横浜副流煙裁判(反訴)で新しい動きがあった。原告である藤井敦子さんの支援者の男性が、2月9日に行われた尋問の中で被告の作田学・日本禁煙学会理事長が行った発言について、名誉毀損に当たるとして発言の撤回と謝罪を求める内容の内容証明郵便を6月12日に送付した。男性は、藤井さんと同じ地域に住み、藤井さんを熱心に支援してきた酒井久男さんである。

藤井さんの支援者、酒井久男さんが作田学・日本禁煙学会理事長に対して6月12日付に送付した内容証明郵便の一部

既報してきたように横浜副流煙裁判は、煙草の副流煙により健康被害を受けたとして、藤井さんの隣人のAさん一家が藤井さんの夫に対して4518万円の損害賠償を求めた裁判である。1審、2審とも藤井さんの勝訴だった。勝訴を受けて、藤井さん夫妻は、作田医師を刑事告発した。A家のために虚偽の診断書を作成したというのがその理由である。作田医師は、横浜地検へ書類送検されたが、紆余曲折を経た後、不起訴となった。

さらに藤井さん夫妻は、作田医師とA家の3人に対して、約1000万円の損害賠償を求める「反スラップ訴訟」を起こした。この「反スラップ訴訟」で行われた作田医師に対する尋問の中で、作田医師は酒井さんに対する問題発言を行った。

前訴が進行中の2019年の夏、酒井さんと藤井さんは、日本赤十字医療センター(渋谷区広尾)にある作田医師の外来を訪れた。酒井さんは、繊維に対するアレルギー体質があった。そこで藤井さんを伴って作田医師の外来を受診し、診察の様子を確認する計画を立てた。藤井さんは高額訴訟の被害者であるから、作田医師の医療行為の実態を観察したいと考えるのは当然だった。

2人が実行した計画はどこからか、作田医師の耳にも入ったようだ。裁判の尋問の中で、作田医師は弁護士からの質問に答えるかたちで、酒井さんが受診後に治療費もしくは診察費用を払わずに帰宅したと証言した。しかし、これは事実ではなかった。酒井さんが治療費もしくは診察費用を支払ったことは、病院の記録にも残っている。その後、作田医師は日本赤十字医療センターを除籍となったが、医療や経理の記録自体は保存されている。

酒井さんが送付した内容証明の全文は次の通りである。

向夏の候、作田様におかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。さて、去る令和5年2月9日、横浜地裁にて行われた貴殿を被告とする裁判にて証人尋間が行われました。その際に貴殿が証言台で行った発言の中で、私に対してのただならぬ名誉棄損発言がありました。それは、「当日、当然、会計にも行っていないと思います。」というものです。

支払いをせずに診察を受けるというのは 「犯罪」行為であり、貴殿はまさしく公開された法廷に居合わせたたくさんの傍聴者の面前で、私を犯罪者と呼んだことになります。これは私の名誉を棄損した虚偽の発言です。上記発言につき謝罪および発言の撤回を求めますので、令和5年6月30日迄にご回答いただきますようご通知申し上げます。

酒井さんは、名誉毀損で作田医師を提訴することも視野に入れている。

◆片山律弁護士の病的な憶測

この日の尋問では、片山律弁護士がわたしや藤井さんに対しても不穏当な発言を繰り返した。藤井さんに質問するかたちで、たとえばカンパで集めた資金がわたしに提供されているのではないかとか、藤井さんがJT(日本たばこ産業株式会社)から支援を受けているのではないかといった趣旨の発言である。

このうちカンパとは、麻王監督が制作した横浜副流煙事件をテーマとした映画『窓』の制作資金を集めるために実施されたクラウドファンディングのことである。わたしは1円も受け取っていないし、制作にもかかわっていない。

また藤井さんとJTは何のかかわりもない。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

黒薮哲哉のタブーなき最新刊!『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』

前回「トランス女性は女性ですか?〈2〉」では、男性器をお持ちだが心は女性であるというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏による衝撃のツイートをご紹介した。

「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

まだ、性自認問題が広く知られる前の2012年のツイートだったので、尾崎氏にも多少の油断があったのだろう。

これが発掘されて本格的に炎上したとおぼしき2017年には、尾崎氏は逆上ギレツイート。

「俺が女湯に入ったのは事実やけど、痴漢行為を一回もしたことはないわ」

だが、「なーんだ、痴漢行為はしてないんだ! よかった!」と納得する人がいるわけもなく、炎上は続いた。

その後、尾崎氏は「あのツイートはフィクション」と弁解したという。「俺が女湯に入ったのは事実」って断言してたのに、発言、変わりすぎでは?

こんな調子なので、炎上はおさまることはなく、いつの間にか尾崎氏はツイッターアカウントを削除していた。

ウェブ魚拓サイト「archive.today」で最後に尾崎氏のツイートが記録されたのは、2021年7月2日(https://archive.is/2oZll)。おそらく、この頃に、尾崎氏はツイッター上から姿を消したのだろう。

[左]チンコを股にはさめば女湯OKというご認識らしい[右]チンコを股にはさんで女湯に入るのは痴漢ではなく当然の権利というご認識らしい

さて。
我が国の最高学府・東京大学には、清水晶子教授というお偉い先生がいらっしゃる。この方が「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派の親玉と言っても、おそらく過言ではないだろう。

性自認至上主義を批判した東京大学の三浦俊彦教授、武蔵大学の千田有紀教授に対する集団バッシングでは、リーダー的な役割を果たしたのが、この清水教授だった。お偉い先生なので、清水教授の周囲には、子分のような学者・知識人がワラワラ存在し、「右向け右、左向け左」とばかりに、敵とみなした学者・知識人・文化人を寄ってたかって叩くのである。

なお、私が学者先生たちに集団ネットリンチされることなく、予防ブロックされる一方であるのは、私を学者・知識人・文化人ではないと認識したうえでの対処なのだろう。そんな「雑魚」に反撃されては赤っ恥であると恐怖し、頭のよろしい先生方が「予防ブロック」でコソコソしていらっしゃるのだとすれば、頭がいいのも大変だ。

ただし、これは、浅学の徒である私が学界の外からながめた所感であるので、事実と反する点があったら、LGBT活動家と共闘しておられる学者先生の皆様にご指摘いただければ幸いだ。

[左]私を予防ブロックしている学者の一人。歴史学者・呉座勇一氏の仕事をつぶしたことで知られる「オープンレター事件」の中心的人物・さえぼうこと北村紗衣教授(武蔵大学)。[中央]なにを恐れていらっしゃるのか、ノンバイナリー(身体男性)の高井ゆと里准教授(群馬大学)も私を予防ブロック。[右]「あんた、だれ?」レベルで存じあげなかった西田彩先生は、複数の大学で講師をなさるトランス女性だと聞く

 

清水教授は私の批判に対してブロックしてきたのであり、予防ブロックではないという点は、教授の名誉のために申し添えておきたい

清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏の味方である。味方であるがゆえに、歴史ある学術雑誌「思想」(岩波書店)2020年3月号に、「埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために」という尾崎氏擁護の論文を発表された。

重要な事実なので、もう一度、念を押しておきたい。

「東大の清水晶子教授は、チンコを股にはさんで女湯に入った尾崎日菜子氏を擁護するために、歴史ある学術雑誌『思想』(岩波書店)2020年3月号に、『埋没した棘 ―― 現れないかもしれない複数性のクィア・ポリティクスのために』と題した論文を発表した」

※岩波書店公式ページ「思想」2020年3月号 

私は実際に「埋没した棘」を読んでみた。17ページの論文を要約、だれにでもわかる表現に変換して内容を要約すると、こうである。

「レズビアンでも白人と黒人がいるように、女性の中にもまんこがある人とチンコがある人がいますよねっ」

「同じカテゴリーに属する女性でも、まんこ持ち女性がチンコ持ち女性を怖がるのって、まんこ持ちゆえの『傷つけられやすさ』を戦略として使っているってことね! でも、それ、よくないネ」

「チンコがある女性は、すでにまんこがある女性に埋没して、女子トイレや女湯に入ってるよ! 気づいてないのなら、最初からそんなことは気にするな!」

「尾崎日菜子氏がチンコを股にはさんで女湯に入ってもトラブルにならなかったっていうことは、周囲の女性たちに女性だと思われていたということ。だから、問題ないね!」

「つまり、埋没していれば(周囲に気づかれなければ)、棘は棘として他者を傷つけることはないってこと。女湯の尾崎日菜子氏は埋没した棘! 股にはさんだチンコも埋没した棘!」

「以上!」

え……? 私がアホすぎて、誤読してるの? これ、東大教授が綴り、岩波書店の「思想」に掲載された論文ですよね?

しかし、どう読んでも、「股にはさんだチンコは埋没した棘!」という結論なのである。もし、これが私の誤読ならば、清水教授から直接「あなた、間違っていますよ」とご指摘いただきたいと思うし、素直にそれを受け入れる気持ちもある。

ただ、それでも、チンコを股にはさんだ尾崎日菜子氏が女湯でトラブルにならなかったという点に関しては、絶対、女性たちは怖くて見て見ぬふりをしていただけだと、私は思う。

女子トイレで女装家に出くわした女性たちだって、よく言っているではないか。「怖くて見て見ぬふりをしてしまった」と。

実際に、女子トイレでは、これらのツイートで語られているような気持ち悪い事件だって起きている。

[左]男性だって、自分より体格がよく力もありそうな不気味な全身タイツ男とトイレで遭遇し、ツーショットを求められたら、自分の身を守るために要求に応じてしまう可能性もあるのでは? [右]「嫌がって逆上されると怖い」……まさにその通りである

全身タイツに女装した男が数年前からたびたび商業施設の女子トイレに出没し、そこで自撮り。時にはその場に居合わせた若い女性たちとツーショットを撮るが、後に女性たちが「怖くて従うしかなかった」と証言しているのだ。

こちらのブログ記事には、顔はぼかしたうえで、その全身タイツ女装男と女の子たちのツーショット写真が掲載されている。

全身タイツ女装また女子トイレへ行き炎上(2023.2)
(ウェブ魚拓 https://archive.md/Qirc5

[左]新宿区議をつとめた経験もあるトランス女性政治家・よだかれん氏のご認識も、このレベル。[右]尾崎日菜子氏のお写真。本当に女湯で埋没できましたか?

尾崎氏への援護射撃だったはずの清水教授の「埋没した棘」は、炎上を鎮めるどころか、いわばガソリンの役割を果たした。それは、炎上中だった尾崎氏にぶっかけたガソリンだったのだ。

以来、「尾崎日菜子さんは、女湯に入ったというツイートはフィクションだとすでに断言しているのに、いつまでもしつこく蒸し返すのは、どうなんですかっ?」という怒りの声に対しては、私はこうこたえている。

「あのツイートだけなら、尾崎氏がフィクションだと明言した後には、炎上も少しずつ鎮まっていった可能性はあります。しかし、最大の問題は、清水晶子東大教授がチンコを股にはさんで女湯に入るという犯罪を肯定し、『埋没した棘』という論文を書き、それをまた岩波書店が『思想』に掲載してしまったことでしょう」

私は、ふと思う瞬間がある。自分は「埋没した棘」を誤読しているのではないか、と。あるいは、「埋没した棘」自体が、私の見た悪夢の一部だったのではないか、と。そんなときには、こちらのレビューを読み、そして、おのれの正気を確信する。

清水晶子氏著『埋没した棘』の読書感想文  Moja Mojappa(@MojaMojappa)

清水晶子「埋没した棘」を読んで。 千石杏香(@Sengoku_Kyouka)

なお、Moja Mojappa氏は性自認女性の身体女性で異性愛者、千石杏香氏は両性自認の身体男性でバイセクシュアル。そして、私はXジェンダーの身体女性でバイセクシュアル。私を含め、異なる属性の三人が、同じようなツッコミを入れているという点は、読者諸氏にもご留意いただきたいと思う。

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46763
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46815
〈3〉チンコは股にはさめば女湯OK! http://www.rokusaisha.com/wp/?p=46978

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

森奈津子編『人権と利権 「多様性」と排他性』 定価990円(税込)。最寄りの書店でお買い求めください

タイからやって来た実力者二名はいずれも左フックでノックダウンを奪って勝利に結びつけ、オールラウンドプレーヤーの実力を見せた。
ヨッド・パランチャイは波賀宙也に判定勝利。
ペッチ・パランチャイは山浦俊一にノックアウト勝利。
在日タイ選手のガン・エスジムもしぶといムエタイ技で判定勝利を飾った。

◎NJKF 2023.3rd / 6月4日(日)後楽園ホール17:30~20:25
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、S-1
(戦績はNJKF発表でこの日の結果を含む)

◆第8試合 S-1世界ジュニアフェザー級(122LBS)王座決定戦 5回戦

ヨッド・パランチャイ(1999.5.4タイ・ナコンシータマラート出身/ 54.2kg)
       VS
波賀宙也(立川KBA/1989.11.20東京都出身/55.33kg)46戦27勝(4KO)15敗4分
勝者:ヨッド・パランチャイ / 判定3-0
主審:多賀谷敏朗
副審:中山50-46. 児島50-47. 少白竜49-46

波賀宙也は元・IBFムエタイ世界Jrフェザー級チャンピオン。
ヨッド・パランチャイは現・BBTV・120LBS級チャンピオン。元・タイ国ムエスポーツ協会ミニフライ級チャンピオン。

主審・副審はWBCムエタイライセンスを取得している審判団で構成。

波賀宙也の蹴りに対する様子見のヨッド・パランチャイ。牽制する波賀は突破口を開きたいがヨッドの返し技の圧力が強い。

波賀も負けない攻勢を掛けるも的確さで優るヨッド。試合への意気込みを語っていたとおり、オールラウンドプレーヤーぶりを発揮。

第4ラウンドにはヨッドが狙った左フックで波賀がノックダウンを喫する。最終ラウンドには逆転狙う波賀と、逃げ切りモードのヨッドは下がり気味ではあるが波賀のクリーンヒットは許さず熟練のテクニックで凌いだ。

ペッチと似た流れでヨッド・パランチャイの左フックが波賀宙也の顎に炸裂

その左フックでノックダウンを喫した波賀宙也

先手打つヨッド・パランチャイが前蹴りで波賀宙也の前進を拒む

◆第7試合 61.0kg契約3回戦

ペッチ・パランチャイ(2003.9.21タイ・ナコンシータマラート出身/59.75kg)
VS
山浦俊一(新興ムエタイ/1995.10.5神奈川県出身/60.8kg)32戦17勝(3KO)13敗2分 
勝者:ペッチ・パランチャイ / KO 2R 1:25
主審:竹村光一

山浦俊一は前・WBCムエタイ日本スーパーフェザー級チャンピオン。

開始早々のペッチの左フックで山浦俊一が不覚のノックダウン。すぐさまペッチはヒットさせるよりプレッシャーを掛けるような飛びヒザ蹴り。パンチも強く、ハイキックもローキックもしなやかにスピーディーに蹴って来るペッチ。

ダメージは少ない山浦は冷静に巻き返しに出るが、目が良いペッチ、第2ラウンド半ばにはまたも左フックでノックダウンを奪うと山浦はゆっくり立ち上がるも陣営からタオル投入、レフェリーは続行寸前だったが、タオル投入を見て、これを認めて終了。

止められた途端、限界を超えたか倒れ込む山浦俊一だったが、時間をおいて無事に立ち上がった。

第2ラウンドのペッチの左フックで山浦俊一のこめかみヒット、これでKO

立ち上がるもKO負けを宣せられて集中力が切れたか、倒れ込む山浦俊一

◆第6試合 60.0kg契約3回戦

ガン・エスジム(元・ラジャダムナン系フェザー級7位/1995.3.30タイ・ラチャブリー県出身 58.3kg)
VS
NJKFスーパーフェザー級5位.龍旺(Bombo Freely/ 2002.1.20茨城県出身/60.0kg)
7戦5勝(2KO)1敗1分 
勝者:ガン・エスジム / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:竹村29-28. 多賀谷30-28. 児島30-28

日本の新鋭とタイのベテランの対決。離れての攻防は龍旺の勢いがあるが、至近距離に入るとガンエスジムの本領発揮。

スタミナ勝負でも龍旺が優る兆しも、最終第3ラウンドにはガンエスジムが接近戦に持ち込み、ムエタイ技の的確さでロープ際での右ヒジ打ちで龍旺の左目尻をカット。

上手さで優ったベテラン、ガンエスジムが判定勝利した。

ガンエスジムの右ヒジ打ちで龍旺の左眉尻にヒット、流血となる

流血しながらガンエスジムの前進を食い止める龍旺

◆第5試合 55.0kg契約3回戦

NJKFバンタム級3位.嵐(キング/2005.4.26東京都出身/54.75kg)10戦8勝(3KO)1敗1分
        VS
KAZUNORI(T-KIX/1986.5.20静岡県出身/55.0kg)38戦14勝(4KO)24敗
勝者:嵐 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竹村30-26. 多賀谷30-27. 中山30-27

的確差で圧倒する嵐が前進。テクニックの差を見せ付ける展開から右ヒザ蹴りでノックダウンを奪い、パンチでラッシュを掛けるも仕留めきれない。

第2ラウンド以降も嵐が優勢もノックアウトに結び付ける勢いは無くなってしまう。

嵐のスタミナ切れか、KAZUNORIは反撃の踏ん張りも見せ、判定は大差で嵐の勝利。これが5回戦だったら、更なる展開も予想されるところだろう。

嵐が素早さと勢いで圧倒もパワー不足でKO成らず

◆第4試合 フライ級3回戦

NJKFフライ級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/2003.5.7神奈川県出身/50.65kg)
15戦8勝(3KO)4敗3分
        VS
同級7位.西田光汰(西田/2001.2.12愛知県出身/50.7kg)5戦4勝(1KO)1敗
勝者: 谷津晴之 / 判定3-0
主審:児島真人
副審:竹村30-26. 少白竜30-26. 中山30-26

第1ラウンド、テクニックで優った谷津晴之。コーナーに詰めて飛びヒザ蹴り。更にパンチ連打でスタンディングダウンを奪う。

第2ラウンドも的確さが増していく谷津晴之だが、西田光汰の反撃も衰えない。的確さと圧力で谷津晴之が大差判定勝利。

谷津晴之も終始圧倒の展開を見せた

◆第3試合 フライ級3回戦

愁斗(Bombo Freely/2001.11.24茨城県出身/50.6kg)5戦3勝(1KO)2分
        VS
高橋大輝(エス/1996.4.24神奈川県出身/50.25kg)5戦2勝(1KO)2敗1分
勝者:愁斗 / KO 1R 1:27 /

新井田豊似の愁斗の離れても接近してもスピーディーな蹴り。その鋭いヒザ蹴り一発でノックダウンを奪ってテンカウントによるノックアウト勝利。

風貌が新井田豊に似ている愁斗、この選手も素早く圧倒でKO勝利

◆第2試合 女子(ミネルヴァ)アトム級3回戦2分制

AZU(DANGER/1993.5.19生/46.2kg)7戦2勝5敗
        VS
Nao(AX/1998.11.1埼玉県出身/45.8kg)2戦2勝(1KO)
勝者:Nao / TKO 2R 1:42 /

的確差で優ったNaoが接近戦でのヒザ蹴り一発でAZUをノックダウンさせると、蹲ったまま苦しそうな表情でカウント中のレフェリーストップ。AZUはすぐには立ち上がれなかった。

◆プロ第1試合 フェザー級3回戦

パヤヤーム浜田(キング/1983.11.29神奈川県出身/56.95kg)16戦2勝(1KO)13敗1分
        VS
隼人(西田/2004.3.2愛知県出身/57.1kg)5戦3勝2敗
勝者:隼人 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 27-30)

タイ語の“パヤヤーム”は努力を意味する。開始後は互角に進むも徐々に打たれて行くパヤヤーム浜田。蹴られても殴られてもコーナーに詰められ連打され、止められそうな劣勢でもチャンスを待ち時折、反撃のパンチをヒットさせ終盤には逆転の兆しも見せたパヤヤーム浜田。ほぼ一方的な劣勢でも諦めなかったパヤヤーム浜田は、毎度のことながら敗れても名に恥じない意地を見せた。

◆アマチュア試合(over40) 66.0kg契約2回戦(90秒制)

ゴッドファーザーTOMO(FREEDOM・OZ/1973.2.22神奈川県出身/65.6kg)
        VS
クラッシャー萩原(TeamK.O.garage/1975.6.9東京都出身/65.75kg)
引分け0-0 (19-19. 19-19. 19-19)

《取材戦記》

タイ文字を掲載出来ないので省きますが、ヨッドは発音的には“最高” を意味するヨードだろうか。ペッチはダイアモンドを意味するペットかもしれません。インタビューしておけばよかったと今更後悔です。辛(から)いと言う意味のペットではありません。昔(1986.11.29)、「神秘のムエタイ」で来日した無冠ながら、ペット・ライオンマンというアグレッシブな選手がいましたが、そんな選手も思い出しました。

名ばかりの世界戦が増えたキックボクシング界は、さすがにその注目度が観衆の数に表れてしまうが、この日の閑散とした中での後半は日本vsタイ国国際戦3試合で、第一線級で戦っている来日タイ選手2名と、在日ながらガン・エスジムはその高い技量で存在感を示しました。

昨年6月5日、IBFムエタイ世界ジュニアフェザー級王座を失った波賀宙也は、9月25日に片島聡志(Kick Life)に判定勝利して復活も、今年4月16日にコンコム・レンジャージム(タイ)に判定負け。今回はIBFムエタイ世界再挑戦へ向けた中での前哨戦となるS-1世界戦。敗れはしたが、立川KBA伊藤浩之会長は「チャンスがあればとことんやる!」と波賀はまだまだ挑戦のモチベーションは衰えていないと宣言。今後の話題性高めた世界戦に期待したいものです。

毎度の赤コーナーと青コーナーの逆位置パターンが定着したNJKF興行。他団体やフリーの興行の中でも増えて来ている現在、横文字で対戦カード選手名を書いた場合、左側に赤コーナー選手が来ないと映像と文字配列の位置的な関係が悪いのだろう。しかし、長く後楽園ホール興行を観て来た偏屈高齢者だけかもしれませんが、後楽園ホールの造りからチャンピオンの定位置と言える赤コーナーは長年、テレビで観て来た右側(北東側)から入場してリングに立つパターンが固定概念となっているのである。テレビ画面に流れた選手名は縦書き(右に赤コーナー、左に青コーナー)でした。沢村忠さんの定位置とも言えた赤コーナーは元のままがいいという偏見です。若い人には現在の横文字式が違和感ないかもしれませんね。これが時代の流れなのでしょう。

次回NJKF興行は8月11日(金・祝)に埼玉県春日部市にてPITジム興行「絆」が開催。9月3日(日)には大阪府堺市にて誠至会興行「NJKF 2023 west 4th」が開催。9月17日(日)には後楽園ホールに於いて本興行「NJKF 2023.4th」が開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

2000年代の「原子力ルネッサンス」のとき以来、再び「原発回帰」の掛け声が聞こえてきた。主に欧州から、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と、吸収量を均衡させること)を実現するためには原発建設を再始動させる必要があるという主張だ。欧州連合(EU)は「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」というカーボンニュートラルを目標としている。

EUグリーン・ディール政策を達成するために、一部の天然ガスと原発を「グリーン投資(サステナブル・ファイナンス・タクソノミー)」に条件付きで含めることを提案した。

「EUは原発と天然ガス火力を『グリーン』投資の対象となる産業のリストに加える方針を明らかにした。持続可能な投資の分類『タクソノミー』の新しいリストには、企業の情報開示や気候変動に配慮した投資、炭素関連の政府支出について、温暖化対策に役立つ『グリーンな』活動の統一した定義を示すことを意図している。このEUのグリーンリストは、『持続可能性』を金融と関連づけて定義する。」(ニューズウィーク日本版より)

同じ主張は日本でも原子力産業や東電など電気事業者が主張している。経団連や経産省は、その旗振りの先頭に立っている。

それは、現実を無視した、原子力産業の利権拡大と原発推進のための議論でしかない。これに乗ってしまうと、再び福島第一原発事故のような過酷事故を日本のみならず世界のどこかで再発する可能性が高まるだけでなく、本来あるべきエネルギー政策を誤り、途方もない資金を無駄で危険で核廃棄物にまみれた産業に投じる愚を犯すことになる。

では、どこがどれだけダメなのか、具体的に指摘しよう。

原発は今も環境負荷をかけ続けている原発を動かすには核燃料サイクルを回す必要がある。核燃料のままで地下から取り出せると思っている人はいないと思うが、核燃料の生産から使用済燃料の再処理に至るまで、大量の放射性物質が環境中に放出されてきた。

言い換えるならば、通常運転時なら原発から出る放射性物質のほうが、核燃料サイクルから放出される放射性物質よりも相対的に少ない。ただし使用済燃料は除くが。

ウラン採掘国は、カナダ、オーストラリア、カザフスタン、ロシア、ニジェール、ナミビアなどの国々だ。ウラン資源は偏在しており、石油や天然ガス同様、調達においては「地域リスク」(政情不安定などの要素)を伴う地域が多いことは指摘されない。

ウラン採掘時には大量の鉱滓が出る。これは放射性物質の塊であり、これら多種多様の放射性物質で環境は汚染される。地下の「核のごみ」をわざわざ掘り出しているに等しい。

これまでも、これからも周辺住民や環境に大きな汚染の被害をもたらす。

福島第一原発事故の「帰還困難区域」と本質的には変わらない。そんな犠牲の下に核燃料は生産されている。

加工時にも放射性物質は出る。その上、使用済燃料を再処理すればわずか1日で、原発が通常運転時に出す放射性物質の1年分を排出する。再処理をすればするほど、放射能汚染を世界中に拡散させる装置が原発だ。こんなシステムが「環境に良い」わけがない。

炭酸ガスを出す、出さないとの議論など枝葉末節の問題に思えるほどだ。

チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故では、広大な土地が居住不能または耕作不能にされた。また、核兵器開発により同じく汚染され使用できなくなった広大な地域もある。

原発を原子力システムとして見れば、二酸化炭素排出量は現在経産省などが主張する「kWh当たり22から40グラム」ではなく、それよりも遥かに多いと考えられる。

スタンフォード大学のジェイコブソン教授によれば、原発のライフサイクル(ウラン採掘から放射性廃棄物の処分まで)二酸化炭素排出量はキロワットアワー(kWh)当たり68~180グラム(gCO2/kWh)になるという。

一方、天然ガスの場合は、コンバインドサイクル発電により熱効率を52%まで高めた場合、360gCO2/kWhだというから、2倍ほどしか差がない。

発電中に二酸化炭素を出すか出さないかは問題の本質ではない。

この十年、日本では原発がほとんど稼働していない。にもかかわらずメンテナンスや新規制基準適合性審査への対応、使用済燃料の冷却などで膨大な電力をただ消費している。この電力はほとんど火力発電により賄われている。その分は当然、原発が排出した二酸化炭素としてカウントされなければならない。

廃炉作業を行っている福島第一原発などの廃止原発で消費されるエネルギーに対応する二酸化炭素も膨大な量になると考えられる。

原発は運転を止めてもエネルギーを大量に使わなければ安全を維持できない。これらがkWh当たりの二酸化炭素量として、これまで考慮されたことはなかった。(つづく)

本稿は『季節』2022年春号(2022年3月11日発売号)掲載の「原発は「気候変動」の解決策にはならない」を本ブログ用に再編集した全3回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像』(明石書店 2015年)等多数。

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2023年夏号
NO NUKES voice改題 通巻36号 紙の爆弾 2023年7月増刊

《グラビア》原発建設を止め続けてきた山口県・上関の41年(写真=木原省治
      大阪から高浜原発まで歩く13日間230Kmリレーデモ(写真=須藤光男

野田正彰(精神病理学者)
《コラム》原子炉との深夜の対話

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《コラム》核のゴミを過疎地に押し付ける心の貧しさ

樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》司法の危機 南海トラフ地震181ガル問題の重要性
《インタビュー》最高裁がやっていることは「憲法違反」だ 元裁判官樋口氏の静かな怒り

菅 直人(元内閣総理大臣)
《アピール》GX法に断固反対を表明した菅直人元首相の反対討論全文

鮫島 浩(ジャーナリスト)
《講演》マイノリティたちの多数派をつくる
 原発事故の被害者たちが孤立しないために

コリン・コバヤシ(ジャーナリスト)
《講演》福島12年後 ── 原発大回帰に抗して【前編】
 アトミック・マフィアと原子力ムラ

下本節子(「ビキニ被ばく訴訟」原告団長)
《報告》魚は調べたけれど、自分は調べられなかった
 一九五四年の「ビキニ水爆被ばく」を私たちが提訴した理由

木原省治(上関原発反対運動)
《報告》唯一の「新設」計画地、上関原発建設反対運動の41年

伊藤延由(飯舘村「いいたてふぁーむ」元管理人)
《報告》飯舘村のセシウム汚染を測り続けて
 300年の歳月を要する復興とは?

山崎隆敏(元越前市議)
《報告》原発GX法と福井の原発
 稲田朋美議員らを当選させた原発立地県の責任

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山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点

原田弘三(翻訳者)
《報告》「気候危機」論についての一考察

井筒和幸(映画監督)×板坂 剛(作家)
《対談》戦後日本の大衆心理【後編】

細谷修平(美術・メディア研究者)
《映画評》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈3〉
 わすれてはならない技術者とその思想 ──『Winny』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、僕らが思案していること

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
《報告》亡国三題噺
 ~近頃“邪班(ジャパン)”に逸(はや)るもの
  三重水素、原発企業犯罪、それから人工痴能~

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
《報告》山田悦子の語る世界〈20〉
 グローバリズムとインターナショナリズムの考察

再稼働阻止全国ネットワーク
原発の全力推進・再稼働に怒る全国の行動!
福島、茨城、東京、浜岡、志賀、関西、九州、全国各地から

《福島》古川好子(原発事故避難者)
福島県富岡町広報紙、福島第一廃炉情報誌、共に現地の危険性が過小に伝えられ……
事故の検証と今後の日本の方向を望んでいるのは被害者で避難者です!
《東電汚染水》佐内 朱(たんぽぽ舎ボランティア)
電力需給予備率見通し3.0%は間違い! 経産省と東電は石油火力電力7.6%分を隠している! 
汚染水の海洋放出すべきでない!
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
運動も常に情報を受信してすぐに発信することが大事
4月5日定例の日本原電本店行動のできごと
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
中電が越えなければならない「適合性審査」と「行政指導」
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」事務局)
団結小屋からメッセージ付き風船を10年余飛ばし続けて
《高浜原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「関電本店~高浜原発230kmリレーデモ」に延べ900人、
「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」に320人が結集
《川内原発》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会)
「川内原発1・2号機の九電による特別点検を検証した分科会」まるで九州電力が書いた報告書のよう
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
原発延命策を強硬する山中原子力規制委員会委員長・片山規制庁長官
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『3・11 大津波の対策を邪魔した男たち』(島崎邦彦・青志社)

反原発川柳(乱鬼龍選)

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

国民の大多数から「無実なのに死刑囚にされた冤罪被害者」と認識されている袴田巌さんの再審がついに行われることになった。袴田さんは1966年の逮捕から現在まで57年にわたり、殺人犯の汚名を着せられてきたが、無事に再審が行われれば、無罪判決を受けることは確実だとみられている。

このような状況の中、過去に袴田さんに対し、無実の訴えを退ける判決や決定を下した裁判官たちはどのような思いで、どのように過ごしているのだろうか。当連載では、該当する裁判官たちの中から存命であることが確認できた人たちに対し、公開質問を行っていく。

3人目は竹花俊徳氏。東京高裁の裁判官だった2004年8月26日、安廣文夫裁判長、小西秀宣裁判官と共に袴田さんの第一次再審請求の即時抗告審を担当し、袴田さんの即時抗告を棄却する決定を出した人だ。

現在は弁護士をしている竹花俊徳氏(竹花俊徳公式ホームページより)

◆「竹花氏の略歴」と「竹花氏への質問」

竹花氏は1947年10月18日生まれ、長野県出身。安廣裁判長らと共に袴田さんの即時抗告を棄却する決定を出した後、仙台高裁秋田支部長、水戸家裁所長、静岡家裁所長などを歴任し、65歳の誕生日である2012年10月18日付けで定年退官。その後、定年が70歳の簡裁の裁判官となり、川口簡裁、さいたま簡裁、東京簡裁に勤務し、2017年10月18日付けで定年退官。現在は弁護士となり、東京都新宿区西新宿にある『弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部』に所属している。

なお、竹花氏は、公式ホームページで次のように述べている。

〈刑事事件・少年事件の被疑者・被告人になってしまったあなたに寄り添い、あなたの立ち直りの力になりたい。あなたが無実の罪で容疑を掛けられていたとしたら、それを晴らす力になりたい。そう考えて弁護士になりました。〉

そんな竹花氏に対しては、以下のような質問を書面にまとめ、郵便切手84円分を貼付した返信用の封筒を同封のうえ、『弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部』に特定記録郵便で郵送し、取材を申し込んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【質問1】

袴田巌さんは再審が決まり、無罪判決を受けることが確実な状況となりました。竹花様はこの状況をどのように受け止めておられますか?

【質問2】

竹花様は、公式ホームページで次のように述べておられます。

〈刑事事件・少年事件の被疑者・被告人になってしまったあなたに寄り添い、あなたの立ち直りの力になりたい。あなたが無実の罪で容疑を掛けられていたとしたら、それを晴らす力になりたい。そう考えて弁護士になりました。〉

竹花様は袴田巌さんについて、「無実の罪で容疑を掛けられた人ではない」と認識されているのでしょうか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この質問に対して、竹花氏からは以下のような回答が郵便で届いた。なお、竹花氏に郵送した「質問をまとめた書面」や「郵便切手84円分を貼付した返信用の封筒」は、回答と一緒に返送されてきた。

片岡健様

お世話になっております。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所です。

この度は、弊所所属弁護士の竹花俊徳への取材をご依頼いただきありがとうございます。

こちら検討させていただいたところ、竹花が業務多忙のため、今回の取材は見送らせていただきます。

ご要望にお応えできない形となってしまい大変申し訳ございませんが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

2023年5月25日
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所

竹花氏については、追加取材をすることを検討している。

※竹花氏の生年月日と出身地、異動履歴は『司法大観 平成二十八年版』と『新日本法規WEBサイト』の情報を参考にした。

▼片岡健(かたおか けん)
ノンフィクションライター。編著に『もう一つの重罪 桶川ストーカー殺人事件「実行犯」告白手記』(リミアンドテッド)、『絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―』(電子書籍版 鹿砦社)。stand.fmの音声番組『私が会った死刑囚』に出演中。

「絶望の牢獄から無実を叫ぶ―冤罪死刑囚八人の書画集―」[電子書籍版](片岡健編/鹿砦社)

私は3月の本通信への投稿で「地方自治の解体・民営化が狙われている」と題する一文を投稿し米系外資が日本の自治体を管理運営しようとしている危険性を指摘した。

今、それは4月に行われた統一地方選の結果を利用しながら、自治を解体し日本をなくす「改革」として進められている。今回は、そのことについて、述べて見たい。

 

魚本公博さん

◆狙われている「日本の自治」解体策動

4月に行われた統一地方選は「低調」であった。とりわけ議員の「なり手がない」ことによる無投票が増えた。88の市長選の3割近くの25市が無投票。町村はより深刻で125の町村長選では半数の70町村で無投票。373の町村議員選で1250人が無投票であり、そのうち議員定数に満たない「定数割れ」は前回の2.5倍となる20町村であった。

マスコミがこれを「地方議会の問題」とする中、朝日新聞が「自治制度の危機」と題する社説(4月27日)で、議会活性化のための様々な方途を提示しながら、会社員が議員を兼務することを更に進め、公務員が議員を兼務することも容認すべきだ主張した。

これまで地方自治法で会社員、公務員が議員を兼務することは禁止されてきた。自治体と取引のある会社の取り締まり役、監査役などの幹部社員は議員と兼務できないし、自治体職員も議員と兼務できないとなっている。

これは、自治体と取引関係がある会社や自治体職員が議員を兼務すれば、その議員は会社のため動くようになり、住民自治が損なわれる危険性があるからである。なお首長に関しても、この規制は適用される。

会社員の兼務については、昨年12月の法改正で自治体との取引額300万円以下の会社社員であれば兼務できるとなったがまだ自治体職員(公務員)の兼務は禁止されている。

私は貴通信への投稿(2月)で、デジタル人材を人材会社と協力して都道府県に外部人材とし確保させながら、これを市町村に派遣する総務省の方針について、これは基礎自治体である市町村を米系外資の関連人士が運営するためのものではないかと述べたが、このデジタル人材は、自治体職員になる。従って、会社員と公務員の「議員との兼務」容認は、米系外資の関連人士が首長や議員になることを容認し米系外資が日本の市町村を直接管理運営することを容認し促進するものとなるのではないかということである。

岸田首相は1月の施政方針演説で「地方議会活性化のための法改正」を行うと述べている。それは、日本の自治を解体し米系外資・企業が日本の自治業務や自治体そのものを直接管理運営することを容認し促進させるところに真の狙いがあると思う。 

こうした中、5月3日の憲法記念日に際して読売新聞が行った座談会では、「首長がいない自治体も認めるべきだ」との発言もあった。「首長がいない自治体」? 私が思い浮かべるのは、2005年に米国ジョージア州ワトソン郡に作られたサンディースプリング市のこと。この市は、年収1000万円以上の富裕層だけを集め、「安全」を売り物にして企業が管理する人工市である。そこでは市長も市議会議員も企業が任命する社員である。まさに「首長のいない自治体」である。

それは、公共性を否定し自治体の公共事業を民営化して食い物にする新自由主義者にとって、理想の究極的な自治体の形である。岸田政権の「法改正」は、そこまで視野に入れているように思える。

◆維新の「改革」の実態と本質

米系外資・米国企業が地方地域の自治体を直接管理運営する。維新が推し進めている大阪IR(カジノ)を見れば、その実態が見えてくる。大阪IRは、米国のIR運営会社「MGMリゾーツ」がオリックスなどが出資する「IR株式会社」を前面に立てて運営する。これを安倍、菅政権で首相補佐官を勤め、松井大阪市長が推薦して府の特別顧問になっている人物(和泉洋人)が関与する。

この夢洲IRでは、そのインフラ整備は大阪がやる。それを年間25億円という法外に安い値段で貸し出し、儲けの大半は米国企業が持っていく。そして、そこには大きな利権構造が出来る。維新は「既得権層」の打破を言うが、自らは、これまでの利権とは比較にならない巨大利権の「得権層」になるということだ。

もちろん、夢洲IRは一施設であり、それ自体が自治体なわけではない。しかし、問題の本質は、大阪の自治業務の重要な一環を米国企業が管理運営するという所にある。

IRは、「国際エンターテインメント都市 ”OSAKA”」という維新の地域振興策の重要なカナメであり、そのシンボルである。そうであれば、維新は大阪の自治業務を米系外資・米国企業に管理運営させようとしていると見るべきであろう。IRを通じて見えてくる維新の「改革」の本質はそこにある。

維新はすでに、関西空港業務や公営地下鉄を民営化しており、水道事業や文化施設での府市の業務統合、小中学校を統廃合しての小中一貫校、府立と私立の大学統合、公営病院の廃統合を進め、これを民営化しようとしている。

結局、そこでもIRのように、米国は隠れ日本を前面にたてながら米系外資・米国企業がこれらの自治部門を直接管理運営するようになるだろう。こうして、大阪の自治業務の多くが米国企業によって管理運営されれば、大阪の府や市といった自治体そのものも米国企業が管理運営するものとなる。こうして、大阪の富は食い物にされ、住民はその管理物にされる。そのどこが「改革」なのか。

◆米国の新冷戦戦略から見えてくる、日本をなくす「改革」

IRが象徴する維新の「改革」の本質を見れば、岸田政権が進めようとしている「地方議会活性化のための法改正」の意味と悪辣さも分かるのではないだろうか。

米国は今、新冷戦戦略の下、中国ロシアを敵視しながら、その最前線に日本を立てようとしている。それは衰退した米国覇権回復のためであり、そのために日本の全てを米国に統合する日米統合一体化を進める。そのために、地方地域も米国の下に統合する。

しかも、それを急いでいる。広島で開催されたG7を見ても、最早米国の提起する「民主主義対専制主義」に耳を貸す国はない。それに耳を傾けるのはG7諸国だけだ。とりわけ対中新冷戦では、日本が決定的だ。衰えたとはいえ、日本は世界第三のGDPをもち、技術力も高い。その日本の力を米国のものにすれば、新冷戦で中国に勝てる可能性が高まり、それも今しかない、というのが米国の読みだろう。

かくて、日本をすっかり米国のものにする。「地方議会活性化のための法改正」は、日本の自治を解体し、米系外資・米国企業による地方管理を進めるためのものなのだ。

こうして日本の国の形も変る。地方地域を米系外資・米国企業が管理運営するようになれば、日本の地方地域は、国と切り離されてしまい、日本は一つのまとまった国ではなくなり、日本がなくなってしまう。

統一地方選の最中、維新の馬場代表が「自民が守旧派と改革マインドの強い方に割れ、改革保守政党が出来れば、そこへの参画の可能性はないとは言えない」と述べている。

今後の政局で、維新と自民党内部の「改革」派による改革保守政党が出現するとか、改革保守の連立が進む可能性は大きい。そうなれば、米国が狙う、日米統合一体化、日本をなくす「改革」が急速に進められてしまう。

◆強まる地域を守る闘い

今、日米統合一体化が進む中で、新冷戦の最前線に立つための軍拡が行われ、それが増税、社会保障・福祉予算の削減、地方交付税の削減などとして、国民の生活を直撃するようになっている。

そうした中、生活の砦である地域(市町村)の自治を守り地域住民自身の力で守っていくという志向は強まらざるをえない。そして、この志向は、自治と自治体を解体し米系外資・企業が地域を直接管理運営するという米国の地方地域支配の目論見と真っ向から対決する。

今回の統一地方選の「低調」さの中でも、その「芽」は出てきた。「れいわ」は後半戦で東京区議47人を誕生させる健闘ぶりを見せた。「子どもファースト」や「弱者に寄り添う」独自の政策で注目される明石市では、泉穂房市長が後継者に指名した丸太聡子氏が他を圧倒して勝利し泉氏の「明石市民の会」5人が全員当選した。「公共の再生」を唱える杉並区長の岸本聡子氏が自身の区長選はなかったのに連日、区議選の街頭に立つ奮闘ぶりも多くの人の共感を呼んだ。 

「アップデートおおさか」の谷口、北野さんの「住民自治」の訴え、その具体化としてのカジノ反対の住民投票実施の要求は、維新との闘いとして本質的なものを突いていたと思う。今後、IR(カジノ)の実態が明らかになるにつれ、それへの批判も強まるだろう。谷口、北野さんには、今回の敗北を乗り越え頑張ってもらいたい。

各地で「みんなの、みんなの力による○○を」や「子育ての○○」など自分の地域をアイデンティティとし、左右の違い党派の違いを超えた地域第一の動きも各地で見られるようになった。

泉さんや岸本さんは、地域からの運動を全国化し、日本を変えることを目指している。「れいわ」も「自公政権による売国棄民政策……この腐った政治を変えるのは、あなただ」と呼びかけている。

誰もが、日本の改革を求めている。その重要な力は地域にある。こうした地域の力が互いに連携し全国的な力になっていけば、米国に地方地域を売り渡すような政府や維新などの「日本をなくす「改革」を阻止し、日本の政治を変えることができる。

「地方から日本を変える」、生活の砦である地域を守ることが死活的になってきた今、それが切実に要求されている。その力で日本の政治を変え、日本をなくす改革ではなく、日本をつくる改革を実現していかなければならないと思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『一九七〇年 端境期の時代』

『抵抗と絶望の狭間~一九七一年から連合赤軍へ』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGGRXRQ/

広島県三原市では水源地のど真ん中の本郷町南方にマツダスタジアム約10個分の産業廃棄物処分場(安定型)を湯崎英彦・広島県知事が許可してしまいました。2020年5月から工事が進んでいます。そして2022年秋以降には、群馬や長野など遠方からの産廃が続々と運び込まれています。

この産廃処分場から2023年6月、ついに汚染水が流出し始めてしまいました。産廃処分場の許可取り消しの裁判の原告でもある岡田和樹さんによると、処分場から流れてくる水は泡が消えず悪臭を発しているということです。5月中旬にも泡が発生していたそうですが、それはいったん消えたそうです。しかし、今回は泡と悪臭が同時にするとのことです。この水は、三原市民の8割が水源として利用している沼田川にも最終的には流入します。

◆住民・市議会の猛反対にもかかわらず許可強行 湯崎知事

2018年4月にJAB協同組合による産廃処分場計画が持ち上がった際、地元の三原市と竹原市の住民は猛烈な反対運動を行いました。当然のことです。この産廃処分場は水源地のど真ん中にあります。また、JAB協同組合自体が筆者の地元でもある広島市安佐南区の上安産廃処分場で多くの問題を引き起こしています。最近でも、不適切な盛り土の上に産廃処分場を拡張していたことが発覚しています。

三原市議会でも竹原市議会でも産廃処分場反対の決議が全会一致で可決されるなどしました。それにも関わらず、広島県(知事・湯崎英彦さん)は許可を強行しました。書類が形式上整っていれば、許可をしてしまう。これが広島の激甘な産廃行政です。

◆裁判所もチェック機能果たさず

これに対して、住民側は広島県知事を相手取って産廃処分場の許可取り消しを求める裁判を広島地裁に起こしました。並行して裁判の結果を待っていては、手遅れになる危険があることから、業者を相手取って産廃処分場の工事差し止めをもとめる仮処分も申請しました。

2021年3月に広島地裁はいったん、仮処分を認める決定をしました。これでいったん、工事はストップしました。しかし、業者側が異議を申し立てました。これについて事業者が異議を申し立てました。そして、原発や労働裁判でも「権力忖度」で「有名」な吉岡茂之裁判長が審理を担当。2022年6月30日、吉岡裁判長は「住民が利用する井戸まで有害物質が含まれる水が到達する可能性があると認めるに足りる資料がない」などとして、一転して処分場の建設を認める不当決定を行いました。
住民側は当然、広島高裁に抗告しました。しかし、高裁2023年3月29日、住民側の抗告を却下する不当決定を行いました。

高裁は、
・有害物質が付着・混入して処分場に運び込まれる恐れ
・それらが処分場の外に染み出す恐れ
については認めました。

ところが、処分場と井戸の距離が700mあって、高低差が60mしかないことを理由に、「井戸水に有害物質が入る」恐れがあることは、住民側に立証責任がある、としました。

裁判官は、「水は鉛直にしかしみ込まない」といういわば、常識外の決定をしました。

たとえば、介護現場や子育てを経験していればわかることですが、お年寄りや赤ちゃんが尿を漏らした場合、そこだけではなくて、オムツに広範囲に尿が広がります。そんな常識さえ裁判所には通じませんでした。

◆井戸水どころか川に流出!

しかし、県がいくら「処分場は安全だ」と言い張ろうが、吉岡裁判長が「危険と認めるに足りる資料がない」と権力に忖度しようが、汚染水は原告が懸念していた地下経由での井戸水汚染どころか、川にまで直接流出しています。業者側の計画では、排水は調整池を経由するから大丈夫、としていました。ところが、全然大丈夫ではなかったのです。

県や裁判長の屁理屈は現実の前に何の役にも立たないのです。こうなってしまっては遅いのです。

だからこそ、環境問題では「環境に重大かつ不可逆的な影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を行える」といういわゆる予防原則(EUが主に提案)ないし予防的取り組み(1992年のリオ宣言に盛り込まれ、日米はこちらを使うことが多い)が確立しています。

7月4日に許可取り消しを求める裁判の判決が広島地裁で言い渡されます。すでに口頭弁論は終わって結審してしまっている状態です。しかし、判決がどうあれ、知事は直ちに産業廃棄物の搬入を止めさせるべきだし、業者もこうなった以上は搬入を控えるべきでしょう。

◆湯崎知事も吉岡裁判長も「切腹」ものだ

それにしても、湯崎知事が許可し、吉岡茂之裁判長が追認した産業廃棄物処分場がご覧の有様になったのです。お二人とも責任は重大です。本来であれば、お二人とも辞職に匹敵するのではないでしょうか?知事はご自身の行政行為で、吉岡裁判長はご自身の司法判断で重大な結果を招いたのです。それも、多くの市民・県民の疑問を切り捨てた結果起きたことです。

もちろん、今回の本郷産廃処分場を実務上、許可したのは、筆者も県庁職員時代の最後に勤務していた東部厚生環境事務所です。しかし、広島県の産廃規制は全国でも最悪レベルに緩いまま放置してきたのは湯崎知事です。広島県には他の自治体で制定されているような水道水源保護条例なり環境配慮条例なりがありません。そういう中では現場の広島県庁職員も、書類などの形式さえ整っていれば許可せざるを得ない状況もあります。そうした状況に職員を置いてきた湯崎知事の責任は誠に重い。

湯崎知事については、次期県知事選挙に恥ずかしげもなく立候補された際には広島県民は彼を打倒すべきです。

吉岡裁判長についても、原発問題や労働事件でも権力への忖度のような判決ばかりです。万が一、この人が最高裁判所裁判官になられた場合、国民審査で真っ先に×をつけるべき対象であることは間違いないのではないでしょうか?
 
◎原告の一人の岡田和樹さんのFacebook

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『紙の爆弾』と『季節』──今こそ鹿砦社の雑誌を定期購読で!

◆重要捜査対象者だった木村三浩の指摘

『紙の爆弾』最新号で興味を惹かれたのは「文藝春秋『赤報隊』特集の罠」(木村三浩)である。文藝春秋」は赤報隊の正体を、野村秋介の周辺にいた右翼として描いているのだが、その論拠は盛田正敏(サム・エンタープライズ=不動産業)という人物の証言だという。

 

月刊『紙の爆弾』2023年7月号

すなわち、盛田が野村に渡した3000万円が赤報隊の逃走資金となったのではないか。そしてリクルートから盛田の会社に1000万円が寄付されたのも、野村への「対策金」、つまり赤報隊対策だったというものだ。

この種の「証言」は右翼や任侠系実業家にはありがちな「大言壮語」「オレだけが知っている秘話」であって、その人物を検証しなければならない。

盛田正敏は後藤忠政(山口組直参でのちに破門)の企業舎弟で、イトマン事件にも関与していたと言われている。02年には銀行取引が停止となり、ヤクザの借金回収に追われて渡米。帰国後は島田紳助やダウンタウンの浜田雅功の任侠右翼との関係を『週刊現代』で証言するなど、極道ネタを切り売りしてきた。いわば事件師(事件ネタを食い扶持にする)といってもいいだろう。

木村の記事は、この『文藝春秋』のエビデンスのいい加減さを指摘したものである。木村自身が9人の重要捜査対象者だったことから、当事者でもある。

たしかに野村秋介や鈴木邦男が赤報隊に会った、と匂わせたことはある。野村の朝日新聞本社での拳銃自決が、赤報隊への「俺が責任を取るから、もう朝日を攻撃するな」というメッセージだったと、野村に好意的な人々は解釈してきたものだ。

しかし、木村は直接触れていないが、被害者である朝日新聞の記者たちが右翼および民族派を徹底的に取材し、行き着いた調査の方向性は、木村が指摘するとおり「勝共連合(旧統一教会)」だった(樋田毅はその著書『記者襲撃』(岩波書店)のだ。樋田の著者に従いながら、事件捜査・取材の概要をふり返ってみよう。

◆赤報隊右翼説は、当初から外されていた

『文藝春秋』の特集も明らかにしているとおり、当初警察庁は朝日新聞阪神支局銃撃事件の犯行の態様、犯行声明の内容から右翼事件と断定した。まもなく捜査線上に木村をふくむ9名の右翼関係者がリストアップされ、個別に事件当日のアリバイ調査、ポリグラフ(嘘発見器)の任意捜査がおこなわれた。

しかるに、ほぼ全員にアリバイがあり、ポリグラフにも引っ掛からなかった。リストに挙げられた9人は、総合的に「シロ」と判断されたのだった。

もしかしたら、犯人は右翼ではないのかもしれない。捜査陣および朝日新聞関係者には、そう感じられた。本物の右翼であれば、みずからの犯行として警察に出頭する。そのうえで、犯行(天誅)の大義を堂々と述べるはずだ。かれらは往々にして売名的だが、逃げ隠れすることを嫌う。右翼事件にしては、赤報隊の隠密的な行動は異様だった。

取材した右翼関係者も口々に言った。

「従来の民族派が起こしたものと異なり、乾いた匂いのする事件だ」(野村秋介)、「こうした事件は、やわな右翼では起こせない」(民族派の活動家)、「周辺の右翼にあの事件を起こせそうな奴はいない」(行動派の民族活動家)と。そして樋田は、その民族活動家たちから「(犯行は)統一教会ではないのか」と逆に質問されるのだ。前掲書から他の民族派活動家の言葉を引用しよう。

「(犯行グループは)本心のキーワードを隠し、右翼を装っているのだ。テロ事件を繰り返すには強固な秘密組織が必要だ。右翼には秘密組織など作れない。それが可能なのは、左翼を除けば、α教会しか考えられない。君たち朝日新聞はα教会の秘密組織について取材してきたのか」

樋田の著書で「α教会」とされているのが、統一教会(世界基督教統一神霊教会・現在は世界平和統一家庭連合)である。

◆事前にあった脅迫状と幹部の演説

当時、朝日新聞および『朝日ジャーナル』(週刊誌)は、統一教会の霊感商法に対して紙面を割いて批判していた。統一教会(勝共連合)が中心となっていた「スパイ防止法制定促進会議」に対しても、朝日新聞は言論の自由を侵害する法案であると、反対の論陣を張っていたのだ。

統一教会は朝日新聞東京本社の前に街宣車を連日のように乗りつけ、朝日新聞を批判する演説を行なっていた。そして事件が起きた年の2月には、統一教会名で「ソ連のスパイ朝日社員どもに告ぐ。俺たちはきさまらのガキを車でひき殺すことにした……」で始まる脅迫文が届いてもいた。

文中に「俺たちが殺すのは共産サタンで人間ではない。てめえらバイキンだ、サタンだ」「俺はM16ライフルを持っている。韓国で訓練を受けてきた」とあることから、いかにも統一教会らしさを装っている。少なくとも統一教会を熟知している何者か、朝日と統一教会の対立をよく知っている者からの脅迫であろう。

朝日の記者たちが取材を開始してみると、事件の2か月前に統一教会の「関西の対策部長」を名乗る人物が、大阪の会合で「神側(統一教会)を撃ってくる人たちに対し、たとえ誰が霊的になってサタン側に立つ誰かを撃ったとしても、それは天的に見たならば当然許される」と話したという証言が得られた。

◆秘密の武装組織は存在したか?

前出の統一教会幹部が「サタン側に立つ誰かを撃ったとしても」が、朝日新聞阪神支局事件を指すのだとしたら、本当に武装した秘密組織があったのだろうか。反共の立場で共闘する右翼団体にも、統一教会はよく出入りしていたという。樋田の前掲書から紹介しよう。

日本青年旭心団の本部長・松本効三も勝共連合(統一教会)の若者たちと親しかった一人だが、心を許さなかった理由として「連中の持っている宗教は恐ろしい。人間をすっかり変えてしまう」と語り、「朝日新聞襲撃もα連合の可能性があると私は思っている」と語ったという。

松本の論拠は、同じ世代の右翼活動家が統一教会に取り込まれたかに見えたが、その活動家は「α連合には分からない部分があり、恐ろしい組織だ」と語ったからだという。松本によれば「この分からない部分というのは秘密組織か何かを指している」のではないかというのだ。

松本自身が観光ビザで韓国に行き、ベトナム戦争派遣の猛虎部隊に体験入隊した経験があった。したがって、統一教会の若者たちが韓国内で軍事訓練をするのも、たやすいのではないかというのだ。

いや、わざわざ韓国に行くまでもない。統一教会は当時、全国で26店舗の銃砲店を持っていた。その多くは射撃場を併設し、来客に試射させてもいたのだ。韓国の統一教会は銃砲メーカーを経営し、そこで生産したエアライフルを日本に輸出していたのである。統一教会の日本人会員(元自衛官)が、義勇兵としてケニアに派遣されていることも明らかになっている。統一教会は銃器とわかちがたく結ばれていたのだ。

◆証言をひるがえした会員たち

樋田ら朝日の記者たちは、統一教会の秘密軍事部隊の存在を追っている。そして早稲田大学の原理研に所属していた、元信者の証言をとったのだ。その元信者は大学卒業後に統一教会の会長秘書を務めたのち、特殊部隊に所属したという。その任務は、信者であることを隠して金山政英元駐韓大使の私的研究所に入り、研究所にあった韓国と北朝鮮、民団および総連の資料を入手していたという。別の女性元信者も、統一教会の非公然の軍事組織に所属し、銃を撃つ練習をしていたことを明らかにしている。

その女性元信者によれば、軍事訓練の指導は習志野空挺団出身の幹部が担当し、数人のグループで参加したという。実際に多かった任務は監視活動で、焼き芋の屋台をリヤカーで引きながら、監視対象の周辺を探ったという。ほかの元信者は、生道術(空手の一種)を身に着けた数十人の屈強そうな男性が集められて、軍事訓練を行なったと証言している。特殊な任務で軍事訓練をしていた秘密組織が、統一教会のなかに間違いなく存在していたのだ。

ところが、秘密軍事組織の証言をした元信者に再度取材したところ、かれらは先の証言をひるがえしている。というのも、元信者は統一教会に復帰していたのである。銃の訓練をしたという証言も「そんなこと言いましたか? 私は覚えていません」と否定した。この否定こそが、松本効三がいう統一教会の「分からない部分があり、恐ろしい組織」であり、民族派活動家が言う「テロ事件を繰り返す……強固な秘密組織」が「可能なのは、左翼を除けば、α教会しか考えられない」という評価に合致する。

直接的な証拠こそないが、朝日新聞襲撃事件の実行部隊は、統一教会が秘密裡に組織した軍事組織、あるいはその任務を請け負ったプロ的な軍事グループと見るのが自然ではないだろうか。

◆タイトルを重視する編集者の落とし穴

さて、木村が「罠」だと指摘した『文藝春秋』の「勝共隠し」に立ち返ろう。

今になって『文藝春秋』が赤報隊事件を特集したのを、木村は新谷学編集長が「編集長の職を退くにあたっての、新谷氏の思いも関係しているのではないかと推察する」と、やんわりした感想のオブラートに批判を包み込んでいる。

言論の士であり、リアルな政治活動家らしい感想だが、スクープとファクトを編集の髄としてきた新谷にとって、この特集は編集長としての汚点になると、ここでは指摘しておこう。まさに木村が指摘するとおり、エビデンスに欠ける「スクープ」なのだから。

じつは、あえて「罠」というほど巧妙でも突飛でもない。ひとつのテーマを掘り下げるとき、徹底的に他の有力なテーマを封印する編集手法なのだ。あたかも「スクープ」が真実であるかのように描き出す雑誌ジャーナリズムの、とくに文春砲と呼ばれた方法論がそこにあるだけなのだ。

野村秋介大人の死が過去のものとなり、野村をよく知る鈴木邦男が逝去した今だから、飛び出してきた「スクープ」だともいえよう。墓碑銘を穢すことはあっても、慰霊することにはつながらない。

なお、「紙爆」最新号には、横田一による「旧統一教会『500億円新施設』と
変化する『合同結婚式』」の現地取材レポートが掲載されている。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

最新刊! 月刊『紙の爆弾』2023年7月号

5月12日「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」なる実質「原発推進法」が成立してしまいました。重要な法案にもかかわらず、国会内内外で充分な議論がなされず短い審議で成立しました。さらに「GX脱炭素電源法」も本稿執筆時点、参議院で審議されています。「GX脱炭素電源法」は原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたものです。

 

6月12日発売 『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)

わずか12年前に福島第一原発事故を引き起こし、いまだ「原子力非常事態宣言」を解除できない国が明確な「原発推進」を打ち出すこの国の姿勢は、完全に理性を失っています。福島第一原発事故後は自民党ですらが原発回帰を躊躇っていたにもかかわらず、国の存亡にもかかわる「GX推進法」を大した議論もなく可決させてしまった与野党と、例によって政府と呼吸を合わせたように相応の報道を行わなかった大手マスメディアの劣化し尽くした姿勢に編集部は激烈な怒りを覚えます。

また本誌が発売される頃には、すでに鮮度のないトピックあるいは忘れ去られているかも知れませんが、広島でG7サミットが開催されました。もとよりサミットは「帝国主義者の戦争準備会議」と呼ぶ人がいるほどに、これまでも「軍縮」や「人類平和共存」に貢献したことはありません。

被爆被災地、広島で開催されることに、「核兵器廃絶」など筋違いの期待を寄せる言説も見受けられましたが、それらはもとより的外れ甚だしい妄想でした。案の定、G7期間中にどういうわけかウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪れ、米国などからF-16戦闘機の提供の確約を取り付けました。議長である日本国の首相岸田は「核兵器のない世界実現という理想をG7で共有」したと、功績のように記者会見で語りましたが、これは完全なる虚構です。

そもそも米国を中心とする核兵器保有国が集ったところで「我々は核兵器を放棄します」などと殊勝な宣言が発せられる道理は、最初からありはしないのであり、米国のバイデン大統領は広島入りに際して、これ見よがしに「核兵器発射ボタン」の入ったカバンを随行員に持たせている写真をわざわざ撮影させています。国際平和に貢献する意志があるのであれば、インドなど中立的な国も参加していたのですから、ロシアにも参加を呼びかけ「停戦」の場としたのであれば、それなりの評価に値したでしょうが、日本政府にそのような意思は微塵も見られませんでした。

人間が考えることを人工知能(AI)に代行させることに「G7」各国は熱心なようです。叡智や思索の蓄積を度外視してコンピューターの指示に従いたがる時代にこそ、人間の身体に結び付いた思想と行動の価値が問われているのではないでしょうか。脱原発(反核)・反戦は喫緊の課題です。

2023年6月
季節編集委員会

6月12日発売 〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2023年夏号(NO NUKES voice改題 通巻36号)


〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
季節 2023年夏号
NO NUKES voice改題 通巻36号 紙の爆弾 2023年7月増刊

《グラビア》原発建設を止め続けてきた山口県・上関の41年(写真=木原省治
      大阪から高浜原発まで歩く13日間230Kmリレーデモ(写真=須藤光男

野田正彰(精神病理学者)
《コラム》原子炉との深夜の対話

小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
《コラム》核のゴミを過疎地に押し付ける心の貧しさ

樋口英明(元福井地裁裁判長)
《報告》司法の危機 南海トラフ地震181ガル問題の重要性
《インタビュー》最高裁がやっていることは「憲法違反」だ 元裁判官樋口氏の静かな怒り

菅 直人(元内閣総理大臣)
《アピール》GX法に断固反対を表明した菅直人元首相の反対討論全文

鮫島 浩(ジャーナリスト)
《講演》マイノリティたちの多数派をつくる
 原発事故の被害者たちが孤立しないために

コリン・コバヤシ(ジャーナリスト)
《講演》福島12年後 ── 原発大回帰に抗して【前編】
 アトミック・マフィアと原子力ムラ

下本節子(「ビキニ被ばく訴訟」原告団長)
《報告》魚は調べたけれど、自分は調べられなかった
 一九五四年の「ビキニ水爆被ばく」を私たちが提訴した理由

木原省治(上関原発反対運動)
《報告》唯一の「新設」計画地、上関原発建設反対運動の41年

伊藤延由(飯舘村「いいたてふぁーむ」元管理人)
《報告》飯舘村のセシウム汚染を測り続けて
 300年の歳月を要する復興とは?

山崎隆敏(元越前市議)
《報告》原発GX法と福井の原発
 稲田朋美議員らを当選させた原発立地県の責任

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山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
《報告》原発利用促進のためのGX脱炭素電源法案の問題点

原田弘三(翻訳者)
《報告》「気候危機」論についての一考察

井筒和幸(映画監督)×板坂 剛(作家)
《対談》戦後日本の大衆心理【後編】

細谷修平(美術・メディア研究者)
《映画評》シュウくんの反核・反戦映画日誌〈3〉
 わすれてはならない技術者とその思想 ──『Winny』を観る

三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
《報告》今、僕らが思案していること

佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
《報告》亡国三題噺
 ~近頃“邪班(ジャパン)”に逸(はや)るもの
  三重水素、原発企業犯罪、それから人工痴能~

山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
《報告》山田悦子の語る世界〈20〉
 グローバリズムとインターナショナリズムの考察

再稼働阻止全国ネットワーク
原発の全力推進・再稼働に怒る全国の行動!
福島、茨城、東京、浜岡、志賀、関西、九州、全国各地から

《福島》古川好子(原発事故避難者)
福島県富岡町広報紙、福島第一廃炉情報誌、共に現地の危険性が過小に伝えられ……
事故の検証と今後の日本の方向を望んでいるのは被害者で避難者です!
《東電汚染水》佐内 朱(たんぽぽ舎ボランティア)
電力需給予備率見通し3.0%は間違い! 経産省と東電は石油火力電力七・六%分を隠している! 汚染水の海洋放出すべきでない! ── 4・5東電本店合同抗議に参加して
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
運動も常に情報を受信してすぐに発信することが大事
4月5日定例の日本原電本店行動のできごと
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
中電が越えなければならない「適合性審査」と「行政指導」
《志賀原発》藤岡彰弘(「命のネットワーク」事務局)
団結小屋からメッセージ付き風船を10年余飛ばし続けて
《高浜原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「関電本店~高浜原発230kmリレーデモ」に延べ900人、
「関電よ 老朽原発うごかすな!高浜全国集会」に320人が結集
《川内原発》鳥原良子(川内原発建設反対連絡協議会)
「川内原発1・2号機の九電による特別点検を検証した分科会」まるで九州電力が書いた報告書のよう
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
原発延命策を強硬する山中原子力規制委員会委員長・片山規制庁長官
《読書案内》天野恵一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
『3・11 大津波の対策を邪魔した男たち』(島崎邦彦・青志社)

反原発川柳(乱鬼龍選)

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

トランス女性を自称する身体男性が堂々と女子トイレを使い、時には女湯に入っている? 海外ではなく日本でも、そうなりつつある? そんな、まさか!

──と思った皆様には、次のツイートをご覧いただきたい。「私の性自認は女性」と主張する「身体男性」は「女性」として扱うべき、と主張する女性たちのツイートだ。

弁護士 上瀧浩子「トランス女性のペニスは、男根じゃなくて女根でしょ」

yoko_counter「ペニスだと思うから怖いのかな。基本的にトランス女性についてるのはペニスではなくクリトリスだと思ってるんだけど。ちょっと大きいかもしれないけど、なんの害もないよ」

[左]しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子氏による、ペニス=女根説。[右]しばき隊界隈活動家・yoko_counter氏による、ペニス=大きなクリトリス説

ここで、鹿砦社が何年にもわたり追及してきたしばき隊/カウンター/C.R.A.C./ANTIFA等と呼ばれる暴力的な反差別運動体の問題、特に「しばき隊リンチ事件(カウンター大学院生リンチ事件)」の情報に触れたことがある方なら、「ん?」と引っかかるはずだ。

なお、ここで「しばき隊? なにそれ?」という方々にひとことでそれをご説明するならば、「反差別チンピラです」とお返事したい。

2010年代、在日特権を許さない市民の会(在特会)等による悪質な排外主義デモに対抗し、反差別を叫ぶと同時に彼らと同レベルでオラつくことで一定の成果をあげたレイシストをしばき隊(現C.R.A.C.)だが、在特会が弱体化してもオラつき癖が治まらず、しばき隊の暴力性を批判しただけの無辜の市民にまで大いにオラつき、結局は嫌われまくってしまったという、残念な皆様。それが反差別チンピラである。

上瀧浩子弁護士(@sanngatuusagino)は、「しばき隊リンチ事件」の現場にいた反差別活動家で在日韓国人女性の李信恵氏と公私にわたって親しく交流しており、しばき隊リンチ事件裁判やその他の裁判で、しばしば李氏の代理人弁護士をつとめてきた方だ。

 

赤ペンyoko先生の親身な添削で、君もしばき隊現役合格!

今ではこの「女根ツイート」がネット上で有名になり、「女根弁護士」などと揶揄されたりもしている。

そして、yoko_counter氏(@yoko_counter)は、ご自身で名乗っておられる通り、カウンター/しばき隊系の女性活動家だ。バイセクシュアルでありフェミニストでもある。

2018年にはまんこアートの第一人者・ろくでなし子画伯のツイートを差別的であると無料で添削、以降は「赤ペンyoko先生」の愛称でも親しまれている。

しかし、そんなに女根だ、大きなクリトリスだと主張するのならば、ご自身が「私の心は女」と主張しているだけの見知らぬおっさんたちと一緒に、毎日風呂に入っていればよろしいかと思うが、しばき隊界隈の女性たちがそのような反トランス差別的チャレンジをされているという話はうかがっていない。

実行に移さないのであれば、そのようなツイートはきれい事であり、机上の空論であり、単なる言葉遊びにしかすぎないと考えるが、そんな私の心が狭すぎるのだろうか?

さて。ここで、超有名なトランス女性活動家による「女風呂に入っている」という証言をご覧いただこう。

尾崎日菜子「あたしとか、チンコまたにはさんで、『ちーっす』とかいって、女風呂はいってんのやけど、意識が低すぎ? あと、急いでるときのトイレは男。立ちションの方が楽やからね」

[左]このツイートから、チンコを股にはさんで女湯に入る行為を指す新しい表現「ちーっす」が爆誕![右]チンコを股にはさんでいれば女湯に入ってもセーフ! 痴漢行為ではない!

この男性器をお持ちの尾崎日菜子氏は、トランス女性活動家として学術誌にも寄稿されているような方だ。そんなトランス女性活動家(身体男性)が、「私の心は女」と主張すれば女湯に入るのも許され、それは犯罪ではないと考えている。

なので、私はスローガン「トランス女性は女性です」を次のように言い換え、たびたびツイートしている。

「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」

これならば、「トランス女性」が「性別適合手術を済ませて男性から女性になった人」という誤解を招くことも回避できる。「トランス女性は女性です」派が隠したい本音も、丸括弧内できちんと述べてあげるという、親切設計だ。

実は、すでに自分のパソコンで「とらんす」と入力したら「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」と変換するよう、辞書に単語登録もしてある。

[左]チンコを股にはさんで女湯に入るというトランス女性活動家・尾崎日菜子氏は『コロナ禍をどう読むか』(亜紀書房)にご寄稿。[右]尾崎氏はご自身の写真を「女哲学者」とツイート。しかし、このような人物(チンコを股にはさんでいる)と女湯で出くわして「あっ。女哲学者だ!」と思う女性は一体何人いることだろう?

さらに申しあげると……しばき隊ウォッチャーを自認する方々なら、尾崎日菜子氏の名になにか引っかかりを感じないだろうか?

おそらく、すでにお気づきの方もいることだろう。尾崎日菜子という名は、しばき隊リンチ事件関連の流出資料「ITOKENの声かけリスト」の中にあった、と。

「声かけリスト」とは、しばき隊リンチ事件(2014年12月17日深夜発生)に関し口止めすべき関係者を、しばき隊系活動家ITOKENこと伊藤健一郎氏(当時立命館大学大学院生)がリスト化、配布した文書である。これを見れば、しばき隊につながる人物がひとめでわかるという、貴重な資料でもある。

ITOKENの声かけリストの中に尾崎日菜子氏の名。しばき隊界隈関係者としては古株か?

それにしても、声かけリストの中に、なんでまた尾崎日菜子氏の名が? 加えて、しばき隊界隈弁護士・上瀧浩子がなぜ、女根発言を? さらには、しばき隊系活動家yoko_counter氏が「大きいかもしれないけどクリトリス」発言をしたのは一体……?

答えは単純だ。LGBTの運動にしばき隊界隈活動家が「寄生」し、暗躍……いや、堂々と活躍しているということだ。

今や、ネットでもリアルでも、しばき隊界隈活動家は「トランス女性は女性です(だからチンコあっても女湯に入ってOK)」派として、LGBT活動家と共に大いにオラついている。

だが、私はバイセクシュアル当事者であり反差別でもある立場から、しばき隊界隈の皆様に申しあげたい。「無能な味方は不要だ」と。

現在、しばき隊と一緒になってオラついているLGBT活動家は、市民から忌避されつつある。当然だろう。

そのうちLGBTはヘイトデモのターゲットになるのではないかと、私は危惧しているのだが、そうなったとしても因果応報でしかないと、なかばあきらめの境地だ。

残念だが、LGBT活動家はしばき隊系活動家の暴言・恫喝を大いに利用してきたのだから。そして、我々LGBT当事者はそれを止められなかったのだから。(おわり)

◎LGBTのダークサイドを語る
〈1〉トランス女性は女性ですか?[上]
〈2〉トランス女性は女性ですか?[下]

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko

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