パンチで顔面からボディーも狙って圧倒した展開で終了。永澤が大差判定で健太を突き放した。

主導権を奪った永澤のローキックが健太の脚を麻痺させていく

永澤の積み重ねたローキックで健太は動きが止められていく

リング上では滅多に笑顔を見せない永澤が応援の声に応える

◆第8試合 第13代NJKFフェザー級王座決定戦 5回戦

1位.大輔(TRASH/56.85kg)vs2位.前田浩喜(CORE/57.1kg) 
勝者:前田浩喜 / 判定1-2
主審:宮本和俊
副審:和田49-48. 竹村48-49. 中山47-49

前田浩喜は元・NJKFバンタム級とスーパーバンタム級チャンピオン。最初の獲得が2007年とキャリアは長い。

大輔がパンチで距離を詰める流れだが、前田の蹴りのディフェンス力が凌ぎ、コーナーに詰められてもパンチやヒジ打ちで返すのは落ち着いたベテランの捌き。

第3ラウンドまでの公開採点がやや遅れて第4ラウンドに入ってからの公開だったが、29-29、30-28、30-28で前田がリードしていることがしっかり聞こえたか、大輔は前進を強めた蹴りと、首相撲からヒザ蹴りと前田を下がらせる。最終ラウンドも大輔の勢いがあったが、前田も蹴り返しで大輔を追い詰めると流れを取り戻した感じで終了。際どい判定ながら前田が辛くも勝利を拾いNJKFでの三階級制覇。

後半の大輔の巻き返しに迎え撃つ前田浩喜

蹴りのコンビネーションはベテラン技となる前田浩喜、大輔の突進を阻止

三階級制覇となった前田浩喜

◆第7試合  54.0kg契約3回戦 (松岡宏宜がコロナ濃厚接触者となる影響で欠場、井原駿平出場)

井原駿平(ワイルドシーサーコザ/53.6kg)vs誓(ZERO/54.0kg)
勝者:誓 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:和田27-30. 竹村28-30. 宮本27-30

誓は前・NJKFフライ級チャンピオン。誓は距離に応じてテクニックで優っていく。井原駿平の出方を覗い、離れればハイキック、距離を詰めればヒジ打ちやヒザ蹴り、井原のパンチを凌いで、倒すには至らぬもフルマークの大差判定勝利。

技の多彩さで井原駿平を圧倒した誓

◆第6試合 ライト級3回戦

NJKFライト級1位.吉田凛汰朗(VERTEX/61.05kg)
     VS
JKAライト級2位.内田雅之(KickBox/60.9kg)
引分け 三者三様
主審:竹村光一
副審: 中山29-29. 少白竜30-29. 宮本29-30

様子見は軽いパンチとローキック、若さの勢い有る吉田とベテランの落ち着き有る内田。第3ラウンドに組み合った際、偶然のバッティングで内田の眉頭が切れるが深くはない。吉田は攻勢に転じようと飛び蹴りも見せ、内田も右ロングフックやバックヒジ打ちがインパクト与えるが互いの決定打が無く、三者三様の引分けに終わる。

ロングフックやバックハンドブローも決定打とならずの内田雅之

◆第5試合 63.0kg契約3回戦(タイのピューポン・ゲッソンリット、コロナ規制で来日不能、梅津直輝出場)

NJKFライト級6位.梅津直輝(エス/62.95kg)vs同級2位.羅向(ZERO/63.0kg)
勝者:羅向 / TKO 1R 0:56 /
主審:中山宏美 

羅向が蹴りの距離での攻防から前進して、速攻の左ハイキックで梅津からノックダウンを奪い、パンチ連打で右フックを決め、梅津は二度目のダウンでカウント中にレフェリーストップとなった。羅向はこの日のMVPに選ばれました。

速攻ノックアウト勝利となった羅向

◆第4試合 NJKFフライ級王座挑戦者決定トーナメント準決勝3回戦

2位.悠斗(東京町田金子/50.7kg)vs6位.吏亜夢(ZERO/50.75kg)
勝者:吏亜夢 / 判定0-3
主審:宮本和俊
副審:和田28-29. 中山28-29. 竹村28-30 

上背と手足の長さが優位に展開した吏亜夢のハイキック。悠斗の強打を封じ、ヒザ蹴りも効果的に攻め、ブロックの上からでもハイキックでダメージを与えた吏亜夢が判定勝利。

◆第3試合 NJKFフライ級王座挑戦者決定トーナメント準決勝3回戦

5位.TOMO(K-CRONY/50.6kg)vs嵐(キング/50.9→50.8kg)
勝者:嵐 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:和田27-30. 中山27-30. 宮本27-30

ローキック中心の様子見からTOMOはハイキックが効果的に出るが、次第に嵐のパンチが目立っていく。第2ラウンド以降も嵐のパンチがTOMOの顔面を捕らえるシーンが増え、優勢を維持してフルマークの大差判定勝利。

次回NJKFフライ級挑戦権を争うことになった嵐と吏亜夢

◆第2試合 女子キック・スーパーフライ級3回戦(2分制)

NA☆NA(エス/52.05kg)vsARINA(闘神塾/51.6kg)
勝者:ARINA / 判定0-3 (28-29. 28-30. 28-30)

◆第1試合 スーパーフェザー級3回戦

龍旺(Bombo Freely/58.4kg)vs昴治(東京町田金子/58.3kg)
勝者:龍旺 / 判定3-0 (30-27. 30-28. 30-27)

《取材戦記》

偶然のバッティングで負傷した永澤サムエル聖光は、負傷判定の無いWBCムエタイルールで、続行不可能となったらTKO負けとなる為、頭が低くなりがちな健太と再度のバッティングを避け、無理にローキックでは行かなかった模様。それでも最終ラウンドも攻勢を維持した永澤サムエル聖光。

プロボクシングと採点の流れが違う本場ムエタイは負傷判定は無く(後半勝負重視)、WBCムエタイも本場式に倣っている模様。しかし採点基準はプロボクシングの流れを汲んでいます(各ラウンドの独立した採点)。

ジャパンキックボクシング協会から乗り込んだ形の永澤サムエル聖光(ビクトリー)は、2020年9月12日にWBCムエタイ日本ライト王座決定戦で、鈴木翔也(OGUNI)に判定勝利して王座獲得。コロナ禍の影響もあって防衛戦は延びたが、今回再びNJKFのリングに上がって初防衛を果たしました。今後はホームリングとなるジャパンキックボクシング協会ビクトリージム興行での防衛戦計画がある模様。

健太は国崇に続く100戦達成の功績を称え表彰を受けました。この日は敗れて全103戦62勝(18KO)34敗7分。

健太は元・WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン。NJKFではウェルター級(2度)とスーパーウェルター級王座の二階級制覇し、徐々に階級を下げ、ライト級まで落としてきました。これ以上は下げないでしょう。でも健太ならやりかねないと期待をしてしまう人は居るかもしれません。逆パッキャオパターンである。

健太は「僕にとっては100戦とはただの数字です。目の前にある試合をめがけて一戦一戦やってきたら、気付いたら100戦になっていました。まだまだこれから目の前の相手に向かって一生懸命努力して勝利を目指して勝って、負けても次の勝利を目指して頑張る、その積み重ねでございます。」とアピール。

「気が付いたら」というフレーズは一般人にも思い浮かぶもの。「気が付いたら還暦」という人も多いでしょう。

コロナ規制も緩和に向かう予測も大きく外れ、今回の興行に関して、カード中止時点の発表上は直接の感染者は居ませんでした。感染も発病もしない濃厚接触者としての中止はやるせない思いでしょう。来日不能となった選手も同様に、計画を狂わすコロナ恐るべしである。

次回「NJKF 2022.2nd」は6月5日(日)後楽園ホールで開催予定です。

4月24日(日)には春日部市でRITジム主催興行が2年ぶりに「絆XIV(14)」が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」