水源地ど真ん中の産廃処分場まで容認する広島高裁の不当決定! 全国各地の産廃ゴミが規制の緩い広島県に集まる危険性 さとうしゅういち

広島高裁は3月29日、水源地ど真ん中の産廃処分場を容認してしまいました。

三原の本郷産廃処分場はJAB協同組合が経営。三原市と竹原市の水源地ど真ん中にあります。2018年4月に計画が持ち上がりました。住民の皆様は当然、猛烈な反対運動を展開し、三原市議会でも竹原市議会でも全会一致で反対決議が採択されました。しかし、広島県(知事・湯崎英彦さん)は、この処分場を許可してしまいました。そして、2020年5月から工事が始まっています。

これに対して、住民は広島県に対しては許可の取り消しの行政訴訟、そして事業者に対しては工事の差し止めを求める仮処分申請を提起しています。

2021年3月に広島地裁は工事差し止めを認めましたが、事業者が異議を申し立てました。そして、地裁は2022年6月に業者の異議を認めて、産廃処分場の稼働を容認してしまいます。それに対して住民が高裁に抗告していました。

◆群馬や長野からゴミが広島へ流入

差し止めを求めている原告のお話によると、今現在、高崎ナンバーや松本ナンバーの車が大量に入ってきているそうです。

「高い日本の高速道路料金を払ってまで群馬や長野から来ているゴミって何ですか? よほど危ないものなのではないのですか?」と原告の一人は語気を強めておられます。

そのゴミは、「ほとんど、開封して検査している様子もなく、そのまま重機で埋め立てられている」ようです。

広島は全国でも産業廃棄物処分場が多くあります。特に、安定型処分場は二番目に多くなっています。この安定型というのが曲者で、シートすら敷かずに建前は、安全なゴミを搬入するはずなのですが、現実には危険物も運び込まれ、何か起きない限り、ほとんど検査もされない。いい加減な運用になっているのは、皆様もご存じと思います。その安定型処分場が広島では多いのです。それは、広島に他の都道府県のような水道水源保護条例や環境配慮条例がないからです。かくて、規制が緩い広島を目指して日本中からゴミが集まっているのです。

 

◆まさかの不当決定 「伊方原発」に続いて「やられた!」

2023年3月29日、桜が満開の中、裁判所の前で、「満開の桜のような決定があるといいね」と原告や支持者の筆者らは雑談していました。しかし、決定が言い渡される14時過ぎ。険しい表情で若手弁護士が法廷から出てきます。

「不当決定」

筆者も頭の中が真っ白になり、その時の状況をよく覚えていません。

実は、筆者は選挙準備などで時間がなくて目撃できていませんが、3月24日(金)には、同じ高裁が伊方原発広島裁判の運転差し止め仮処分を却下しています。それに続いて「やられた」感でいっぱいでした。

そうした中、弁護団の山田延廣弁護士が、決定を受けて、コメントしておられました。

「みなさまの運動は正義にかなった運動。行政や裁判所までがそれを認めないとは。裁判所や行政の決定に屈せずに里山や水を守るために闘っていこう」などと呼びかけました。

原告や支持者は差し止め絶対阻止をシュプレヒコールを上げて決意表明しました。


◎[参考動画]不当決定 本郷産廃処分場差止ならず 2023年3月29日 広島高裁

◆「水は鉛直にしか染み込まない?!」常識外の決定

ざっくり申し上げると、裁判所は、
・有害物質が付着・混入して処分場に運び込まれる恐れ
・それらが処分場の外に染み出す恐れ
については認めました。

ところが、処分場と井戸の距離が700mあって、高低差が60mしかないことを理由に、「井戸水に有害物質が入る」恐れがあることは、住民側に立証責任がある、としました。

裁判官は、「水は鉛直にしかしみ込まない」といういわば、常識外の決定をしました。

たとえば、介護現場や子育てを経験していればわかることですが、尿を漏らした場合、そこだけではなくて、オムツに広範囲に尿が広がりますよね?筆者は呆れてしまいました。

弁護士も「負けた気がしない」といっておられました。原告代表の方も「高齢者は、先が短いから汚染された水を飲まなくてもいいかもしれない。だけど、子どもや孫はそうはいかない。だから頑張る。」という趣旨の決意を表明されました。

◆水道水源保護条例や環境配慮条例の制定に全力

裁判闘争と並行して、立法も大事です。今の裁判所は残念ながら、行政に対しては、法律で明確に禁じていないことを禁じない判決しか出しません。そうした中では、明文で、行政に対して、産業廃棄物処分場などを許可する際に、環境に配慮することを義務付ける条例が必要です。他の自治体ではすでに制定されているところも多い「水道水源保護条例」や広島弁護士会も提言している「環境配慮条例」などです。原告の皆様もそうした条例の制定運動もされています。

筆者の地元・安佐南区でも上安産廃処分場が外資に買収されて巨大化しています。さらに、同処分場の盛り土が崩落していたことも発覚しています。産廃処分場規制は喫緊の課題です。筆者も広島県議会においての条例制定に全力を尽くす所存です。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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