介護福祉士である筆者は、広島県安芸郡の介護施設(以下、弊社とします)に派遣される形で勤務しています。また、広島県内の自治体労働者や公共関連の労働者で構成される「広島自治労連」の執行委員をこの10月から拝命しています。

以前、ご紹介したとおり、弊社では外国人労働者が多く働いておられます。しかし、最近、次々と辞めていかれます。賃金のより高い東京に行かれるのです。すぐに新人の外国人労働者が入ってこられるのですが、数か月でまた東京の介護施設へ転職される、という傾向が最近定着してしまっています。円安の中で、政情不安もある母国への送金をより多く確保するため、東京へ、という彼女たちの選択ですので引き留めることはできません。そんな中、筆者は、地元の自治体に対して、この問題について、改善をお願いする機会をいただきました。

筆者の属する労働組合「自治労連」が加盟している「広島県労連」が事務局となっている「国民大運動実行委員会」は、「自治体キャラバン」と銘打って毎秋、自治体首長と議会を表敬訪問し、労働や医療、福祉、教育など様々な課題の改善をお願いしています。

今回、11月8日に安芸郡内の自治体を訪れる「キャラバン」があるということで、「外国人労働者流出問題」を取り上げたいと考えていた筆者は参加させていただきました。組合の会議で、「誰か行く人はいませんか?」と募集していたので渡りに船と考えていた筆者は「あ、俺、行くわ」と手を挙げた次第です。この鹿砦社通信含めて様々な媒体でこの問題を取り上げたり、街頭演説で訴えたりする。これも大事です。

実は、11月3日に、広島県庁前で筆者の組合も参加する「県民大集会」があり、筆者も参加しました。その開会前に、医療労働者の組合・医労連が、「医療・介護職員の大幅増員と夜勤の改善」を求める署名活動をされていました。

筆者も「乱入」し、マイクを握り、「外国人労働者も広島の介護現場から流出している。日本人がやりたくないことは外国人もやりたくないのだ。いまこそ、ガツンと待遇を改善し、大幅増員で環境も改善を。」などと訴えました。しかし、やはり、行政・議会にもきちんと働きかけることが大事です。そこで、今回このキャラバンに参加した次第です。

11月8日、この日はまず、わたしにとり、組合の上司でもある広島自治労連の浜崎書記長が代表して、要請書を先方の首長(代理で担当部長)、議長(代理で事務局長)に提出しました。

提出した要請書では、国保料や介護保険料について、減免の充実や減免の周知徹底、事業主にも国保の傷病手当を求めています。物価の高騰については、医療や介護などの事業所への支援の充実を求めています。最低賃金については、1500円に引き上げることを求めています。子ども医療費については、県としても、小学生以上にも助成を行うことを求めています。存廃問題が焦点となっているJR芸備線などについては、国の責任で維持するように求めました。

その後、参加者から具体的に要請が行われました。病院の経営者からは、年間で数千万円、光熱水費の負担が増えているとの訴えがありました。医療者の団体からは経済的困窮からがんの治療などが手遅れになって亡くなった人が続出していることへの対策を求めました。

また、医療関係の労働組合役員からは「弊社ではここ数年で10円しか時給が上がっていない」と窮状の訴え。最低賃金を上げることで、韓国では一時は混乱が起きたが、現在では一人当たりGDPでも日本を抜いている、と指摘。賃上げの必要性を力説しました。

わたしは、自分の勤務先の安芸郡の弊社から東京に外国人労働者が次々と流出している問題を主に取り上げました。
(前回記事参照)

「このままでは介護現場は持たぬ。3%の政府の賃上げでは到底足りない。介護現場の大幅賃上げに協力していただきたい。」

「弊社の場合、日本人スタッフが最低賃金ギリギリ、外国人労働者がその約1割増し、派遣のわたしが1100円。それでも、外国人労働者は出て行ってしまう。円安の中で、ちょっとでも故国に送金をしないといけない彼女たちのことを思えば止められない。最近では、外国から広島に来てしばらくして東京の給料が高いことを知って弊社を辞めていく方も多い。すぐにやめられてしまうと、戦力として育たない。」

「もちろん、最低賃金と同額の時給の日本人については、若者は入ってこず、年金が足りないから働かざるを得ないという年配の方が多い。」と訴えました。

◆自治体側も筆者の要望で外国人労働者の「真相解明」

安芸郡のこの自治体では実は町長さんも外国人登録が伸び悩んでいることを「なぜだろう?」と気に掛けて、この日対応された部長さんに分析を命じていらっしゃったとのこと。そうすると、介護現場の労働者において転出が多いことがわかったとのことです。

部長さんは、わたしの発言をお聞きになって、「そういうことか?!よくわかりました。」と、納得されていました。

また、最低賃金を全国一律1500円にすることについて「東京は物価が高くて生活費も高いのでは?」という当局の方からの疑問に対しては、同行した組合幹部の方から、「東京では住居費は高いけれども、公共交通が発達している。地方はクルマに依存せざるをえず、維持費がかかるので生計費はあまりかわらない」と補足。

わたしからも、東京で育ち、県庁職員時代は山間部で仕事をした経験から、「東京は、実は安い飲食店も多い。わたしは2000年に東京から広島に来たが期待ほど安くなかった。しかし、さらに山間部に赴任すると、メシを食うところは少ないし、あっても広島市より高い。地元の商店に並ぶものも高いし品質もいいと言えない。だから、地方の最低賃金も上げないと結局、外国人も日本人の若者も流出してしまうと思う」くと、納得されていました。

今回、自治体幹部の方とも、実体験に基づいて要望をしていくことの重要性を感じました。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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