今回は年齢層の幅広い、ヤング対決と中年対決の存在感示したタイトルマッチ。カズ・ジャンジラと杉山空が戴冠。

WPMF世界王座獲得経験者同士のベテラン対決は片島聡志が一瞬のハイキックでテクニシャン藤原あらしを倒しました。

◎野獣シリーズvol.1 / 2月18日(土)後楽園ホール17:30~20:20
主催:日本キックボクシング連盟 / 認定:NKB実行委員会

◆第9試合 第16代NKBウェルター級王座決定戦 5回戦

3位.笹谷淳(team COMRADE/1975.3.17東京都出身/ 66.6kg)
62戦29勝(10KO)31敗2分
      VS
4位.カズ・ジャンジラ(ジャンジラ/1987.9.2東京都出身/ 66.4kg)
41戦20勝(4KO)16敗5分
勝者:カズ・ジャンジラ / 判定3-0
主審:前田仁
副審:亀川47-50. 鈴木47-50. 高谷47-50
※各戦績はこの日の結果を加えています。

笹谷淳vsカズ・ジャンジラ、ヒジ打ちと左ストレートの交錯

飛びヒザ蹴りを見せたカズ・ジャンジラ

47歳と35歳の戦い。両者は過去2020年10月10日に対戦し、カズ・ジャンジラが僅差ながら判定勝利している。

初回、ローキック中心にパンチを合わせて出ていく笹谷淳。第2ラウンドには組み合う接近戦が増え、カズの圧力が徐々に増していく中、第3ラウンドにはカズの左フックがヒットして完全に主導権を奪う。

笹谷は下がり気味の展開でも打ち返し、カウンターのヒジ打ちも返すが、カズの手数と前進は衰えず、計4度の飛びヒザ蹴りも見せたが、ノックダウンに至るヒットは見られず判定まで縺れ込んだ。採点は3ラウンド以降全て、カズが支配した流れでジャッジ三者とも50-47が付いた採点。カズ・ジャンジラが新チャンピオン。

◆第8試合 第8代NKBフライ級王座決定戦 5回戦

1位.龍太郎(真門/2000.12.25大阪府出身/ 50.6kg)11戦4勝(1KO)6敗1分
      VS
2位.杉山空(HEAT/2005.1.19静岡県出身/ 50.65kg)7戦4勝1敗2分
勝者:杉山空 / 判定0-2
主審:加賀見淳
副審:高谷49-50. 鈴木49-49. 前田47-50

22歳と18歳の戦いは、初回から蹴りの主導権争いから首相撲に移ると杉山の崩しが優勢な流れを作り、前蹴りから繋ぐ技が上回った杉山空が主導権を維持した流れで勝利を導き、新チャンピオン。

王座に就いて「これからがスタート」と言うとおり、団体枠を越えたトップスターへ進まねばならない。

幾つかの飛び技など大技も見せた杉山空

前蹴りが効果的だった杉山空

片島聡志の右ハイキックがヒットした直後、藤原あらしが倒れかかる直前

◆第7試合 54.0kg契約 5回戦

藤原あらし
(元・WPMF世界スーパーバンタム級Champ/バンゲリングベイ/1978.12.22和歌山県出身/ 53.8kg)
98戦63勝(41KO)24敗11分

      VS
片島聡志
(元・WPMF世界スーパーフライ級Champ/KickLife/1990.10.19大分県出身/ 53.95kg)
52戦27勝(KO数は不明)20敗5分

勝者:片島聡志 / TKO 2R 2:55
主審:亀川明史        

藤原あらしは昨年12月24日に続いて連続出場。

則武知宏(テツ)をKOしたムエタイ技でしぶとさを見せるか注目の中、初回、両者の蹴りからパンチでの様子見。

第2ラウンド終盤、それまでの落ち着いた流れから片島のいきなりの右ハイキックで藤原あらしのアゴにヒットするとバッタリ倒れ、ノーカウントでレフェリーストップ、そのまま担架で運ばれるも、後に控室で意識はしっかり回復した様子。

ノックアウトした瞬間の片島聡志

勝利した片島聡志と陣営

◆第6試合 59.0kg契約3回戦

NKBフェザー級4位.矢吹翔太(team BRAVE FIST/1986.8.2沖縄県出身/ 58.85kg)
14戦10勝3敗1分
      VS
KEIGO(BIG MOOSE/1984.4.10千葉県出身/ 58.75kg)20戦7勝8敗5分
勝者:矢吹翔太
主審:高谷秀幸 / 判定3-0
副審:加賀見30-29. 前田30-29. 亀川30-28

蹴りから組み合って首相撲に持ち込んだ矢吹翔太のヒザ蹴りがKEIGOのスタミナを奪い僅差ながら判定勝利。

ノックアウトした右ストレートカウンターの小清水涼太

◆第5試合 62.5kg契約3回戦

蘭賀大介(ケーアクティブ/1995.2.9岩手県出身/ 62.45kg)5戦3勝(3KO)1敗1NC
      VS
小清水涼太(KINGLEO/1999.3.30富山県出身/ 62.1kg)4戦3勝(2KO)1敗
勝者:小清水涼太 / TKO 1R 1:05 /
主審:鈴木義和

蹴り合いから接近した中での小清水涼太の右フックカウンター一発で倒すとカウント中のレフェリーストップ。蘭賀大介はマットに頭を打ち付けたか、担架で運ばれる衝撃の結末となった。

◆第4試合 バンタム級3回戦

シャーク・ハタ(=秦文也/テツ/1987.10.20大阪府出身/ 52.9kg)6戦3勝2敗1分
      VS
田嶋真虎(Realiser STUDIO/2002.6.28埼玉県出身/ 53.45kg)1戦1敗
勝者:シャーク・ハタ / 判定2-0 (30-27. 30-28. 29-29)

◆第3試合 バンタム級3回戦

橋本悠正(KATANA/1997.4.21福島県出身/ 53.5kg)3戦2敗1分
      VS
香村一吹(渡邉/2007.2.22東京都出身/ 53.2kg)1戦1勝
勝者:香村一吹 / 判定0-3
主審:前田仁        
副審:亀川27-30. 加賀美27-30. 高谷27-30

◆第2試合 フェザー級3回戦

堀井幸輝(ケーアクティブ/1996.11.7福岡県出身/ 56.7kg)2戦2勝
      VS
KATSUHIKO(KAGAYAKI/1975.11.13新潟県出身/56.9kg)3戦1勝(1KO)2敗
勝者:堀井幸輝 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆第1試合 ライト級3回戦

青山遼(神武館/1999.2.5埼玉県出身/ 60.65kg)2戦2敗
      VS
猪ノ川海(大塚道場/2005.9.3茨城県出身/ 60.35kg)1戦1勝(1KO)
勝者:猪ノ川海 / TKO 1R 1:47 / カウント中のレフェリーストップ

チャンピオンベルトを巻いて感慨無量のカズ・ジャンジラ

《取材戦記》

47歳で王座挑戦となった笹谷淳。敗れたが、これが最後の挑戦となるかは微妙。チャンピンとなったカズ・ジャンジラが「穴なので!」と挑戦者を募るとおりの狙い易さはあるだろう。

NKBフライ級タイトル戦は、2010年4月24日以来、ほぼ13年ぶりの開催。選手層の薄さが原因だが、活気が増してきた日本キックボクシング連盟に於いて、NKB全階級で定期的(期限内)にタイトルマッチを活性化させることが、この連盟の基盤となる部分かと思います。現在は極力高額の賞金トーナメントの方が盛り上がるとも言える時代の流れかもしれませんが。

片島聡志は昨年9月25日にNJKF興行で波賀宙也(立川KBA)に3ラウンド制判定負けしいているが、そこから原点のムエタイスタイルに返った戦略が今回活かされたか、藤原あらしの首相撲に持ち込まない流れで勝機を見出しました。

古き昭和の頑固気質を持つ渡邉ジムから令和の新星、この日まだ15歳の高校一年生、香村一吹がデビュー戦を判定勝利で飾りました。決して昭和の練習法という時代錯誤ではないが、渡邉会長の孫のような世代の存在は、周囲に可愛がられながら期待に応えられるか。

次回、日本キックボクシング連盟興行「野獣シリーズvol.2」は4月17日(土)に後楽園ホールで開催予定です。

新チャンピオン誕生の杉山空と陣営

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」